2001年12月8日土曜日04:57 日本海上 第8492戦闘団上陸支援船舶隊 旗艦 揚陸指揮艦『木曽』CIC
揚陸指揮艦とは、元の世界の合衆国海軍第六および第七艦隊で旗艦として使われていた艦種である。
空母にも似たその平らな甲板には、必要最低限の個艦防空火器以外にはアンテナ程度しか目立つものが無い。
一見してもしなくとも無防備に近いこの種の艦艇は、大規模な戦闘集団を現場に近いところから統一して指揮するために設計されている。
人類史上最大規模の戦力を持つ軍隊が作った、一国を滅ぼす事のできる戦闘集団を率いるためだけのフネ。
これを真似しない理由は無い。
それに、これがどれだけ役に立つものかは、シミュレーターの中でソコトラを攻める時に十分理解させてもらっている。
「全部隊作戦発動に問題なし」
「新潟防備要塞長距離ミサイル群発射最終チェック完了。問題なし」
「陸上戦艦部隊配置完了、支援砲撃問題なし」
「海兵隊全機異常なし」
「本土防衛軍は臨戦態勢へ移行を完了した模様」
次々と報告が入ってくる。
それらの内容は全て好調である事を示すものであり、憂慮すべき何かは一つも存在しない。
「本来であればここで一つ演説でもやるところなんだがな」
薄暗い指揮所の中で、俺は呟いた。
人間の軍隊を率いているのであれば、誰もが奮い立つような名演説を行うべきところである。
だが、俺の率いる軍隊は、ごく僅かな例外を除いて全てがAIである。
全く残念だ。
「閣下のお言葉を疑っていたわけではないのですが、本当に、人間は少ししかいないのですね」
後ろから呆れたような口調で話しかけられる。
国連軍から観戦武官として派遣された伊隅みちる大尉である。
A-01部隊だけでこの艦に乗り込んでくるのだから、完全に観戦するためだけに派遣されたのだろう。
それ以外のメンバーたちは、無言を保ったまま指揮所の中を不安げに見回している。
ここにいるオペレーターや艦内の要員が全てアンドロイドであるという事実が未だに受け入れがたいのだろう。
「そうなんですよ。おかげで食料の心配は無いのですが、話し相手が少なくて困ります」
人類史上最大規模の戦闘集団を率いつつ、俺は軽口を叩いた。
既に作戦の準備は全て完了しており、何一つとして問題はない。
どう間違えても負けようの無い戦力に、散る人命が恐らく皆無という予測。
BETAの残骸から今以上の戦力が生産できるという事実。
俺にとって、これは良くできた作戦級シミュレーションゲームと何も変わらない。
もちろん、目の前の戦力を無駄遣いするわけにはいかないので真面目にやるが。
「私どもでよろしければ、是非気晴らしにお使いください」
作戦参加艦艇全ての出港準備が完了した当日、彼女たちは香月副司令からの命令書を携えてこの艦隊へとやってきた。
命令書には別に無理難題は載っておらず、ハイヴ攻略を経験させてやって欲しいとだけ書かれたそれは、命令と言うよりはお願いであった。
女性のお願いは物理的に不可能で無い限り受け入れる主義である俺は、快く了承した。
最初は随分と敵意丸出しかつ懐疑的な様子の彼女たちだったが、旗艦およびその直衛艦艇を直視し、沖合いの艦隊と合流した頃にはすっかりおとなしくなっていた。
速瀬中尉あたりは始めは随分と絡んでくれたものだったのだが、今では初陣の模範的士官のように大人しく椅子に腰掛けている。
「閣下、間もなく作戦開始時刻です」
オペ子の言葉にモニターを見ると、画面右上の時計が0459時30秒を指していた。
「それではA-01部隊の皆さん、少しばかり遠乗りにお付き合いください」
0459時40秒。
まあ、一言ぐらい言ってもいいだろう。
俺はマイクを取り、全部隊に繋がっている事を確認して口を開いた。
「作戦司令部より全部隊へ。
オリジナルハイヴ攻略のための最初の一手だ。心してかかれ」
0459時55秒。
「ちょっと!アンタいきなり何言ってるの!」
「速瀬中尉!貴様その言葉遣いはなんだ!」
「みづき!ダメだよ~」
0459時59秒。
後ろがいきなり賑やかになる。
ああ、この作戦が終わったら、思いつく限りの女性パイロットを呼び出してハーレムを作るのも悪くないな。
うん、そうしよう。
リアル“少佐”も見てみたいしな。
時計の表示を見る。
2001年12月08日0500時00秒。
「作戦開始、全誘導弾発射開始」
後に人類史上最大のミステリーとして知られる日本帝国本土防衛軍佐渡島ハイヴ攻略作戦はこうして始まった。
2001年12月8日土曜日05:00 日本海上 第8492戦闘団上陸支援船舶隊 旗艦 揚陸指揮艦『木曽』CIC
「了解、作戦開始、全誘導弾発射」
「了解、全誘導弾発射」
「地上艦隊砲撃開始」
人間が介在する指揮所でのみ行われる音声による復唱が行われ、俺の指揮下にある全戦力が攻撃を開始した。
最初に火蓋を切ったのは、距離の関係から最初に発射を開始しなければならないマザーウィルである。
彼女が搭載している常識外れに巨大な砲台は、冗談のようなサイズの砲弾を放つことができる。
その初速はおよそマッハ1であるが、光速で飛来するレーザーを相手取るにはどうにも不利である。
そこで、彼女のために俺は特別な砲弾を用意してあげた。
なぜなら彼女もまた、特別な存在だからです。
彼女はその巨大な主砲を旋回させる。
砲撃開始のブザーを周囲に鳴り響かせ、護衛に当たっていた直衛部隊の退避を確認する。
無人機である事からうっかりはないのだが、人間の部隊と共同作戦を行う可能性があるために定められている手順である。
ブザーが鳴り止んだ次の瞬間、彼女に搭載された巨大な主砲が吼えた。
直視している者が仮にいたとしたら、視力を一時的に失うほどの閃光、あるいは聴力を失うほどの轟音が発生する。
余りにも巨大な、暴力。
周囲に展開する大型艦が玩具に見える彼女の咆哮を合図に、陸上艦隊は全艦が砲撃戦を開始した。
ランドクラブが、ビッグ・トレーが、ヘビィ・フォークが、搭載された主砲、誘導弾発射機から死と破壊を吐き出す。
周囲は閃光に照らし出され続け、それは絶える事無く続行された。
自軍の絶対の優位を確信できる光景。
しかしながら、彼女達から吐き出される砲撃は、ほぼ全てが迎撃される予定である。
だが、そんな事はもちろん想定済みであり、予定された現象なのだが。
「陸上艦隊初弾発射。弾着まで十五秒」
号砲と呼ぶにはあまりに巨大なそれは、すぐさまレーダーに捕捉されてモニターに表示される。
「潜水偵察部隊より入電、本土直近の松ヶ崎周辺に多数の光線級を確認。迎撃体制を取りつつあり」
敵も捕捉したのだろう、直ぐにBETAたちは迎撃体制を取り始めた。
光線級ならば有効射程は30km程度のはず。
頑張って撃ち落してくれたまえ。
「全艦対地砲撃開始」
「全誘導弾発射準備完了、秒読み開始」
「新潟防備要塞長距離ミサイル群発射準備完了。待機中」
次に発射を開始したのは、分厚い装甲を持つ戦艦である。
彼女たちはその長大な主砲を予め定められた戦区へと向け、無差別砲撃を開始した。
狙いをつけた砲撃戦は、上陸第一波が海岸に取り付いてからになる。
そして、予め予定されているために報告が無いが、四つの上陸海岸に向けて全ての部隊が最終的な移動を開始した。
剣号作戦は、大きく分けると五つの段階に分けられている。
第一段階、上陸地点への準備砲爆撃。
第二段階、作戦符牒「い号」および「ろ号」海岸への、敵戦力誘引を目的とした時間差強襲上陸。
第三段階、「は号」および「に号」海岸への、その他海岸への支援を目的とした強襲上陸。
第四段階、上陸部隊による内陸部への戦果拡張および地上BETA集団の殲滅。
第五段階、ハイヴ内への突入によるH21佐渡島ハイヴの機能停止
以上の五つである。
さらに細かく言えば、海岸堡の確保などそれぞれの段階での細かい段取りがあるが、概要はこれだ。
一つの部隊あたりの戦闘正面を極限まで狭く設定し、非効率は覚悟の上でただひたすらに物量で押しつぶす。
あまりお上品とはいえないかもしれないが、負けようが無い作戦だ。
戦術機母艦さえ無事で、光線級排除による制空権確保ができれば、戦術機とは後送が非常に行いやすい兵器である。
その利点を最大限に活用し、撃ち尽くしたら撤退し、直ぐに後続が突入するという航空機のような運用をさせてもらうわけだ。
頭の中で作戦を思い出しつつ、俺は周囲から入る情報を聞き続けた。
一度戦闘が始まれば、何か決断する必要が出るまでは、指揮官がやるべき事は状況を確認し続ける事だけである。
もちろんそれは全くもって忙しい限りであるが、モニターを無言で眺め、報告に聞き入るという行為は暇そうに見えたらしい。
「あの、閣下」
恐縮した様子で速瀬中尉が声をかけてくる。
初対面の時には気さくな笑みを浮かべつつ無礼講でやってくれとは言ったが、作戦中に話しかけてくるとは思わなかったな。
「なんでしょうか?ああ、さっきの事なら気にしないで下さいね」
小声で伊隅大尉が叱りつけているのが聞こえる。
まあ、常識的な対応だな。
上陸第一波を送り出す直前の作戦指揮官に話しかけるなど、艦外に叩き出されても文句は言えない。
「いえ、その、先ほどは失礼しました」
微かに聞こえる伊隅大尉の叱責はまだ収まらない。
思わず苦笑が漏れる。
一瞬焦るが、振り向かずに会話しているのでバレないだろうと思い直す。
「お気になさらず。美女に話しかけられるのは、男の喜びですよ」
自分に似合わないことは承知で、やや気障な台詞を吐く。
話しかけてもらったおかげで少しはリラックスもできた。
架空の世界の実体験(妙な表現だが正しくこれが正解だ)を通じて、強襲上陸作戦は何度も行っている。
何も心配は無いと思っていたが、さすがに現実に体験することは、一味違うらしいな。
「全艦対地ミサイル発射」
「松ヶ崎周辺光線級迎撃開始を確認。第二次照射まで15、14、13」
「上陸第一波、い号海岸へ向けて移動を開始」
「新潟防備要塞ミサイル発射開始」
まだ暗い新潟西部の大地。
先の防衛作戦の傷跡すら今だ消えていないこの地には、無数の戦闘集団が駐屯している。
今だ撤退の完了していない日本帝国本土防衛軍。
ドックから出せないまま作戦発動を迎えた日本海艦隊。
合衆国の強い要望で派遣された国連軍日本救援部隊先遣隊。
そして、日本帝国本土防衛軍の旗を掲げた、二桁の人間が運営する、軍集団規模でありながら「戦闘団」を名乗る勢力。
彼らには巨大な、動作原理すら明かされていない陸上艦隊が存在し、巨大すぎる要塞があり、この国の全兵力を超える戦術機がある。
その陸上艦隊は、旗艦である「スピリット・オブ・マザーウィル」および4隻のランドクラブ級砲艦を主力としている。
これにビックトレー級、ヘビィ・フォーク級と呼ばれる二種類の巨大なホバークラフト戦艦群が付き従い、更に全艦合わせて四個戦術機甲師団が収容されている。
それだけの戦力を貼り付けの防衛部隊として運用する「戦闘団」のおかげで、この地に派遣されている軍人達の持つ常識が崩壊を迎えようとしていた。
しかし、味方である以上、納得はいかなくとも頼もしくはある。
彼らはそう受け止めつつ、この日も本土の防衛に当たっていた。
そのアームズフォート部隊から放たれる砲撃が微かな明かりを灯すだけのその世界に、無数の閃光が発生した。
新潟防備要塞群に設置された総数11万2894基の十連装長距離巡航誘導弾発射機。
そこに収められた112万8940発の長距離地対地巡航誘導弾の一斉発射が始まったのである。
要塞群に収められた巨大な箱型ランチャーが佐渡島方面を向き、発射体制に入る。
要塞中に警報ブザーが鳴り響き、鳴り終わる。
次の瞬間、誘導弾たちは大地を発射炎で照らし出しつつ敵軍めがけて旅立った。
暗闇の中へ閃光を残しつつ、地上から大空へ向けて飛び立つ流星群。
それはモニター越しに見てもなお神秘性を感じる、幻想的な光景だった。
放たれた誘導弾たちは、事前に入力された情報に従い、直ちに高度を下げる。
海面からの高度は50m、極めて低空である。
一秒でもBETAたちからの迎撃を先延ばしにするための低空飛行だ。
慣性誘導装置と艦隊からのデータリンク、更には衛星から寄せられる情報をマップと重ね合わせつつ、誘導弾たちは佐渡島めがけて前進を継続する。
「誘導弾発射完了。データリンク正常」
「再装填作業開始、現在異常なし」
「初弾が迎撃を受けています」
レーザーが受信した情報が流れ込み、中央モニターの戦域地図に大量の光点が現れる。
要塞から、地上艦隊から、水上艦艇から、続々と放たれ続ける誘導弾たちのおかげで、地図上は大変賑やかな事になっている。
緑で表示されているのがこちらの発射した砲弾とミサイルのうち、順調に飛翔中のもの。
黄色はレーザー照射を受けているもので、赤字に変わっているものは撃墜されたものだ。
佐渡島に敵軍を示すシンボルで表示されているのは現在確認されている光線級たちだ。
その数は刻々と増加しつつある。
誠にありがたいことに、BETAたちは早くも総力戦を挑んでくれるらしい。
そうでなくては困る。
俺が満足感を覚えている間にも、BETAたちの迎撃行動は激化する。
敵軍は続々と光線級・重光線級を佐渡島全域へ出現させ、砲弾や巡航誘導弾の迎撃を実施する。
佐渡島へ対して飛来する砲弾や誘導弾の飛行経路上に次々と爆発が発生し、それらは広範囲に分散しつつもゆっくりとBETAたちへと迫っていく。
人間の軍隊ならばここで恐怖感を覚えるのだろうが、BETAたちに恐怖という文字は無い。
賞賛に値する不退転の迎撃行動を継続し続け、それは遂に命中を始めた砲撃によって光線級が破壊されるまで続けられた。
その余波を受け、危険なまでに最前線で観測を実施していた潜水艦隊に損害が出始める。
「観測中の潜水艦十五号撃沈」
「潜水艦十六号攻撃を受けて戦闘不能」
「沈降中の潜水艦十九号の操舵不能」
「潜水艦二十九号通信途絶」
戦闘態勢に入った事で、こちらの事を普段よりも細かく観測し始めたようだ。
誘導弾の撃墜数も、既に三千発を超えた。
だが、もう遅い。
その程度の迎撃でどうこうできる攻撃など、するはずが無いではないか。
「迎撃を受けていたAF艦隊初弾消滅!」
やっと壊すことができたようだな。
今回放たれていたスピリット・オブ・マザーウィルの初弾は、ロケットアシスト機構をつけた巨大な鉄の塊である。
信管も炸薬も無い、巨大な鋼鉄の塊。
それは、レーザーでの迎撃に対して、大きさという利点を活かして強い耐性を持っている。
まあ、耐性と言うか被弾しても直ぐには弾け飛ばないという程度ではあるが。
とにかく、それにより一秒でも長く、一体でも多くの光線級をひきつけることができた。
その間に放たれる無数の戦艦主砲、艦対地誘導弾。
これらは全て、長距離巡航誘導弾への迎撃を一体でも減らし、光線級の位置を暴露させるためだけに行われている。
飛翔速度マッハ2、つまり秒速約680mで突き進む彼らは、およそ69秒で本土から佐渡島上の任意の地点へと到達する。
再発射に12秒もかかる光線級では、これら全てを着弾までに撃墜し終えることはできない。
単純な試算だが、速度マッハ2で飛距離47000メートルを駆け抜ける彼らを全て撃墜するには、一万体の光線級が一体一殺で当たっても1355秒かかる。
厳密に計算すれば更に多くの要素があるため実際には異なるが、1000発や1万発多く撃ち落されたとしても、この物量の前では誤差でしかない。
「衛星からのデータ受信中、誘導弾に対する目標振り分けを開始します」
敵がわざわざ地上へ出てきてくれるのだ。
それ相応のお返しをしなくては失礼に当たる。
「ミサイル第一波着弾まであと5秒、4秒、3秒、弾着、今」
レーダー画面上では、マッハ2を感じさせる凄まじい速度で進んでいた光点たちが次々と佐渡島各所へと着弾していく様が見える。
450kgの高性能炸薬を詰め込んだこの誘導弾たちは、敵の強固な対空防御を想定し、一発一発の破壊力を極限にまで高めている。
そうでなければ数を叩き込んだとしても、敵の迎撃で効果が出ないだろうと考えたからである。
しかし、優先的に光線級を叩いている事から、敵の防空能力は秒単位で減少し続けている。
これではオーバーキルになるな。
まあいい、この日この時のためにわざわざ用意した長距離巡航誘導弾および、光線級撃滅のための照準システム。
さあBETA諸君、是非とも堪能してくれよ。
「松ヶ崎周辺光線級に着弾開始、迎撃効率低下中、攻撃の効果大!」
「マザーウィル第十五次砲撃終了」
「戦艦部隊砲撃継続中。損害無し」
「巡航誘導弾第五次砲撃開始」
「第一および第二突撃戦隊上陸を開始。全パンジャンドラムは正常動作中」
記念すべき第一歩を記すべく、い号海岸めがけて第一陣の893機のパンジャンドラムたちが突撃を開始した。
先の新潟防衛戦で使用されたものを更に改良し、短距離ながら洋上航行機能を付与された彼らには、波の荒い日本海を疾走するなどたやすい事である。
自分達に向かってくるそれらがいかに危険なものであるか、BETAたちには良く分かったのだろう。
海岸に達しない段階で迎撃が開始される。
瞬きをする間もなく21機が破壊され、弾け飛びつつ日本海の奥底へと沈んでいく。
だが、その程度は許容範囲内である。
光線級たちが別のものへ照準を向け、充填し、発射していた時間は18秒。
それほど長い時間があれば、既に飛行中だった巡航誘導弾たちは容易に目標地点へと着弾できる。
閃光、爆煙。
偵察衛星の観測結果が、また一群の対空脅威が消滅した事を知らせる。
「パンジャンドラム上陸、残存数811機。最終突撃開始」
フロートを切り離し、全てのロケットモーターに点火したイギリス生まれの上陸専用決戦兵器が佐渡島の大地を踏みしめる。
彼らはそのまま、地上レーダーに反応のあった全ての物へ向けて、互いに重複が無い事を確認しつつ最終突撃に入る。
バラスト・スラスター、そして緊急旋回用ロケット推進機を用い、彼らは最適な位置へと突進する。
ある機体は突撃級に激突した。
別の機体は要塞級に串刺しにされた。
とある機体は戦車級の群れに突っ込んだ。
そして、世界が煌いた。
「爆発確認。第二派突入開始」
「第三派上陸成功」
「第四派間もなく上陸開始」
「第五派進撃中、迎撃なし」
「第六派離艦成功。損失無し」
全ての報告は、作戦が順調に推移している事を示している。
この海岸だけでも合計六派5368機のパンジャンドラムが強襲上陸を敢行する。
その半分がやられたとしても2684機、つまり26840トンの高性能炸薬が周囲を吹き飛ばす。
「潜水海兵戦隊第一連隊は、い号海岸へ強襲上陸を開始」
佐渡島全土に沸いて出た光線級たちは、今なお発射され続けている巡航誘導弾により壊滅状態に陥っている。
海岸付近に展開しようとしていたBETAたちは、艦砲射撃やパンジャンドラムにより殲滅された。
遂に戦術機による上陸が始まるわけだが、その内容は勇ましさからは程遠い、演習のようなものになりそうだ。
こんな事ならば、全部隊を空母からの飛翔で揚陸させればよかったかもしれない。
今更ながら後悔するが、もはや手遅れだ。
現在の俺に出来る事は、作戦を破綻させない範囲で可及的速やかに陸上戦力を揚陸させる事だけである。