<このWebサイトはアフィリエイト広告を使用しています。> SS投稿掲示板

チラシの裏SS投稿掲示板


[広告]


No.8807の一覧
[0] 獣と魔物と煉獄と…【迷宮探索学園?】【習作】 更新+微修正[63](2009/09/18 18:05)
[1] 2[63](2010/06/25 16:21)
[2] 3[63](2010/06/25 16:23)
[3] その日の《金獅子》[63](2009/08/19 09:40)
[4] 4[63](2010/06/25 16:25)
[5] 設定+おまけ[63](2010/06/25 16:27)
[6] 5[63](2009/09/18 18:05)
[7] 6[63](2009/10/04 06:34)
[8] 7[63](2009/10/25 03:21)
[9] 8[63](2010/10/19 19:52)
[10] その日からの《金獅子》[63](2010/06/25 16:35)
[11] 9[63](2010/10/19 20:21)
[12] 10[63](2010/11/06 14:43)
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

[8807] その日からの《金獅子》
Name: 63◆ce49c7d8 ID:343c248d 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/06/25 16:35
それは、鍛え抜かれた刃と積み上げられた鍛錬の舞踏

稲妻の如き速度で全てを切り裂いていく刀

しかし一つ一つの動きは蝶のように優雅に舞踊るが如きもの

完全に違うテンポなのにどこか調和を感じさせる動き

つま先から脳天、さらに無機物である筈の刃先までが調和しながら美しき死刃の舞踏を舞い踊る

精霊灯の揺らめきの中、その光景をミカエルは呆然と眺めていた













その日からの《金獅子》













《アークラインの煉獄塔》 第40階層  月齢:《下弦の月》⇒《暁月》

ミカエル=プロミネンスのPT加入手続き及び、PT再登録、《煉獄塔》の使用許可申請及びPTルーム登録手続きと手間ばかりかかる諸々の書類を片付けようやく《煉獄塔》へと鍛錬に来た《金獅子》一行の姿があった

チェインアーマーと革鎧を着込み、指が出るタイプの金属製ガントレットとリベットブーツという出で立ちのカイトを先頭に、鉢金と壮麗な装飾が施された胸当て以外は普段と淡い青色の胴着袴姿のスズカが続き、色違いの装飾がされたローブを羽織ったアリス・アリサ姉妹、革製の装備に身を包んだミカエルが塔の中を歩いていた

先頭をいくカイトと最後尾のミカエルは緊張した面持ちで周囲を警戒しているが、中盤の女子三名はどこか気の抜けたような表情でカイトの背中を追いかけるように歩いていく

というのも、月齢が月齢の為モンスターは殆ど徘徊せず、出会ってもすぐに逃げていくという始末。例え戦闘になったとしても61階層まで到達している《金獅子》が居る限り、40階層の敵の殲滅ぐらい容易いものであった為、罠と奇襲を警戒する役目のカイトと初めて40階層に挑んでいる為緊張しているミカエル以外は油断しきっていた

「おっ、ようやく手ごろな敵発見だ。……コボルトソルジャー・アーチャーが3体ずつとデミミノタウルス1体、見た感じミノタウルスがリーダーみたいだな」

「この距離から分かるんですか?」

「当たり前だろ、モンスターの体と武器の輪郭さえ分かれば大体の判断はつくからな。もっとも、これだけ距離があると伏兵やら増援やらが居るのかは分からないけどね」

十字路を右に行った先にある大部屋を覗き込んだカイトとその後ろから同じ様に覗き込んだミカエルが話し合う。今回の件で色々と思う所があるカイトではあったが、いささか短慮だが真面目な後輩に対してそれを表に出すような事はしなかった

まあ裏では色々と画策してはいるのだが……

「まずは…どうしよう?」

「こういう場合はいつもジークが突っ込んでいたよな……」

「いなくなった奴の事なんかどうでもいいでしょ! じゃあ私が魔法で攻撃するから近づいてきたモンスターから倒して」

顔を見合わせて判断に迷っているカイトとスズカに対して、アリスは次善の策を用意する。元々、モンスターの巣窟や多数の敵と戦闘しなければ進めない場合に多用していた〝釣り待ち〟の戦法を選択した

この戦法は一見有用に見えるのだが煉獄塔内に限っていうならば《時間がかかる》という一点で効果は低い戦法であった

まず第一に煉獄塔内で長時間の戦闘行為をおこなった場合、戦闘音・血液臭・魔力変動等に誘われて周囲のモンスターが引き寄せられてくる。特に月が満ちた頃に〝釣り待ち〟を行うのはただの自殺行為だと各教官・先輩より教えれていた

つまり、煉獄塔内での理想の戦闘とは"奇襲殲滅〟であり”一撃必殺〟であるのだった

第二に煉獄塔内の特性――そこにある指向性がない存在力を喰らっていく――にあった。つまり、千年帝国で最もポピュラーな遠距離攻撃手段である魔法は煉獄塔において一定以上の距離があると威力が激減してしまうのであった。勿論、制御が上手い者、神や精霊の恩恵を受けた者、魔力が大きい者等の例外はいるが、煉獄塔内においては弓やボウガンといった武器の方が一般的に有用な遠距離攻撃手段となっていた

翻ってその弓やボウガンがモンスターに有効かといえばそうではなかったりする。ただの弓矢は高階層の敵に対して威力が足りず、ボウガンは集団戦では全くの役立たずであった

第三にこの戦法はこちらが先に敵を発見している場合にしか使えないという点である。煉獄塔内では段差や物陰から奇襲、曲がり角での遭遇戦等はよくある話であって、そういった不測の事態対しての装備を用意する方が稀にしか行われない〝釣り待ち〟の装備を用意するより大事であった

以上3点が〝釣り待ち〟使われない理由なのだが、《金獅子》においては一人の規格外の修練生によってその常識は見事に覆されたのであった

規格外の名はアリス=ワールウィンド。神々の加護と並んで煉獄塔で優良とされる希少スキル《精霊の加護》、その中でも希少中の希少である《精霊の加護(全)》を持ち、宮廷魔導師にも匹敵する程の魔力をその小さな身体に宿す少女

彼女は希少スキルと膨大な魔力を使う事で遠距離攻撃と殲滅に必要とする威力を両立するに至ったのだった

「集え鋭き風の精よ! 我が命に従いて敵を切り裂け! エアカッター!!」

そう朗々と唱え魔法を発動させると、遥か先にうっすらと影が見えるモンスターの内、小柄な影が唐突に歪み、ずれていく。その常識では考えられない攻撃範囲と威力を初めて見るミカエルは口をあんぐりと開けてしまう

「……言っておくが、これはアリス=ワールウィンドだから出来る事だ。俺が知っている限りでは、アークラインの他の誰にも出来ない事だから、真似しようと思ったり、勘違いするのはやめてくれよ?」

「こういうのを規格外とか天才とかいうの。貴方も高い能力はあるんでしょうけど、ワールウィンド姉妹の得意分野で勝ちたいとか思わない方がいいわ」

「……何よ、カイトもスズカもちょっと酷くない?」

「え? 姉妹って事は私もですか?」

溜め息をつきながらしみじみと言うカイトとスズカにくってかかるアリスであったが、ミカエルから見た場合カイトとスズカの意見の方が圧倒的に正しいと思えたらしくしきりに頷いている。その横ではこの異常なまでに才能が集まったPT内においてもっとも異常で、神聖で、畏怖される才能を持つアリサが首を傾げる

そういうやり取りをしている間にも残りのモンスターがデミミノタウルスを先頭に一斉にこちらにかけて来ており、その距離は弓矢のとどく範囲になっていた

「って、敵が来てますよ!!」

「ん? ああ、来てるな。んじゃ、ミカエルのテスト開始だ。残りは……デミミノタウルス1、コボルトソルジャー2だけだ。厄介なコボルトアーチャーはアリスが倒したみたいだし、これぐらいなら軽いだろ?」

「……え?」

「私たちは手を出さないから上手く斬り抜けてね?」

「一応私の《祝福》で身体能力を強化しましたので頑張って下さいね。あ、もし怪我をしても大丈夫ですよ、即死さえしていなければ私が何とかしますから」

「ほら、実力を見せ付ける良い機会よ! 大丈夫、私が見込んだんだからミカエルならやれるわ!!」

どうやら彼等の中では目の前に迫ってきているデミミノタウルス達は試験に使えるぐらいの強さしか認めていないらしい。ミカエルにとって彼の年代では未だ到達できていないこの階層の敵を簡単に片付けろというその常識が信じられなかった。というか、頭のネジが飛んでるんじゃないかと本気で思った。

怒り狂ったデミミノタウルスが正面から突っ込み、それから少し遅れてコボルトソルジャーがサイドから挟み撃ちを狙って襲い掛かってくる。

まずは正面から圧倒的質量で押しつぶさんと迫ってくるデミミノタウルスの唐竹割を大きく左に踏み込むことで回避し、さらにその踏み込みでコボルトソルジャーを己の攻撃範囲に入れる

「戦闘では弱いものから死んでいくんだよ!」

そう言ってさらに加速しソルジャーの喉へと火属性片手剣《紅ノ漆》を突き入れる。うっすらと赤い靄をまとうその刀身が人型生物共通弱点へと飲み込まれ、反対側へと突き抜けてその生命を塔へと捧げる。

一体を奇襲で倒したミカエルの耳が後ろから風きり音を捕らえる。その瞬間彼は何の躊躇いも無く前方へと飛び込むように前転を行う。その彼の背中の上をデミミノタウルスの豪快な裏拳が通り過ぎていく
「…危ない!」

「危険察知は能力はまあ合格点って所だね。戦闘能力はどうみる?」

「私の私見でいいかしら?」

「というかシズカが一番見る目あると思うけどね」

「そう言ってもらえると嬉しいわアリサ。まあ、まだ希少スキルはまだ使ってないみたいだけど見た感じ力・技巧より速度に特化している感じね。身のこなしも基本が出来てるし、戦闘者としての勘も悪くないみたいね。後は…デミミノタウルスをどうするかって所かな?」

《金獅子》メンバーが和気藹々とミカエルの評価?をしている内にミカエルは再度デミミノタウルスをかわし、コボルトソルジャーを倒していた。そしてデミミノタウルスがミカエルと睨み合い、その後ろから《金獅子》のメンバーが挟みながら見ているような状況になった。

「……僕の切り札をお見せします! 全てを燃やし尽くす猛き炎神ヴァランよ、汝が加護を受けし児が請う! 全てを焼き尽くす焔の権能を我に貸し与え給え!! 炎剣発動!!」

「へぇあれが…」

「そう、あれが最も有名な希少スキルの一つ、炎神の加護。複数与えられる能力の一つ《炎剣》よ!」

「…? あれ? ミノタウルス系っていうと火炎系に耐性もってなかったっけ?」

「それはちょっとまずくない?」

「ほら、圧倒的じゃない! 何をいらない心配をしているの!?」

圧倒的な熱量を宿すその刀身をデミミノタウルスへと突きつけるミカエルを見ながらふと思い出したようにカイトが呟く。一瞬PT全員の視線がカイトに集まり一気にミカエルへと振り向く

そこには速度差を上手くつかい幾度も幾度もデミミノタウルスを斬り付ける。その圧倒的な手数をみて安心したような声を上げるアリスを横目にシズカが抜刀体勢をとる

「急所を上手く守ってやがるのか? いや、一撃が軽いのか!」

「…いや使っている剣が悪いんじゃない? まあはっきり言えば鋭さも打撃力も焼切るだけの火力もないから急所をまもられるとまずいわね。もう大体判断は出来たし私が刈るわ、反対は?」

「「ないね(わ)」」

アリス以外の二人が当たり前のようにシズカの質問に答え、その言葉が放たれた瞬間シズカの姿が掻き消え、デミミノタウルスの背後から一撃を入れる。…いや、その一撃は2連の斬撃であり、速度と武器の反りにより生み出された加速、その剃刀のような切れ味を最大限に引き出す技巧が合わさったそれはたやすくデミミノタウルスの両腕を肩の付け根で切り飛ばしデミミノタウルスが痛みを感じる前に放たれた三撃目がその首を跳ね飛ばした。

「試験はおわり、明後日の定例会議で総括するわ。今日は疲れてるでしょう? 早く帰って体を休めましょう」

そう氷のような美貌の東方の少女は常と変わらない態度で締めり、ミカエルは自分が致命傷を与えられなかった魔物を軽々と切り裂いた圧倒的な力量とその美しい立ち姿をぼんやりと眺め小さく頷いただった。









既に半分伝説とかした彼は現代の《英雄》であった。騎士爵の授爵を断りただ己の信念に従い冒険者として戦い続けるその姿を人は《自由騎士》とよび周囲の敬意を集めていた。

そんな《英雄》が何の脈絡も無くPTルームに現れた瞬間全ての音が消え、ミカエル以外の顔色が一気に青白くなる。

「フフッ、そんなに緊張しなくてもいいぞ? ただOBが後輩が頑張っているかを確認しにきただけだしな」

「ユリアン先輩、お久しぶりです」

「…今日はどのような御用事でしょうか?」

「俺の大事な後輩が頑張っているか確認しようと思ってね…」

アリスの顔が蒼白となっている横からカイトとスズカが恐る恐る確認をとる。

「まあ、その大事な後輩の確認はもう終わったから今からは後は不肖の後輩に一言言っておこうかと思ったんでね」

「………あ」

「俺に対して何も連絡無く俺が《指名》した男をPTから追放とはやってくれるよね? ここまで虚仮にされたのは初めてだよ」

口元を歪めながら冷たい瞳で彼らを見下しながら一言はなつ。

「ははっ、まあアイツはアイツで納得しているみたいだが、それじゃあ俺の気がすまないんでね。少しお前達に悪戯を仕掛けさせてもらったよ」

「…何を?」

「何俺の知り合いに今期の《金獅子》については特別扱いしてなくていいと言ってきただけさ」

「……《生徒会》? 《商工会》? まさか《教官室》って事はないですよね?」

「全部だね」

「…全部?」

「うん全部だ。それに《風紀委員会》と含め幾つかの組織に言っておいたから、直接的な危害はそうそうないと思うが今までのような待遇が続くとは思わない方がいいぞ?」

「今までってそんなに待遇よかったんですか?」

不思議そうにアリサが首を傾げる。カイトは蒼白を通り越し土気色の顔色となり、スズカは顔を顰める。

「つまり、今後の塔内での取得物売買、各種申請に時間がかかるってことですか!?」

「訓練施設の優先使用が出来ないってことですよね?」

「んー、それはどうだろうね? 俺はただ特別扱いをやめるように言っただけだから俺よりお前達との人脈の方が大事だと思ったんならお前達の方が優先されるだろうさ」

当たり前のようにそう言い捨てるユリアン。その言葉に絶望を感じるカイト&スズカ、自分達の名前も十分売れてはいるが目の前の最も新しい《英雄》に比べれば月とすっぽんというに相応しい差があり、当然その影響力にも差があったりする

まあ、たとえ卒業した後でもこのアークラインの大半はユリアンに弱みを握られている為、正直どれだけ《金獅子》を助ける人がいるかは不明だったりする。

正直、ユリアンからの報復があるとは予測していたが直接的な物ではなくこうも遠回しに手を回してくるのは予想外だった。

「俺からはただこれを伝えたかっただけだ。まあ、《金獅子》の名を汚さぬよう頑張ってくれよ」

そう言ってその身を翻し、出口へと歩いていく。そうして、最初から最後までアリスを完全に空気として扱ったままユリアンはその場を去り、部屋の中には重苦しい雰囲気のみが残っていった。











やっつけ9話orz



前を表示する / 次を表示する
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

SS-BBS SCRIPT for CONTRIBUTION --- Scratched by MAI
0.022686958312988