どうも、こんにちは。徐晃です。
本日は久々に屋台を出しています。
何でって?
「塩焼そばお待ち!」
焼そば屋さんです。
いやー、コレも売れますね。
麺はラーメンか餡かけという固定概念をぶち壊したアイディアの勝利ですね。
餡かけ焼そばはあるんですよ。あの貝やらが入っている奴。
でもですよ?あれって、焼そばじゃ無くね?
て、ことで始めました。
ちなみに李典さん作。屋台君改、だそうです。
「お待たせしました。どうぞ」
焼き鳥の時ほどの売上には及びませんけど、一人で食っていく分には十二分の収入ですよ、これは。
お店の方はどうなったって?
やってますよ?今も。
一人バイトを雇いました。典韋ちゃんって言う女の子です。真名は流琉って言います。
季衣の友達らしいです。でも今は盗賊の討伐に出て行ってるんですよ。その直後に、この街に来たみたいなんです。入れ違いですね。
確か、楽進さんと季衣の二人だった気がしますね。
で、探している途中で俺と流琉が会って、あーだこーだありまして・・・雇いました。
多分、季衣と一緒に働くでしょうから、帰ってくるまでの繋ぎですけどね。
でも勿体無いな。目茶苦茶腕が立つんですよ。あ、料理のですよ?
買い付けから営業まで何でもやりますよ、あの子。
残って欲しいのは山々ですけどね。季衣の友達ですから仕方ないですよね。
行くと言うでしょうから、笑顔で見送ってあげましょう。年長者の余裕を見せないとね。
にしても、季衣の手紙の中身が凄かったです。
連絡先とか一切無くて、一緒に働きたいな、楽しみにしてる。だってさ。
流石、華琳さんの所の阿呆っ子ツートップです。
もう片割れは元譲さんです。うん、間違いない。
「徐晃。貴方ここで何をしているのかしら?」
「華琳さん、いらっしゃいませ。どうぞ」
「どうぞ。じゃないわよ。全く」
でも、座るんですね。
「何やっているのかしら?」
「商売ですよ?すぐ焼きますからね。待っていて下さい」
「構わないわよ・・・じゃなくて!」
「食べないんですか?美味しいですよ?」
「食べるわよ!」
うるさい人ですねー。癇癪持ちでしょうか?
「何を作っているのかしら?」
「焼そばですよ」
「やきそば?・・・聞かない名ね。麺類なのはわかるけど」
「ちょっと跳ねますから、下がってて下さいね」
炒めた具材に麺を合わせ、酒を振り掛けます。
うん、良い音。
で、蓋をしてと・・・
「炒め物?いえ蒸し料理になるのかしら?」
「すぐに上がりますよ」
しばらく待って・・・
蓋を外して、特性の塩ダレを混ぜ合わせる。
うん、香りが堪らん。
仕上げに韮と刻みネギを炒め合わせて・・・ネギ油を少々かければ・・・
「お待たせしました。焼そばです」
コテで華琳さんの前まで移動させます。
うん、コテ便利。
「ふーん・・・香りは良いわね」
ふーふーしてます。うん、可愛い。
で、一口。
「あら、結構いけるわね」
「ありがとう御座います」
だから美味いって言えよ。
「でも、貴方の料理は大概見た目がアレなのよね。何とかならないのかしら?」
「見た目ですか。あんまり考えてないもので。検討はして見ますよ?」
「食事を取る上で、大事な要素の一つよ。勉強なさい」
はふはふ食べてくれてます。
うん、可愛い。
「餡かけはあるけど、こう炒め合わせるのは見ないわね。ラーメンの汁が無い状態に近いのかしら?」
「そんなところです」
にしても、華琳さんは黙っていれば美少女ですねー。癒されます。
「ご馳走様、なかなか良かったわ」
「はい、またお願いします」
と屋台を出て行きます。
が、
「って、違うわよ!」
「忘れ物ですか?」
「そうじゃなくて!」
「ああ、御代ですか。ツケでいいですよ?」
「払うわよ!」
懐をごそごそしてますね。
財布を捜しているのでしょうか。
取り出した小銭を叩き付けられました。
カルシウム不足ですかね。小魚食べた方がいいと思いますよ?
「はい、確かに。で、何か御用ですか?」
「あ・な・た・ねぇ・・・」
おお、背後に羅刹像が見える!
コレがスタンド!
「用がなければ探さないわよ!」
「ぐぇ」
皿を思いっきり投げつけられました。
いてぇ。
「で、なんの用ですか?わざわざ本人が出向くなんて」
城の一室に連行されていきました。
街の人の目が、白かった気がします。
何もしてないのにな、俺。
「これは何かしら?」
一枚の紙を机に叩きつけます。
ああ、これですか。
「これですか?兵隊さんの借り出し許可ですけど?軍部の許可も取りましたし。問題はないと思ったんですけど?」
「大有りよ!」
カリカリし過ぎだと思うのですが。
可愛い顔が台無しじゃないですか。
あ、でも怒った顔も可愛らしいかも。
「あなたね。一介の店主が持つ農地の大きさじゃないでしょう!千町って、何考えてるの!しかも村ごと買収って、あなた正気?」
「えー。だって広いほうが色々作れるじゃないですか?飼育も出来ますし。人を雇うのが面倒なので村と畑全部買い付けました。お金はありますよ?」
「あなたね・・・こんな広大な土地、一介の庶人が持っては、それこそ官吏の目に留まるじゃない」
「華琳さんの所でしょ。あの場所?ならいいんじゃないですか?」
「・・・はぁ、呆れた」
ため息を吐いて、椅子に座りなおしました。
変な事でしょうかね?
「あのね。こんな広大な土地を一個人が持っていてはいけないのよ。それこそ私でも持っていないわ」
「はぁ」
「土地というのはね、国が管理していかなくてはいけないの。この大きさになるとね」
「で?」
「この大きさを持てば、下手を打ったら朝廷関係にも目を付けられるわよ、あなた」
「漢なんてそのうち滅ぶでしょ?いいんじゃないですか?」
「不穏当な発言は控えなさい。一応私は漢の臣よ」
あんたも大概でしょうに。
二度目のため息。幸せが逃げますよ?
「管理はどうする気かしら?」
「だから兵隊さんを借りようかと。村の人だけでは足りないので」
「戦がある場合は?」
「全部の兵隊さんを持っていく訳じゃないでしょう。新人の基礎訓練中の人とか残るでしょ」
「訓練があるじゃない」
「基礎訓練は畑仕事で十分。農具に重石でも付けとけば十分でしょう。それか、重しを着込ませて生活させれば問題はないですし」
「誰がそれらを決めるのかしら?」
「華琳さん」
「そう」
目を閉じて話を聞いてます。何かを考えているのでしょうか?
「・・・だったら」
「だったら?」
「私を通しなさい!」
「ぐぇ」
傍の置物を投げつけられました。
石は止めて、痛いから。
「まあ、いいわ。あなた資金はどうしたの。流石にこんな額は稼いでないでしょう?」
「ありますよ。この前貰った褒美の美術品とかを売ったら、どえらい金になりましたし。邪魔だったし」
「売った!?邪魔!?」
「はい。いけませんか?」
「あんたねぇ・・・まさか!あの青紅の剣も売ったの!?」
「ああ、あれですか?使ってますよ。良い切れ味ですし」
貰った褒美で、要らない物は全部売りましたよ。ほとんど全部ですけど。恐ろしい額になりました。
で、金の管理が面倒なので使おうかと考えて、この計画です。
うん。すばらしい計画。
「切れ味?まさか貴方!」
「ええ、包丁代わりに使ってますよ」
これが良く切れる切れる。使う人間を選ぶ包丁です。
流琉では使い切れません。
「まさか、こんな事になるなんて・・・予想外だわ・・・宝の持ち腐れだわ」
「飾られる宝剣なんて意味ないじゃないですか」
「・・・そうね、あなたの言う通りだわ」
頭を抱えて嘆いています。
流石に不味かったかな?
華琳さんは、一旦座りなおして咳払いを一つ。
「まあいいわ。良くは無いけど・・・今回の件は私が依頼した事にしてあげるわ。目を瞑ってあげる。感謝しなさい」
「???」
「あなた、役人に追い回されたいの?」
華琳さん達に追い回される俺。
うん、嫌過ぎる。
「ありがとう御座います」
「結構」
で、こちらを見る華琳さん。
嗚呼、その目は止めて。何か企んでるでしょ。
嫌な予感しかしない。
「ひとつ頼み事があるのだけれど?」
「ナンデスカ?」
「料理の腕を振るって欲しいのよ」
何だ、それならOKっすよ!
珍しい。そんな簡単な事なら協力しちゃいますよ。
「良いですよ。」
「いいのね?」
「二言はありません」
「結構。追って連絡するわ。今日は帰りなさい。あとで典韋を城に寄越しなさいな。今日にも季衣達が帰ってくるわ。今日は季衣への褒美も兼ねて、私が料理を作るのだから。典韋も一緒に食べさせましょう。あの子もきっと喜んでくれるでしょう」
ん?
「華琳さん、料理出来たんですね」
「何よ?」
いや、そりゃねぇ・・・
まあ、言いませんけど。
「いえ、何も無いですよ。ではこれで失礼します。また連絡下さい」
「あと、春蘭にも黙っておいてあげるわ。大方、楽に話を通せるとでも思ったのでしょうけど?」
「・・・ソンナコト、ナイデスヨ?」
「敵を攻める時には、一番弱いところから攻める。嫌いじゃないわ」
ばれてるー。
流石の曹孟徳です。
「では失礼します」
そう言って部屋を出ました。
うーん、で畑の件はどうなるのかな?良く分かりませんでした。
やってくれるのか?くれないのか?
そもそもなんで駄目なんだ?
まあ、華琳さんの事ですから、うまくやってくれるでしょう。
さてさて。今日の事、琉琉に伝えないといけないな。
喜ぶだろうな~。
いやはや足取りも軽いです。
「ただいま。帰ったよー」
「あ、兄様。お帰りなさい」
裏から入ると、焼き場に立っている流琉が見えました。
うん、その服だとお尻のラインが綺麗に浮かんでいます。
「眼福眼福。でだ、今日帰ってくるらしいぞ?季衣が。だから後で城に来いってさ。華琳さんが言ってた。ご飯を一緒に食べようって」
「帰ってくるんですか・・・そっか」
うん。良い笑顔です。
やっぱり、女の子は笑ってないといけません。
「あとは俺がやっておくから、行って来ていいぞ。あがりだ」
「分かりました。じゃあ、先にあがります」
前掛けを外して、パタパタと二階へ上がって行きました。
「じゃあ、兄様。行ってきます」
「おう。いってらっしゃい」
良い笑顔だ。俺も負けてられないな。
さてさて、焼き鳥じゃんじゃん焼きますよ。
「ふむふむ。今日も今日とていい稼ぎです。ありがとう御座います」
営業後、掃除をして一人。キムチをつまみ一杯やりながら帳簿付けです。
そんな事してたかって?してませんよ。だってメンドイじゃないですか。
やらないと、流琉がうるさいんですよ。ほんと。
流琉曰く、
「兄様?お店の経営の基本は帳簿付けです。腕も大事ですけど、こっちも大事なんですよ。どこのお店でもやってましたよ?」
だってさ。
面倒臭い事、この上ないです。
やらなくても儲かってるのに。
他所は他所って言ったら、えらく説教されました。正座です。
やらないと怒られるし。渋々といった所です。
まあ、それも今日までですけどね・・・あれ?もうやらなくてもいいじゃん。
「おいおい、まじかよ。ったく。もう寝よう」
と思っていたら、流琉が帰ってきました。
「お帰り。流琉」
「ただいま帰りましたー」
いい笑顔ですね。良かった良かった。
お兄さんは嬉しいです。
「ん?城に住まないのか?ああ、荷物もあるか」
「???」
「は?一緒に働くんだろう、季衣と?」
「働きませんよ?お断りしました」
「はぁ?」
何故に?
「華琳様からも仕官のお話は頂きましたが、戦場に出るのはやっぱり・・・ちょっと。それに、ここのお仕事もとっても楽しいし勉強になりますから。それに季衣にも会えるし」
「おいおい、友達だろうが」
「一緒にお城で働かなくても、友達ですよ」
「いや、何時も一緒の方がいいだろ?」
「そんな事言ったら、きりが無いですよ」
「そりゃ・・・ん?ちょっと待て・・・流琉、お前・・・華琳って言った?」
「はい。真名を交換させていただきましたよ?それが何か?」
「ええええええ!!!」
働かないよりも、こっちにビックリ。
あのくるくるは何を考えているのやら。
まさか!
「流琉!まさかあのくるくるに捧げたのか!散らされたのか!」
「???・・・・・・に、兄様!!!」
一拍の後、真っ赤になって非難の声を上げる流琉。
違うのか?でも、なんで?
「えーとですね。華琳様のお料理は美味しかったんですけど。季衣も美味しいって言ってましたし。でも、季衣が好きな味付けじゃ無かったんです」
「流琉?まさか・・・」
「はい、言いましたよ。だって季衣へのご褒美って聞きましたから」
なんとチャレンジャーな。
怖いもの知らずにも程があるぞ。おい。
「で、なら一緒に作りましょうって・・・それで一緒にお料理しました。そこで真名を」
「一緒に料理!!!・・・流琉。恐ろしい子・・・」
想像出来ん。一緒に台所に立っている絵が。全く浮かばん。
しかも、否定されて尚、真名の交換って・・・
明日は槍でも降るか?これは?
「褒めていただけましたよ?私より上手だって。私より季衣の事を良く分かっているって」
いやはや・・・世の中は分からん。マジで。
「そんな感じです。遊びに来ても良いって、言っていただけました」
「・・・そっか、流琉が決めたのなら好きにすればいいよ」
「・・・兄様?私を追い出したいんですか?」
「いや、決してそういう訳では無いぞ?」
うわ、ジト目。これは小言が来るぞ。
「それに、兄様一人ではここの経営、丼勘定ですし」
ギクッ!
「普段着る服の洗濯はしませんし」
ギクギクッ!!
「若くて胸の大きな女の人には、たくさんおまけするし」
ギクギクギクッ!!!
「一番許せないのは朝ごはんをしっかり食べない所です」
「えー、食べてるじゃん」
「玉子掛けご飯?でしたっけ?あんなのは料理屋が食べる物じゃありません!行儀が悪いです。下品だし。私が作りますって言っているのに」
あー、馬鹿にしたな。この野郎。
庶民の味方だろ?玉子掛けご飯は。
「流琉。言いたい事は分かった。でもな・・・男には譲れないものもあるんだぜ」
「格好良く言っているつもりですか?口の端にキムチの汁がついてますよ?」
なんですとー!
「フフ・・・ですから私が面倒を見てあげます。二十日ほどの付き合いでしたが、兄様のだらしなさは良く理解しているつもりです」
「はい、ありがとうございます。助かります」
腕は立つし、気は利くし、華もある。
助かるのは助かりますからね。でもいいのかな~、君は武将になる人でしょ?
あ、俺も徐晃でした。忘れてた。
「営業中はしっかりしていて格好良いんですから、普段もしっかりして下さいね」
「はーい。じゃあ、明日からも宜しくって事で。今日はもう寝るわ」
「兄様?その前に今日の帳簿付けて下さいね?」
こいつは手厳しい。良く見ていらっしゃる。
「はいはい」
「あー!兄様。また勝手に店のお酒飲んで!駄目って言ったじゃないですか!」
「えー、いいだろ?俺の店だし」
「駄目ですよ。放っておくと、いくらでも飲むでしょう。この前なんかは二日酔いで休んだじゃないですか!」
「えー」
「前にも言いましたよね?私があれほど口を酸っぱくして言っているのに。いいですか、お酒というのは――――
そんなこんなで、しこたま説教されました。
うん。流琉はいい子。本当にいい子だ。
まあ、心強い味方が加わった訳ですし。こうやって怒られるのも良いですよね。きっと。
家族が居ない分、なんかこう・・・うん、やっぱり良いですね。
あとがきです。
ついにやってしまった。
流琉のキャラが若干変な事に。
こう一人称では、相手の心情が書ききれません。
区切りが付いたら、各キャラSIDEをあげて行きたいと思います。
それで話が、自然な形に収まるよう努力します。
では、また次回にお会いしましょう。
お付き合いありがとう御座いました。