えー、先日大金持ちになりました徐晃です。
一生遊んで暮らせます。
でもそんなのはつまらないので却下です。
とりあえずは、動かないと始まらないので北へ向かっています。一人旅では無く、詠が同行してくれています。
月と流琉は寂しそうでしたが、お留守番です。店を休みにするのも違うと思う訳なんですよね。
二人に悪いのでお土産でも買って帰りましょう。
ペナントとか木刀とか・・・無いなそれは。お菓子でも・・・それも駄目だ。可愛い小物とかにしましょう。
で、今は・・・
「詠、手離すなよ!」
「それは馬鹿兄の方でしょ!」
船に揺られています。黄河を船で移動中です。
ちなみに泳げません。ええ、カナヅチと言う奴です。
ただ、この体で泳いだ事は無いので泳げるかも知れませんが、怖いので嫌です。
「ちょっと!は、恥ずかしいじゃない!いい加減離してよ!」
「いや、俺の恐怖の緩和が優先だ」
「知らないわよ!」
だって怖いんだもん。
こら、暴れるな!俺はまだ死にたくない!
「詠~。何でもするから手を離さないでくれよ~。頼むよ~」
「・・・し、知らない!」
と、言いながらも、手は振りほどかないでくれる詠。
あー、人の情けが身に染みます。
なんだかんだ言ってもこの子は優しいですね。
お兄ちゃんは嬉しいです。
その後も、揺れる船に慄きながらも何とか無事に到着。
一回大きく揺れ、詠に抱きついてしまいましたが、殴られるだけで済みました。
良かった良かった。
向かうのは、この船着場から北、南皮です。
でも城下は後回しです。
まずは村の皆を移住させる所を探さないといけません。
出来れば、既に漁を盛んに行なっている村。で平野が多い土地。
全部買います。資本主義万歳です。
ただ、無理に買い付けしても、元々住んでいる人達に迷惑になりますからね。
ちゃんと説明してからです。仕事を変えてもらったりしないといけませんから。
ちゃんと華琳さんに全部報告するって約束もしたので、物をぶつけられる心配もありません。
でも、前回と違い詠が居る訳ですから、問題ないでしょう。
「ねえ?」
「ん?」
「この馬、汗血馬でしょ?こんな良い馬どうしたの?」
「ああ、華琳さんから買った」
そう、二人が乗っている二頭は汗血馬と言って、かなり高価な代物です。
軍用らしいけど、買取りました。
以前に華琳さんと少し賭けをしましてね。それに勝ったので売って貰いました。
かなり値は張りましたが、普通の馬よりも馬力があって、馬車にも最適ですね。
華琳さんに言ったら殴られましたけど、いいじゃん別に。ねえ?
「本当に無駄遣いが多いわよ?ボク達がお金を管理してなかったら路頭に迷ってるんじゃない?」
「最悪、屋台でその日暮らしをしてるさ」
「はぁ・・・才能の無駄遣いって知ってる?」
流琉達がしっかりしてくれていますからね。俺はそんな事に頭を悩ませる必要は無いかな~、とか思っています。
正直面倒なんですよね。黒字ならそれでいいじゃん、って思いませんか?
赤字になる前に手を付ければいいかな~、なんて。
別に、大金持ちに成りたい!とかもないですしね~。
こんな腑抜けの兄ちゃんだと、そのうち愛想つかされそうですね。
「実家に帰るわ」
「ま、待ってくれ!お前が居ないと俺はどうやって朝起きればいいんだ!」
「ふん!ボクが知る訳ないでしょ!」
困るな。これは。
今回の支店計画も別に儲けようとか思ってないし。まあ、儲かる方が良いってのはありますけどね。色々出来る幅が広がるし。
でも、今回は洛陽で好きな事をする為の一歩ですから。
やっぱり駄目駄目なのでしょうか?
もっとこう、ギラついた獣のような生き方をした方がいいのかな?
「に、兄様!止めて下さい!」
「羊は狼に食べられるものなのだー!」
「あーれー」
みたいな?何か違うな。
つか、妹に欲情する阿呆はいるのか?
いや、決して魅力が無いわけではないですよ。むしろ魅力的な妹達だと自慢したいくらいです。ええ、魅力的です。大事なので二回言いました。
そのうち彼氏の一人でも連れてくるでしょう。なんせ皆可愛いから。
連れてくる男が余程の変態でなければ、笑って嫁に出してやりたいですからね。
「お兄様、今までありがとう御座いました」
「・・・月」
「お兄様・・・私、あの人と一緒に頑張ります」
「ああ。あいつなら大丈夫だろう。笑顔を忘れずにな」
「はい!お兄様!」
うん。やっぱり、これが・・・これが・・・いちばん・・・
「・・・ゆえーーーーーーーー!!!」
「ちょ、ちょっとどうしたのよ!急に泣き出したりして!」
「・・・いや、感極まって」
いかんいかん。俺は何をしているんだ?
いや、でも今脳内で映像化された、『月ウエディングドレスバージョン』は良かった。
落ち着け・・・落ち着け・・・落ち着け・・・
よし、月は俺の嫁!
ん?何か違うな?
ま、いっか。
その後、白い目で見てくる詠を軽く交わしながら、目的を果たすため北上を続けました。
到着後は結局、詠が全て仕切ってくれました。
俺はなんかおまけみたいでしたね。金魚の糞です。
漁を主な収入源をしている村で話をつけ、そのまま開墾出来そうな場所を視察。
「良い環境ね。土も悪くない。問題は潮風だっけ?」
「やってみないと分からないけどね。でもそこまで近い訳じゃないから大丈夫だと思うけど?」
「なら、問題は無いわ。ここで決まりね」
もうね。決断が早いとしか言い様が無いです。
村の人との交渉も、利がある事を判り易く説明している所なんかは格好良かったです。
予定より早く終わってしまいましたので、釣りでもしようと海まで着ました。
中国大陸は何が釣れるんですかね?日本海側と繋がってるから・・・ま、いっか。
何でも釣りたては美味しいですからね。
村で釣り竿を作り、餌っぽい虫を付けて垂らすだけ。別に暇潰しなので釣れなくても問題無しです。
それをかれこれ二刻程。うん暇人です。
ちなみに雑魚ばっかり。
大物は釣れないのでしょうかね?
うーん、雑魚しか釣れない。
飯に刺身でもと思ったのですがね。無理か。
「まだ釣りしてたの?何?小さいのばっかりじゃない」
「んー。で、どうした?用事か?」
「村の人がご飯一緒にどうって」
歓迎会的なものでも開いてくれるのかな?
大物も釣れなかったし、ゴチになりましょう。
ついでにこの雑魚、揚げ物にでもして一杯やる事にしますかね。
さて帰ってまいりました。愛しの洛陽。
半月程でしたね。
南皮は本当に人が多かったですね。都と変わらなかったです。
基本的に作りは同じにするので、土地だけ探しました。
でも直に目処は立ちましたよ。
袁紹さんの配下だった人の私有地です。
ここを安く買い叩きました。
値段交渉は詠がやったんですけどね。
もうね、本当に金魚の糞ですよ。
何もしてないし。
帰りの船も手を握って貰ってたし。
情けないお兄ちゃんですいませんって感じですよ。
ちなみに、働いてくれる人も探しました。
田豊さんと高覧さんと沮授さんの三人です。
元々は皆さん袁紹さんの所に居たらしいのですが、袁紹さんがあんまり使ってくれなかったそうな。で、途中で見限ったんだそうです。
田豊さんと南皮の酒家で知り合って、意気投合。後のお二人は紹介です。
皆さん良い人ですよ。頭も良いし。何で袁紹さんはこの人達の言う事聞かなかったんですかね。
ちゃんと部下の意見に耳を傾けるのも上司の仕事だと思います。
それは置いといて。
暫くは洛陽と陳留の二店舗で研修という名の修行です。
最初は陳留で肉の扱い方と接客を学んでもらいます。
陳留のお店を任せているお二人もかなり上手ですからね。
あの人達も指導する事で、見えてくる物もあるでしょう。
で、それが終われば洛陽で冷蔵庫とか揚げ物に欠かせないパン粉の作り方とか、その他諸々やっていく予定です。
南皮の箱が出来るまでの三ヶ月間で一気に進めますよ。
やる気は十二分なので、直に仕事は覚えて貰えると思います。
で、俺はと言いますと、事の詳細を華琳さんに報告する為にお城へゴーです。
怒られる心配は無いので、足取りも軽いです。
で、到着し部屋で待つ事暫し、
「では報告を聞きましょうか」
待たせて御免とか無いんですかね?
まあ、いいけど。
で、詳しく説明していきました。
来る前に詠からカンペを貰ってきたのでスムーズです。
でも、途中で面倒になりましたので、華琳さんに読んでもらう事にしました。
「詳細は分かったわ。基本的にはこちらと同じね。駐在する技師の指示が最優先で」
「大丈夫です。細かい事はおいおい覚えて貰う予定です」
「結構。採用した人間は信用出来るのでしょうね?一応機密事項なのよ?」
「大丈夫ですよ。あんなもの見て作れる人はそうそう居ませんよ」
「だと思うけどね。他国への情報流出だけはしっかりなさい」
「はい、分かってます」
そうなんですよね。口うるさく言われてますし。
冷蔵庫が機密事項とか未だに笑える。
俺の中ではあるのが当然になっちゃてますしね。
「あ、南皮が落ち着いたら、徐州も考えてるんですけど?」
「・・・急ぎすぎじゃないの?」
「いや、お金早く使わないと。管理するの怖いし」
そうなんですよね。国庫に預ける形を取っていますが、管理はこちらになってます。
国が銀行みたいな感じですね。金利0の。
「私達が預かっているのだから大丈夫でしょう?」
「それはそうですが・・・あ、徐州ってまだ通行許可出てない所あるんですか?」
先日の地雷の一件以来、撤去確認箇所以外の通行が制限されています。
まあ、仕方ないですね。
「終わっていると言えば終わっているのよね」
ん?らしくないな。歯切れが悪い。
「何かあったんですか?」
「そうね・・・話しても良いでしょう」
何でしょうか?
「徐州の本城にね。地図があったのよ」
もしかして・・・
「罠が埋めてある場所のね。信憑性は・・・疑わしいものだけど。もし、地図の罠の数が正しいとするなら、撤去は済んでいる、というか全部掛かってから本城に着いたわ」
「地図ねぇ・・・」
ワザとなら・・・本物でしょう。
「俺は信じても良いと思いますよ?」
「何故かしら?」
眉がピクンと反応する。
「うーんとですね。多分華琳さんも気付いてはいると思いますけど、あの罠の危険性ですね」
「続けなさい」
「分かってると思いますが、一般の人にも被害が出ますから」
「そうね。それには気付いていたわ。だから早急に通行を制限した」
「ですよね。で、残しておいても劉備さん達に良い事一個も無いでしょ?民間人が罠を踏んだら悪者になっちゃいますからね」
「それは劉備が埋めたと民に喧伝していればね」
「しないんですか?一つの策でしょう?」
「桂花と稟はむしろ撤去しないで、劉備の風評を操作するべきと進言してきたけどね。まあ、それも一つの策。でもそれは弱者の取る策。私は覇王。民の安全を優先する。この大陸でもはやこの魏に対抗出来るのは限られている。今、私達は寄せ手なのよ。策を弄する必要は無いわ」
ふむ。正々堂々って事なのかな?
なんとも潔い。
「まあそれは置いておきましょう。次に劉備さん・・・いや、恐らくは知らないでしょうね。多分、北郷君かな?もしかしたら諸葛亮ちゃんかも知れないけど。これを使ったのは。えーっと、なんだっけな・・・雛とか言うのがいるかも?」
「何その名前は?」
「忘れましたけど・・・なんか雛っぽい名前だった気が・・・あ、違う鳳統だ。鳳雛?のどっちか。その人も凄いらしいですよ。諸葛亮ちゃん並とかそうでないとか」
「知らないわね。まあいいわ。でも、劉備には知らせずか・・・ありえるわね」
「『天の御遣い』ですから、一般人に影響があるのは嫌だと思うんですよね。良い事無いし。それだったら、華琳さんに撤去して貰うのが一番楽でしょ?」
俺ならそうする。
「だから地図は本物かなって思います」
「なるほど。制限は無用かもね」
「だと思いますよ?でも本当の所は分かりません、良いんですか?」
「本物の可能性もあったからね。もし万が一、私の可愛い民が犠牲になれば、それ相応の代償を払って貰うだけの事よ」
怖い顔してますね。本気でしょう。
「一つ・・・気になる事があるのよね」
「何ですか?」
「何故、私を狙わなかったのかしら?」
「これ不確定要素が強すぎですよ?誰が踏むか分からないし」
当たり前でしょう?
「そんな事は分かっているわよ。私が言いたいのは、ここまでのものが作れるのに関わらず、私を狙わなかったのかよ」
意味が分からん。
「誰が踏んでも作動するなら、逆もまた然り。私なら足止めに使って、逃げる。かつ、本城前に高い火力それこそ一帯を吹き飛ばすくらいの物を用意するわ。しかも、誰が踏んでも作動しないように」
「作動しないなら意味ないでしょ?」
「そう誰が踏んでも。でも、普通より重いものが乗れば動くように作る。牙門旗を持った人間が踏めば動くようにね。本城への入場に際しては、大将は牙門旗と共に入場するものよ。私ならそこを狙う」
えげつない。それは流石にえげつない。
勝って意気揚々の所をズドン!
それは酷い。
「この罠は真桜も褒めていたわ。これが作れるなら、それくらいに改良出来るでしょう」
「火薬が無かったんじゃないですか?」
「足止めを減らせば済む事よ。一回掛かればそれこそ慎重に成らざるを得ない。半分で十分ね」
そっか。何十万も居れば誰か掛かるか。数が少なくても、相手が多いのだから。
ふむ、覇王すげえな。
頭良い。
「こうした理由が無いのよね。まあ、私を殺せば、地の果てまで追うか、撤退するかのどちらかでしょうし。それを嫌ったのかも知れないけど。でも、我を忘れた兵なんてどうとでもなるわ」
怒り狂う元譲さん・・・嫌過ぎる。
絶対殺される。
「それを望んでないのでは?」
「そうなのよ。それしか理由が無いのよね。逃げるくらいなのだから。でも、力を付けるにはかなりの時間が要るわよ?私と同等まで力を得るにはね」
いや、違う。
多分だけど。
北郷君は未来を知っている。
だから、それは望まなかったのでは無い。
もっと効果的に、華琳さんを倒す気だ。
赤壁。狙いはそれか。
「理由は分かりますよ?」
「分かるの?」
「ええまあ。でもここからは俺の知ってる歴史の話しですから。聞きますか?」
この人、なりはこんなだけど。紛れも無く魏の覇王。曹孟徳。誇り高き王。
こういうのは嫌いなはず。
「いえ結構よ。それだけで分かった事もある」
「はい?何も言ってないですよ?」
「十分すぎるわ。聞きたい?」
うわ、その顔止めろ。ムカツク。
でも・・・
「教えて下さい」
負けました。
そのニヤァはムカツク!くっそー。
「良いわよ。北郷の頭の中では、今回の五十万と私の首を見逃しても問題は無かった。次の機会、しかも、もっと確実で危険性の無い機会があるって事。おそらくそこで勝負を仕掛けてくるわね」
マジで!なんで分かるの?
俺何も言ってないよ?
「貴方の話し振り、今回の北郷の策。で、貴方と北郷は未来を知っている。これだけあれば十分結果を導けるわ」
すげえ、覇王かっけぇ。
「ああ、答えなくていいわよ。面白くないし。あ、でもこれで勝ったら貴方のおかげになるわね。それは嫌ね。負けようかしら?」
なにそれ?
「何ですかそれは?」
「冗談よ。貴方のおかげで勝つ方がましよ。負けるよりね。フフフ・・・面白くなってきたわ。多分この策を仕掛けてきたのは諸葛亮でしょう。この展開を読みきってね」
その比べ方、酷くない?
「俺のおかげね・・・まあ、別に良いですけどね。何でも」
「あら?私が死ぬかも知れないというのに、あっさりね」
「そういう意味じゃあ・・・いえ、何でもないです。個人的には華琳さんに勝って欲しいですよ?でも、戦に直接絡むのは嫌ですね」
「安心なさい。負ける事が分かっていれば、勝つ事は容易よ。幸か不幸か・・・いえ、無粋ね」
何て言う気だったのかな?ま、いっか。
でも華琳さんが負けるなんて、考えた事なかったな。
でも、曹孟徳だもんな。やっぱり赤壁は・・・
「貴方は何も変わらないわね。まあ、いいわ。今日はもう戻っていいわよ。設備の件はこちらで動くから。完成すれば知らせましょう」
「ありがとう御座います。ああそうだ、荀彧さんに明後日店に来てくれって伝えて置いて下さい。良い物が手に入りましたので」
「桂花に?何かしら?私の分は無いの?」
貴方も欲しいのか?
うーん、ま、いっか。
「欲しければどうぞ来て下さい。物は秘密です」
「また秘密ね・・・まあいいわ。伝えておきましょう」
「では、失礼します」
そっか、赤壁か・・・華琳さん勝てるのかな?
関羽さんへの恩も無いと思うけどな~。
水上戦で勝てる訳ないと思うけど・・・
どうなんだろ?
華琳さんには勝って欲しい・・・でも、手は貸せない。
俺は、どうすれば良いんだ?
いや、深く考えるのは止そう。戦争に関わるのは駄目だ。
俺には資格が無い。
俺は料理人、それ以外の何者でも無い。
まずは、帰って例のブツを完成させよう。
でも・・・
「俺のおかげ・・・か」
「何を出してくれるのかしらね?」
「華琳様を小間使いみたいにして!本当に何考えてるのかしら!」
「まあ、いいじゃないですか。良い物出しますから。こちらです」
「徐晃?これは何かしら?」
「ところてんです」
「「ところてん?」」
色々見て回っている際に海辺で天草を発見。
前に猫耳が太らないものを寄越せって言っていたので、買って来ました。
水で戻して茹でるんですが、普通のところてんになるので、多少アレンジ。
普通に作って、ダイスカット。果物を同じ大きさに揃えて、砂糖水に全部ぶち込む。
お菓子よりもヘルシーで冷やしてあるのでグッド。
「徐晃?何故、桂花になの?」
「前に太らないお菓子を作れって言われてましたからね。折角だからと思いまして。買って来ました」
「へ~、桂花、太ったの?」
「い、いえ!決して、そのような・・・」
「貴方は細いのだから問題ないでしょ?でも・・・ぶくぶくに太ったら・・・分かっているわね?」
「も、勿論です!」
大変ですね~、女の子は。
でもこの子は太っているようには見えませんけどね?
隠れ肥満とか言う奴でしょうか?
「とにかく食べて下さいよ」
「そうね、頂きましょう」
「は、はい」
どうかな?まだ試作段階だからね。
「徐晃、これは果物と砂糖を甘みに使ったのね。でもこの半透明な物は味が無いのね」
「そうですね。その半透明な物がところてんです。それ単体ではどれだけ食ってもほとんど太りません。それだけだと味が無いので甘みを果物と砂糖水で補いました」
「そう。悪くないけど・・・何か違う気がするわね」
流石、良く気付く。
「そうですね。もともとは甘味に使うものでは無いので、今後も色々工夫していきますよ」
「なら次に期待しましょう」
「そうして下さい。まだ実験中ですから」
「それは楽しみね、桂花。・・・桂花?」
どうしたのでしょうか?
不味かったのかな?
味は果物だから、美味しいと思うけど?
「・・・どれくらい食べても平気なの?」
「うーん。果汁が入ってるって言っても、一杯にはそれほど入ってないし。砂糖水もがぶ飲みしなければ大丈夫だから・・・良く分からないけど、無茶食いさえしなければ大丈夫じゃないですか?」
「・・・そう」
そう言われれば、そうだよな。
どれだけ食ってもって訳には行かないし。
砂糖や蜂蜜たっぷりなデザートよりはマシでしょうけど。
でもところてんだから、お腹一杯食っても糞が良く出るから大丈夫かな?
「・・・桂花よ」
「はい?」
「真名を呼んでも良いって言ってるの!」
そんなカリカリしながら言われても・・・ねぇ?
「今日は貴重な物を見れたわね。まさか桂花が男に真名を・・・明日は馬でも振りそうね」
なんじゃそりゃ?
しかし、この子が・・・俺に?
冗談か何かでしょう?
でも、真名を持ち出すのは余程の事ですし。特にこの子の場合は。
「畏まりました。お預かりします」
「べ、別にこれが、美味しかった訳じゃないんだからね!」
ナイスツンデレ!
「じゃあ、何故真名を預けたのかしら?」
だから、事を荒立てるな!
平穏に終わろうとしないのは何故だ!
Sだからさ。
「い、いえ・・・そ、それは・・・」
「それは?何かしら?」
その顔は駄目だ。やっぱり碌な事が無い。
言葉に詰まっている桂花さんが逃げ出した。
おお、早い。
「徐晃!これで勝ったと思わない事ね!覚えておきなさい!」
と言い残して走り去りました。
遠くから、「これは戦術的撤退よー!」と聞こえます。
何と言うテンプレ。
「あの子は本当に素直じゃないわね。あれだと子が残せないじゃない」
貴方もでしょ?
「良いじゃないですか。可愛いからそのうち男の一人くらい出来ますよ」
「そうだと良いけどね・・・徐晃?」
「はい?」
「もう一皿出して頂戴」
貴方も気に入ったのね。
流琉達にはあげた後だし、ま、いっか。
「太りにくいだけで、果汁を使っていますからね。糖分はありますから。でもお腹の調子が良くなるから大丈夫かも知れませんね」
「そうなの?」
「ええ、便秘に効果があったと記憶しています。通りが良くなれば肌も綺麗になるとかならないとか」
どれくらい、とかは分からないけどね。
食物繊維だから調子は良くなるはず。
多分だけど。
「そう、健康にも良いのね。春蘭が飛びつきそうね」
「元譲さんですか?太ってないでしょ?糞も良く出そうだし」
うん。そんなイメージ。
快食、快眠、快便なイメージです。
「汚いわよ?今は風と二人で出かけているのよ。帰ってきたら教えてあげましょう。あの子も体重を気にしているみたいだったしね。とりあえず、次を出して頂戴」
「華琳さんは気に入った訳じゃないでしょ?・・・ああ、べん「黙りなさい!」
「げべら!」
皿をぶつけられました。
何か酷くないですか?
真っ赤になって可愛いですね。この人も。
にしても、痛てぇ。
修正後のあとがきです。
ご感想で、余りにも執着が無いとのご指摘頂き、ちょっと修正。
修正前のままだと、次回が超展開になりすぎるので、緩和剤の意味を込めての修正です。
いくらかは、見やすくなったかと思います。
でも戦いませんよ?
では、次回もよろしくお願いします