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No.8484の一覧
[0] 【習作】使い魔ドラゴン (現実→巣作りドラゴン×ゼロの使い魔)転生・TS・オリ主・クロス有[ブラストマイア](2010/11/15 03:08)
[1] プロローグ[ブラストマイア](2009/05/06 14:31)
[2] 第一話[ブラストマイア](2009/05/06 14:32)
[3] 第二話[ブラストマイア](2009/05/06 14:33)
[4] 第三話[ブラストマイア](2009/05/06 14:41)
[5] 第四話[ブラストマイア](2009/05/09 20:34)
[6] 第五話[ブラストマイア](2009/05/13 01:07)
[7] 第六話[ブラストマイア](2009/05/27 12:58)
[8] 第七話[ブラストマイア](2009/06/03 23:20)
[9] 第八話[ブラストマイア](2009/06/11 01:50)
[10] 第九話[ブラストマイア](2009/06/16 01:35)
[11] 第十話[ブラストマイア](2009/06/27 00:03)
[12] 第十一話[ブラストマイア](2009/08/02 19:15)
[13] 第十二話 外伝? メイドな日々[ブラストマイア](2009/11/12 19:46)
[14] 第十三話[ブラストマイア](2009/11/13 06:26)
[15] 第十四話[ブラストマイア](2010/01/16 23:51)
[16] 第十五話[ブラストマイア](2010/11/15 03:07)
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[8484] 第二話
Name: ブラストマイア◆e1a266bd ID:fa6fbbea 前を表示する / 次を表示する
Date: 2009/05/06 14:33
 ベルはこれから行う事に緊張感を感じながらも、飛行という烈風竜としての血が最大限生かされる時を楽しんでいた。
 全身を叩く風が体に付着していた僅かな汚れを剥ぎ取ってくれ、見も心も洗い流されて清くなる。何処までも続く青空を舞台にダンスを舞うのは最高の気分転換。地表近くをそんな速度で飛ぶと凄まじい風圧が吹き荒れ、地べたを這っている生物には大被害なので注意が必要だけれども、文字通りの意味で羽を伸ばせるのでベルは大好きだ。前世では高所恐怖症の気があったけれども、この爽快感を味わえば一発で吹き飛んでしまった。


「千の風になって~♪」


 とにかく気分がよかったので、緊張を跳ね除けるためにもその部分しか覚えていない歌詞を口ずさむ。

 烈風竜の特徴として、他の竜と比べても飛行速度が速いというのがある。純血種の圧倒的な力の前には遠く及ばないものの、混血でも烈風竜の血を引いている事には相違ない。その速度はジェット戦闘機と追いかけっこが出来るのではないかと錯覚するほど。
 あくまで体感なので実際の所は分からないし、一般的な日本人だったベルは戦闘機に乗った事はなく、ミリオタでもなかったから平均的なジェット戦闘機がどれほどのスピードを出せるのかは記憶に無かったが、ともかく人間的な考えから言えばべらぼうに速い事は確かだ。ジャンボジェットみたいに大きいのに。


「本日の目標は、初めての大きな町な訳で……。頑張れ頑張れできるできる絶対できる頑張れもっとやれる! ……って、声がでか過ぎて迷惑か。黙ろう」


 もし聞いている人間が居たら鼓膜をクラッシュする音量で喋っていた事に気付き、ベルは少々の反省を感じながら無駄にでかい口を閉じた。竜の状態で人と同じ調子で喋るとメガホン20連結という感じに声が大きくなり、日本人だった頃と同じようにボソボソと喋ると良い具合になる。恥ずかしながら得意分野だ。

 周囲には人間どころか、高度が高すぎて鳥の一匹さえ居なくとも、もし今のを聞かれていたら物凄く気まずい。空中で苦笑いを交し合う竜とか最高にシュールな光景だろう。それに竜の村は狭い社会だし、これをネタに苛められるかもしれない。そうなったら物凄く嫌。
 しかし反省したのは10分だけ。すぐに普段の調子に戻って 「あ、これは今人間になったら頬を染めた美少女で萌え萌えだわ」 と下らない事を考えた。


「お、あれが目標か……。直感で北があっちだから、狙うのはあの薄汚れてゴミゴミした通りだな」


 スピードを上げるとものの2分ほどで目的地に到着する。ベルは町を見下ろしながら緩やかに旋回を始め、住民の避難が完了するまで待つ事にした。
 目が良いお陰か、本気で見ようとすると泡を食って逃げていく人間の群れが見える。押し合いへし合い大変な騒ぎで、誰も居なくなるまで待ってあげるのに、あちこちで激突しては勝手にけが人を増やしていた。人波に飲み込まれて踏み砕かれる子供も見える。ベルは無感動に、勿体無いなあ、とだけ思った。


「そういえば、そろそろ金に余裕もあるし、ペットでも飼おうかな……」


 無駄に子供が死ぬなら、一人ぐらい自分がちょろまかしても問題ないのではないか。竜らしくそんな傲慢な考えに辿り付いたベルは、鋭い鍵爪で唇を押さえながら『俺専用美少女育成計画』を練る。
 この世界は元がエロゲなお陰か、美男美女の割合が物凄く高い。実際なら無骨な不細工ばかりな筈である冒険者も美少女が多く、懐柔しやすそうな人間の少女を抱き枕として利用したいなあと考えていた。今使っているベッドは大きすぎて、今更ながら一人だとなんだか寝心地が悪く感じていたのだ。
 人間の年なら両親と川の字で寝ている頃だろうけれども、母は父以外眼中に無く、かといって父親とやるのは嫌だし、もしやったら本気で殺されかねない。女の嫉妬と言うのは物凄く怖い。それが竜族の女なら、人間の1万倍は恐ろしくなる。


私にそんな勇気はございません。そんな自殺行為をやれるのは、ルイズのベッドに忍び込めるKYなサイト君だけです。
 決してあの万年発情期に感化されたわけではなく、口には出せない行為をする気は無いですよ? 長生きと健康のために体液交換……つまりキスぐらいなら考えるけれども、それはあくまで美容と健康のためであって、私がそんな……。いや、そりゃちょっとくらい興味がある年頃にはなりましたよ? でも……。


「ふぅ……。そろそろ、ぶっ放して帰るか……」


 一回りして出す前に賢者モードになったベルは、男なら誰でも至れる無の境地から冷静な判断を下した。元より冗談が悪乗りして考え付いた事なので、本気で実行する気はあまりない。もし良い相手が居たらやってもいいけれども、そのうちルイズと出会えるし別にいいかなあと判断を下す。
 住人達も良い感じに居なくなったようだし、空を飛ぶのは楽しくとも首輪をつけられた犬のように同じ場所をぐるぐる回っているのは飽きるのだ。烈風竜としての特徴の一つである長距離兵器かと思えるほどに射程の長いなら狙撃も可能かもしれないが、まだそこまで上手く扱えない。
 よって他の竜と同じく、目標地点の上空で静止してから発射体制に入る。

 注意点としてブレス中にむせると口内がスタズタになって非常に痛いため、有事の際には事前に深呼吸などの前準備をしておくのがベター。ベルは経験からそう学んでおり、この時も2,3回ほど肺の中の空気を入れ替えた。
 最初にブレス練習をした時など、力みすぎて力に変換した魔力を吐き出しきれず、残り香が口の中で暴発した事があったのだ。いくら魔法に対して異常なまでに高い耐性を備えている竜とはいえ、ブレスが肉質的にも弱い部分に当たれば手痛いダメージになる。


自慢じゃないけれども号泣したね。あれはヤバイってマジ痛いもん。ひゃへえええとか意味不明な事を叫びましたよ。
 人間的感覚だと口内炎が3個も出来てしまった所に熱いお茶を流し込まれたレベルの激痛だったので、子供という利点を最大限に生かして迎撃チームの救護班に泣きつき、治癒魔法で治して貰いましたよ。痛いものは痛いのです。


 そんな下らない記憶を思い出しながらでもブレスの威力は変わらず、今回は見事に目標地点を吹き飛ばした。物凄い爆風と共に町の一部が消失し、土煙が一角を包む。途中で一度ブレスを止めたベルは、それが視界を妨害するより早くもう一つの目標である悪徳商人の家もこの世から消す。
 事前調査を行っていたメイドからすると、この家の人間は非常に性質が悪いので居ない方が経済的に活発化するらしい。家の地下に財宝を隠しているので貢物としてこっちに送られてくる可能性は低く、それなら消えてもらった方が世のため人のため、そしてベルのため。最後の一吹きで消え去った豪邸を尻目に、わざと空中でバランスを崩してから緩やかに巣へと向かう。

 これで仕込みは万全だ。今回はあまり町を壊していないし、弱った竜の子供をみてチャンスと勘違いしたレミングスの群れが財宝を抱えてやってくる事は間違いない。宝物庫が黄金の川で潤うのを期待し、町から見えない位置まで離れた事を確認したベルは速度を通常まで戻した。






 人間と竜には種族的に極めて大きな差があり、それはレベル99まで育て上げられたモンスターが無数に居ても、巣の主には最大級の敬意を持って接する事からも分かる。まあ不死属性や必殺無効を体得したモンスターからすれば戦闘によって命を失う可能性は限りなく低く、たまになら冒険者が持っていた小さな宝石一つをちょろまかして酒代に当てる位は許されているので、わざわざ危険を冒してまで反抗する意味は無かった。

 人間形態のパワーだけならまだしも、竜状態となればありとあらゆる想定を打ち破るほどに強大にして強靭、一山幾らで売買されるような下級魔族では幾ら鍛えても話にならない。その程度で下克上が許されるほど種族と言う差は小さくないし、天才にして秀才でも奇跡の助け無しには超えられないほど険しい山脈なのだ。
 そして失敗した場合、竜族は自分を害する事が可能であると判断した相手に対しては、極めて厳しい判決を下す物と相場が決まっている。理不尽なルールを多様に盛り込まれたギャンブルのように、極めが分が悪い。それだけに勝利した時の報酬は物凄いのだけれども。


「ああ? ガキだと……。ちょうど良い、身なりもいーみてえだし、売り飛ばして金にするか」


 だから金貨のベッドでごろごろしていたらいつの間にか眠ってしまい、暫くした後で寝心地が悪さ故に自室のベッドへと向かっていたベルが、ここの警備をすり抜けるほどに腕前のいい襲撃者と対峙しても、そこまで慌てる必要は無かった。


「え……?」


「あぁ? なんだ、呆けてやがるのか。こりゃいいな。おい、こっちへ来いよ」


 しかしそれはあくまで、火花を散らしながら命の奪い合いをする荒事に慣れていたら、の話だ。
 まだ40年足らずしか生きていなかったベルは本気の殺気を叩きつけられた経験も無く、捕虜に興味も無かったので荒々しい台詞を聞いた事もほぼ無い。日本人としてチンピラに絡まれた苦い経験が悪い方向へと作用した事もあり、箱入り娘のベルは完全に体を硬直させていた。


「いや……」


 今まで持っていた竜としての自信など、実戦も知らなかったベルに張り付いていた金箔のような物だ。強烈な殺意という剥き身の刃に切り刻まれ、ベルは竜としてではなく少女として恐怖を感じてしまった。本来ならすぐにでも逃げられる相手なのに、ずるずると後退りする事しか出来ず、一方的に追い詰められている。
 襲撃者の男の手には鋭く銀色の光を放つ剣が握られており、少女の柔肌が受け止めるには荷が重過ぎる凶器であるとベルは思った。刃が何倍にも大きく見え、それを振りかざす男の下卑た笑みが化け物のように映る。


「逃がすと思うのかぁ? 諦めな。逃げ場なんざ、どこにもねえよ」


 ベルの心臓は早鐘のように打った。心臓からは普段の数倍の血液が体へと送り出されているのに、顔からは血の気が引いて真っ青になると言う矛盾。生まれて初めて命の危機と呼べるモノに遭遇したベルは、伸ばされた男の手を前にして、何もする事が出来なかった。今にも細腕を鷲掴みにされそうになる。


「いやあああああああああ!」


 甲高い悲鳴をあげ、ベルは身を守ろうとする本能のままに蹲った。小さい体を折りたたんで細かく震わせながら、剣を取るべき両手で耳を塞ぐ。恥も外聞も無く涙を流し、目の前に居る圧倒的な恐怖から逃げようとした。


 怖い怖い怖い! 私、まだ死にたくないよ! 怖いよ……。たすけて、たすけてよ! おとうさん! おかあさん!




 ……暫くそうやってただ震えていたベルは、自分がいつの間にか竜となっていた事に気付いた。
 大粒の涙が浮かんだ目で周囲を見回してみても、どうやらあの恐ろしい人間が居るようには思えない。強靭な鱗が覆っている腕は涙を拭うには向いていなかったが、ともかく助かったと気付いて、ベルはその場に尻餅をついた。洞窟に風が吹き込むような音を立ててため息を吐く。


「ひゃっ?!」


 自分の体を見回したベルは、腹部に真っ赤な液体が付着しているのを見て小さく悲鳴を上げる。色から考えても、まず間違いなく血液だ。
 度重なるショックで意識が遠のきかけ、反射的に腹部を抑えた手に金属的な違和感を覚え、ゴミのように張り付いていた物を見て崩れ落ちた。


「良かったよ~! 怖かった……」


 それは見覚えのある剣で、少し前まであんなに怖れていた男の武器であった。あの時は自分などより断然大きく感じたのに、今になってみると爪楊枝みたいだ、と冷静になった頭で判断を下す。極度の安心からくる脱力感に身を任せ、ベルは竜のままごろりと身を横たえた。


「ベル様! やりましたね! 宝物庫の前まで侵入を許した時はダメかと思いましたが、見事に撃退成功ですよ!」


 高い天井に貼り付けられたスピーカーから聞き覚えのある声が響き、ベルはかっこ悪いところを見られなくて済んだなと苦笑を返す。 「まあね。ちょっと汚れたから、お風呂の用意をお願い」 なんとかそれだけ言うと再び人の姿へ戻り、赤いシミがついてしまったお気に入りの服を摘み上げて肩をすくめた。
 冷たい廊下の温度を背中越しに感じ、ともかく助かってよかったなと竜にあるまじき事を考える。


 今回の経験を受け、人間がトラウマになりかけたベルは半年近く巣の中に引き篭もった。
 そして寝るときはほぼ必ずメイドに添い寝を頼むようになり、ベルは 「竜族の女性なのに物凄く可愛い!」 「ベル様の寝顔マジヤバイ。鼻血で私の血圧がダッシュでマッハ」 とメイドたちの話題を浚った。本人は恥ずかしがって口には出さなかったのだが、そのツンデレッぷりがいいらしい。 「ベッドで上目遣いとかされると、反射的に襲いそうになる」 とは添い寝を経験したほぼ全てのメイドの弁。






 そして半年が経って、ベルがあの恐怖を克服したかと思えば、そういう事は全く無かった。


「魔法障壁……。完璧だ! これで怖い人が来ても、私には触れられない! ざまあみろ! フッフッフ!!」


 金に開かせて魔法書を買い漁り、自分のニーズに適した魔法を発見して習得したベルは少女の体で高笑いを上げる。恐怖を克服するためには立ち向かう必要が あるが、ベルにはそんなボジティブな考えなど欠片も無かった。ともかく引き篭もり的な発想で殻に篭る事を最優先とし、手出しさえされなければ問題ないとば かりの魔法を磨いて磨いて磨きまくった。

ベルは洗濯板のような胸を張り、腕を組んで自分の上空3メートルの所で浮遊している岩を見る。正確には浮遊しているのではなく、その下にベルが張った薄いほぼ透明のバリアーがあるので、そこに乗っかっているのだ。薄氷のようなバリアーだが、弾丸を跳ね返す防弾ガラスのように強い。
 地面から無理やり引き抜かれた巨大な岩石の重量は、どう軽く見積もっても10トンを越えているはずなのだけれども、障壁には毛筋ほどの揺らぎさえ見られない。更に試練を課したベルがレビテーションをかけて高々と投げ上げ、高度40メートル前後から落下させて激突させてみると、惑星が生んだ重力と言う力に逆らえなかった岩は反発に耐え切れず粉々に砕ける。ベルは噴水のように上空へ吹き飛んだ後、かなりの時間を置いてパラパラと落下してくる破片を見て深い満足感に浸った。


「よし! これで怖くない! さすが私! 天才じゃね?!」


 普通の障壁だとすぐに破られそうで怖いと言う理由から、ベルが覚えたのはただの壁を作る魔法ではなく、物理攻撃でも魔法攻撃でも加えられた力をそのまま反射すると言うかなり高度な魔法に分類される物になっている。竜などのブレスは規格外すぎて無理だが、それ以外ならかなり通用するだろう。
 ほぼ不可視のドームが持っている反発の力は物凄く、ベッドなどに使われている金属のスプリングのように生易しい物ではないので、ある程度の速度を持ってバリアーに接触してしまった物体に衝撃を吸収する柔軟性が不足していた場合、先ほどの岩のように粉々に砕け散るのが落ちだ。

 才能の無い人間では生涯を掛けてもほぼ習得不可能であるほど高度な魔法を、これほどの短時間で覚えたと言う自負はベルには無い。ただ剣を持って追いかけてくるような気がする襲撃者から逃れられれば、それでいいのである。
 ベルは麻薬でもキメてラリッた人間のごときハイテンションで 「やらせはせん! やらせはせんぞー!」 などと言いながら万歳を続けた。


 しかし巣を出て町を襲撃できるようになってもトラウマは中々抜けず、冒険者の襲撃中には最も安全な指揮センターに引き篭もり、メイドを抱いていないと寝られないという癖も変わらなかった。
 後者は既に治す気があまり無かったと言うのはあったが、メイドからは 「小動物のようだったベル様が、自信をつけた子犬のように!」 とか 「無い胸を張るベル様は魔族の宝 」とか「 あれ? 竜族の少子化って、これで解決しね?」 と評される事になる。
 その可愛さゆえに父親がベルに惚れて死亡フラグが経つかと思われたが、「僕の世界は君だけの物さハニー」という歯が浮くような台詞が全てを粉砕した。





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