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No.8484の一覧
[0] 【習作】使い魔ドラゴン (現実→巣作りドラゴン×ゼロの使い魔)転生・TS・オリ主・クロス有[ブラストマイア](2010/11/15 03:08)
[1] プロローグ[ブラストマイア](2009/05/06 14:31)
[2] 第一話[ブラストマイア](2009/05/06 14:32)
[3] 第二話[ブラストマイア](2009/05/06 14:33)
[4] 第三話[ブラストマイア](2009/05/06 14:41)
[5] 第四話[ブラストマイア](2009/05/09 20:34)
[6] 第五話[ブラストマイア](2009/05/13 01:07)
[7] 第六話[ブラストマイア](2009/05/27 12:58)
[8] 第七話[ブラストマイア](2009/06/03 23:20)
[9] 第八話[ブラストマイア](2009/06/11 01:50)
[10] 第九話[ブラストマイア](2009/06/16 01:35)
[11] 第十話[ブラストマイア](2009/06/27 00:03)
[12] 第十一話[ブラストマイア](2009/08/02 19:15)
[13] 第十二話 外伝? メイドな日々[ブラストマイア](2009/11/12 19:46)
[14] 第十三話[ブラストマイア](2009/11/13 06:26)
[15] 第十四話[ブラストマイア](2010/01/16 23:51)
[16] 第十五話[ブラストマイア](2010/11/15 03:07)
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[8484] 第十五話
Name: ブラストマイア◆e1a266bd ID:fa6fbbea 前を表示する
Date: 2010/11/15 03:07

 ベルが手土産をぶら下げながら、ルイズのための個室として提供した客間へと迎えに行くと、お風呂上りの少女はハーブのいい香りを漂わせていた。
 彼女に合う服があるか心配だったのが、有能なメイドたちはベルが昔着ていた服の中から適当な物を引っ張り出してきてくれたようだ。仰々しい飾りはなくとも調和の取れた着心地のよい一着で、ルイズにはとてもよく似合っている。上気した肌がちょっと色っぽい。とても可愛らしい少女だと思う。

 ルイズは魔法が使えない事でアレコレと揶揄されているそうだけれども、財宝を稼ぐ手段として武力が必要な竜でもなし。ベルとしては別に気にならない。
 それにこの世界ならば、魔法を使えない人間でも特殊な形で魔力に触れる事でメイジになれる。その証拠にギュンギュスカー商会のカタログにも人間を魔法使いできるお薬として載っていたはずだから、もしルイズが此方の世界の魔力を扱えなくても問題はないだろう。脳内の購入リストにチェックをつけた。


「何か必要なものとか、欲しい物があったら、遠慮なく言ってね? 後でお買い物には行こうと思っているけど、お金の事は気にしないで。異世界のお話を聞けるだけで、金貨の山よりも価値があると思うから」

「はい。ありがとうございます」


 土埃などを洗い流したルイズはとても美しく見えた。厳しい教育の賜物か、背筋をしっかりと伸ばし佇んでいる様はそれだけで絵になる。心からの笑顔を浮かべたら、もっともっと可愛くなるだろう。ベルは手首をクルリと回すと、手品のように魔法の品々を取り出して見せた。
 驚きを露にするルイズの後ろに回り、真っ赤な滴型の宝石をベルの髪の毛を芯にした紐で留めているネックレスを首からかけてやる。途端に魔法の効果を実感したのか、少女の視線は自分の胸の上で輝く宝石とベルの顔を何度も行き来した。ルイズの唇から驚嘆のため息が漏れる。

 ネックレスの概観はシンプルながら、素材は豪華なので効力は抜群だ。高い魔法抵抗力を持つ竜にですら効果があるのだから、使用者が人間であれば体内の魔力の流れが手に取るように理解できるだろう。魔力というあやふやな物を扱い慣れていない初心者には最適である。
 また黄金に一対の宝石を割って据え付けている指輪の方も、ドラゴンのブレスとまでは行かないが、ブラッドのクシャミぐらいの魔力は篭っている。ここから引き出す分には殆ど労力をかけずに可能であるし、もし無くなったらベルが補充してやればいい。何十時間でも何百時間でも練習できる。

 早速つけてもらおうと思い指輪を手渡したベルだが、ルイズは自らの首で光るネックレスの効果によって指輪に篭められた魔力の大きさを理解してしまったのか、恐縮してしまってなかなか着けようとしない。まるで物語に出てくる伝説のアイテムを最初の村でいきなり手渡されてしまった勇者だ。
 ルイズは自らの掌の上で光る小さな輝きを呆然と見詰め続け、ベルは恐縮しきって固まってしまった少女に小さく苦笑いを漏らす。

 ベルは小さな掌から指輪を拾い上げ、そっと少女の細い指先に嵌めてやる。未だに驚き続けているルイズの手を引くと、早速試してみましょう、と言って連れ出す。二人は中庭へと飛び出した。


「……さーて。じゃあ、まずは簡単な魔法から」


 ベルは桃色の少女が落ち着くのを待って、初歩の初歩の魔法をゆっくり、段階ごとに区切りながら、できる限り正確に行う。
 普段なら瞬きもせずに使えるような、ライター程度の火を生み出す簡単な発火の魔法だ。ちょっとしたマジックアイテムでも行える事だが、ハルケギニアの魔法しか知らなかったルイズには、自分でも使える可能性があるとして一筋の光明のように映った事だろう。呼吸すら忘れて見入っている。
 ルイズにも見えやすいように魔力の流れを手中に生み出し、一つ一つ分かり易いように魔法を組み上げていき、再び小さな灯りを着火。それを何度か繰り返した。


「じゃ、今度はルイズがやってみて? 大丈夫、手伝うから」

「は、はい! が、がんばります!」


 補佐を行うために掌をルイズの肩に乗せると、少女の体は緊張で固まっているのが分かった。大きく深呼吸をしてから魔法の詠唱に入らせる。
 まずはベルがルイズの魔力に干渉して流れを作り出し、少しずつ独力で流れを再現できるようにしていく。魔法とは個人の感覚によるところが大きいので、ともかく理解してさえしまえば何とかなるのだ。よちよち歩きの雛鳥だって、周囲から気流を作ってやれば飛べない事はない。あとは飛び立つ勇気さえあればいい。
 ルイズは今までにも魔法の練習を欠かさなかったようで、単純な魔力の扱いならすぐにコツを飲み込んでいった。

 自転車の後ろに乗せて感覚を掴ませ、次は転ばないように補助輪の役目を果たしてやり、最後にそっと手を離す。
 今はまだ感覚を掴ませている状況であるが、マジックアイテムなどの優秀なサポートが脇を固めている。この分なら一人で魔法を使える日もそう遠くないだろう。


「……! で、できた! ベル! ベルさん、できました! わ、わたし、やっと……!」


 何度目かの詠唱にして杖の先に小さな灯りが灯り、儚いながらも確実に光を放った。仄かに揺らめくオレンジ色。少女の努力が報われた瞬間だ。
 サモン・サーヴァントに続いて2回目の成功を収めたルイズは、顔をくしゃくしゃに歪めながら涙を流した。






 興奮冷めやらぬ少女の姿を見て、ベルはほっと一息つきながら胸を撫で下ろす。どうやらルイズは喜んでくれているらしい。
 特定の個人と微妙な話をする経験が殆ど無かったため、実は結構テンパっていたのだ。だからちょっと強引に連れ出したり、魔法で注意を引いたり。人間の頃の勝手を忘れかけていたから、失敗したらどうしようかと思ったけれども、これで当分の間は寂しさを忘れてくれる筈だった。

 いくらルイズに魔法の才能があるとはいえ、まだマジックアイテムなどの助力なしに使いこなすのは無理だろう。ベルが見たところハルキゲニアの魔法は大気中の魔力をメインで使うような構成となっており、消費魔力こそ少ないが効力を発揮できるか微妙に思える。術式が雑で使い勝手があまりよくない。
 ハルキゲニアの魔法が遅れているとかではなく、どちらかというと故意に改変したような感じだった。この世界では扱いが難しいようだ。

 ベルも一応は神様に頼んだとかなんとかそんな事があったような気がするので、ハルキゲニアの魔法と呼んでいいのかよく分からないがともかく使えない事もないのだが、暇つぶしなどを兼ねて徹底的に弄り回したせいで初期の構成なんて忘れてしまっている。空は飛んでもコウモリと鳥ぐらいしか共通点が無いレベルになっていた。
 竜が持つ莫大な魔力を前提として魔改造とカスタマイズを繰り返しているので、竜と比べると雀の涙ほどの魔力も持たない人間には向いていないのだ。ベルが覚えている魔法の大半は一発芸とか雑用とかスカート捲りとか便利系とか威力過剰なテレッテーとかなので、ルイズに教えても意味が無いものばかりだった。


(ルイズの魔力ってなんだか微妙に質が違うみたいだし……。今みたいに指輪か何かでサポートするか、適した形に変換する必要があるかも……)


 人間が持つ魔力にはそれぞれの個性があり、中には性交渉などを行う事で魔力を与える「魔法使いの花嫁」というレアな人も居る。油は油でも経由とガソリンの違いのようなもの、ルイズは虚無の魔法使いとして恐ろしく希少な資質を得た際に、それ以外は切り捨ててしまったのだろう。魔力の形が術式に適していない。
 ただでさえ制御の部分が甘く術者の意識に大きな影響を受けるハルケギニアの魔法を使いこなそうとすれば、非常に微妙な魔力の操作が必要となる筈だ。適切な師の下で長年努力すれば不可能では無いかもしれないが、効率が悪すぎてドットかそれ以下が精々になってしまうだろう。
 よく燃えるからといって石油ヒーターに高オクタンのガソリンを注ぎ込んだら大爆発を起こしかねない。ルイズの魔力であれば唯一無二の存在にはなれても、極一般的なメイジとしての成功は非常に厳しい物となる。

 ベルにしても平和な生活を送れているのは、竜として絶対なる力と莫大な財力を保障されているからこそ、だ。日本人としてみれば決して良くは無い。
 個人主義の竜であるからこそ社交などは必要ないが、人間は違う。ルイズのように家柄と容姿が完璧に近くても、いやその両者が完璧だからこそ、他者を納得させられるだけの力が必要になる。嫉妬、やっかみ、その他諸々が直撃しようとも跳ね返せるような、あるいは全く寄せ付けないほどのパワーが必要なのだ。
 今のルイズには武器どころか身を守る鎧すらも無かった。
 可能であれば彼女の母親のような物凄いメイジにしてあげたい。今つけている指輪の一つや二つなら帰還祝いなり卒業祝いにでもプレゼントしてしまう心算だけれども、マジックアイテムに頼りきりでは心許無い。ギュンギュスカー商会の人に頼んでそういった類の秘薬でも用意してもらうべきであろう。


「うんうん、よかったねえ……。ルイズは飲み込みがいいから、きっとすぐに皆を見返せるような魔法使いになれるよ!」


 ベルは未だに感極まっている少女を抱き寄せ、出すぎた真似だと思いながらも頭を撫でてやる。服越しに高い少女の体温を感じた。
 まるで本当にお姉さんになった気分だ。ルイズは赤子のように泣きじゃくり、ただ感動に打ち震えていた。何度も何度も嗚咽を漏らし、止まらない涙に困惑しているかのように、あるいはベルが消えてしまわないか不安に思っているように、その細腕に許される限りの力を込めて身体を密着させていた。

 きっとルイズは苦労を重ねたのだろう。頑張って頑張って、しかし報われず、それでも頑張って頑張って。平民の使用人にすら馬鹿にされながら。
 流した汗は裏切らないというが、結果が出るかどうかは運命だけが決める事である。だから少女が流した大河から救い上げられたこの涙は、どれほど高価な薬よりも価値があった。なにせドラゴンを泣かせるほど強力なのだから。感動をおすそ分けされて鼻の奥がツンとする。これは涙じゃない、心の汗だ。

 出会ったばかりで部外者に過ぎないベルだが、シンデレラに魔法をかけた魔女だって赤の他人である。自分なりにルイズを祝福してあげようと思った。
 原作のシンデレラは王子様と結婚した後に不幸になってしまったと記憶している。魔女がボケてうっかりアフターサービスを忘れてしまったのだろう。ルイズの場合はそうならないように色々と手を打つ心算であるし、いざとなればこの世界で領地を買って貴族になるという手もある。なんでもいいから幸せに過ごして欲しい。


「そうだ。ルイズ、欲しい物はある? もし病気だったら、魔法薬を買わないといけないし」


 ルイズはやっと落ち着いた。真っ赤になった目を擦りながら恥ずかしげに俯いている少女の頭を撫でてやり、これからの生活で必要な事を聞く。
 二次創作の知識とごっちゃになっていなければ、ルイズには病気の姉が居たはずだ。せっかくギュンギュスカー商会の人を呼ぶのだから確かめておきたかったし、もしルイズに隠された持病などがあったら困った事になる。遺伝病であれば妹にだって発症するかもしれない。人間は脆いのだから、早めに対処したかった。


「魔法のお薬? ……! そうだ、ちい姉さま!」


 胸の中でルイズがパッと顔を上げる。縋りつくような目をした少女に先を促してみると、すぐ上の姉が大病を患っているらしい。話を聞く限りではかなりの重症のようで、ヴァリエール家お抱えの水のスクエアメイジでさえ対処の難しい発作を何度も起こしているのだとか。ルイズは痛ましげに唇を噛んだ。
 ベルは専門家では無いので詳しい原因は分からないが、ここは安請け合いだとしてもドンと胸を張って安心させてやるべきだろう。不安げに自分を見つめている少女に「大丈夫、それならきっとよくなるから」と声を掛けてやる。ともかくルイズに病気が無さそうで良かった。安心したらしく脱力した身体をそっと抱き寄せる。

 原作がストーリーの本当の流れだとするなら、ベルの行為は自己満足だけで流れを捻じ曲げる悪行になるのだろうが、既に関わってしまった少女を無視するのは趣味じゃない。ルイズの悲しみを前にして「原作が乱れるからずっと無能なゼロのままでいてくれ」なんて言える訳が無かった。
 それを言うならとっくに本筋とはズレてしまっているし、今更だろう。後はなるようになるさ。


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