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No.8484の一覧
[0] 【習作】使い魔ドラゴン (現実→巣作りドラゴン×ゼロの使い魔)転生・TS・オリ主・クロス有[ブラストマイア](2010/11/15 03:08)
[1] プロローグ[ブラストマイア](2009/05/06 14:31)
[2] 第一話[ブラストマイア](2009/05/06 14:32)
[3] 第二話[ブラストマイア](2009/05/06 14:33)
[4] 第三話[ブラストマイア](2009/05/06 14:41)
[5] 第四話[ブラストマイア](2009/05/09 20:34)
[6] 第五話[ブラストマイア](2009/05/13 01:07)
[7] 第六話[ブラストマイア](2009/05/27 12:58)
[8] 第七話[ブラストマイア](2009/06/03 23:20)
[9] 第八話[ブラストマイア](2009/06/11 01:50)
[10] 第九話[ブラストマイア](2009/06/16 01:35)
[11] 第十話[ブラストマイア](2009/06/27 00:03)
[12] 第十一話[ブラストマイア](2009/08/02 19:15)
[13] 第十二話 外伝? メイドな日々[ブラストマイア](2009/11/12 19:46)
[14] 第十三話[ブラストマイア](2009/11/13 06:26)
[15] 第十四話[ブラストマイア](2010/01/16 23:51)
[16] 第十五話[ブラストマイア](2010/11/15 03:07)
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[8484] 第十話
Name: ブラストマイア◆e1a266bd ID:fa6fbbea 前を表示する / 次を表示する
Date: 2009/06/27 00:03



 ベルは傍らに積まれていた最後の一冊を読了し、数時間ぶりに肩の力を抜いてグルグルと腕を回した。
 この程度で竜が疲れる事は無いのだが、半ば儀礼的にぐいと背筋を伸ばしつつ猫のような声を上げる。
 大きく脱力しながら背もたれに体を預け、上下逆さになった書斎をぼんやりと見回した。

 乱立している本棚の量は尋常ではなく、個人の書斎というか図書室の方が雰囲気としては近い。日本人だった時も捨てられないタイプだったベルの性格は悪化しており、種族的特長として財宝などを溜め込む性質と元の性格とがマッチしてしまったようだ。
 その結果として読み飽きた本でも売る気にはならず、延々と本だけが増えていく事態が発生したのである。元が男なのでデザインやセンスの方面には疎いベルでも、自室が本と本棚で溢れそうになれば危機感を覚えたため、積もり積もった数十年分の本を隔離するために作られたのがこの書斎だった。

 部屋はすっきりして綺麗になったのだが、スペースに余裕が出たら余計に本を買うスピードが上昇しているので、ある意味では逆効果な気もしている。
 更に入り口側には大量の参考書やら図鑑やらが並んでいるので偉人っぽいが、部屋の奥には主に娯楽小説を詰め込んだ棚ばかり。読んだ本を出しっぱなしにする事も多い上に、掃除や整理といった管理はメイドらに丸投げ、というダメ人間っぷりを発揮していた。


「私の体はそんなに貴重だったのかー。竜攫いには注意しよう」


 このセリフも中二病的な発想の延長……ではなく、先ほど読んでいた書物から得た知識だ。
 タイトルは 『絶対強者ドラゴン その全て(1~9巻)』 といい、タイトルは竜向けでも内容は違う。読者の9割以上は人間か森の住人あたりだろうし、竜族でまともな人物ならまず読まないだろう。
 なにせ竜族の死体を利用して作るマジックアイテムだとか、体そのものを利用する方法について事細かに綴った本なのだ。完全に一部の魔法使い向けである。


「しかしね、血はもちろん唾液すら貴重だとは……。もし風邪とかひいたら、鼻水も貴重なのかなあ? 鍛えた鉄を竜の鼻水に浸けて作った魔剣! とか言われたら、ある意味ではすごく強そうな気がしないでもないけど……触りたくない」


 ベルは読み終わった本を空中で整列させて増設したばかりの本棚へと戻し、今も魔法を使っているくせにファンタジーを粉砕しかねない発言を飛ばした。

 純血種のドラゴンの骨は現在確認されている全ての世界でも抜群の素材であり、小さな欠片でも島を消し去るほどの魔力が圧縮されているという。物質的な強靭さでも至高にして究極。神の金属と呼ばれるオリハルコンさえ凌ぐ強度、そして生物由来の物であるが故の柔軟性を併せ持つと言われ、果てしなく複雑な工程を完遂させれば最高位の神族さえも容易く切り裂ける剣となるそうだ。

 ただし存在するだけでパワーバランスを粉々に粉砕する核兵器のような物であるため、実際に作られた事は有史以来一度も無く、その工法も封印され完全に潰えたという。不確かな情報を元に書物の筆者が推察したところ、そのような物が実在したとしても高密度の魔力の塊である竜の骨を加工するには大陸中の魔法使い全てをかき集めても足りないため、誰かがドラゴンの凄まじさを伝えるために用意した作り話だろうとも書かれていた。


「やっぱり鼻水はダメだよねえ……。かっこ悪いし、なんか手に取っただけで病気になりそうだ……。竜の精液も薬としては最高の部類に入る素材らしいけど、精液漬けの剣とかエログッヅそんままだし……。巣ドラの元がエロゲだけに、切られたら発情するとか……? でもそれ以前に、剣にぶっかけとか特殊性癖過ぎる……。俺だった頃は確かにロリとか大好物の紳士だった……訂正、今も好きけど、剣には欲情しないわ」


 書斎には誰も居ないのをいい事に、その手の魔法使いが聞いたら憤死するような内容を言いまくるベルだった。

 そして任侠映画を見た人間の気が大きくなったり、アクション映画を見た後だと強くなった気がしたりするのと似た理屈で影響を受け、我が家にも工房を作ろうと動き始める。

 まあ、それさえ通信アイテムでクーさんに依頼し、その後は彼女任せという適当さだが。




 そして1週間後。自宅の使われていない部屋を改造してもらったベルは、新品のデスクに座りながら鼻歌交じりで作業していた。

 自分ってぶっちゃけニートだし、日曜日って日付はないけど日曜大工の内なのかなあ、だとか、そういえば実家の近所に住んでいたおばちゃんが陶芸教室高に通っていたなあ……などと思いを巡らせる。

 前世でのイメージではリフォームにはかなりの時間がかかると思っていたのだが、ギュンギュスカー商会の仕事は実に迅速だった。
 依頼したその日の午後にはクーさんが十人以上のメイド部隊を連れてきて、ただの物置だった部屋をテキパキと整理したかと思えば防御用の魔法などを天井や床を含めた壁一面にかけ、あっという間にリフォームしてしまったのである。まさに劇的ビフォーアフターだ。

 家具などの料金を含めて施工費はかなりお高くついたものの、それに適うだけの仕事はしているので文句のつけようがなかった。すぐに物造りに飽きてしまっても、購入した素材や家具を売れば高々数百万Bの損失で済む。振り込まれる生活費のお陰でベルの貯金は増え続けているので全く問題ない。

 今ベルが向かっている机も商会から仕入れた物で、漆でも塗られているのか真っ黒い表面には竜の巣にも使われている魔法防御がかかっているらしい。
 幅は3メートルほどで、奥行きが2メートルほど。手触りにしてもツルツルしていて硬いという見た目通りの物で、ブヨブヨしているとかドロドロしているとか無駄に画期的な物ではない。淵を掴んで持ち上げてみた限り、重さは数百キロ程度だろう。細かく計るには軽すぎてよく分からなかった。

 見た感じではシンプルイズベストなデザインである事ぐらいしか分からないが、人間では本気で壊そうとしても傷一つ付かないほど頑丈だそうだ。


「それにしても、溶けた金って綺麗だなあ……。やたらと伸びるけど、けっこう動かしやすいし」


 ベルは溶けた金の両側をつかみ、ビローンという効果音が聞こえるほどに伸ばした。
 丸めるとサッカーボールより一回り小さいほどの大きさしかないのだが、その気になれば部屋を何週も出来るほど伸びまくって面白い。

 いかなベルでも人間状態で溶けた金に触れると火傷するので、両手を手袋のようなバリアで覆っている。隙間には真空を作っているので物理的に熱は通ってこず、手袋の厚みは一ミリ以下であるため細かい作業も問題ない、というオマケつき。無駄に小細工が得意なベルを象徴するような魔法だ。
 問題は維持が面倒な事だったのだが、新しい感触に無竜になって1時間近く粘土遊びをしていたら慣れてしまった。


「さて……。私の血を入れて、流し込んだ魔力を定着させる必要があるんだけど……」


 ベルは袖をまくって自分の右手首を露出させ、血管のあたりを指でつんつんと突いた。
 意図的に魔力を巡らせるのを停止しているため、何重にも着込んでいた鎧を外した腕はどうしようもなく脆く見える。
 下手したら自分で手首から先を吹っ飛ばしてしまいそうだ。あまり想像したくない光景だった。


「ぬおぉ……き、気合だ! ほぁぁ!」


 リュミス辺りが見たら呆そうなほどに気合を居れ、氷で作った注射針をそーっと動かす。見た目は間抜けでも本人は必死だった。
 皮膚に氷の冷たさを感じて反射的に腕を引いてしまうが、ここで止めたらせっかくの金が無駄になるぞ、と貧乏性を刺激して決意を固めた。大きく深呼吸しながら一気に指を進め、やがてツプっという感触と共に針先が皮膚を貫いたのが分かった。


「あれ? 思ったよりは……。でも、変な気分だ……。さっさと終わらせよう」


 封印状態の肉体は人間と同じぐらい脆く、ベルからすれば呆気ないほど簡単に皮膚を突き破った。体内に氷が侵入してくるのを感じて身震いし、痛みよりは気持ち悪さの方が勝っている事に安堵する。違和感にしても小さく、意図的に意識を集中させていなければ気にならなかった。

 手をひっくり返すと透明な注射針の中央が赤く染まり、緩やかに撹拌している金にポタポタと血液が落ちていく。その度に肉を焼いているような音が響いた。
 融点である1000℃を超えている金に触れても即座に蒸発しないのが不思議だ。予め親和性が高まっていたお陰だろうかと疑問に思う。砂時計のように一定間隔で落ちていく自分の血液を眺めるのは不思議な気分だ。混ぜていい血の量と込めるべき魔力量については注意が書かれていなかったので、どうせなら多い方がいいだろうと大量に混ぜておく事にした。心臓の鼓動に合わせて落ちていくそれをぼんやりと眺める。

 今回作る予定のアイテムは、RPGで言うと最大MP増量および回復率にボーナスがつくタイプのアクセサリーなので、蓄えられる量は出来るだけ大きい方がいい。回復率も最大保有量に依存するらしいし、いつもお世話になっているメイドたちへの感謝を込めたプレゼントなのだ。いい物を作りたかった。


「どうにも出血が遅いなあ……。もう少し針を太く……って?! あぁ! だばぁはらめぇぇ……」


 飽きたので針の太さを3倍にしたところ、かなりの勢いで勢いよく流れ出した自分の血を見てパニックに陥った。金の表面が赤く染まり、急激に魔力を取り込んだ事で不安定になる。そんな状態の金を落下させて大惨事を起こす寸前までいったが、針が勝手に抜けたので無事終わった。

 ベルは混乱してしまった自分を恥ずかしく思いながらも、今は傷跡さえ残っていない腕を神経質に擦る。しっかりと治癒魔法をかけたので貧血の心配はないが、日本人だった頃だってあんなに血が出た経験は無かった。自業自得ながら肝が冷える思いである。


「次に血液を混ぜ込むときは、あらかじめ容器に準備しておこう……」


 ベルは何度か深呼吸して気持ちを切り替え、魔法で適当に攪拌している金に向き直った。
 現状でもかなり大量の魔力が込められている。書物によるとマジックアイテムとして定着させる際にかなり減衰してしまうらしく、少々勿体無いような気もする。それで効果が半永久的になるとはいえ、半分以下にまで落ちてしまうのは残念。しかし現時点でも加工前の金より輝きが強くなっている気がするし、大量の竜の血を練り込んだために上限が大幅に増えているから、失われてしまう分ぐらいは取り戻せそうだった。

 もっと練り込んでおこうと決めたベルは再び両手を金の中に突っ込み、もう少し粘土遊びに興じる事にする。








 クーは今月の成績がグラフ化されている表を眺め、表情には出さないまでも深く満足していた。

 今までと比べると飛びぬけて高くなっている自分の成績を見て、思わず頬が緩みそうになる。二十年ほど前に専属的な契約を結べたはいいものの、数日前までは小物の取引しかなかった取引先が、長い冬を経てついに芽を結んだのだ。合計で1億B近い商品を気前良く購入して貰い、運がよければ今後とも高価な材料を購入してくれるだろう。悪くても売り上げが減る事はないし、もし返品されても手数料はきっちり頂く事ができる。

 どちらにしてもクーにとって悪い話ではなく、それどころか 『親友が巣作りに出る際はギュンギュスカー商会に社員を派遣して欲しい』 とまで言って貰えたのである。竜の巣となれば国家を運営するにも等しい大事業であり、有料物件中の有料物件。ほぼ間違いなく巨大な利益を上げる事が約束されたも同然で、普段は有能な社員としてクールなイメージを心がけているクーであっても小躍りしたくなるほどだった。


「~♪」


 それも、その友人というのがまた凄い。なんと竜族の男性の中では最も優れていらっしゃるリュベルマイト様だとかで、ギュンギュスカー商会でもぜひうちの商品を使って欲しい、と狙っていた相手である。この一件でクーの評価は大きくプラスの方向に動き、その結果が形となって現れ始めているのだ。
 まだ姉たちが居るのでクー自ら竜の巣の運営に関る事はできないが、ベル様曰くブラッド様という竜も百年か二百年以内には巣作りを始めるという。あまりにも美味しすぎて裏があるのでは、などと無駄な勘繰りをしてしまいそうなほど美味しい話であった。反射的に叫びまわらなかった自分は偉い、とクーは思う。


「ふっふ~ん♪」


 口から漏れる鼻歌にも熱が入ってきた。会社の廊下であるにも拘らず声が大きくなり、小指を立てながらエアマイクを握り締める。既にクーの脳内ではバックミュージカルが鳴り響き、冷たい雰囲気を覚えるオフィスの廊下は七色のレーザーと湧きあがった観衆の怒号が乱舞する舞台へと姿を変えていた。


 何万という群衆が魔力によって光を発するペンライトを振りかざし、サバトを思わせる絶叫と熱気がさらに彼らを湧き立たせる。魔界でも有数のコンサート会場だというのに、限界まで押し込まれた観客で今にもはち切れてしまいそうだ。今なら熱気だけで天井をぶち抜くことさえ可能と思えた。

 彼らの前に立つのは魔界でも有名なアイドルユニットであり、通常ならそれだけを目当てにして一大コンサートが開けるほど。
 しかし、本日の主役は彼女らではない。この場においては極上の美女たちで構成された精鋭メンバーをしても前座であり、たった一人の少女に敵わないのだ。


--- ありがとうございました! 素晴らしい演奏でしたね……。しかし、彼女の前では霞む! すべてが霞む! ---


 余韻を残して彼女たちの歌が終わり、新たなる人物の到来を予期して会場が静まり返る。この場にいる数万人の心が一致し、針の落ちる音さえ聞こえるのではと思えるほどの沈黙。嵐の前の静けさ。誰も彼もが魔法で石に変えられたかのように動きを止め、生唾を飲み込みながら、ただ一点を凝視する。

 そこに立つのは、魔界の歌姫として大人気絶賛活躍中のクー! 挨拶代わりの軽い一曲を歌い終わり、観客の盛り上がりも絶好調だ! さあ、今こそ!


「魔界の歌姫クー! 歌いま……」


 大声でそう宣言し、クーは固まった。

 固有結界と言ってもいいほど練り上げられた脳内妄想が次々に剥がれ落ち、観客も熱気も霞と消えたオフィスの廊下。

 未だ勤務時間内だけあって、先ほどまではクーしか居なかったのだが、今の今まで魔界全土に響き渡れとばかりに熱唱していたのである。
 当然のように注意を引きに引いており、その過剰効果として、リズミカルに踊り狂うクーの姿を見た無数の魔族までドン引きさせていた。


「あ、あの……お電話、なん、です……けど……」


 私は気にしていませんよ? 本当ですよ? という雰囲気を精いっぱい取り繕い、それでも腰が引けているメイド服の魔族が言う。
 彼女の顔には到底繕い切れない苦笑いが張り付いており、メイド村のメイド族の特徴である長い前髪によって顔半分が隠れていたとしても、言わんとしている事は一目瞭然であった。
 両者の間を極寒のブリザードさえ温かみを感じられるほどの空気が流れる。

 いかな回転の速い魔族の頭脳であっても、エターナルフォースブリザードを正面から食らってフリーズしていたら動く事はない。たっぷり1分近く物凄く気まずい空気がオフィスの廊下を吹き抜けていた。両者とも無言である。蛇に睨まれた蛙のように動かない。どちらが蛇でどちらが蛙なのかはわからないが、ともかく固まっていた。そのまま固まっていれば数十万年後に化石として発見されそうなほど、固まっていた。


「えっ……あっ、そ、その……これは……」


 認めたくない。絶対に認めたくない。それでも現実というやつはどこまでも無情であり、クーの聡明な頭脳は受け入れ難いそれを少しずつ理解し始めていた。
 同時にF1マシンのエンジンでさえ焼け付きそうなほどにフル回転するが、彼女の人生でも終ぞ無かったほど焦っている。そんな状態ではこの窮地を一発逆転するようなアイデアが閃く訳もなく、盛大に空回りをした挙句に暴走状態に陥ったのは必然であった。


「きゃあああああああああああああああああああ!!!」


 その日、魔界の一等地にあるオフィスの一角が爆発炎上したとか何とか。



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後2~3話でゼロ魔に行こうとは思いますが、テンプレ展開を踏襲する内容にするのは不可能なので結構好き勝手やると思います



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