<side:テオ>
そろそろハオたちが帰ってくると連絡があった。
中々に波乱のハンター試験だったようである。
間違いなく近年最もカオスなハンター試験となったに違いない。
今年の試験官は本当に乙でした。
まあ、終わったことは終わったことですっぱり割り切るとして、ウチの関係者であるハオとゴクウはハンター試験に無事合格したようだ。
ついでに会場で合流したタクヤもつれて帰ってくるらしい。
強い仲間が増えるのはありがたい。
この世界に生きる以上常に外敵に備えていなければならないからな。
ただ、ハンゾーまでつれて帰ってきたのには少々驚かされた。
<side:ハオ>
「俺を鍛えてくれ!!」
目の前で土下座をしながらハンゾーが叫んでいる。
・・・ぇぇえ!?何で俺?
「・・・いや、何で俺に?」
「四次試験で一番堂々としてたあんたが印象に残ってたんだ」
いや、一番堂々としてたのはファイアーバルキリーじゃね?いや、あれに弟子入りはしづらいよな。
そう言えば四次試験の時何度か見かけたけどとりあえずスルーしてたな。
原作キャラだし、倒すのも後味がわるそうだったんだよな。
「それに、あんた達は少なくとも俺より遥かに強い」
ハンゾーが確信を持って言う。
「俺は、自分が認めた相手に弟子入りしたいんだ!!」
再び土下座をするハンゾーを尻目に俺たちは目線で会話をしていた。
『おい、どうするんだよ』←タクヤ
『どうするといわれても、俺の一存では』←ハオ
『さすがに原作キャラをお持ち帰りはまずいのでは?』←ゴクウ
『ん?でも原作キャラとは言ってもコイツ、ハンター試験以降はまったく出番なしだし連れ帰っても問題ない気がしてきた』←タクヤ
『まてまて、原作で描写が無かったからといって何もやってなかった訳がなかろうが、確か探し物か何かがあったはずだ』←ハオ
『あ~、なんかの巻物でしたっけ?よく覚えてないけど。でも原作にまったく描写が出てこないのだから重大事というわけでもないのでは?世界観的には』←ゴクウ
『世界観的に重大かどうかはともかく、コイツにとっては重大な問題のはずだ』←ハオ
『でも、ハンゾーはそれを探すことよりも強くなることを優先してるっぽいですよ。土下座してるところを見ると』←ゴクウ
『とりあえず、結論が出ないならテオにでも電話してみたらどうだ?』←タクヤ
『『そうだな』』←ハオ&ゴクウ
なにやら、黙り込んで目線だけで会話している俺たちを見て、ハンゾーが不審そうにしているが気にしない。
「どうしても弟子になりたいってのなら俺たちの仲間にも相談しなきゃいけないからちょっと待ってろ」
「はい」
素直に正座して待つ気らしい。
少しはなれた場所に移動して電話をかける。
ピポパ・・・
『はい、こちら有限会社ストレンジャーズ受付です』
「俺だ、ハオだよ」
『何だハオか、電話してきたってことは試験はもう終わったってことか?』
「ああ、そうなんだがこっちでちょっとトラブルが起きててな」
『トラブル?』
「弟子入り志願者が来た」
『えぇ、誰よ!?』
「実はタクヤだ」
『なんだよ、脅かすなよ。一体誰がそんな無茶を言ってるのかと思ったじゃないか』
「あと、ハンゾー」
『ぶふぅ』
何か吹いたような音。
「汚いな、ちゃんと拭いとけよ」
『まてまて、ハンゾーって『原作の』ハンゾーか?』
「そのとおり」
『・・・何があったか説明を』
とりあえず一通り弟子入り志願されるまでの流れを説明する。
『あ~、とりあえず分かった。一緒に連れてきて』
「了解」
電話を終えて皆のところへ戻る。
「一応許可は取ったぞ、連れてこいだってさ。見てから決めるって」
ハンゾー、いきなり門前払いはされないと知り一安心である。
こうして予想外のメンバーも加えつつ俺たちはヨークシンにある俺たちのアジトに戻ってきたわけだ。
「・・・・・・」
「・・・まあ、とりあえずお茶でも飲んで?」
「・・・いただきます」
空気が重い。
早速テオがハンゾー相手に弟子入りについてのハンゾーの意思確認をしているが、ハンゾーの緊張が伝わってくるため空気が重い。
俺たち、こういう空気は苦手なんだよなぁ。
原作のハンゾー君のようにもっとはっちゃけてくれればいいのに。
「まあ、まずはなぜハオに弟子入りを申し込んだのかから聞かせてもらおうか」
テオのほうから話を切り出す。
モブに近い位置づけとはいえ、ハンゾーは立派な原作キャラだ。
彼を此処で引き抜いた場合に原作の歴史と比べてどのような影響があるのかは考えておかなければ後で首を絞めることになる。
まあ、彼の人生が変わった影響で世界に致命的なヒビが入るとは思わないが。
・・・まあ、不確定要素を気にして強力な念能力者に育ちそうな素材を放逐することも無いか。
結局のところ、テオとハオの意見としてはこんな感じにまとまっており、後はハンゾーがストレンジャーズとして出す条件を飲んでくれれば受け入れる方針だった。
この後、弟子入りに関してストレンジャーズのメンバーとして所属すること、こちらの仕事を優先することなどタクヤにも伝えた条件を伝え、ハンゾーもそれに同意し目出度くハンゾーをストレンジャーズに迎え入れることとなった。
<side:テオ>
それからの日々はあっという間に過ぎていった。
タクヤ、ハンゾーには重力制御陣を刻んである訓練ルームにて基礎修行をしてもらっている。
タクヤは自らの低いAOPを鍛えるため、ハンゾーは高負荷の環境でカンズメにしたほうが伸びやすそうだったからだ。
タクヤは勝手にやらせておけばいい。
元々既に完成された念能力者であるし、何よりトリッパーだ。
環境さえ提供しておけば後はある程度勝手にやるだろう。
ハンゾーはそうはいかない。
きちんと四大行から教えていった。
一応、自力で会得した『纏』はすぐに理解していた。
精孔を閉じることで気配を断つ『絶』なども忍者としての修行の過程で自然と身についていたらしい。
全身の精孔から発するオーラ量を増加させる『練』についても飲み込みが早かった。
やはり原作において念の恩恵なしにハンターになっただけの事はある。
念の習得速度もすばらしいものがあった。
練を安定して行なえるようになってきた時点で一度スカウターを使ってハンゾーのデータを取ってみた。
AOP = 75
MAX_AOP = 650
まあ、修行を始めてから3週間目であるからこんなものであろう。
因みに何度か計測していて測定された推測のPOP値は3500であった。
順調に伸びているようだ。
オーラが切れるか集中力が続かなくなった時は『燃』の方の修行をさせている。
このままタクヤとハンゾーは重力ルームでのカンズメ生活が数ヶ月続けられることとなった。
突然だが、俺たちストレンジャーズのアジトはヨークシンに存在している。
ただ、俺とハオはこの都市では札付きなのでなるべく目立たないようにしていなければならない。
そのためアジトはヨークシン郊外の荒野の地下にある鍾乳洞に建物建ててアジト兼、研究所として運営していくこととなっていた。
因みに出入り口は荒野の一角に目立たないように偽装されたエレベーターがあり、そこから出入りしている。
タクヤ、ハンゾーのストレンジャーズ入りから3ヶ月がたち、4月も終わろうとしている。
今日まで重力ルームにカンズメにして鍛えていただけあって大分オーラの出力も保持時間も延びたみたいなので久しぶりにスカウターではかってみた。
タクヤのAOPは
AOP = 100
MAX_AOP = 2500
ハンゾーのAOPは
AOP = 85
MAX_AOP = 1100
まで伸びていた。
「そろそろ、ハンゾーを天空闘技場につれてってもいいんじゃね?」
俺は一応ハンゾーの師匠ということになっているハオに進言する。
「そうだな、そろそろ色々な念能力者との戦いの訓練をする時期かもな」
ハオもハンゾーの仕上がり具合に同意し、タクヤ、ハンゾーの天空闘技場行きが決定したのだった。
因みに何故タクヤまで天空闘技場に連れて行かれたかと言うと、ずばり、ヒソカ対策である。
ぶっちゃければ、ヒソカに興奮されて生き残れそうなのはそうはいない。
ずばり、一行の護衛扱いなのである。
まあ、本人も闘技場でひと暴れしてストレス発散したかったらしいので今回の扱いも願ったりだったらしい。
・・・そう言えば、今あっちには原作主人公組がいるんだったっけ。
一抹の不安を感じながらもハオたちを見送り、俺は俺の仕事に戻るのだった。
五月に入った。
ハオの報告からするとタクヤもハンゾーも順当に勝ち上がって200階クラスで暴れているらしい。
あんまり勝ちすぎると慢心してほんとの強敵が見抜けなくなりそうなのでその辺は注意してもらうようにした。
ハオもその辺は気になっていたらしく、タクヤはともかくハンゾーがそうならないように注意しているようだ。
まあ、ほんとに天狗になっちゃったら、一度痛い目にあわせておけばいいだけだ。
天空闘技場での戦いなのだから早々死にはしないだろうし。
今はハオたちのことよりも自分のことのほうが重要だ。
ハンター試験の折に一つの山場を突破した『ワールドゲート』だったが、その後、再び壁にぶつかっていた。
原因は純粋な技術不足につきる。
発想の転換や単純な大出力だけでは世界の壁を超えられないため、段階的には殆どハンター試験時から先に進んでいなかった。
その分、システム自体を何度も組み直し、作り直しをしたため異世界の観測自体は非常にスムーズかつ鮮明に行なえるようにはなっていたが。
今は、壁を乗り越えられる技術的ブレイクスルーが必要であった。
「こうなってくると、グリードアイランドの製作者達に意見を求めたくなるなぁ」
おそらく、現在存在するトップクラスの神字技術者はグリードアイランドの製作スタッフである。
彼等に師事することが出来れば、『ワールドゲート』の技術的困難を解決する糸口が見つかるかもしれない。
運がよければ本人達が知恵を貸してくれることもあるかもしれない。
しかし、現実は非情である。
現時点でグリードアイランドを入手する手段はほぼ無いといって良い。
市場に情報が流れたグリードアイランドはほぼすべてバッテラ氏が回収しているだろうし、今は既に5月だ。
今から、所在不明分のグリードアイランドを探し出しても9月までに見つけ出すことが出来るかはかなり分が悪い。
9月にはヨークシンドリームオークションで7台のグリードアイランドが競売に賭けられるのだからそっちの購入を目指した方が早いだろう。
となると、9月に入るまでこのままシステムをいじり続けるよりは、俺も修行をしていた方が良いかも知れない。
なにしろ、『9月=ヨークシン=旅団襲来』の公式が当てはまるのは決定済みなのだから。
どうも最近俺って運が悪いんじゃね?と思うところがあり、自分のホームに厄介ごとがやってくるとなると高確率で自分の下にもやってくるような気がしてならないテオなのであった。
「うし、そうと決まったら修行に入るか」
俺はストレンジャーズの通常業務などはゴクウとテトラに丸投げし、数ヶ月ぶりに自分の修行を行なうこととした。
まずは、何は無くとも顕在オーラの出力アップである。
俺の念能力『紙々の世界』は顕在オーラがモロに念能力の自由度に直結しているため、顕在オーラはあればあるほど良い。
タクヤはハンゾーにやらせていた重力ルームでのカンズメを俺も行なうことにした。
だが、ただそのまま行なうのでは色々と時間もかかるためちょっと重力制御系を書き換えて負荷を水増しすることにした。
「ぬぅお!?」
現状出力の1.25倍で設定してもかなりきつく、体感的は2倍3倍にしたような錯覚があるほどきつくなるものである。
さらに高負荷状態での念能力の運用を行なうことでより高出力で精密な念操作が出来るように訓練を続けた。
5月も半ばを過ぎた頃、ヒーローズソサエティから連絡が来た。
ヒーローズソサエティの幹部の一人、カルラからである。
あって話したいことがあるとのことでこちらに出向きたいとのことであった。
元々は1月のハンター試験の折に知り合ったのだがその後もちょくちょくと連絡を取り合っていた。
自分のところの技術とは方向性の違ううちの技術にもいくらか興味があったらしい。
現在、ヒーローズソサエティはストレンジャーズの上得意であることもあり、カルラとの会談に応じることとなった。
カルラの用事は単純に仕事の依頼であった。
だが、ちょっと以上に難しい仕事である。
俺は一昔前にゴールドクロスの作成を依頼されたことがあり、獅子座と水瓶座のゴールドクロスの作成に着手したことがある。
その時に要求された仕様に答えるためにかなり希少なレアメタル等を多量に使用したためすばらしい性能を発揮した代償にまったく量産の効かない凄まじく金のかかるモノに出来上がってしまった。
まあ、金額や掛けた手間に見合うすばらしいものになったと自負しているし、実際に使用者からも苦情などは無い。
カルラの依頼とは、そのゴールドクロスのうち、山羊座のゴールドクロスの作成依頼であった。
どうやらどこかで俺の創ったクロスの保有者と遭った事があるらしく、俺のことを聞き出したらしい。
ゴールドクロスを装着できる条件についても聞き出していたらしく、自分ならば装着できるといってきた。
・・・念能力が『エクスカリバー』なんだ。
それならば、確かに山羊座のゴールドクロスの装着者としてふさわしいだろう。
だが、残念ながらいくら資格があっても既にゴールドクロスを作成するための材料が無い。
お引取り願うしかなかった。
「いや、素材については心当たりがあるんだ」
材料不足を理由に断ろうとしていた矢先にカルラが言い出した。
なんでも、原材料となる鉱石の類の出土する山のあたりをすでにつけているらしい。
さすがはヒーローズソサエティの情報網で調べただけはある。
自分のクロスがほしいだけあってその辺に抜かりは無いようだ。
「何処にあるんです?」
さすがに気になった。
あれだけ探しても出てこなかったレアメタルの眠る地である。
カルラは勿体つけるように一つ呼吸を置いてから、言った。
「実は、ククルーマウンテンなんだ」
・・・ククルーマウンテン。
パドキア共和国デントラ地区に位置する標高3722メートルの死火山である。
山の周りも禍々しさを感じさせる深い森に包まれており入り込んだ者の方向感覚を狂わせる樹海となっている。
だが、この山の本当に恐ろしいところはそんなところではない。
問題なのは、この山全体が伝説とまで呼ばれる暗殺一家ゾルディック家の私有地であるということだ。
「カルラさん、アンタ、頭大丈夫?」
「いや、ひどいなあんた!?」
「アホか貴様、レアメタル求めて暗殺一家の私有地に潜り込む気か!?馬鹿なの!?死ぬの!!?」
思わず言葉使いが悪くなるがククルーマウンテンに盗掘に逝こうなどと誘われたら誰だってそうなるだろう。
「いや、案外山を掘るくらいなら許してくれるんじゃないかなと」
「氏ねってリアルに思ったのは初めてだな」
「イグルスとメリクも盗掘を手伝ってくれるって言ってるんだよ、お前が協力してくれたら」
獅子座のイグルス、水瓶座のメリク、確かに昔クロスを創った時に材料が見つかったら残りも創ってやるって約束したけど材料取りに行くところから手伝うとまでは言ってないぞ!!!
なんて厄介なヤツラだ。
結局のところ、カルラの熱い説得に屈してしまった俺はククルーマウンテン逝きを確約させられてしまうのであった。
・・・これって新たな死亡フラグなのでは・・・
たとえ、ジッとしてても死亡フラグは向こうからやってくるらしい。
「ところで」
ククルーマウンテン逝きを約束させられてちょっとへこんでいる俺にカルラが問いかけてきた。
「双子座のゴールドクロスも作ることって出来るか?」
?質問の意図がよく分からなかったがとりあえず答える。
「材料さえあれば創る事は出来るぞ、ただ、クロスの装着者になる条件が『原作の技を念能力で再現すること』だから装備できるヤツが出てくるかどうか」
と言うか無理だと思うが。
ギャラクシアンエクスプロージョンはともかくとしてアナザーディメイションは無理だろう。
むしろ、個人の力でやられたら俺たちの立つ瀬が無いし。
クロス装着者の条件は『原作の技を念能力で再現すること』である。
正確には、原作の技を再現できる元となる念能力を開発することが必要なのだ。
原作と『同じ』であるというところがゴールドクロスをゴールドクロス足らしめるだけの強度を与える誓約となっているのだ。
それが、獅子座のクロスにとっては『雷』、水瓶座のクロスにとっては『凍気』なのである。
この基準でいくと、双子座のクロスは銀河を砕くと幻視するほどの『爆発』の力と空間を歪めて異世界への扉を開く『次元』の力だ。
『爆発』はともかくとして『次元』は個人であつかえる範囲を超えてるだろう。
「実は俺の仲間に幻朧魔皇拳を使えるヤツがいるんだが」
マジか。
よく覚えたな。
「出来ればソイツ用にも用意してほしい」
「さっきも言ったけど、創る事は出来ても装備することは出来ないと思うぞ?」
「その当たり何とか調整が効かないか?何とか擬似的にでも能力を再現できればとか」
擬似的に・・・それならば調整は効かなくもないか?だが、かなりピーキーになりそうな。
「一度、その装着者候補の人に会ってみなくちゃ分からないな、どんな風に擬似的に再現したのかも見せてもらわないと調整できないし」
まあ、やってみなくちゃわからないがやってみる価値はありそうだ。
「おお、そうか。ありがとう」
カルラは笑って礼をした。
それから数日後、俺はパドキア共和国にいた。
もちろん、カルラたちと合流してククルーマウンテンを攻略するためだ。
・・・未だに何で自分まで参加しなきゃならんのかと頭を抱えたくなるが此処まできたらさすがに腹をくくった方がよさそうだ。
そろそろカルラが指定してきた集合時間が近づいてきた頃、イグルスとメリクがやってきた。
「あ、お久しぶりです。テオさん」
「ほんとに久しぶりですね、クロス有意義に使わせてもらってます」
うむ、お久しぶり。
でも、挨拶のほかに言うべきことあるよね?
「お前等ほかにいうべきことあるんでない?」
ちょっと青筋立てながら二人を問い詰める。
こいつ等のせいでククルーマウンテンへの特攻に付き合わなくちゃならなくなったのだから少しぐらい文句を言ってもバチはあたらないだろう。
「いや、折角見つかったんだし皆で掘りに行ったほうがたのしいじゃないですか」
「そうそう、久しぶりに一緒の仕事をやりたかったですし」
ふむ、場所がククルーマウンテンでなければなんの掘りに行くのも一緒の仕事も何の問題も無かったんだけどね。
とりあえず、冷や汗たらしながら弁解するてことは貴様等俺が断れなくなるのも見越してやがったな?
生きて帰れたらこいつ等に何か絶対に仕返しをしてやろうと心に決めた頃、最後の一人カルラがやってきた。
「少し遅刻だぞ」
「すまんすまん、他の面子をごまかすのに苦労してな」
カルラは今回わざわざヒーローズソサエティの他の幹部達には内緒にして有給まで使ってやってきたらしい。
なんでも後でばらして驚かせたいそうだ。
俺としてはヒーローズソサエティにちゃんと有給制度が存在することにまず驚いたが。
「んじゃ、逝きますか」
「お約束だが字が違うよ、テオ君」
ほっといてくれ、俺の気分はまさに『逝く』なんだから。
俺たちはククルーマウンテン行きのバスに乗り、原作でも有名な試しの門の前まで来ていた。
確かにこれは一見の価値ありだな、観光名所になるのもわかるな。
「すごい存在感の在る門だな」
「はい、ここが正門で別名黄泉の門と呼ばれ・・・」
観光バスのガイドさん(原作の人ではないっぽい)が丁寧に説明してくれるがぶっちゃけ聞いてない。
改めてみると此処以外の場所からとても入れそうに無いよな。
横を見ると遥か地平線の果てまで続く巨大な壁が見える。
まあ、空を飛んで入ればいいと言う裏技はあるが、普通に扉あけて入ればいいんだからわざわざミケとデスマッチする道を選ぶ必要は無い。
ガイドさんに此処で降りる旨を伝え、バスが次の観光地へと向かうのを見届けてから徐に扉の前にたった。
「んじゃ、開けるぞ」
覚悟を決めて扉に手を当てる。
俺は両腕に力を込めて一気に試しの門を押し開いた。
あとがき
ヨークシン編までのつなぎの話です。
それぞれのパワーアップへの道。
テオは本編復帰早々に地獄送りになるようです。
でもそれが彼のクオリティ。
次回はゾルディック相手取っての盗掘作業です。
感想、矛盾などありましたら、ご指摘を宜しくお願いします。
※9/29 漢字ミスの修正。