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No.8004の一覧
[0] 転生生徒 裕也(現実?→ネギま) 習作[TY](2009/10/22 23:38)
[1] 転生生徒 裕也 プロローグ[TY](2009/09/28 21:38)
[2] 転生生徒 裕也 第一話[TY](2009/09/28 21:39)
[3] 転生生徒 裕也 第二話[TY](2009/09/28 21:40)
[4] 転生生徒 裕也 第三話[TY](2009/09/28 21:41)
[5] 転生生徒 裕也 第四話[TY](2009/09/28 21:42)
[6] 転生生徒 裕也 第五話[TY](2009/09/28 21:43)
[7] 転生生徒 裕也 第六話[TY](2009/09/28 21:44)
[8] 転生生徒 裕也 第七話[TY](2009/09/28 21:47)
[9] 転生生徒 裕也 第八話[TY](2009/05/14 16:28)
[10] 転生生徒 裕也 第九話[TY](2009/05/16 20:30)
[11] 転生生徒 裕也 第十話[TY](2009/05/22 22:07)
[12] 転生生徒 裕也 第十一話[TY](2009/05/31 21:40)
[13] 転生生徒 裕也 第十二話[TY](2009/06/22 23:54)
[14] 転生生徒 裕也 第十三話[TY](2009/07/15 00:04)
[15] 転生生徒 裕也 第十四話[TY](2009/07/15 00:02)
[16] 転生生徒 裕也 第十五話[TY](2009/09/28 21:37)
[19] 転生生徒 裕也 第十六話[TY](2009/10/22 23:35)
[38] 転生生徒 裕也 第十七話[TY](2011/09/04 18:31)
[49] 転生生徒 裕也 第十八話[TY](2011/09/04 18:25)
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[8004] 転生生徒 裕也 第十七話
Name: TY◆7afd6ba4 ID:b5f22841 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/09/04 18:31
諸君、私は研究が好きだ…

諸君、私は研究が好きだ…

諸君、私は研究が大好きだ…

ロボット研究が好きだ。

量子工学研究が好きだ。

生物化学研究が好きだ。

エネルギー工学研究が好きだ。

物理化学研究が好きだ。

プログラミング研究が好きだ。

環境科学研究が好きだ。

知能機械研究が好きだ。

デバイス研究が好きだ。

屋内で 屋上で
深海で 宇宙で
平原で 砂漠で
地中で 水中で
北極で 火口で

この世界で行われるありとあらゆる研究活動が大好きだ…

必死になって組み上げてきた機械が轟音と共に起動するのが好きだ…
それらが自分の意図した通りに動いてくれた時など心が躍る。

自分の研究成果がパクリのプレゼンテーションを撃破するのが好きだ…
悲鳴をあげて野次が飛び交う会議室から出てきた盗作者を見た時は胸がすくような気持ちだった。

資料を纏めた若輩者達が過去の常識を蹂躙するのが好きだ…
緊張のしすぎで枷の外れた年少者が古きにしがみつく老人を何度も何度も否定している様子など感動すら覚える。

利己主義の産業スパイをネット上に曝し上げていく様などはもうたまらない。
泣き叫ぶヤツらが私の降り下ろした指先とともに公開される黒歴史の羞恥でばたばたと薙ぎ倒されるのも最高だ。

哀れなハッカー達が自作の雑多なプログラムで健気にも立ち上がってきたのを逆探知しコンピューターウイルスを送り込みデータを根こそぎ奪った時など絶頂すら覚える。

外国の研究機関に出し抜かれるのが好きだ…
必死に組み上げてきたプログラムの何世代も先を行くものを公開され、我々の努力が一蹴されるのはとてもとても悲しいものだ。

大企業の研究所に手柄をかすめ取られるのが好きだ…
圧倒的な資金力でプロジェクトチームを引き抜かれるなど屈辱の極みだ。

諸君、私は研究を、悪魔のような研究を望んでいる。

諸君、今日から私達の傘下に加わる諸君、
君達は一体、何を望んでいる?

更なる研究を望むか?
睡眠時間すら無い、地獄のような研究を望むか?
思い付くままに手を動かし、ロマンを体現しリアルを殺す…嵐のような技術革命を望むか?

今まで黙って聞き入っていた聴衆は一斉に立ち上がり、思い思いの道具を振り上げ口々に叫ぶ。

「研究!!研究!!研究!!」

壇上からその様子を見るように少し間を置いて

よろしい……ならば研究だ!!

ここに私はロボット工学研究会の設立を宣言するヨ!!

それに呼応するように参加者の雄叫びが地を揺らさんとばかりに轟いた。


6月1日 麻帆良大学 大ホール
この日、ある意味で歴史に残る超の演説からロボット工学研究会のオープニング・セレモニーは開幕した…


転生生徒 裕也
第十七話

「……本当に大丈夫なのですか?」
来賓席の列に座っていた刀子が隣にいる裕也に問い掛ける。

「私も今更ながら不安になってきました」
妙なカリスマを発揮して参加者を統率している超を見ながら溜め息と共に答えた。

「流石に女性陣は混ざってませんね」
明らかに温度差のある一段に目をやりながら葉加瀬が呟く。

「あんな面子だけで構成されてたまるか…技術面はともかく悪ノリが過ぎる」

「裕也さん、ちょっとあっち側のフォローをお願いして良いですか?私はこれからの準備があるので…」
しかめっ面をしている裕也に話に上がっている一団を指差しながら葉加瀬が申し訳なさそうに頼む。

「外部から来て麻帆良になれてない人もいるかもしれないからな…すみません、葛葉先生。お招きしておきながらちゃんとした対応もできず…」
後方に邪魔にならないように立ち上がった裕也は刀子に頭を下げる。

「いえ、気にしないで下さい。招待してくれただけでも十分です」

「そう言ってもらえると助かります…ではこれが終わったら世界樹の広場に」
頭を上げるように言う刀子に一礼してから裕也は麻帆良特有のテンションを目の当たりにして茫然としている一画に向かった。

「立ち直っているようで何よりですね…」
裕也の後ろ姿を見ながら一人呟く刀子だった。

更にその後ろで様子を伺っていた葉加瀬が
「…なんか嫌な雰囲気がします。まあ、裕也さんなら変なことはしないと思いますが」
ぼそりと呟いていた。


時は二週間ほど遡り、ガイノイド研究会

「では、1人1体ずつ設計図を描いてくる…でいいんだな?」
裕也は食後のお茶をすすりながら話を進める。

「そだネ…それを見てもらえば誰の傘下に加わるかも考えやすくなるだろうしネ。はい」
カステラを切り分けながら補足していく超。

「あ、どうも。でもわざわざ分ける必要も無いような気がするんですが…」
受け取ったカステラをむぐむぐと咀嚼しながら葉加瀬は疑問を口にする。

「3つのプロジェクトを同時進行させるんだ。命令系統に混乱が生じないようにしなくてはならないからだろ」
裕也もカステラを食べながら疑問に答える。

「それもあるが発注先が被らないようにとか満遍なくやることを回したり、予算の方にも影響があるヨ」

「あ!超さん、1人でザラメの部分を食べるのはズルいですよ!!」
うまうま言いながら薄皮部分を独り占めしている超に葉加瀬がつっかかる。

「くっ…バレてしまったら仕方ない…裕也はいいのカナ?」
しぶしぶといった様子を一切隠すことなく葉加瀬にも分けていた超が裕也に問い掛ける。

それを受けた裕也苦笑を浮かべ答える。
「ああ、私の分は喧嘩しないよう2人で分けてくれ」

「む…裕也さんから大人の余裕を感じます」
少し不服そうな顔をして葉加瀬が言う。

「そう思うならハカセも遠慮するカ?」
そうすれば全て私の物ネ、と上機嫌に続けた超が何か違和感を捉える。

「話をカステラから戻すが…これからの予定を確認する」
これ以上話が逸れるのを防ぐために裕也が強引に流れを戻し
「まず、今日から5日以内に設計図を描き上げる。そして30日までに完成させて、残りの日と製作の合間を使ってオープニング・セレモニーの準備を進めていく。かなりの強行軍になるが…」
心配そうに二人の顔を見る。

「大丈夫ですよ。5日もあればガ○ガーの設計図を描き上げる事も可能です」
えっへんと胸を張り自信満々に答える葉加瀬。

それに張り合うように
「私なんてのバッ○とタチ○マの両方を描き上げれるヨ」
超も余裕の発言をする。

「それは頼もしい…だが、先に口のまわりに着いているカステラのカスをどうにかしなさいな」
カステラに舌鼓をうちながら裕也はちょっと前から気にしていた事を指摘する。

「なあっ!?そう言うのは早く言って欲しいヨ」
急いで口のまわりを拭いながら文句を垂れる超。

「そうですよ…裕也さんも人が悪い」
葉加瀬も超に続く形で不満をこぼす。

「いや、美味しそうに食べている所に水を差すのはどうかと思ってな。というか手じゃなくてフォークを使って食べればそうはならないだろ」
若干呆れながら二人の不平不満に答える。

「むぐ…さっき終わったばかりなのに、また洗い物が増えると面倒じゃないカ」

「それもそうだが…行儀はあまりに良くないぞ」
少なくなっていたお茶を全員の湯呑みに足しながら裕也が注意する。

「何を今更…洗濯物も一緒に干してるような間柄じゃないですか」
葉加瀬の少々(?)羞恥心の欠けた台詞に頭を抱え脱力しながらつっこむ。
「葉加瀬…その発言は色々とダメだ」

「そうなんですか?」

「いや…私に振られてもネ」
そのまま疑問を投げつけてきた葉加瀬に対して視線をそらしながら超が微妙な反応をする。

「では今後はこんな感じでいくぞ。ああ、後…」
よっこいせ、と年寄り臭い掛け声と共に立ち上がった裕也は半眼で二人を睨んでから
「ちゃんと学校には行くこと。授業をサボって私が呼び出しをくらったり、先生から相談を受けるなんて事はもう勘弁してくれ…」
がっくりと肩を落として頼む。

「何の事ですか?裕也さん」
葉加瀬は露骨に視線を逸らしてしらばっくれる。

「全くネ。身に覚えもないヨ」
態度こそいつも通りだが、冷や汗をだらだらとかいている超が続く。

「ほお…超 鈴音と葉加瀬 聡美が学校に来ていないと連絡を受けて探し回った回数と先生に呼び出されて愚痴を聞かされた回数…合計したら余裕で3桁を超える」
そのおかげで大学の単位が危なかったんだぞ…と恨みがましい視線で二人を射抜く。

「さーて、カステラも食べたし早速作業を始めるカ」
これ以上は危険と判断した超がわざとらしく言う。

「そうですね。学校に行かなきゃならないとなると時間もギリギリになっちゃいますし…」
一緒のタイミングで立ち上がった葉加瀬もいそいそと準備を始める。

「まったく…その言いぐさからするとサボるつもりだったようだな」
裕也は葉加瀬のセリフを聞き逃さず、じろりと二人に疑いの眼差しを送る。

「あ…い、いやそんなことするわけないヨ。ね、ハカセ」

「そ、そうですよ。裕也さんには私達がそんなに信用なりませんか?」
しどろもどろに弁解を始め、揃って渇いた笑い声を上げる超と葉加瀬。

そんな二人の様子を見て呆れ顔をした裕也は片付けの為に立ち上がり
「信じるからな」
と背を向けてから裕也はギリギリ聞こえる程度に呟いた。

「…真面目にやろうカ」
少ししょんぼりした超が言う。

「そうですね…」
葉加瀬も同じように肩を落として応じる。

そのやり取りを盗み見ていた裕也は
(計 画 通 り)
ニヤリと、どこぞの新世界の神を名乗る男のような笑みを浮かべていたとかいなかったとか。


そして時はオープニング・セレモニーに戻る。

お約束の学園長や来賓の有り難いお話の間に、裕也と超、葉加瀬の三人は裏で各々の最終調整をしていた。

カタカタとノートパソコンで確認を行いながら
「で…超、あの演説はなんだったんだ?」
裕也は脇目もふらずに問い掛ける。

「ん?ああ…詳しくは2年後にわかるヨ」
以前作った強化外骨格のような外骨格型ではなく、衣服型の強化服を着込みながら答える。

それを聞いていた葉加瀬は
「やっぱりネタだったんですね。あと、その…裕也さんが居るのに平然と着替えるのはどうかと…」
配線を確認しながら頬を赤く染めてごにょごにょと言う。

「何を今更…というか小学生に欲情するほど堕ちてないぞ」
ため息をひとつ吐いて本気で呆れながら応じる。

「裕也は年上趣味なのカナ?私の演説そっちのけでお姉さんたちとデレデレしてたしネ…」
それに対してムッとした表情を見せた超は内蔵兵装を確認しながら言う。

「デレデレって…当たり障りのない会話をしていただけだろ」
作業がおわったのかノートパソコンを閉じながら答える裕也。

「どうだかネ。裕也も色々溜まってるかも知れないヨ」
バチリと雷撃を手のひらから発しながらぶつぶつと呟く。

「超さん、それは私達のせいでもあるから…あの、手伝いとか、その…」
あうあうと顔を先程以上に真っ赤に染めた葉加瀬がごにょごにょと言っているが

「あのな…それくらい理性で抑えれるだろ。獣じゃあるまいし」

「いやいや、その枷が外れたら獣以上になるかもしれないから尚更危険ヨ」
あーだこーだと話している二人の耳には届かない。

そうこうしている間に

『…以上で祝辞とさせていただきます』

来賓の話が終わり、祝電を読み上げる司会の声が聞こえてくる。

それを聞いた裕也は二人の方に向き直り口を開く。
「さて…そろそろ時間だな。略式ではあるが、ここに試作ガイノイド四型・フィーアの起動式を執り行う」

「起動式と言っても人格プログラムをオンにするだけなんだけどネ」
いつもより堅苦しい言葉遣いの裕也に苦笑する。

「私のTーANK型は装備の制御プログラムを積みすぎて人格プログラムを入れれませんでした」

「葉加瀬のプロジェクトを体現しているような仕上がりだな…っと、話が横道にそれた。それでは起動する」
カチリとスイッチを入れると静かな駆動音が鳴り始める。

ゆっくりと開かれた眼で三人を見回してから
「おはようございます。ドクター」
裕也に一礼する。

「ああ、おはよう。違和感は無いか?」
ざっとフィーアの動作を見ながら問い掛ける。

「はい、問題ありません」
抑揚の無い平坦な声でフィーアは端的に答える。

「そうか…早速ですまないが人前に立ってもらうぞ」
申し訳なさそうに予定を告げる。

「問題ありません。手順はどのようになっているのですか?」
フィーアは感情の一切感じられない表情のまま先を促す。

裕也はそんなフィーアの様子に一瞬だけ悲しそうな顔をするが
「私のプレゼンテーションはこの予定でいく。他の2人は手伝いはいらないそうだから、実質の出番は私の時だけだ」
すぐにいつも通りに戻りプリントを手渡す。

受け取ったプリントを数秒間凝視し
「了解しました」
それを返しながら答える。

「よろしく頼むぞ。で、そちらの方は大丈夫か?」
裕也はフィーアとの話を切り上げて超と葉加瀬に話を振る。

「ええ、こちらも問題なく稼働してますよ」
プログラムを確認しながら答えるのは葉加瀬。

「私も問題ないヨ」
超もそれに続いて答える。

『それではロボット工学研究会の概要についてそれぞれのプロジェクトリーダーから説明をして頂きます』

「タイミングも丁度のようだな。さて…行こうか」
司会の声が聞こえたのを確認した裕太は先陣を切って歩き出す。
その後ろに自然とリリスが続く。

「おお…裕也さんが珍しく積極的です」

「リーダーが先頭じゃないと示しがつかないからネ」
良くも悪くもいつも通りの調子で会話をしながら超と葉加瀬も後に続く。
ズシャンズシャンと重々しい足音を立てながらフードを被ったモノもついて行った。


壇上に三人が揃ったのを確認して司会は降りる。

司会からマイクを受け取った裕也が口を開く。
『では、自己紹介から始めさせて頂きます。私がロボット工学研究会の主任とガイノイド開発プロジェクトのリーダーを勤める沙霧 裕也です』

ざわざわと聴衆からは
麻帆良の最強頭脳任じゃなくて最驚頭脳の方が主任か、やら
アイツが噂のロリロボ…いや、漢のロマンの追求者か、やら
あ…さっきの子だ、やら
色々と聞こえてくるが
『私のプロジェクトについての説明は他の2人の後にさせて頂きます』
早々に話を切り上げて隣にいる葉加瀬にマイクを渡す。

『あー…私はロボット兵器開発プロジェクトのリーダーを勤むる…失礼、噛みました。えー…勤める葉加瀬 聡美です』
やはり葉加瀬が喋り始めても聴衆は囁き始める。
あれが最狂頭脳?やら
普通なかんじだよな、やら
幼女ハァハァ…やら
若干変態じみたのも混ざっていたが気にせずに
『早速ですが、私のプロジェクトについての説明に移らせてもらいます』
話を進める。

葉加瀬の声に応じて後方にリリスと並んでいたモノが前に出る。
そこで聴衆のざわめきが徐々に小さくなり、最終的には静まり返った。
聴衆は教授クラスから野次馬までと幅広いが、麻帆良大学工学部トップクラスだがあまり表舞台に立たない研究会の作品となれば傾聴に値する。

『これが私の新型ロボット兵器開発プロジェクトの根幹を担うTーANK型のプロトタイプです!!』
バサッと音を立ててそれが被っていたフードを取り払う。

そこに立っていたのはサングラスを掛け、筋骨隆々といったスキンヘッドの大男だった。
それを見て感嘆の声を出す者もいれば、隣に立っていたリリスのような容姿を期待していて落胆の声を出した者もいる。

様々な感情が混在している聴衆を尻目に葉加瀬は説明を続けていく。
『このプロジェクトは量産機からワンオフの専用機、TーANK型のような人型はては多脚型など様々なロボット兵器を作ることを主眼に捉えています』
その説明に合わせて様々な設計図や写真がプロジェクタで空中に映写される。

『プロトタイプのTーANK型にはロケットパンチ』
葉加瀬の声に反応してTーANK型プロトタイプが左腕を上げて拳を打ち出す。

偶々、射出された方向にいた聴衆が悲鳴を上げて逃げ惑う。

それを見た裕也は
「おい…大丈夫なのか?」
マイクに拾われない程度に声をかける。

『当たっても痣程度ですむから大丈夫です。続いてドリルパンチ』
いや、大丈夫じゃないだろと裕也を含めた極少数派の思いは届かず葉加瀬は次の指示を出す。

それに応えるかのように左腕を回収し終えたTーANK型プロトタイプは右腕を前に突き出す。

先程のようにいきなり飛び出してこないのを皆が訝しげに見つめる中、それは唸りを上げて高速回転し始める。

「おい…まさかとは思うが…」
再び嫌な予感に襲われる裕也。

「おお、ハカセはわかってるヨ」
それとは対照的に嬉しそうに何度も頷く超。

『それでは…発射!』
葉加瀬の言葉を受けて、再び聴衆に向かって放たれた腕は螺旋を描きながら突き進んでいく。

「流石にあれはマズいだろ!?」

「いや、ちゃんとリアクションを見るとそうでもないネ」
焦りだした裕也をいさめながら超は着弾先へ目をやる。

そこから聞こえてくるのは
回転をさせながらも直進させてくるとは…
ロケットパンチのみならずその先も既に搭載しているのか
有線というのもわかっているな…
といった余裕を感じさせるような言葉の数々。

それを見ていた裕也げんなりした様子で言葉を零す。
「順応性高すぎだろ…」

「普通の人間はこうではないのですか?」
黙って後ろに控えていたリリスが無機質な声で問う。

「あんな集団を基準にしないで…これからお前は様々な人間と触れあっていくんだ。そこから学んでいってくれ」
まだ何も知らないリリスを見て裕也の切実な思いが自然と口にされる。

「了解しました」
リリスはあくまでも淡々と答える。

『と、現在の武装はこれだけですがこれから更に充実化させて行きたいと思っています』
そんな二人のやり取りを尻目に葉加瀬は話を締めるために進めていく。
『将来的には変形、合体機能の搭載も視野に入れているのでロボット兵器のロマンを求める者は私のプロジェクトへ。これで新型ロボット兵器開発プロジェクトの説明を終わります』

それに応えるかのように拍手が鳴り始める。
あまりそういうのに慣れていない葉加瀬はテレテレと恥ずかしそうに下がっていく。

そして、葉加瀬とすれ違う形で超が前に出る。
それを見た聴衆の大半は何故か姿勢を正し直立不動となる。

それを満足げに見渡してから口を開く。
『諸君、私が軍用強化服開発プロジェクトのリーダーを勤める超 鈴音ヨ』

今までのリアクションとは異なり、微動だにせずまるで訓練された軍隊のような様相である。

「…また雰囲気に取り残されてどん引きしている一団が出来ているぞ」
先程フォローしてきた集団の方へチラリと目をやった裕也が呟く。

「そんなに早く慣れるのは無理ですかね…」

「当たり前だろ。麻帆良は良くも悪くも規格外な所だ」
小声で返してきた葉加瀬に裕也はその規格外の最たる例の方を見る。

そうは言うものの、裕也自身も色々な意味で規格外であるという自覚は皆無である。

そんな二人のやり取りを知ってか知らずか超は説明に移り始める。
『ではプロジェクトの説明に移らせてもらうヨ。軍用強化服開発プロジェクトは名前の示す通りパワードスーツの開発をやていく所ネ。まあ、言葉だけで理解するのは少々厳しいと思うから実演させてもらうヨ』

超のその言葉と同時に床から人形がせり上がってくる。

『今、私が着ているのが現在使用可能な強化服ネ。ここで動作原理やらを語っても良いのだが…』
ちらりと時計を確認して
『明らかに時間が足りないので性能だけを見せたいと思うヨ』
と言うと人形の説明に移っていった。


それを見ていた学園長が
「はて…あんな機能あったかのう?」
近くに座っているタカミチに問い掛ける。

「西教授が暇を見つけては学園中の至る所を改装…いえ、改造していたとは聞いていましたが…」
流石にここまでやっているとは思っていなかったのか引きつった表情で答える。

「他にもやってそうじゃの…その辺りは何も聞いとらんかの?」

「これ以上僕は何も…明石教授はどうですか?」
タカミチは学園長の質問を隣に座っている明石教授に回す。

「そう言えば最後の飲み会で、ワシの後継者に全て託したとも言っていましたね」
話を振られた明石教授は顎に手をやりながら答える。

「後継者というのは十中八九、沙霧くんの事じゃろうな。まあ、彼ならそこまで暴走せんだろうから大丈夫じゃろ」
いつも通りに妙な笑い声を上げる学園長。

「あの2人のストッパー役も勤めているみたいですしね」
先程からこめかみを抑えている様子の裕也を見ながらタカミチも頷く。

「麻帆良の最驚頭脳と言われてはいますがね…」

「それは耳にしとるよ」
明石教授の呟きに反応した学園長が嬉しそうに語り出す。
「工学部のとある研究会には最強、最驚、最狂の3人の天才がおるとの」

「言葉だけではなかなかわかりにくい違いですね…」
苦笑しながらタカミチも話に加わる。

「最強はどんなジャンルも完璧以上にこなす超 鈴音。最驚は到底考えつかない技術を平然と扱う沙霧 裕也。最狂は科学の進歩の為なら多少の非人道的行為もやむなしと公言してはばからない葉加瀬 聡美」

「わかりやすい事を言った者も居たもんじゃな」
明石教授の言葉に感心したように言う学園長。

「いえ…これのパンフレットに書いてあるんですが…」
そんな学園長へ言いにくそうにパンフレットの裏を見せながら言う。

「なんじゃと…」
そこに書かれた編集・超 鈴音の字を見て学園長は目を見開く。

「ならこれは自分たちで考えたんじゃ…」
タカミチの呟きによってそこには形容しがたい空気が漂っていた。


学園長たちがああだこうだと話している間に超の説明は佳境に入っていた。

『この様に非力な私でもこれを着れば大人顔負けな力を発揮できるようになるヨ』
と笑顔で告げる超の後ろにはプスプスと煙を上げる人形だった物が鎮座している。

初めに姿勢を正した面々はそのまま直立不動で聞き続け、テンションに置いていかれた者も真剣な表情で見入っていた。

『だが、察しの良い皆ならばコレにはまだまだ改良の余地があるのがわかるだろう。無論、私もこれで満足するつもりは毛頭無い!!』
超の言葉にどこからともなく感嘆のどよめきが走るが止まらず
『将来の展望は現状の衣服型から脱却し、外骨格型への発展を目指すヨ。そしてゆくゆくは…メタルヒー○ーシリーズのビー○ァイターカブトの強化服ネオイン○クトアーマーを実現させる!!』
力強く握った拳を高く突き上げた。

それに呼応するように聴衆も拳を突き上げる。
それにちゃっかり来賓席の一部の方々も混ざっていた…

『この想いに共感した、装着してみたい、製作してみたい…そんな熱い想いを持った者の参加を私は待っている!これで私の説明は終わらせてもらうヨ』

一礼して下がっていく超に惜しみない拍手が贈られる。

「私が本気を出せばざっとこんなもんネ。さて…締めは頼んだヨ、裕也」
裕也にマイクを手渡しながら超が囁く。

「頑張ってくださいね」
隣の葉加瀬も声をかける。

二人からの激励を受けた裕也は
「ああ…フィーア、行くぞ」
頷きリリスに声を掛け前に出る。

「はっ」
短い返事をしたフィーアは裕也の後に続く。

『自己紹介は既に済んでいるので早速、ガイノイド開発プロジェクトの説明に移らせてもらいます…フィーア、挨拶を』

裕也の言葉に従い、隣まで出てきたフィーアは丁寧にお辞儀をしてから
『はじめまして。試作ガイノイド四型・フィーアです』
平坦な声で自己紹介をする。

そこで聴衆はにわかに騒がしくなる。
研究者は口々に興味を持った部分についての話し合いを
他の面々…来賓や野次馬はただただ関心の声を

裕也は聴衆が静まるのを待たずに
『彼女…四型・フィーアは試作ガイノイド一型・アイン、二型・ツヴァイそして三型・ドライの集合体と言えます』
説明をきりきりと進めていく。
『リリスはAIもボディもまだまだ発展の余地があるので、当面はフィーアの改良を主軸に進めていく予定です』

それを受けて聴衆からは
あまり魅力を感じないな、やら
武装はどうなるんだ、やら
ロリ型はないのか、やら
肯定的とは言えない声が聞こえてくる。

『先の2つのプロジェクトに比べて地味であるのは否定しない…だが、扱う内容では負ける気はない』
それに裕也は萎縮せずに堂々と返し
『ガイノイド開発プロジェクトはただのガイノイドではなく心を持ったガイノイドを目指す。研究者として心なんて曖昧なものを求めるなんて馬鹿げてるかもしれないが…先の2つにはないロマンがあるだろ?』
滅多に浮かべない悪役のような笑みを浮かべて問い掛ける。

先程までざわめいていた聴衆も来賓席にいた学園長たちも予想していなかった言葉に呆気にとられる。

『さて…プロジェクトの説明はこれまでにして締めに移らせて貰います』
未だにぽかんとしている皆を気にせずに予定を進めていく。

「今日から私たち、ロボット工学研究会の傘下に加わる諸君…私たちからの頼みは一つだけだ!」
裕也はあえてマイクのスイッチを切り、声を張り上げる。
「研究者として己に課した課題を決して諦めるな!思考を…手を止めるな!」
いつもと違い、強い口調で続ける。
「それさえ守ってくれるのならば…私たちは君達に惜しみなく力を、知恵を、技術を貸す事をここに宣言する!!」

しんと静まり返った聴衆を見て
(リアクションが無い…すべったか?)
ポーカーフェイスを保ちながら内心は冷や汗ダラダラな裕也だった。




あとがき
今回はネタを増量してみたTYです。
冒頭の演説はネタですので実際の事象に何ら関わりはありません…一応、言っておきます。
一気に書こうとすると文章が荒くなってる気がする…


感想レス
波洵様
今回の話で研究の方を進める下準備が整ったのでこれから本格的にやれる…はずです。
ネタ切れする事は多分、無い。

PON様
超はともかく葉加瀬がヒロインてのはなかなか見ませんよね…
期待を裏切らないように努力していきます。

mizu様
煮こごりもいいですね。
でも実際につくるのは煮魚ばかり…

2011/9/4 試作型ガイノイドの名前をリリスからフィーアに修正


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