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No.8004の一覧
[0] 転生生徒 裕也(現実?→ネギま) 習作[TY](2009/10/22 23:38)
[1] 転生生徒 裕也 プロローグ[TY](2009/09/28 21:38)
[2] 転生生徒 裕也 第一話[TY](2009/09/28 21:39)
[3] 転生生徒 裕也 第二話[TY](2009/09/28 21:40)
[4] 転生生徒 裕也 第三話[TY](2009/09/28 21:41)
[5] 転生生徒 裕也 第四話[TY](2009/09/28 21:42)
[6] 転生生徒 裕也 第五話[TY](2009/09/28 21:43)
[7] 転生生徒 裕也 第六話[TY](2009/09/28 21:44)
[8] 転生生徒 裕也 第七話[TY](2009/09/28 21:47)
[9] 転生生徒 裕也 第八話[TY](2009/05/14 16:28)
[10] 転生生徒 裕也 第九話[TY](2009/05/16 20:30)
[11] 転生生徒 裕也 第十話[TY](2009/05/22 22:07)
[12] 転生生徒 裕也 第十一話[TY](2009/05/31 21:40)
[13] 転生生徒 裕也 第十二話[TY](2009/06/22 23:54)
[14] 転生生徒 裕也 第十三話[TY](2009/07/15 00:04)
[15] 転生生徒 裕也 第十四話[TY](2009/07/15 00:02)
[16] 転生生徒 裕也 第十五話[TY](2009/09/28 21:37)
[19] 転生生徒 裕也 第十六話[TY](2009/10/22 23:35)
[38] 転生生徒 裕也 第十七話[TY](2011/09/04 18:31)
[49] 転生生徒 裕也 第十八話[TY](2011/09/04 18:25)
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[8004] 転生生徒 裕也 第十五話
Name: TY◆7afd6ba4 ID:b5f22841 前を表示する / 次を表示する
Date: 2009/09/28 21:37

転生生徒 裕也
第十五話

仕方ないと言った感じの態度で聞いていた裕也は
「歴史の改変のために未来から来た火星人…ねぇ」
未だに半信半疑と言った様子で確認する。

「うむ、未来人である証拠は反重力発生装置とかの今の時代では再現不可能な未来技術ではダメカナ?」
ある程度落ち着きを取り戻した超は自分の話の証拠となりうる点を上げる。

「確かに少し冷静になれば、あれは未来技術と言うに相応しい代物ですね…むぅ、本当に未来人なんですね超さん!!」
葉加瀬は改めて驚き聞き返す。

「……本当に信じてもらえてなかったみたいだネ」
がっくりと肩を落とした超は力無く呟いた。

「では超、歴史の改変を何故行う?そして君はその果てに何を望む?」
裕也は未来人云々は納得したのか話を次の内容へ移していく。

超は一瞬口を開くのを躊躇うが
「…私がやろうとしているのは魔法使いの存在を世界に公表する事ネ。その果てには今の世界にあるありふれた悲劇がほんの少し減る…ただ、それだけだヨ」
それを振り払らい、真剣な面持ちのまま続ける。
「手段の方は時期が来たら教えるヨ。かわりと言っては何だが、タイムトラベルの方法は教えておこうかナ?」
おもむろに立ち上がった超は、確かその箱の中に…などと言いながら何かを探し始める。

「それは後にしてくれないか?目的はわかったが、まだ私の質問に答えていない部分があるぞ。超 鈴音が何故それを行い、何を得るのか…がな」
ごそごそと箱をあさっている超を制止して裕也も厳しい口調で再度問い掛けた。

動かしていた手を止め裕也の方へ向き直った超は
「む…女の過去を根掘り葉掘り聞くのは感心しないヨ」
へらりと真剣な表情を崩し茶化すように答える。

そんな超に裕也は溜め息をついてから
「そうではない。過去はどうでもいい…とまでは言わんが、私が聞きたいのは超自身の動機だ。協力出来るかどうかはわからんが、それ位は本人の口から聞いておきたい」
真剣な表情を崩さずに告げる。

「敵対…という選択肢は無いのカナ?」
崩ずした表情を再び引き締めた超がほんの少し震えた声で聞き返す。

裕也は目をパチクリとさせてから
「敵対?何故私が超と敵対しなければならない?」
何を有り得ない事をと言った態度で応える。

「裕也は将来、麻帆良の教員になるんだろ?そうしたら「そのつもりだが、私がなるのは普通の先生で魔法先生になるつもりは無いぞ」はい?」
どこかいじけた様に聞いてくる超の台詞にかぶせるように裕也は告げる。

「超さんは沙霧さんの事になると思考が鈍くなりますね…」
黙って脇で話を聞いていた葉加瀬が苦笑を浮かべながら言う。

「な…葉加瀬は知っていたのカ!?」
愕然とした表情で超は一気に距離を詰めて葉加瀬の胸倉を掴みガクガクと高速で揺さぶり始めた。

「ちょ…超さ…ん…止め…て…」
面白いくらいに顔を青くした葉加瀬が弱々しく静止を求めるが

「言ったら止めるから早く吐ヨ!!」
テンパってる超は葉加瀬の言葉に耳を貸さず更に加速する。

「吐く…本当に…吐いて…しま…い…ます…」

「超、少し落ち着け。そのまま続けると誰も望まないモノから先に吐かれるぞ」
本格的にヤバくなってきた葉加瀬を見かねて裕也が超を静止する。

「む…流石にそれは勘弁ネ。さ、止めたからキリキリ吐くヨ」
渋々と言った態度で超は葉加瀬を解放してから再度問い掛ける。

「はぁ…まだクラクラするんですが…ふぅ、沙霧さんが魔法先生に何故ならないか…という話で良かったですよね?」
自分のこめかみを抑えた葉加瀬は一度確認してから口を開く。
「まず第一に沙霧さんの関係者にあります。エヴァンジェリンさんは言うまでもなく、最近では私達も目を付けられてますからね…」

「何?それはどういう事だ?」
ぐるり、と葉加瀬から超の方へ顔を向けながら問い掛ける。

「あ…いや…ちょっと覗きをネ。でも、まだ疑惑のレベルで尻尾を掴まれてないから大丈夫ヨ」
裕也からの視線にわたわたと慌てながら超は釈明する。

「…疑惑をもたれた時点でアウトのような気がするんだが」

「凶悪犯…まあ、エヴァンジェリンさんに対してはそうでもないかもしれませんが、問題児候補の私達とモロに関わりを持ってるので機密情報のやりとりで問題があります。そして第二に学園長からの条件と沙霧さんの目的にあります」
何ともいえない表情を浮かべている裕也を無視して葉加瀬は続ける。
「研究に時間を割きたい沙霧さんに学園長の示した条件は麻帆良に所属している事のみです」

「なる程…せっかくの好条件なのに色々面倒くさい魔法先生になったら本末転倒になってしまうからネ」
葉加瀬に続いて口を開いた超がふむふむと頷く。

「まあ、私が持てる情報から予測できるのはこれ位ですね…あれ?話ではアインは超さんが手を加えたのは一部で…そうなら…」
説明の補足をしていた葉加瀬が途中から険しい顔をしてぶつぶつと何事かを呟きながら考え込む。

「大体あっているが…何か腑に落ちない事でもあったか?」
そんな葉加瀬の様子を不振に思った裕也が問い掛ける。

「あ、いえ…ガイノイドについて何ですが…アインの基礎フレームは西教授と沙霧さんだけで作ったんですよね?」
裕也に話し掛けられて意識を現実に戻した葉加瀬が問い掛ける。

「ああ、西教授と私だけだ。アインの基礎フレームの設計図に設計者の名前として書いておいたはずなんだが…見せていなかったか?」
あれ?と言った具合に首を傾げる裕也。

「いえ…見せてもらいました。だからこそ気がついたんです」
そんな裕也にビシッと指をさし続ける。
「あの設計図が書かれたのは2年前…ですが、その時代では存在しない技術…というか、出どころ不明な技術が随所に用いられています」

「え…そうなのカ?」

「そうなんです!!まずこの関節部分なんですが…」
キョトンとした超の質問に、わったわったと設計図を引っ張り出した葉加瀬がまくしたてるように説明していく。

「あー…言われてみればそうかもしれないヨ。てか私もよくわからない部分があるんだガ…」
設計図を改めて確認して冷や汗を浮かべながら呟く。

「なん…だと…!?」

「いや、ハカセ…そんなリアクションされても困るんだガ…」
目を見開き、愕然とした表情を浮かべている葉加瀬に若干引きながら超はツッコミを入れる。

「失礼、何故か言わなくてはならないような気がして…」
自分でもどうしてそんなリアクションをしたのかわからない様子で葉加瀬は首を傾げる。

超はそんな葉加瀬をスルーして裕也の方を向き
「今まで気がつかなかった私が言うのも何だが…コレは私のいた時代にも考案されていない技術ヨ。まあ…出来る限りでいいから説明してくれるカナ?」
いつも通り気負い無く問い掛ける。

「沙霧さん…この技術ははっきり言って異様です。何の脈絡もなく、実用化されている技術…流石に才能の一言で済ませるのは無理なレベルです。個人的にはかなり気になりますが…」
葉加瀬も初めの内はシリアスな感じだったが最後にはいつも通りに戻っていた。

「まあ、私は裕也がどんな生い立ちでも気にしないけどネ」

「超さん、それは私が言おうとした台詞なのに…」

「ふふふ…言った者勝ちヨ」
その超の言葉を皮きりに、喧々囂々と言った様相の口論が始まった。

初めの内はどうして今まで気がつかなかったんですかなどの普通の口論だったのだが…

数分後

「大体、人の台詞を奪ってまでフラグを立てたいのですかっ!?」
ドン、と机に拳を叩きつけた葉加瀬が立ち上がりながら叫ぶ。

それに呼応するように机を叩き、立ち上がり
「ハカセには必要のないフラグなら私に譲ってくれてもいいはずヨ!!」
負けじと超も一喝する。

フラグってなんだ?と一人悩み始めた裕也を置いてけぼりにして口論は続く。

「私は元々出番も見せ場も少ないんですよ!!その数少ない機会をあなたはっ…!!」
と親の仇を目にしたかのように超を睨みつける。

「うっ…それを言われると痛いネ…」
文字通り鬼気迫ると言った葉加瀬に当初の勢いが削がれる超。

ここが攻め時と一気に押し切ろうと更に攻勢に移る葉加瀬だったが
「それに、そのフラグが必要ないなんて言って…げふっ!?超…さん…何をっ…」
瞬動とまではいかないものの、高速で間合いを詰めた超の拳撃を鳩尾に受けて悶える。

裕也との距離を測り、葉加瀬のみに聞こえるような声量で
「後でお話しようカ?」
全く感情を感じさせない声で超が告げた。

「…何をしている?」
思考に没頭していた裕也だったが、ふと意識を向けると妙に距離の近い二人に問い掛ける。

息も絶え絶えと言った様子の葉加瀬にかわって
「ハカセがメタな発言をしようとしていてネ…とっさに動いてしまったんだヨ。すまない、ハカセ」
しれっと嘘をつく超。

「安易に暴力に走るのはいただけないぞ、超」
まだ苦しそうな葉加瀬の背中をさすってやりながら裕也は超に注意する。

「む…気をつけるヨ」
そんな二人の様子を見て少しつまらなさそうな顔をした超だったが素直に謝る。

「そうしてくれ。本当に大丈夫か?」
超が反省しているのを確認してから裕也はもぞもぞと動き始めた葉加瀬に問い掛ける。

「ええ…なんとか。で…私たちは何を話していたんでしたっけ?」
いてて…と鳩尾辺りをさすりながら葉加瀬が誰ともなしに聞く。

「私に聞かれても…」

「確か…AIに勇気とか抽象的なものが存在するのかと、確率を勇気で補えるのかじゃなかったカナ?」
一人違う事を考えていた裕也の答えに続いて超が素知らぬ顔で嘘を吐く。

「そう言われればそうだったような…でもその手の内容で超さんが本気で攻撃してくるのは珍しいですね。私は一体どんな事を…」
超に偽りの記憶を刷り込まれた葉加瀬は唸りながら考え始める。

「ハカセがEXAM○ステムとか第六○回路を作って搭載させようとか言い始めるからついネ」
これ幸いと事実を完璧にねじ曲げる超。

「…ノーコメントだ。というかそんな内容の口論なら私も参加していたような気がするんだが?」
裕也は若干顔をしかめて首を傾げる。

「細けぇこたぁ気にすんな」
そんな裕也に形容しがたい表情の超が左手を振りながら応える。

「………」

「…超さん、頭は大丈夫ですか?」
唖然としてリアクションの取れていない裕也に代わって葉加瀬が真顔で心配する。

「で、AIに勇気…というか感情でいいカ。それがあるのかだったネ」
と二人からの視線に耐えきれなくなった超が強引に話を進める。
「アインとドライは微妙だがツヴァイは確実に感情が芽生え始めていたヨ。これは私とハカセの共通の見解ネ」

「何?定期検査ではそういった結果は出ていないぞ」
正気に戻った裕也は目を見開き超と葉加瀬を交互に見る。

「気づかなかったのカ?まあ、ツヴァイは意図的に裕也の前でそういう行動をしていなかったように見えたから仕方ないと言えば仕方ないカナ…」

「私達も確たる証拠がある訳じゃないんですけどね。言動や行動から割り出した結果です」
一人で勝手に納得している超の後を引き継いで葉加瀬が続く。

「感情か…何故私には隠そうとしていたのだろうな…やはり私のよう「てい」痛っ!?」

「何一人でネガティブに入ろうとしとるカ。それとも本格的に中二病でも患ったカナ?」
自虐的な笑みを浮かべ始めた裕也の頭を超が小突いてから問い掛ける。

「超さん…そういうのは自覚が無いみたいですからそっとしといてあげましょうよ」
葉加瀬はついと裕也から目をそらし、やんわりと諭す。

「…そういえばいつだったかエヴァンジェリンに裕也もそんな事を言ってたネ。すっかり忘れてたヨ」
ぽんと手をたたいてから得心がいったように超が頷く。

「ちょっと待て2人とも、何故少しネガティブな発言をしただけで中二病呼ばわりされなければならない!」
ポカンと口を開けて惚けていた裕也が早口にまくしたてる。

「で…話を戻すが、AIに感情が芽生えたいうのはかなり強引だがツヴァイの話しで納得してもらうヨ」
そんな裕也を意に介さず超は話を進める。

スルーされた裕也は無視されるのがこんなに辛いとは…やら、後でマスターに謝っておくかなどと呟きどんよりとしたオーラを身に纏う。

「データで実証出来なかったのが悔しいですが、親としての贔屓目を抜いても彼女には感情があったと言えますね」
まあ、科学者としてはどうかと思いますがね…と苦笑いを浮かべながら葉加瀬も裕也には触れずに頷く。

「だが、肝心要のツヴァイのAIは大破…アインとドライはツヴァイより酷い状態だ。ヌルがアレをやっていると言ったが、長年封印していたのに感情があるとは考えづらい」

「立ち直りが早いですね…」
ついさっきまで発していたオーラが無かったかのような態度で話に混ざってきた裕也に葉加瀬がぼそりと突っ込む。

「そこで裕也の話していたヌルの行動が関係してくるんだヨ」
超は両方スルーして話を続ける。
「ヌルが学園の電子データを片っ端から吸収したと言てただろ?その時に麻帆良にいる電子精霊群も取り込まれただろうからネ。それが原因と考えれなくもないヨ」

「電子精霊ね…門外漢の私にはさっぱりだ」
お手上げと言ったジェスチャーをしながら裕也は告げる。

「右に同じく…」
葉加瀬も頬を掻きながら続く。

「まあ、ヌルにも感情が芽生える可能性があった程度の理解で構わないヨ。で…次に勇気で確率を補えるかだガ、裕也ならおおよその見当はつくんじゃないカナ?」
電子精霊について詳しく説明する気が無いのか、超はニヤニヤと笑いながら話を裕也に振る。

「…ノーコメントだ」
裕也は頬をひきつらせながら答える

「沙霧さん?」
流石に態度が変だと気がついた葉加瀬が首を傾げながら声をかける。

「ふふふ、聞いてやるなハカセ。それこそ裕也の中二病…黒歴史と言っても差し支え無い時期の産物だからネ」
最早、ニヤニヤではなくニタニタといった笑みを浮かべた超が裕也をいたぶるように言う。

「ぐっ…」
珍しく何も言い返せない裕也は己の過去の所業に臍を噛む。

「激しく気になるのですが…」
裕也の観察を終えた葉加瀬は超の方へ視線をやり続きを促す。

「あの頃の裕也が作ったのは熱血回…」
興味津々といった様子の葉加瀬に答えて説明をしていた超だったが途中で口を閉ざす。

「どうかしまし…」
唐突に黙った超に葉加瀬は首を傾げ問い掛けようとするが違和感に気がつき押し黙る。

超と葉加瀬はアイコンタクトで

(超さん、何か後ろから私でもわかる位のプレッシャーを感じるのですが…)

(振り向いてはいけないヨ、ハカセ。今そこには修羅がいる)

(修羅って…もしかして沙霧さんは真剣に私たちを殺る気?)

(いや…あれは無意識に溢れ出てるヤツネ)

(いやいやいやいや、無意識でそんなものを出すなら意識したりしたらもう毘沙門天とか出しちゃうんじゃ…)

(多分、あれは無意識だから出来ている技…今ならまだ引き返せるヨ)

(沙霧さんの黒歴史はかなり気になるのですが…命には代えられませんか)

(うむ、これの続きはまたの機会にするヨ…)

意思疎通を図りお互いの保身に走る。
因みにこの間わずか0.5秒であった。

「で…沙霧さん?」
何も気がついていない素振りで葉加瀬が裕也に話を振る。

裕也から発されていた強烈なプレッシャーは
「………はっ、なんだ葉加瀬?」
意識を取り戻すと同時に急速に収まっていった。

「本当に無意識だったのカ…」
それを見ていた超は頬をひきつらせながら呟く。

「そろそろ沙霧さんの話に戻さなくてはと言う話になったんですが…」
超の呟きが裕也の耳に入らないように葉加瀬がまくしたてる。

「…ああ、そんな事を話していたな」
すっかり忘れていたな…とぼやいてから裕也は姿勢を正し
「最初に言っておく。私もいまいち把握しきれていないからな」
との前置きをしてから裕也はエヴァンジェリンと別荘でした会話の内容を語り始めた。


学園長室で書類整理を中止した学園長とエヴァンジェリンが向き合っていた。

「面白い事の…おぬしにとっては面白くともわし等にも面白いとは限らんのじゃが…」
右手で自分の髭をいじりながら学園長がぼやく。

鷹揚に頷いたエヴァンジェリンは
「それもそうだが、かなり興味深い事であるのは変わりない。その前に…入ってきたらどうだ?タカミチ」
じろりと扉の方を睨みつける。

「いや…タイミングが悪くてね。入るべきか迷ってしまったんだよ」
はっはっは、と快活に笑いながら書類の束を小脇に抱えたタカミチが学園長室に入ってくる。

タカミチの持っている書類に目を向けたまま
「ふぉ?今日の書類は全て持ってきたと思ったんじゃが…」
学園長が問い掛ける。

「先程、工学部の事務から緊急の案件だと渡されまして…」
苦笑を浮かべたタカミチは書類を学園長に手渡す。

「それは珍しい。どれ…なかなか面倒くさい事になっておるの」
受け取った書類に目を通した学園長が溜め息をつきながらぼやく。

「おい、ジジイ。こっちの話を進めていいのか?」
若干イライラしているエヴァンジェリンが詰め寄りながら問い掛ける。

「ぬ…ちょっと待っとくれんか?おぬしにも関係のする事じゃしの」
ほれ、と読み終えた書類をエヴァンジェリンに見せる。

訝しげに書類を奪い取ったエヴァンジェリンだったが
「なんだ、この事か。何を今更…別に問題なかろう」
あっさりと興味を無くして机の上に放り投げる。

「いや…問題ありじゃろ。というか沙霧くんの研究に参加しておるなど初耳じゃぞ」

「何?隠れたりせずに堂々と研究室に出入りしているから既に知っているのかと思っていたんだが…」
冷や汗を浮かべながら否定する学園長に小首を傾げたままエヴァンジェリンはタカミチの方へ視線をやる。

「ま、まさか…」
それにつられてギシギシと油がきれたロボットのような動きでタカミチを見た学園長が呟く。

学園長の視線から目をそらして居心地悪そうにしたタカミチが
「あー…お察しの通りです」
気まずそうに事実を告げる。

「何故じゃ!?わしはあれから仕事をさっさとこなして時間をつくり各学区を歩いて噂などに取り残されないようにしてきたのに…っ!!」
それを聞いた学園長は拳を机に叩きつけ慟哭する。

いきなりの学園長の奇行に引きながら
「お…おい、タカミチ、何だアレは?」
エヴァンジェリンは恥も外聞もなく泣き続けている学園長を指差し問い掛ける。

「いや、沙霧君の初陣の後にちょっとね…」
タカミチはを口を濁した後に、はっはっはと渇いた笑いを発して追求を逃れる。

それを聞いたエヴァンジェリンは、すたすたと学園長に近づき
「ふん…どうせ下らないことなんだろ。おい、じじいさっさと話を進めろ」
特徴的な後頭部に鉄扇による情け容赦の無い一撃を叩き込む。

「ぐおぉおぉぉぉ!?傷心の老人に何をするか!しかもわしの後頭部がへこんだらどうしてくれる!!」
叩かれた所を抑えながら学園長は涙目になりながらエヴァンジェリンを睨みつける。

「貴様がそんな事をしても気色悪いだけだ。それに後頭部がへこむなら良いじゃないか。人間に戻れるぞ」
学園長の抗議を一蹴し、エヴァンジェリンはぞんざいな返事をする。

「おお、それは良い案…ってわしは元々人間じゃ!!」

「まあまあ、学園長…少し落ち着いて」
少しのってから目を見開きツッコミとは言い難い雄叫びを発する学園長をタカミチがなだめる。

「で、こちらの用件を話していいのか?」
そんな二人を無視してエヴァンジェリンは自分の為にお茶を準備しながら問い掛ける。

「ぬぅ、お主が手を貸している研究についての内容を詳しく聞きたいのじゃが…」

「そんなもん裕也から聞け。それが心許ないなら超 鈴音でも一緒に呼んでおけ」
未だに後頭部を気にしている学園長の意見をバッサリと切り捨て茶を飲む。

「なかなか簡単な問題じゃないんじゃよ…」
ぼそりと誰にも聞こえない声量での呟く。

「何時だったかの報告書で裕也は並行世界の魂を憑依させる儀式の実験体かもしれんとあったな」
エヴァンジェリンは学園長の呟きを気にせずに話し始め
「それは裕也に限ってはある意味で正解だよ」
よかったな、と続けニヤリと笑う。

「…ということは今の沙霧君は憑依した人格だというのかい?」
それを聞いたタカミチが渋面を浮かべ問い掛ける。

「人の話は最後まで聞けタカミチ。ある意味でと言っただろ」
タカミチの問いを軽く流し話しを進める。
「結論から言えば裕也は憑依した人格ではないようだ。まあ、普通とは言い難いがな」

「ふむ、そこだけ聞けば大して問題ないんじゃが…それだと儀式の説明がつかんしの」

「そこで終わらないから面白いんだろ。ジジイの気にしている裕也に施されたと思われる儀式の効果は当人からの話でおおよそだが仮説は立っている」
顎髭をいじりながら嘆息する学園長とは真逆に笑みを深めたエヴァンジェリンは
「魂の憑依は幽霊や精霊の憑依とは訳が違う。並大抵の人間ならば魂を上書きされ乗っ取られるか、1つしかない身体が2つ以上の魂に耐えれず廃人になるだろうな」
至極楽しそうに続ける。
「で…裕也だが、当人の話によれば『前世の知識』とやらを引き出せるらしい。最近は忘れていたそうだがな」

いくらか危機感を緩めたタカミチが説明の区切りに問い掛ける。
「前世の知識…記憶とかはどうなんだい?」

「個人情報などは無理だったそうだ。引き出すのも地名や数式などをキーワードに検索し、それに関する情報を閲覧する感じだと。確か、いんたーねっとみたいとも言っていたが…タカミチ、いんたーねっととは何だ?」
饒舌に答えていたエヴァンジェリンだったが、微妙な脇道にそれた疑問をタカミチに投げ返す。

「そうじゃ、高畑君。ふぁいやーうぉーるとぴろしきさーばとは何かの?喉に刺さった魚の小骨のように気になって仕方ないんじゃ」
ポンと手を打った学園長もタカミチに問い掛ける。

二人から微妙に難しい質問をされたタカミチは曖昧な笑顔を浮かべて誤魔化すしか出来なかった。




あとがき
約2ヶ月半ぶりの更新となるTYです。
書きたい事と書かなきゃならない事の折り合いが上手くいかずこの様な事態に…
遅れてしまって本当に申し訳ありません。


感想レス
クワガタ仮面様
良くも悪くもネギに関わろうとするトリッパーは出てくる予定です。
アンチと呼べる程に出来るか自信はありませんが…

懺稔マン様
酷評、ありがとうございます。
苦言として受け取り、糧にしていけるよう努力します。


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