こんにちは、神月ひかりです。
昨日の村長の話によれば、今日は魔導局の人が来るそうなのですが、何時頃に来るかが分かりません。
しかし、昨日の今日で来るとはレスポンス良すぎです。失礼ながら役所の反応の速さとは思えませんよ。
せめて、おおまかな時間帯だけでも教えてほしかったです。というか、村長は来ると言っただけで、来る時間を言うのを完全に忘れていたようですね。
父さんと母さんは昨日の夜に一足先に家に戻ったし、爺ちゃんと婆ちゃんは寄り合いに出掛けてしまったので、ただいま一人でお留守番の真っ最中です。
下手に出かけて、入れ違いになるのも嫌ですから、散歩に行く事も出来ませんし…………ちょっと恨みますよ村長。
でもまあ、文句を言ってても仕方ありません。とりあえず、婆ちゃん家の掃除でもしておきましょう。
~~♪~~~♪~♪
鼻歌を唄いながら玄関先の掃き掃除をしてます。
部屋から始まった掃除もここで最後です。掃除が終わったら爺ちゃんと婆ちゃんが寄り合いから帰って来るまでどうしてましょうか?
学校の宿題はさっさと片付けてますし、あとやる事といえば何がありましたか・・・・・・
「すみません、神月さんはこちらでしょうか?」
突然声をかけられて、振り向いた先には、この年代には珍しいビジネススーツに身を包んだ若い女性がいました。
「あ、ええ。神月はウチですけど」
「神月ひかりちゃんはご在宅でしょうか?」
「神月ひかりは私です。失礼ですがどちら様ですか?」
「ああ、これは失礼しました。私、内務省魔導局の原田と申します」
「これはどうもご丁寧に。貴女が村長の言ってた方ですね。立ち話もなんですから、どうぞ上がってください」
~神月家居間~
原田さんを居間に通して、とりあえずお茶(麦茶)を出し、私も向かい側に座ります。
「…(略)…という訳で、ウィッチはみんな魔導局のウィッチの名簿に登録する必要があるのよ」
原田さんの説明によれば、ウィッチとして目覚めた者は例外無く魔導局の作成するウィッチの名簿に登録する仕組みになっているそうです。
なるほどなるほど。その仕組みがあったから、あの時坂本さんは宮藤さんの情報を素早く手に入れる事ができたんですね。納得です。
それと、原田さんは陸軍の元ウィッチだったそうで、現役から教官を経て、退役後に魔導局にスカウトされたそうです。
ウィッチの登録に男の役人が来るよりも元ウィッチの女性が来る方がウィッチとなった少女達も安心できるだろうからという事だそうです。
「早く終わらせちゃいましょうか?ひかりちゃんもその方がいいでしょ?」
「そうですね。さっさと済ませちゃいましょうか」
「ん。それじゃあ早速だけど、お願いね」
「はい。それじゃ、いきますね」
ウィッチの名簿には氏名や住所などの個人情報と、使い魔の種類、それと学校での成績や評価等が記入されるそうですが、
今日は個人情報の確認と使い魔の種類、契約した状況の調査が目的だそうなので、ウィッチの姿になる必要があるので、ウィッチへ変身です。
やっぱりまだ耳と尾羽の感覚には馴れませんね。
「っ!!」
「どうしたんですか、原田さん?」
「え?ううん、何でもないの。ひかりちゃんの使い魔が珍しいから、ちょっと驚いただけよ」
「はあ、そうですか。この使い魔って珍しいんですね」
「そうよ。鳥の使い魔って、結構珍しいのよ。え~っと、羽の色は褐色、それに白の斑点ね。詳しい種類は……と」
原田さんは持ってきた辞典と睨めっこしてます。どうやら鳥を使い魔にしたウィッチは珍しいようですね。
「分かったわ。ひかりちゃん、貴女の使い魔の種類は」
「種類は?」
「ヨタカね」
「ヨタカ、ですか」
「そう、ヨタカ。間違っても漢字にしちゃダメよ」
「は?はぁ……」
「それと、さっき聞いた使い魔との契約の状況から私の推測した事なんだけど、ひかりちゃん、聞いても驚かないでね」
「……はい」
「実は…」
「実は…?」
「貴女がそのコと契約したのって、事故みたいな感じだったのよね」
「………………ゑ?」
「ヨタカってね、夜行性だから昼間はだいたい木の上で寝てるのよ。でね、寝方に特徴があって、枝と平行な向きで寝るの。
それで、全くといっていいくらい無い事なんだけど、なにかの拍子に枝から落ちて、その下に偶然居たのが」
「私で、ぶつかった拍子に契約になっちゃったということですか」
ハハハ………なんて事ですか…
私がウィッチになった原因が、このコ(ヨタカ)が寝ぼけて落ちてきて、その先にたまたま私が居たからって……
いくらなんでも落ち込みますよ。|||orzって状態です。
「あ、でもね。ウィッチとしての素質が無かったらこうならなかったのよ。だから、偶然の結果だったからって落ち込まないでね」
原田さんはフォローしてくれますが、普通はショック受けますって。
ま、まあ、そんな些細なことはどうでもよろしいです。ホントはあんまりよくないですけど、割り切って捉えましょう。
「お気遣いありがとうございます。なんとか大丈夫ですから。ええ、大丈夫です。私がウィッチになったのは事実なんですし」
「そ、そうよね。ひかりちゃんがウィッチなのは事実だもんね」
~~side 原田~~
ウィッチとして目覚めた少女がいるので、名簿への記載と使い魔等の調査をする為にと向かった先には、恐らく10歳前後の少女が居た。
最初はちょっと年上ぶった子という印象だったけど、契約時の状況の聞き取りと一通りの説明を終えた時には年上ぶった子から、
年齢に合わぬ落ち着きを持った子に印象は変わった。普通なら生返事を返す程度なのだけど、この子は理解したうえに説明に納得したのだから。
そして、彼女。神月ひかりちゃんがウィッチの姿となった時、私は驚かずにはいられなかった。
彼女の使い魔はウィッチの使い魔達の中でも希少な鳥類だった。
鳥を使い魔とするウィッチはいない訳ではないが、その数はとても少なく、私も実際に見たのはこれが始めてだった。
そして、鳥を使い魔としたウィッチは、その殆どが空の王者といえる存在へとなっている。
カールスラントのマリアンネ、ルイーザのリヒトホーフェン姉妹やマグダレーネ・インメルマン、ガリアのロメーヌ・フォンクのように……
私はこの大いな可能性を秘めたウィッチの誕生に関わることができたことを八百万の神々に感謝しよう。
使い魔との契約については苦笑せざるを得ない状況だったし、その事でガッカリとしてた辺りは年相応な感じだったけどね。
~~side out~~
私の使い魔に原田さんが驚いたり、契約の時の新事実に私が凹んだりといろいろありましたが、調査は無事に終了。
今後の進路を聞かれた時にウィッチ訓練所に進むと言ったときに、原田さんから「是非とも陸軍に」と熱烈に勧誘されましたが、
まだそんなに考えてませんが、どちらかというと海軍かな?といった感じで答えたら、かなりガッカリされてました。
まあ、持ってる知識は殆どが海軍のウィッチしか無いもんですからね。仕方ないです。
生前(?)に見てたアニメに陸軍ウィッチが出てたり、ゲームとかが発売されてたら、もう少し知識を得てたでしょうから少しは変わってたんですけど……
原田さんはこれから魔導局の支所に帰って名簿と書類の作成があるとのことで、玄関でお見送りです。
「さてと、それじゃあ今日はこれで失礼するんだけど、ひかりちゃん」
「はい、なんですか?」
「固有魔法の調査に、また後日。今度はひかりちゃんの自宅の方に伺わせてもらうんだけど」
「けど?」
「多分次も私にんるでしょうけど、魔導局の職員が立ち会っていない時は、ウィッチになっちゃダメよ」
「え、そうなんですか」
「もちろんよ。ウィッチ家系の子ならともかく、ひかりちゃんみたいになにかの拍子にウィッチになった子達は、いきなり魔力の制御なんてできないでしょ?
たまにいるのよ、魔力の制御ができないのにウィッチになって、固有魔法を暴走させちゃうのが」
「暴走、ですか」
原田さんに指摘されてようやく気づきましたが、よくよく考えれば当たり前ですよね。魔力の制御方法なんて知ってません。
原作キャラでちょっと固有魔法の暴走を想像してみましょう……電撃放出しっ放しのペリーヌさん、怪力全開制御不能のバルクホルンさん、etcetc……
うわぁ、えらい事ですね。今日までよくもまあ暴走しなかったもんです。
「一応聞いておくけど、使い魔のコと契約してから、今日までウィッチになったりは?」
「すいません。昨日皆が見せて欲しいって言うから、結構なっちゃってました」
「…………はぁ………何事も無かったみたいだからよかったけど、下手をすればひかりちゃんだけじゃなくて、他の人も危ない目に遭ってたかもしれないのよ?
もう絶対にしないこと。いいわね?」
「はい、わかりました」
「ん、よろしい。それじゃ、今日はこれで失礼します。次に伺う時は事前に連絡をするから、よろしくね」
「わかりました。それでは、お気をつけて」
私の固有魔法は一体何なんでしょうか。
気になりますけど、まだ満足に魔力の制御も出来ないのだから、原田さん立会いで無いと変身しちゃ駄目と釘を刺されているので、我慢です。
さて、私はウィッチとなったあの場所に行ってくるとしましょう。