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No.7895の一覧
[0] Persona3 Travel Of Life (ペルソナ3 トリップ物)[P](2009/04/07 00:00)
[1] 序章[P](2009/04/15 00:00)
[2] 第一話[P](2009/04/08 00:00)
[3] 第二話[P](2009/04/09 00:00)
[4] 第三話[P](2009/04/15 00:00)
[5] 第四話[P](2009/04/15 00:00)
[6] 第五話[P](2009/04/15 00:00)
[7] 第六話[P](2009/04/17 00:00)
[8] 第七話[P](2009/04/19 00:00)
[9] 第八話[P](2009/04/25 00:00)
[10] 第九話[P](2009/04/27 00:00)
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[7895] 第八話
Name: P◆11bbc0bb ID:43f0a5e4 前を表示する / 次を表示する
Date: 2009/04/25 00:00
 湊先輩が加入した翌日の夜。
 俺、ゆかり姉、湊さんという三年生を除いた全員が1階に居た。
 なんでも、真田さんから話があるらしく、ここで待ってろとの事。
 みんなで適当にテレビを見ながら待っていたら、真田さんが帰ってきた。

 「待たせたな」
 「話ってなんですか、真田先輩」
 「ああ、今日からこの寮に住む事になる奴を紹介しておこうと思ってな」
 「新メンバー……ですか?」

 その言葉に、みんなが驚いた表情を浮かべた。
 ペルソナ使いは人数が少ないという話のに、たった一週間で一気に今までの倍以上になった。
 その上、まだ増えるというのだから驚いても仕方ないと思う。
 俺達の驚きを見た後、真田さんは扉に向かって声をかけた。

 「まぁ、先に紹介をしておこう。 入って来い!」

 俺達の驚きを楽しそうに見ていた真田さんが声をかけ、新メンバーが入って――――――来ない。
 なんとも気まずい沈黙がロビーに漂う。
 俺達の視線は、自然と真田さんに集まる。
 その真田さんはというと、扉を見たまま固まっていた。

 「あの、真田さん?」
 「…………ちょっと待ってろ」

 俺が思い切って声をかけると、真田さんは苦い表情で外へ出て行った。
 やがて新メンバーを発見したのか、真田さんの怒鳴り声が聞こえてきた。

 「馬鹿野郎、何やってんだ!」
 「イテッ、殴ること無いじゃないッスか!
  ここまで重い荷物運んで喉が渇いちゃってたんスよ」
 「そんなもん後にしろ、後に!」

 聞こえてくる声に、俺が思わず笑ってしまう。
 けど、ゆかり姉と湊さんは違うらしく、首を傾げていた。

 「あの声は……」
 「もしかして」

 そして、顔を見合わせる二人。
 え、また俺は蚊帳の外ですか……。
 人知れず俺が凹んでいると、真田さんが帰ってきた。

 「ほら、さっさと入って来い」
 「ちょ、待って! 重い……!」

 続いて入ってきたのは、でっかいスーツケースを押して入ってきた野球帽を被った男。

 「「順平!?」」

 ゆかり姉と湊さんが揃って声をあげた。
 どうやら二人の知り合いらしい。

 「有里と岳羽は知ってるだろうが、二年F組の伊織順平だ」
 「へへへ、どうもッス」

 真田さんの紹介で、順平さんが軽く頭を下げた。
 知り合いが現れて呆然とする二人。
 そして俺はというと、順平という名に引っかかりを感じていた。

 「うそ、何で順平が! 何かの間違いじゃないの!?」

 驚きの声を上げるゆかり姉。
 そんな姿を見て、順平さんは頭を掻きながらニヤリと笑った。

 「なんだよ、ゆかりッチ。
  頼りになる俺が加入したからって、そんなに喜んでくれなくても良いんだぜ?」
 「バカじゃないの?」

 うわ、一刀両断。
 照れも何も無く即答したゆかり姉に、順平さんが固まった。

 「真田先輩、コレが新メンバーって本当なんですか」
 「残念ながら本当だ。
  まぁ、色々とあるかもしれんがヨロシクしてやってくれ」

 自然に酷い会話をしてるゆかり姉と真田さんに、順平さんが落ち込んだ。

 「あの、順平さん、大丈夫ですか?」
 「ん、ああ。 サンキュー。 あー……」

 さすがに少し可愛そうだったので、声をかけておいた。
 苦笑しながらこっちを見た順平さんが言葉に詰まる。
 あ、そういえば自己紹介まだだった。

 「岳羽勇二、一年です」
 「おう、勇二。 俺が期待の新戦力、伊織順平だぜ。
  大船に乗ったつもりで頼ってくれて良いからな」
 「はは、困った時はよろしくお願いします」

 相変わらずビックマウスな順平さん。
 俺達が苦笑しながら見守っていると、自分について語りだした。
 なんでも、順平さんは発見された時にコンビニでマジ泣きしていたらしい。
 その時の事を覚えていないけど、それはペルソナ使いにはありがちな事だとか。
 皆知ってる事を得意げに話している順平さんを見守る俺達の視線が、生暖かいものに変わった。

 「これ、ペルソナ使いの常識だから。 知ってた?」
 「いや僕は平気だったから」
 「まったまたー。 強がっちゃってー」

 絡むようなノリの順平さんに、淡々と応える湊さん。
 嫌な顔しないでマイペースを貫くところ、本当に尊敬します。
 そんな湊さんの対応を気にせずに、凄いハイテンションのまま順平さんが矛先をこっちに向けた。
 え、ちょっとあのテンションで絡まれるの嫌なんですけど……。

 「勇二の最初の時はどうだったんだよ?」
 「いや、俺は……」

 記憶の混乱どころか、全部無くなっちゃってるとは言えない。
 そんな俺の考えを見抜いたのか、ゆかり姉も真田さんも湊さんも気まずそうな顔をした。

 「なんだよなんだよ! 俺だってマジ泣きしてたんだから恥ずかしがる事ねえって!」
 「ちょ、順平! いい加減にしなって」
 「順平、その辺にしとけ」

 けど、そこは順平さん。
 周りの空気を詠もうともせず、突っ込んできちゃった。
 ゆかり姉と真田さんが止めようとしたけど、順平さんは止まらない。

 「良いじゃんかよー。 最初に腹割って話しといた方が、後々まで仲良く出来るんだって!」

 うわ、ゆかり姉呆れてる。
 言わなきゃ満足死なそうだし、言っちゃうか。

 「あの、俺、記憶喪失になっちゃってるんで……」
 「…………え?」

 俺の言葉を聞いて、順平さんは予想通りに固まった。

 「まったまた~……」

 そして、引きつった笑顔で他の三人に視線を向ける。
 湊さんは真顔のまま。そこにはからかいの意思は全く見られない。
 そして、ゆかり姉と真田さんは――――

 「はぁ、だから止めとけって言ったのに……」
 「まぁ、自業自得だな」

 若干責めるような視線で順平さんを見ていた。
 笑顔を保つ事の出来なくなった順平さんは、最後に俺を見る。

 「知らなかったんですし、しょうがないですよ」
 「いや、その………………なんつーか、ごめんなさい」

 真実だと知って、ガックリ落ち込む順平さん。
 俺は別に気にしてないけど、みんなの視線が痛いみたいで小さくなってしまった。

 「ったく、これだから馬鹿順平は……。
  勇二、ごめんね。 悪気は無かったと思うんだけど、順平って馬鹿だから」
 「バカバカ言うなよっ!? いや、今回はホントにバカだったと思うけどさ」

 ゆかり姉が順平さんをチクチクと苛めて遊んでる横で、俺はまた引っかかりを感じていた。
 最初に順平さんの名前を聞いたときに感じた違和感。
 それに、馬鹿順平という言葉を最近聞いたことがあるような気が……。
 
 「って、ああぁーーーっ!!」

 俺の叫びに皆が驚いているけど、そんな事を気にする余裕は無い。
 思い出した。
 思い出した思い出した思い出した!!

 「お前が順平だったのか!!」
 「って、おぉい! 急に呼び捨てかよ!?」

 そう、順平は前にゆかり姉と話しているときに出てきた名前。
 ゆかり姉に迷惑をかけて怒らせて、俺の中で敵に認定された名前!

 「さっきまでは許してくれてたのに突然どうしたんだよ?」
 「それは関係ないです。 順平は自分の胸に手を当てて良く考えるべきです」
 「いや、わかんねぇって。 あと呼び捨てにすんな!」
 「うっさいです。 順平なんて順平で十分じゃないですか」
 「だから、何言ってんのかわかんねぇって!」




 こうして、無駄に気まずくなりそうだった空気はグダグダになってしまった。
 結局、順平は俺の呼び方を修正するのを諦めた。
 よし、勝った!順平ごときに負けてたまるか!








     Persona3 Travel Of Life








 で、それから二十四時間後。
 俺達は影時間になる前に、月光館学園の正門前に来ていた。
 しかも、全員武装している。
 俺もブレザーの下には召喚器が収められてるし、鞄の中には先日届いたばかりのナイフが入っている。
 ゆかり姉も普通に弓道の道具と矢筒を持ってきてるし、順平は竹刀袋の中に刀が入ってる。
 一番変わってるのは、湊さん。ギターのハードケースの中に片手剣が入っている。
 休み時間に教室に訪れた桐条さんの指示に従って放課後にラウンジに集合した俺達は、そのまま車に乗せられてここに来たのだ。
 真田さんだけは普段どおりだけど、桐条さんはごついバイクに乗ってきたし。

 「完全武装で学校に集まった訳ですが、これから何があるんですか?」

 いまいち状況が把握出来ていないので皆に聞いてみると、桐条さんが不思議そうな顔をした。
 ついでに、隣に居た真田さんが何かに気付いたような顔をした後、肘で軽く小突いてきた。

 「明彦から聞いていないのか? 今日からタルタロスの探索を始めると」
 「……たるたろす? なんですかそれ……って真田さん、痛いです」

 喋ってる途中で、小突く程度だった肘打ちがどつかれるように強くなった。
 俺が文句を言うと、真田さんがこっちを思いっきり睨んでくるし。

 「明彦? 伝えてなかったのか?」

 異変に気付いた桐条さんが声をかけると、真田さんは明らかに動揺した。
 どうやら真田さんがしっかり連絡してくれなかったっぽい。

 「そ、そんな事ないぞ? 勇二もしっかり思い出せ。
  今日からシャドウの巣窟であるタルタロスの探索を始めるって言っただろう」
 「え、そんな話……ぐっ……そ、そう言えばありましたね!
  ごめんなさい、ど忘れしてましたー!!」

 本当の事を言おうとしたら、真田さんの拳が俺の肝臓に。
 もちろん手加減してくれていたけど、真田さんの目が次は本気で行くと語っていた。
 そして、その視線をそのまま湊さんと順平にも送っていた。
 暴力に屈した俺達は悪くない。

 「そうだろう。 まったく、しっかりしてくれ。
  今日からは訓練じゃないんだからな」
 「…………くっ」
 「その位にしておけ、明彦。
  勇二だって本番になれば真面目にならざるを得ないだろうしな」

 理不尽な事に悪者は俺になっていた。
 おのれ、真田さんめ……。

 「あれ? でも何で学校なんすか?」

 俺が悔しさに歯噛みしていると、順平がそんな事を言った。
 そういえば、なんでだろう。
 シャドウの巣窟が学校って訳でもないだろうに。

 「まぁ、影時間になればすぐに解かる」

 そう言って、真田さんは携帯を取り出して時間を確認した。

 「来るぞ」

 真田さんの宣言と共に、世界は影時間へと移る。
 人口の光が消え、変色した月の明かりが辺りを照らす。
 同時に、目の前の学校が動き出した。

 「なっ……」

 俺と湊さんと順平の驚きの声が重なる。
 先ほどまで普通の学校だった物が、金属が軋むような音を立てながら蠢いていた。
 伸び、捩れ、絡み合いながら、学校だった建物は天へと突き進んでいく。

 「なんだよ、これ……」

 順平が呻くように呟く。俺と湊さんは声にこそ出さなかったが、多分同じことを考えている。
 変貌を遂げた月光館学園は、今や巨大な迷宮と化していた。
 正門の向こう、下駄箱があった場所には大きな門があり、その奥をうかがい知る事は出来ない。

 「これがタルタロス。 毎晩零時になると現れ、影時間と共に姿を隠す迷宮だ」

 桐条さんの説明が、どこか遠くから聞こえてくるような気がする。
 物々しい雰囲気を醸し出す迷宮の入り口は、まるで地獄への入り口にも見える。

 「なんで、なんで俺達の学校がこんな事になっちゃってるんスか!?」
 「……」

 順平の疑問の声に、桐条さんが難しい顔をした。
 
 「先輩達にもわからないんですか?」
 「ああ」

 先輩達も理解していないという事実に、俺と順平が怯む。
 俺達ってそんなワケの解からない所に入ってくの?

 「きっと色々あるんでしょ、事情が。
  いいじゃん、別に。 知らなくたって私達は戦えるワケだし」
 「そうだね。 わからないんだったら、中に入って調べればいい」

 意外な事に、ゆかり姉と湊さんからは前向きな意見が出た。
 ただ、湊さんは本当に気にしていない感じだけど、ゆかり姉は何か不満気な様子だった。

 「岳羽達の言う通りだ。ここを本格的に調べるのは俺達も初めてだが、
  どうみたってここには影時間についての何かがある。 ワクワクしてこないか?」

 ゆかり姉に何が不満なのか聞きたい所だったけど、真田さんのせいでタイミングを逃してしまった。
 っていうか、真田さんは本当に楽しそうな表情だし。
 やっぱ、この人バトルジャンキーだ。

 「明彦。 お前はまだ探索に参加できないんだからな」
 「う、うるさいな。 何度も言われなくたってわかってる!」

 けど、そんな表情も桐条さんに釘を刺されて一気に不貞腐れたものに変わってしまった。
 そして、不貞腐れたままタルタロスの中に入ってしまった。

 「やるしかない、か……」

 いつも通りのやり取りをする皆を見て、俺の中の恐怖も大分小さくなっていた。
 真田さんを追い、俺達もタルタロスの中に入る。

 「おお、中もスゲェ……」
 「不思議な所だね」

 タルタロスの中は広いホールになっていた。
 中央に階段があり、その先には入り口が一つある。
 順平は興奮しながら、そして湊さんは冷静に辺りを見渡していた。

 「でもやっぱ気味悪いよ」
 「俺もそう思う。 なんか居心地悪い……」
 「なんだよ、情けねえなー。 ここまで入ってきたら、行くしかねぇって!」

 ゆかり姉は肘を抱くようにしながら周囲を警戒していた。
 俺も中に入ってから妙に落ち着かない感じがするんだけど、順平は何も感じていないみたい。

 「ここはまだエントランスさ。迷宮は階段の上の入り口を抜けてからだ」

 エントランスにはシャドウは出現しない、とも桐条さんは説明してくれた。
 それを聞いて、ようやく落ち付く事が出来た。
 
 「まずは慣れてもらう。今日の探索は、お前達三人だけで行け」
 「えっ!?新人だけでですか!?」

 落ち着きも束の間、真田さんの言葉で俺達はまた慌てる。
 怪我をしている真田さんはともかくとして、桐条さんも来ないって事?
 
 「深入りさせる積もりはない。それに必要な情報は私がここからナビゲートする。
  まぁ、ナビゲートをするせいで私は此処から動けなくなるがね」

 その後の説明で、桐条さんは索敵が出来るからナビゲーターをするんだと解かる。
 タルタロスの中は複雑な構造になっている為、ナビが居なければ迷ってしまう可能性が高いらしい。
 むぅ、それなら仕方ない……のかな?

 「つまり、先輩たちは元から来られない、と」
 「そういうことだ」

 順平の言葉にあっさりと真田さんは頷いたけど、それはちょっと納得がいかなかった。

 「ちょっと待ってください。
  先輩達も探索した事ないような場所に新人だけで行くって危なくないんですか?」

 さすがに、経験の浅い段階でそんな場所に行かされるのは危険だ。
 順平やゆかり姉もそれに気付いて、複雑な視線を真田さんと桐条さんに向けた。

 「心配するな。 本格的な探索をした事は無いが、五階までなら俺達も行った事がある」
 「それに私のペルソナでその階層に居る敵の大体の強さは解かる。
  あまりに強すぎる敵が居る場合はこちらから撤退の指示を出す」

 俺達の懸念に対して、二人はそう答えた。
 あ、一応入った事はあったのか。
 俺が安心したのと同じように、ゆかり姉と順平も安心していた。

 「そういう事は先に言って欲しかったですよ……」
 「すまないな。 だが、だからと言って油断は禁物だ。
  これは訓練などではなく実践なのだからな」

 俺の愚痴に桐条さんが苦笑で答えた。

 「それとな、現場での指揮を執るリーダーを決めようと思う」
 「リーダー? それってつまり隊長のことですよね?」

 安心した俺達にかけられた言葉に、順平が食いついた。
 あ、なんかこの先の展開が読める。

 「ハイ、ハイハイッ! オレオレ!!」

 ほら、予想通り。順平がうるさいくらいにアピールしだした。

 「これで順平を信じたら痛い目に遇うからオレオレ詐欺って言うんだよね。 わかります」
 「勇二っ! てめっ、なんて事言いやがる!」

 真実を言ったら、順平が突っかかってきた。
 なんだ、やるんかコンチクショウめ!
 睨み合う俺達を他のメンバーが呆れながら見ているけど、ここは引けない。

 「……有里。 お前がやれ」
 「……え?僕ですか?」

 俺達がいがみ合ってる間にリーダーは静観していた湊さんになっていた。
 俺は湊さんなら良いと思うけど、本人は予想もしていなかったみたいで目を丸くしている。

 「なんでっすか! こいつ隊長っぽくないですよ!」

 そして、やっぱり食い下がる順平に、ゆかり姉が口を挟んだ。

 「あのね、有里君はもう実戦経験者なの」
 「……え?マジで?」

 順平も流石に実戦経験者という理由を聞いて大人しくなった。
 そもそも、順平はリーダーって柄じゃないから無理だったんだけどね。

 「確かにそれもあるが、理由は別だ。順平、それに岳羽も」

 そう言って、真田さんは召喚器を引き抜き、額に当てた。

 「ペルソナの召喚、あいつのようにちゃんと出来るか?」

 ニヤリと笑いながら言う真田さん。
 そういえば、順平ってちゃんと召喚した事あるのかな?

 「……よ、余裕っすよ! バッチリ決めて見せますって!」

 …………順平は焦りながら答えた。ちゃんとした事はないのかもしれない。

 「私も大丈夫です」

 対して、ゆかり姉は冷静に答えていたけど、やっぱり過去の事があるから真田さんたちも不安らしい。
 結局リーダーは湊さんって事に決まったんだけど――――。

 「あの、その条件だったら俺でも良いんじゃないですか?」

 別にリーダーにこだわる積もりはないけど一応実戦経験者だし、ペルソナの召喚も問題なくこなしてる訳だし。
 俺の言葉に、真田さんは明らかに動揺した。
 あ、もしかして最初から候補に挙がってなかったとか?
 …………俺のペルソナが弱そうだから、とかだったら泣きたい。

 「…………お前の場合は、その、美鶴?」

 自分で対処出来なくなって、桐条さんに振る真田さん。

 「あまり関係の無い事だが、キミは最年少だ。 指揮を執る際に遠慮や反発が出ては困るからな」
 「そう、そういう事だ」

 バイクを弄っていた桐条さんが苦笑しながら顔を上げて、そう言ってくれた。
 真田さんはもっともらしく頷いているけど、説得力は皆無です。

 「なら、しょうがないですか」
 「納得したのなら準備をしてくれ。
  影時間が終わらない内にここを出なければいけないからな」

 弱そうだから、と言われなかった事に安堵を感じつつ、言われた通りに準備をする。
 目の前にある階段を上って入り口を潜れば、そこはシャドウの巣窟。
 余計な事を考えるのはここまでにして、俺達は覚悟を決めるのだった。



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