※4コマみたいな話です
■山賊さん
この世界は物騒なので、旅の途中に山賊に襲われたりします。
車とかで移動してたら大丈夫なのかもしれないけど、あれって都市部はガソリンの値段が安いからいいけど、辺境とかになるといきなりガソリンの値段が高騰するので使い物にならないのだ。
車にガソリンくくりつけて旅をするにも限度があるし、乗り捨てるのももったいないし。
そんなわけで、体が資本な念能力者らしく、私の旅の移動手段はもっぱら徒歩なのである。
「おいおい、なに黙りこくってんだコラ?」
「ビビッちまって声も出なねぇか、それとも隙を突いて逃げ出そうってハラかぁ?」
「ほら、なんか喋ってみろよ。お嬢ちゃ~ん」
ナイフとか舐めつつ激しく自己主張する山賊さん。
装備は銃が三人に目の前のナイフの人の、合計4人。あと近くの茂みに狙撃銃が一人オマケ。
驚くなかれ、その全員の髪型がモヒカンだ。まさに世紀末。
「…………えっと、ジード軍団の人ですか?」
「はぁ?」
「あぁぁぁん?」
「はぁ!? ああああああああああ!!? なんだこらぁ、○×△□×◎っっぞぉコラァァッッ!?」
わぁ、すっげぇメンチ切られた。いやこれメンチなのか。
特に一番エキサイトしてる人の反応がなんか壊れたファービーみたいな方向性で怖い。
「いえあの」
「うっせぇぞぞぞっ!! 黙れっっっつってんだろ! こぉのαμδΩμδがッッ!!?」
「(ピー)はぅとぅッッしく俺たちに(ピー)ひやぁって、(ピー)っっっってんだろう!!」
「っぎゃははははっっ!! ■■■■■くら■■■ブッチんでぇぇ■■■■してやっかぁぁっ!?!」
やばい三人とも壊れた。マジで何言ってるのか分かりません。
たぶん下品な言葉なんだろうけどイントネーションが宇宙すぎて恥ずかしがることすら。
私がおろおろしていると、そこに颯爽と現れる影。
「その子から、汚い手を離せ!!」
いや別に触られてないですし。マジ汚い手なので触ろうとしてたら殴ってました。
そんな突っ込みを内心で入れつつ声の方を見るとイケメン念能力者だった。
あらかっこいい。
■原作キャラその2
「ふぅ……間に合って良かった。俺は、この谷を根城にしてた山賊段の討伐の仕事を引き受けてね。
街で情報集めをしてたら、小さい女の子が一人でこの谷に向かったと聞いて、慌てて追って来たんだ」
小さい女の子ってなんだ。これでも大学生なんですけど。
「怪我はないかい?」
「いえまったく」
私が普通にパンチで撃退しても良かったんだけど、思わずイケメンさんの戦闘を見守ってしまいました。
イケメンさんは剣と銃を作り出す具現化能力者でとてもスタイリッシュな戦いぶりでした。
「ね、怖くなかった? 大丈夫? 無理しないでいいんだよ?」
イケメンさんの同行者の、面倒見の良さそうなショートカットの女の子が優しげな顔で聞いてくる
「危機一髪だったね! でも、間に合ってよかった!!」
イケメンさんの同行者の、日に焼けた肌の元気良さそうなロリっ子がにっこり微笑む。
「この辺りは、危険ですよ? あまり、一人旅はしない方が……」
イケメンさんの同行者の、ツインテールの小柄な女の子が不安げに倒れた強盗たちを見て言った。
「女の子の一人旅は危ないですわ。よろしければ、私達と一緒しませんこと?」
イケメンさんの同行者の、縦巻きロールのお嬢様風の女の人が心配げに言ってくれる。
「うふふ、この人といると楽しいわよぉ? 夜の方だって……うふふ」
イケメンさんの同行者の、長い髪でおっぱいの大きい女の人が言わんでもいいことを言ってきた。
「…………大所帯ですね」
「まぁね。みんな色々あってさ、なんだかんだ言って俺についてきちゃったんだよ」
『ちょっと困ってるけど、面倒見てやらないとな』なんて言いながら爽やかに苦笑するイケメン。
現世に光臨したフラグ乱立型のハーレムもの主人公が、私の目の前に立っていた。
そして心底同情した。
さりげなく一行に混じってるツインテールの女の子が、どうみてもビスケさんだったからである。
■その後
「……ひどいよ! キミがそんなヤツだったなんて、ボク、知らなかった!!」
涙目でビンタを食らわすと、ショートカットの女の子が荷物をまとめて走り去っていく。
「あんなことするなんて、お前、ホンモノのクズだ! バカ! 変態!! 死んじゃえ!!!」
ロリっ子が叩きつけるように罵ってから、スネにキックを一発叩き込んで走り去っていく。
「貴方の本性は、見せて頂きましたわ。二度と近付こうとしないでください……この、豚……!」
射殺すような目で睨みつけ、押し殺すような声で告げると、縦巻きロールのお嬢様が去っていく。
後には、灰みたいに真っ白になったイケメンさんだけが残った。
「……ビスケさん、いったいなにやったんですか?」
「べっつにー? ちょいとお風呂で背中を流しながら、いったいどれくらい、女の子の相手をするのに迷惑してるかを聞いてみただけだわさ」
「あれ、意外と大人しい」
てっきりベッドインでもしたのかと。
ハーレム崩壊の原因といったら、特定のキャラとの急接近と相場が決まってるし。
「私が、あんなのの相手を? ……はっ」
ああ、確かに全力で相手したら相手のチンコねじ切れそうですしね。
とか思っただけなのに殺意の篭もった目で見られた、こぇぇ。
なんでも、実はお嬢様とショートカットとおっぱいには、すでにこっそり一線越えてたんだそーだ。
ハーレムモノかと思ったら、単なるドロドロ肉体関係地獄だったというオチ。
「……ところで、あなたはあの人とお別れしないんですか?」
イケメンさんから去っていった三名の背中を見送ってから、なぜか一人だけ残ってたおっぱいの大きい女の人に聞いてみる。
思いっきり浮気されてた一人なんだし、包丁で刺しちゃえばいいのに。
灰になってるおかげで念のオーラも絶状態になってるし、今がチャンスです。
そんな解説をしてあげたのに、おっぱいさんは唇に指先を当てて思案顔。
「んー、私はこのまま付き合ってあげていいかなぁ。あの子、チンコおっきくて具合がいいのよねぇ」
「……………………」
「…………」
わぁ、そうですか。良かったですね!
なんか気まずい雰囲気になりながら、ビスケさんと一緒にバイバイしました。
灰になったイケメンさんをたっぷり慰めてあげるといいよ!!
「やっぱり、愛よりもアレなんですかねぇ」
「…………一文字違いだわさ」
おでんの屋台でお酒を飲みつつ、なんだかなぁ、と揃ってため息。
愛を探してさすらう一人旅は、なんか疲れたので明日まで延期なのでした。
<旅は続くー>