坊主が憎けりゃ袈裟まで憎い。
憎い相手がとる行動はすべて悪意ある行動に見える。
by田中雄一
第06話 「楽しみのためなら多少のリスクは惜しまない」
~管理外第97世界「地球」海鳴市~
「と言う訳で、俺はフェイトさんを出し抜いて逃げ切ったのさ」
現在、地球の翠屋でお茶をしながらカルタスに俺の武勇伝を演説中。
ん? お金はどうしたのかって?
そんなのハッキングすればいくらでも手に入りますよ。地球の暗号技術なんてミッドチルダ製コンピュータの敵ではありません。
「色々言いたいことがあるけど、とりあえず言わせてくれ。馬鹿なの?死ぬの?」
せっかく助けてあげたというのに、カルタスが辛辣な言葉を浴びせてきます。
「いったい何が不満だって言うんだ?」
「なんでそんな物騒な方法で逃げてんだよ!!他にも方法はあっただろ!!」
「とりあえず落ち着け。周りのお客さんに迷惑だ」
回りのお客さんがこっちを注視してきます。俺はこう見えて恥ずかしがりなので恥ずかしいです。
カルタスは回りを見回した後、顔を赤くして俯いた。止めろ。エリオフェイスでそんな行動をとるな。萌えてしまうではないか。
「それに、そもそも逃げる必要なんてないだろ。保護してもらえば良かったじゃないか」
「あぁ、確かにそうだな。フェイトさんいたし、別にお前を置いて逃げても良かったのか」
今度は音量を落とし、周りに気を使って話すカルタス。
確かに良く考えればカルタスを置いてきても問題なかったよな。少なくともフェイトさんがいたから、変なところに連れて行かれるってことも無いだろうし。そう考えると悪いことをしたかもしれん。
「いや、お前も保護してもらえばいいだろ?」
「何言ってんの。お前はともかく俺は捕まるだろ。違法研究やってるわ、遺体損壊やってるわ、罪状がごろごろしてんぞ?」
この子は何を言ってるの。俺に捕まれと?
フェイトさんとの親子フラグをへし折ったとはいえ、そんなに怒るなよ。
「いや、捕まらないだろ。好きでやっていたわけじゃないし、どっちかっていうとお前も被害者だろ。それに研究データを見たら俺が酷い扱いを受けてないってのも解るだろうからフェイトの誤解も解けるだろし」
あれを誤解と言っていいのか、やっちまった俺からすると疑問だけどな。
まぁ、それに第一……
「それ無理。提出しないと駄目だったから研究データは捏造しまくってる。データ上だとお前はエリオ以上の扱い受けてるから」
上の奴らは意味も無いようなデータを取れ取れと煩かったから、捏造しといたデータを渡しといた。
たぶん、あのデータを見たフェイトさんはお怒りだろうな~。
……絶対に俺が犯人だとばれたら駄目だな。ばれたらホームランじゃ済まん気がする。
スカさん南無。
「それにだいたい、あんなあくどい組織がそんな情量酌量敵なことしてくれないだろ。アンサイクロペディア読んだことないの?」
「馬鹿か!?アンサイクロペディアはネタが書いてあるサイトだろ!!本気にするな!!」
また大きな声を出したため周りのお客さんの視線が再び集まる。んで、またカルタスが顔を赤くして俯いた。止めろ。エリオフェ(ry
どうやら俺とカルタスでは、管理局に対する認識が異なっているようだな。まぁ、ここで言い争っても仕方がないか。
「まぁ、過ぎたことは置いておこう」
「置いてちゃ駄目だろ……。お前の話を聞く限り、絶対にフェイトはお前のことを捕まえようとするだろうし、早く誤解を解かないと」
カルタスがげんなりした表情で俺に言ってきた。
ぐちぐちいう男はもてないんだぜ! ちなみに俺は前世ではもてなかったぜ!
「まぁフェイトさんに関しては大丈夫だろ。たぶん」
「なんで?」
「だって、フェイトさんは俺のことジェイル・スカリエッティって呼んでたから、スカさんが捕まればモーマンタイ。俺の罪も一緒にスカさんが被ってくれるよ」
カルタスは呆れた顔をして、俺の顔を見つめてくる。
なんだ俺に惚れたのか?
「お前って俺が思っていた以上に悪人だったんだな……」
そんなに褒めんなよ。照れるジャマイカ。
と言っても、俺の存在を隠さないと意味が無いのが辛いところ。脳味噌共が持っている俺のデータが管理局に流れたら目も当てられない。
あれさえ消すことができたら、俺のことがばれる可能性が無くなるんだけどね~。少なくともデータ上は俺の存在が消える。
それに例え俺のことがばれても、魔力パターンさえ知られてなければ管理局の人探し能力なんてどうってことはない。
捕まらないためには、スカさんと同じ顔だから整形はしなきゃならんけど。
ってことで管理局にデータを消しに行かねばならん。
でもそれは今じゃないし、カルタスに話すことでもない。カルタスは信用できる奴だが完全に信頼できるやつじゃない。カルタスは人が良すぎる。
「という訳で問題ない、他に質問は?」
「あぁ~。大した事じゃないんだけど、何で最初からシルバーケープを使わなかったんだ?」
最初ほどの緊張はもう残っていないようで、だらけた態度になりつつ質問してきた。
「あぁそのことか、っていうかシルバーケープじゃなくて、そのパチモンな」
「どう違うんだ?」
カルタスが解らないといった表情で聞いてくる。
「シルバーケープは、ISと同じく魔力とは違った別のファンタジックなエネルギーで動いているわけだが、俺の作ったパチモンはバッテリーの電力で動いている」
「つまり?」
「ようするに、戦闘機人ほどのエネルギー容量が無いわけだから使用できる時間がオリジナルに比べて短い。だから外に出てから使用しようと思っていたわけ。そうやってケチってたらフェイトさんに見つかって俺涙目状態になったわけよ」
呆れたような納得したような顔で、なるほどと頷くカルタス。
「もう一つ質問なんだが、なんで地球に来たんだ?」
「そんなの決まってるだろ。翠屋でお茶するのと、原作地域の聖地巡礼ですよ」
「…………」
カルタスが物凄く睨んできます。でもやりたいんだから仕方がない。原作介入しないトリッパーでも観光ぐらいはしたくなると思うんだよね。
それに、地球出身の俺らが住みやすいってのもある。そこまで元の世界と違うってことは無いだろうしね。
「と言う訳で、もっと楽しもうぜ!」
「……今更だけど、俺達がここにいたらまずいんじゃないのか」
「へっ? 何で?」
「たしか、機動六課がここにくるイベントがあっただろ? その時に俺たちのことを店の人に覚えられていたら……」
あれ?
そんなイベントあったっけ?
俺の記憶ではないんだが……。っていうか、今更だな。俺が翠屋に入ろうとした時点で言おうぜ。
「そんなイベントあったっけ?」
「確かサウンドステージであったと思うよ」
OK。疑問は解けた。
俺、サウンドステージ聞いてないや(笑)
「まっ、大丈夫だろ。機動六課が設立されるまで3年ぐらいあるんだから話でもしない限り忘れるだろ」
まぁ、3年前に来ていた客を覚えているなんてことはないだろう。
⊂(^ω^)⊃ セフセフ!!
ミ⊃⊂彡。
「こんにちは。観光でこられたんですか?」
美由希さんがどこからともなくやってきて話しかけてくれましたよ。
(^ω^;)⊃ アウアウ
⊂ミ⊃)
/ ヽ
OK。無難な話をしていれば、興味を持たれずに忘れ去られるはずさ。まだまだどうとでもなるさ。
「はい、長い休暇を取ることができたので。それにしてもいいお店ですね」
「ありがとうございます。こっちの子は弟さんですか?」
笑顔で聞いてくる美由希さん。いいから早く去ってください。
「え~と息子?」
「何で疑問系なんですか?」
苦笑しながら聞いてくる。
そんな表情も可愛いですね。
「違います!間違ってもこんな男の息子ではありません!!」
カルタスはカルタスで断言してくる。しかも声を張り上げて。
そのおかげで肩で息をしているし。お前どんだけ怒ってんだよ?
「え、えっと。僕お名前は?」
この空気に耐えれなかったようで、カルタスに名前を聞いている。
「え、えっと俺はカルタスっていいます」
「よろしくね。カルタス君」
急に名前を聞かれて、焦りながらも答えるカルタス。
それに対して、柔和な声で答える美由希さん。営業スマイルとは違った笑顔だ。ちなみに俺に対しての笑顔は営業用だった。別に悲しくなんて無いんだからね!!
睨んでいるように見えるけど、暖かい視線で見守っているんだからね!!
「すいません。おあいそお願いします」
とりあえず、会計を済ませておきたかったのでおあいそを頼む。別にこれ以上二人が仲良く話すのを止めたかったわけじゃないんです。ただ会計を済ませたかっただけです。大事なことなので2回言いました。
「あ、はい。わかりました。じゃあまた来てねカルタス君」
そう言いながらカルタスの頭を撫でる美由希さん。ちょっとカルタスが挙動不審だった(笑)
中身はいい年した男性だから困るよね。死ねばいいのに。
このままこの店にいると、俺の精神衛生上よくないのでさっさと店を出ることにする。 精神衛生上って言っても、俺達のことを覚えられそうって意味だからね!!
決して妬んでいるわけじゃないんだからね!!
ちょっと未来のお話
side out
~新暦75年 管理外第97世界「地球」海鳴市~
この日、ザフィーラを除いた機動六課の主要メンバーは、ロストギアの探索のために海鳴を訪れていた。
そして、夜にはアリサ・バニングスのコテージで現地住民とのバーベキューを楽しんでいた。
そしてそんな中、
「あれ? 君、昔に翠屋に来てくれたことがあったよね?」
美由希がエリオに向かって声をかけた。
そう、見覚えのあった少年に。
「えっ? 僕がここに来るのは始めてなんですけど……」
「他人の空にかな? 外人さんの二人連れで変わっていたから覚えていたんだけど」
エリオによく似た少年ということで、興味を持ったフェイトが詳しく話を聞くことになった。
話を聞くフェイトには思い当たる人物がいた。そう、ある犯罪者と助けることのできなかった少年が。
「あのもしかして、この男じゃないですか?」
そういいながら、フェイトはジェイル・スカリエッティの画像データを取り出す。
「あ、この人だよ。うん。間違いない」
「うそ……」
sideフェイト
スカリエッティが何故この地球に来ていたのかはわからない。でもそんなことよりもあの子のことが気になる。
話を聞く限りあの子に外傷があったり、憔悴している様子はないみだいだけど、良い待遇を受けているとは考え難い。本当に息子のように育てているんなら、必死に否定なんてしないだろうし……。
それに、美由希さんとあの子が話をしている時はずっと睨み続け、話を続けようとしたら会計をしたらしい。おそらく余計なことは何も言わないようにする為に。
それ以来見かけることは無いみたいだから、ここを張っていても意味が無い。やっぱり、あの時に助けることができなかったのが致命的だ。どうして、私はあの時助けることができなかったんだろう……。
駄目だ。すぐに昔のことを悔やむのは私の悪い癖だ。
これから助ければいい。そう、私の身に代えても。
あとがき
フェイトさんサイドは書くのが難しい。かっこいいフェイトさんって書くのが難しいと思うんですよねぇ。
でもかっこいいフェイトさんは俺のジャスティス!!
研修で課題を出されたorz
ますます時間がなくなるぅぅぅぅぅぅ。
2日に一回の更新も諦めたほうが良さそうですね。