第28話 「アグスタ戦が終わって」
やったねタエちゃん。ゆりかご浮上阻止にかかる手間が増えるよ!!
タエちゃんって誰だよって思った良い子の皆は間違ってもググっちゃ駄目だよ。お兄さんとの約束だよ。
やっほぉぉぉぉぉぉぉっ!!
ゆりかごの資料とか内部図面を引っ張りだしてくる馬鹿が死んだよ!! これで仮にゆりかごに侵入されても動力炉&玉座に着くまで時間がかかるよ!!
ゆっくりしていってね!!
……などと無理にテンションを上げてみたが、いまいち楽しくない。
まぁ、別にテンションが上がらなくてもいいわけですし。
目的は果たしたわけですし問題はなっしんぐ。ゆりかご浮上の時間稼ぎ&六課に対しての精神的ダメージ+カルタスへの決別の意思表示になったわけで万々歳だ。
「マスター、地上本部より先日の戦闘に関する最新の情報が届きました」
うむ。
ユーノ殺害を果たした以上は他の戦果はあまり関係がないが、念のため見ておくか。何が後々に影響を与えるかわからんしな。
どれどれ。
民間:死者3名、負傷者68名、行方不明3名
局員:死者2名、負傷者11名
こっちは旧式を含めるとはいえ50機以上の損失があったことを考えるとガジェット(笑)状態だな。
高ランク魔導師とはいえ一般局員に圧倒されるガジェットェ。まぁ、AMFが薄い場所だと不意打ち無しではⅣ型でもあんまり優位にはなれんというのは痛いほどわかった。
やっぱりAMF特化機使うか集中運用でAMF濃度を高めた場所を作り出さんと訓練された魔導師とやりあってもガジェットに勝ち目は無いか。
まぁそれは今後の課題として、続きを読むか。
備考:ユーノ・スクライア 意識不明の重態
って、おい!! 生きてんのかよ!!
くそ。
今回の計画は失敗か。まぁ、重症ならゆりかご浮上時に無限書庫で無双することもないか?
確実を期す為に暗殺っていうのは、現実的じゃないしなぁ。これも今後の課題か……。致命的な問題じゃないのが救いだな。
とはいえ、ユーノに無双されるされるのも困る。念のため内部図面が敵に出回った場合の対応をしておくほうがいいか。
くそっ!! 対空武装に時間がかかっているっていうのに!!
この苛立ちをどこにぶつければいいのだ?!
苛立ちをぶつけるべく隣の部屋へ突撃する。
「ひゃっはぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
「いやぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
悲鳴をあげ頭をかかえ蹲るアギト。
それを抱きかかえ優しく撫でてやるNO893。
そして、何か言いたげにこっちを見てくる。
えっ? 何? 母性本能にでも目覚めたのか?
なんか。物凄くいたたまれないんですけどー。
俺が悪いの? ねぇ?
~side out~
機動六課は悲しみと後悔に包まれていた。
無理をしてでもアグスタの警護に行っていればこんなことにならなかったのではと全員が考えるが、すべてはすでに後の祭りである。
特に酷かったのが、なのはとフェイトであり、一時は酷い取り乱し様であった。
反対にもっとも落ち着き冷静に部隊内のフォローに回っていたのがはやてであった。だが、彼女もまた一人になった時には両目を涙で濡らし、他の皆と同じ様に、いや、それ以上に後悔で思考を埋
め尽くされていた。
「私が、私があの時、命令をそのまま受託しておけばこんなことにはならへんかったかもしれへんのに……」
アグスタの警護は元々機動六課に回ってきた仕事であった。だが、部隊員の体調が悪く、仕事に支障をきたすと考え、他部署に回してもらえるように、はやては依頼をかけてしまった。
結果的にはその所為でユーノを助けることができなかったが、当時の判断は決して間違ってなどいない。もしかしたら、ユーノを助けることができたかもしれない。だが、その代わりに本調子でな
い隊員の誰かに犠牲が出ていたかもしれない。
そのことは課員の誰もが分かっていることだった。だからこそ誰もはやてを責めない。それ故に、はやては誰にも責められない己が許せない。逆に家族にフォローされる自分に怒りさえ覚えていっ
た。
こうして、アグスタの事件は機動六課全体に深い傷痕を残していった。
~side ホクト~
私は大きな過ちを犯してしまった。
彼の目的に気づくのが遅すぎたためにユーノさんが重症を負うのを見過ごしてしまった。
私が彼の目的に気づき現場に到着した時には、地獄のような光景があるのみだった。
彼がユーノさんを狙った理由はおそらく、ゆりかごの情報のサルベージ阻止のためなのだろう。
ユーノさんがいなくなればゆりかごの情報が現場に届くことを遅らせることができる。
そんなことのために……。ユーノさんを……。しかし彼にとってはオークション会場にあったロストロギアよりも重要なことだったのだろう。
しかし、これは私の落ち度だ。
彼が何を求め行動するかを予測できたのは私だけだったのに、安易にロストロギアを狙った行動だと考えてしまった。
彼はなりふり等かまっていない、手段など選んでいないのだ。
私も覚悟を決めないといけないのだろう。