人は反省することができる生き物である。
己の過去を顧みることで将来を見据えることができる。
反省しなければ同じ失敗を何度も繰り返す。
by田中雄一
第23話 「反省会」
「それでは、第37回反省会を始めます」
目の前には、各部門代表のUNズが集まっている。
まぁ、さっき言った台詞から解るとおり今から今回の反省会をやろうってわけですよ。
そんな中、一人が手を挙げた。
「ん? 何か質問か?」
「はい。第37回と言うのは何なのでしょうか? 確か反省会という名の付いた会議は始めてだったと思うんですが?」
うん。その通りだ。確かに反省会という名の会議はこれが始めてだ。だけど、
「その方が響きがいいだろ。第37回っていうのが個人的には、一番しっくりくるんだよね」
「…………。はい。解りました」
よしよし。んじゃ、会議を始めようか。
「っと、始める前に確認だけど、事前に教えていた情報に対して質問はある?」
事前に教えていた情報……。憑依、原作知識云々。
今回の件で懲りたので、俺が知っている限りの情報を事前に通達した。俺が色々情報を回していたら、ゼストが生きていることに疑問を持って報告をあげていただろうしねぇ。今更だが、教えておいた方がいい。問題は、俺が電波受信したと思われたり、イエローピーポー呼ばれたりしないかだ。。
その辺は、親子以上の好意を寄せるようにしている洗脳に期待しておこう。
………………。
ってあれ?質問無いの? みんな無言なんだが……。
「質問無いの? っていうか、あの話のこと信じている?」
「はい。勿論信じています」
質問が無いのは嬉しいんだが、何か釈然としない。
俺の事を信用してもらえるのは嬉しいんだが、なんでこんな電波話を何の疑問も無く受け止めれるんだ?
……まぁいいか。今度こそ始めよう。
「まずはガジェットの被害に関してからにするか。今回の損害はⅠ型が75機、Ⅱ型が500機、Ⅲ型が砲撃型、AMF型合わせて5機か。んで、Ⅳ型が1機。……けっこうな数だな。特にⅡ型。これで原作キャラが一人も死んでいないのは痛いな」
でも、原作でアギトINのシグナムが一撃でⅡ型を50機撃墜していたことを考えると仕方がない損失か。他の場面でも面白いように撃ち落していたしなぁ。
おまけに今回はゼストの部隊もいたみたいだし。
しかし、リミッター掛かった状態で殺せなかったのは痛いな。次からは警戒しているだろうし殺すのは難しいか。
「現在のガジェットの生産量ってどうなってたっけ?」
まぁ、ガジェットなんていくら潰されても代えが効くからなぁ。生産拠点を破壊されない限りなんとでもなる。
一度破壊されると、長期で使用できなくなるうえに一体生産するのに何年もかかるスカさんの戦闘機人なんていう玩具とは違うんですよ。ふふん。
しかも価格や生産性よりも性能を追及した兵器のはずなのに、Sランクどころか(自称)凡人の魔導師相手に束になっても敵わない戦闘機人なんて本当にただの玩具だよね~。
「現在、月産ですと全体でⅠ型が3000機、Ⅱ型が5250機、Ⅲ型が300機、Ⅳ型が75機です。その内、ミッドチルダで生産している分ですと、Ⅰ型が450機、Ⅱ型が675機になります。ちなみにミッドチルダでのガジェットの生産に使用している部品は、ミッドチルダでの生産が半数で残りが母星(生産拠点の無人世界)からの供給となっています」
この前、報告を聞いたときよりも生産数が若干増えてるな。うんうん。生産性が向上することは良い事だ。
母星での生産量には何の問題も無いから、四日も有れば今回の損失を完全に補填できるんだけど、ミッドチルダに持ってくるまでが大変なんだよなぁ。
四日分くらいの補填は問題ないんだけど、決戦用のガジェットの持ち込みがいまいちなんだよなぁ。
現在は俺達が作った企業を使って密輸してるけど、流石に一度に大量のガジェットを送ったら怪しまれるからなぁ。検疫は最高評議会の息が掛かった人間がやるから無問題だけど、あまりに輸送量が多いとレリック捜索用にしちゃ過剰だから最高評議会に怪しまれるんだよねぇ。
現在の生産施設も地下に作るとかして何とか過剰生産を誤魔化してるんだからねぇ。最高評議会の目を誤魔化すのも大変だよなぁ。本当にまんどくせえ~。
って、話が本題から逸れてたな。閑話休題。
「まぁ、ガジェットの補充も問題ないか。時間は多少掛かるが現在の生産量なら補充はできるな。何らかの作戦を行う場合でも、兵力にはまだ余裕があるしなんとかなるだろ」
「はい。決戦用に準備しているガジェットの数はまだ完全と言えませんが、時間的余裕を考えれば多少の消費は問題ありません」
俺が確認の意味を込めて見るとそう答えてきた。
損失は痛いけど特に問題は無しと。まぁ、機体を更新するとでも言えば輸送量が増えてもそこまで不審に思われないだろう。それが駄目でも時間さえあれば規定数には達するし何とでもなるな。それにいざとなれば決戦時に強襲上陸させればいいし。
まぁ、そんなことよりもⅢ型とⅣ型が落されたほうが痛い。技術的なものはばれていないだろうけど、技術的奇襲というのは無くなったな。特にⅣ型はステルスを利用して何度か使おうと思ってたんだけどなぁ。
と言っても、完全に奇襲性が無くなった訳じゃないし、開き直って使いまくるっていうのは無しだよな。……なんというジレンマ。
「まぁ損害は問題ないと言うことでいいか。それはそうと、今回の戦闘データのフィードバックはどうなってる?」
いくら補充が簡単に出来るとは言え、そのまま放置すると言うのは駄目だからねぇ。出来る限り戦闘の結果をフィードバックして性能の向上に努めよう。
「残念ながら、根本的には機体自体の性能向上しかないかと。前回の戦闘で、有用なデータは集まりましたが、完全なフィードバックは不可能です。対処可能な戦術をインストールしたとしても連携の取れた敵が相手だと処理が追いつきませんし、高ランク魔導師相手では機体性能そのものが足りません。現段階でのベストは尽くしていますが、アップグレードがないと完全とは言いがたいです」
完全な対処は現段階では無理か。かといって本当に機体の更新をするっていうのも厳しいよな。
決戦までの時間もあまり無いしねぇ。
開発部では開発を続けているから、今後の生産で作る分の一部が新型になるくらいか。
「まぁ、しょうがないか。開発コンセプトは、数を生かした戦闘だからなぁ。連携の取れた複雑な戦法に対しても数を生かして潰すことって前提で作ったし」
完璧な兵器を求める方が無茶だよなぁ。
前提どおり数を揃えることを優先した方が無難か。
「んじゃ、次は捕まったNUズなんだが。ぶっちゃけ放置と言うことで」
流石にストレートに言い過ぎたか? クローンとはいえ姉妹を見捨てるって言われたら、流石に怒るよな。
でも、ここではっきりさせておかないと今後の作戦の優先順位でも支障をきたしかねないしな。
「本当に放置するのですか?」
一人のUNズが手を挙げて質問してきた。
やっぱり、怒るよなぁ。だがここは心を鬼にして……。
「情報が漏れないように始末した方がよろしいのではないでしょうか?」
って、えぇぇぇぇぇぇっっ!!
そっち、そっちなのか?! 疑問に思ったのは?!
「カルタス様を助けるついでなら、助けるのもありかもしれませんが。救出をするには時間がかかります。その間に情報が漏れる可能性がありますし、地上本部を使って始末した方がよろしいのでは?」
こ、こいつらってこんなにシビアだっけ? いや、重要な情報を持っているんなら始末した方がいいんだって俺にもわかるしやるべきなんだが。
もしかして俺がした洗脳のせいか?! いやいや俺がしたのは、好意を抱く程度な洗脳だけのはず、その洗脳だって人格に影響がでない程度にしたつもりだし……。
でも、俺の目的に一糸乱れず邁進する様に、一体感を持つような演説をするといった軽度な洗脳もしたよなぁ。そっちが原因か?
……わからん。考えないようにしよう。
「いや、知っている情報もたいした事ないし別にかまわん。それに全体の作戦も少し修正しようと思うっているしな」
「そうですか」
よし、この件はこれで終わらせよう。
別に問題は無いはずだ。それに例え問題があったとしても今更どうにもならん。UNズの量産体制はとうの昔に整い、今なお生産し続けてるんだ。
今更、UNズ無しには作戦なんてなりたたん。
それに逆に考えれば、目的、効率を最優先にするってことで俺的には何の問題もない。むしろプラスなはずだ。
「ということで、とりあえず抜けた護衛のほうの穴埋めは俺の救出を行った部隊で穴埋めをしとくけど問題ないか? 地上本部襲撃の部隊ならまだ先だから補充は効くと思うし」
流石に一度捕まった身としては自重するが、まったく動かないわけにも行かない。UNズを作ったとはいえ、俺がやらねばならんことも多いしなぁ。
って、あれ? 何か会議に参加しているUNズの目が殺気だったような気が?
「ど、どうした? 何か問題でもあったのか?」
「いえ、マスターが決めたことなら問題ありません」
もしかして、すでに別の部隊での運用が決まっていたのか? それで殺気だったのか?
いや、でもそれぐらいで殺気だたないよな。だって、まったく関係の無い部門の奴らも殺気だっていたし。何なの?
最近、こいつらの考えがわからん……。
気にしても仕方がないか。話を進めよう。
「あと、修正についてなんだが。お前達も知っている通り、むこうにもホクトという原作知識持ちがいるわけだ。つまり、今のままの作戦だと確実に失敗だ。というか、このアジトの場所もばれる可能性もある」
ゆりかごが眠るこのアジトが見つかる可能性があるというのは大きい。この森林地帯が広いとは言え、もしホクトがミッドチルダ東部にある森林地帯にアジトがあるという情報を持っているなら、地道なローラー作戦でも見つかってしまう可能性がある。
この前、話をした時の感じではコアなファンじゃないっぽいから、設定資料集やスターターブックは読んでいない可能性は高いと考えられるんで、東部の森ってことはばれないと思うんだけどねぇ。
でも可能性があるというだけでこちらは作戦を早める必要がある。アジトを移転させることができるならそんな必要はないんだが、ゆりかごがあるためそんなことはできない。
「なに俺達は目的さえ達してしまえばいい。なにもパーフェクトに作戦を遂行する必要なんてない」
勝ってしまいさせすれば後はどうとでもなる。
簡単な流れとしては、ゆりかごを打ち上げる、本局の艦隊を壊滅させる、本局を制圧する、ここさえうまくいけば後はどうとでもなる。
本局と艦隊さえなければ、俺の帝国が世界を征することができる。
地上部隊についてはどうとでもなる。
「というわけで出来る限り計画を前倒し決定です」
俺の計画では、まず最初に別世界で次元航行艦を含めた大規模の戦力による陽動を行う。
次元航行艦を含めた部隊を使うことで管理局の艦隊もおびき出し、ゆりかご浮上までの時間を確実に確保するハワイ作戦。
敵戦力を十分に陽動できたら、地上本部及びアインヘリアルを襲撃、その際に敵航空兵力をできる限り消耗させ、確保したアインヘリアル利用して制空権を完全確保し安全にゆりかごを打ち上げる「ケ」号作戦。
この両作戦はほぼこのまま行っても問題はないと思う。
陽動部隊が暴れたら、ホクトはゆりかごのための陽動だって気付くだろうけど。管理局がそのことに気付くことはない。それに例えホクトがそれを訴えても証拠が無い以上管理局が動くはずもない。
最高評議会なら陽動に気付くかもしれんし部隊を動かす権限を持っているが、すぐに動かす可能性は低いんじゃないかと思える。
原作でもスカさんがヴィヴィオを奪取しても何の行動も起こさなかったし、ゆりかごが打ち上げられてものんびりとしていたしねぇ。
それに第一、感づく可能性は低い。評議会はこっちの戦力を完全に把握していないから、時空航行艦が暴れたとしてもすぐに俺が犯人だとは思わないだろう。流石にガジェットを使用すればばれる可能性が高いだろうが、この作戦で使うガジェットは次元空間での戦闘が可能なものを使うし、外観も変えたものを使う予定であるから多少の時間は稼げるはず。
という理由のため変えるのは日時だけ、本来このXdayは意見陳述会に合わせようと思っていたが、ヴィヴィオの確保と同時にハワイ作戦を開始、レリックの埋め込みが完了と同時に「ケ」号作戦発動。
多少の時間調整はするが、大体これでいこうと思う。準備期間が短くなることや効率的に敵航空戦力を撃破できないが仕方がない。
下手に時間をかけてここを発見されては元も子もない。
本来なら原作知識によってナイスなタイミングで行動する予定だったけど、それを無視するだけの話。完全な計画ではなくなったけどそれは仕方がない。ゆりかごさえ打ち上げたらどうとでもなるのがから多少の被害はやむをえない。
時空航行艦隊と本局さえなければ次元世界すべてを管理下におくことができる。
いくら地上に戦力があろうと宇宙、次元空間からの攻撃の前には無力。俺達は次元空間を制するだけでいい。政治は各世界の政府がやればいいし、治安維持は地上本部が引き続きすればいい。
レジアスはそのためには使える駒だ。奴なら例え俺達の支配下とはいえ治安が悪化するのは望まないはず。それに、いい感じにこちらは弱みを握っている。
何も全てを支配する必要もない。次元航行艦等の俺達にとって脅威となりえる兵器の所持を禁止し、教育、メディア、技術をこちらで握り、税金の1%ほどをいただくだけで十分世界は管理できるはず。
このために無理して旧式とはいえ航行艦を建造するノウハウを蓄積してきたんだ。ミッド制圧後に最新技術を手に入れれば、比較的短時間で新型の建造までこぎつけることが出来るはずだ。
航行艦を持つのは俺達だけでいい。
「で、他に何か質問はある? なかったらとりあえず今回は終りにするけど」
と自分の作戦を思い出しつつ、変更点とそれに伴う細かな説明をし終えたので質問があるかを聞いておく。
すると一人が手を挙げて質問をしてくる。
「地上本部のほうはどういたしましょう? 今回のことでかなり文句を言ってきていますが」
「新たに戦闘用クローンを製造した際には回すとでも言って宥めておけ」
まったくレジィ坊やは五月蝿いぜ。
この前、50人も魔力持ちの戦闘用クローンを貸してあげたんだから少しくらいは便宜を図ってくれてもいいじゃない。
ん? なんで戦闘用クローンをまわしたのかって?
HAHAHA! そんなのは簡単さ。使い物にならなかったのさ。
そうあれは、UNズの生産が軌道に乗ったんで、調子に乗って高ランク魔導師のクローンを作った時だ。遺伝子提供者(勿論無許可)は、原作組じゃないけどSランクオーバーの魔導師さん。
製造自体は大成功。クローン達は、子供ながらにAA~AAAランク級という安定した製造精度。大人になればSランクは余裕という兵器として問題の無い高性能ぶり。
だったはずが、クローンの製造に成功してから気付いたのが、戦闘技能の教導というノウハウを誰も持ってなかったということ。製造できたのはただの魔力タンクというオチ。
いくら記憶転写で戦闘知識を写しても体がその通りに動かないので宝の持ち腐れ。最初は、スカリエッティの戦闘機人に教育させようと思ったんだが、こっちの陣営となんか小競り合いが何度もあって(特にノーヴェ)頓挫。おまけに機人は戦闘データを蓄積し姉妹間で共有できるというチートができるので、(クローンだけど)普通の人間に教えるのは効率が悪いことも判明。
それならいっそのこと地上本部で育成してもらおうということで落ち着いた。戦闘知識自体はあるから、効率よく成長するだろうしねぇ。
勿論こいつらにも洗脳が施されているので本気で管理局員として働くことはない。とはいえ、そんなことは知らないレジアスには恩を売ることができる。それにハワイ作戦と「ケ」号作戦時にはスパイとしてこっちに情報を送ってもらえるし、世界を征した後は地上の監視役になるという美味しい話。
管理局が育てた魔導師がそのまま敵になるというナイスな皮肉。
とはいえ、兵器として完成するのに時間がかかり過ぎるので、今作戦に十分な戦力は確保できないと判断し生産は一時中断。それよりは、その生産ラインをUNズの生産にあてたほうがいいしねぇ。
自立して行動できるから、監視者として世界征服後の主力になると思うけど。それはまた別の話。
「それと質問出がないのですが、一つ提案があります」
「ん? 何?」
さっき質問してきたUNズが話しかけてくる。
「マスターが教えてくださった。情報を元に我々でいくつか今後の行動を考えましたのでご検討願えませんか?」
うん。そういう意見は大歓迎だ。
原作知識に基づいた作戦は今まで俺という偏った視線だけで考えた物だから、そういう意見は今更だが必要だ。
んじゃあ、聞かせてもらおうか。
~あとがき~
予告していた日時よりも大幅に投稿が遅れたことをお詫び申し上げます。
リアル世界のほうが色々ありまして遅れてしまいました。
>雲海さん
この程度で正気を疑っていたら、世界は狂気に満ち溢れてるぜ
あとポエムじゃない!! 格言(笑)もしくはKAKUGENだ!!
まぁ、俺も無くてもいいとは思う。
てなわけで、いらないと思う人は不要と、いると思う人は必要と感想板に書いておいてください。
どうでもいいと思う人は無視しておいてください。
不要が多い場合は次回から書きません。同数の場合も。
ただし、両方ともに1票もない場合は継続します。締め切りは次回投稿まで。
不要が多くても過去の消去は当分しません。暇な時に改訂ついでにやります。