表舞台に登場するしないは大きな問題ではない。
目的の達成への道を進んでいるのかが問題だ。
目立たずとも成果を挙げさえすればいい。例え他人の成果でも。
by田中雄一
第20話 「数の暴力」
~side out~
ヴィータとシグナムが異変に気が付いたのは、逃亡し始めたⅡ型を追いかけ始めてすぐであった。
「さっきから念話がまったく通じねぇ!!」
ヴィータが苛立った口調で叫ぶ。
それを聞いたシグナムも念話を試みるがまったく通じない。
逃亡したⅡ型の追撃を始めたことをなのは達に伝えようとしたがまったく通じない。
「くっ! 罠に嵌められたか。すぐに引き返……」
シグナムがヴィータに話しかけようとした時、さらに後方から多数のⅡ型が現れた。
「ちっ!! あたし達が追いかけてくるのも計算済みだったってことかよ」
前方に27機、後方に約100機のⅡ型が展開している。
これでは当分の間、なのは達と合流することはできない。
「いったい何機のガジェットを投入するつもりなんだ……」
シグナムが歯を噛み締めながら呟いた。
シグナムは、今まで何度もガジェットと交戦したことが何度もあったが、ここまでの物量に襲われたことは無かった。多くても50機程度が限度であった。
これまで、戦闘という目的で大量に投入された事など無かった。これはガジェットという存在の意味を変えるものであった。
「だけど、そんなの関係ねぇ!! まとめてブッ潰すだけだ!!」
ヴィータが吼える。
しかし、声とは裏腹にその表情は焦りに満ちていた。
(あたしが、あの時にシグナムの疑問にもっと真面目に答えていればこんな罠に嵌らなかったかもしれないのに……。あたしはあんな思いはもう二度としたくねぇのに!!)
ヴィータはグラーフアイゼンを握り締めガジェットの群を迎え撃とうとしていた。
ヴィータとシグナムを遠くから見ていたものがいた。
NO893の配下のUNズの一人であった。
彼女の役割は、ヘリについている護衛の分散と隔離であった。
彼女は、田中の直接的な救助とは関係ない今回の戦闘に不満があった。
しかし彼女にとって、ここでの彼女の働きが田中のためになることと、NO893が今後の進退を約束してくれたことはとても大きかった。
「でも、NO893を信頼するのは危険よね。だって彼女も私なんだし」
NUズは基本的な知識や人格は製造段階において同じであるため、ある程度の考えはお互いにわかる。ようするに彼女達の腹黒い考えもお互いにばれている。
ようするに田中を独り占めしたいのである。見た目が幼子であるのでこの考えはとても微笑ましく思える。が、実際はそんなことはない。
邪魔になる相手を排除してでもと考えるあたり物騒である。相手を蹴り落とすなんて当たり前、場合によっては直接的な排除まで考える。
しかし、考えるだけ実行しない辺りの理性がNO893を含めて働いているのは不幸中の幸いともいえる。ただし実行しない理由が論理的なものではなく、実際に排除が始まると際限が無くなり互いの生産能率が壊滅状態になることは確実であり、田中に見捨てられる可能性が高いという打算的なものである。
そのような考えから、このまま作戦通り二人の足止めをしてさえいれば、NO893からの報酬がもらえるというのは信用できる。
「でも、今のうちに少しでもポイントを高めておいた方がいいわね。このままだとNO893のポイントが高いのは確実だしね」
蹴り落とすことはしないが出し抜くことは常に考えている。
何故なら彼女も他の彼女達も、他者より少しでも多くの愛が欲しいのだから。
「という訳で、私のために死んでね」
彼女は笑顔でガジェットに命令を与えていく。
なのは達と合流するためにⅡ型との交戦を始めた二人だったが、大きく苦戦させられていた。
Ⅱ型を迎え撃とうとしていた二人に対して、ガジェットによる最初の攻撃は先程と同じくアウトレンジからのミサイル攻撃であった。ただし、もう時間稼ぎをする気がないため1機当たり6発の一斉射撃であった。
前方のⅡ型はほとんどのミサイルのを使い果たしているため、後方に展開しているガジェットからだけの攻撃であったとはいえ600発を超えるミサイルが二人に殺到する。
それに対して、シュワルベフリーゲンやシュランゲバイセンを用いての迎撃と回避運動をとることで、100発以上のミサイルを撃墜し、何十発ものミサイルを回避する。そのおかげで命中弾はそれほど多くない。しかし、回避されたミサイルは追尾機能により再び二人に襲い掛かる。
回避と撃墜を繰り返しさらに撃墜数を増やしていく二人だが、Ⅱ型はそんな二人を見逃したりはしない。もう時間稼ぎをするつもりなどない彼らが二人を待つ理由などない。
本体に収納されていたミサイルを体外に出し発射準備を整えたⅡ型も二人へと襲い掛かる。
Ⅱ型の参戦によって、ミサイルに対しての回避が阻害されバリアによる防御が主体になっていく。その結果、魔力の消耗を強いられる。
Ⅱ型に搭載されているAMF発生装置はⅠ型と同程度であるうえに、高速移動を繰り返すため移動範囲が大きくなってしまい濃度が薄まるためあまり効果は高くない。せいぜい命中する魔力弾の威力を減らし、防御能力を高める程度だ。
しかしそれでも何十機と集まり相手を取り囲めば相手の魔法を阻害する本来の効果を発揮する。
高ランク魔導師相手にはそれなりの効果でしかないが、ギリギリの戦いを行っている者には致命的なものとなる。
ほんの僅かに遅くなる飛行速度、魔法展開、そして少しずつ増える魔力消費量。
そしてそれらは命中弾の増加に繋がっていく。
ミサイルや熱光線が命中するたびに二人は苦悶表情を見せ傷つけられていく、バリアが間に合わない場面も出てきているのだ。
そしてⅡ型は今までとは違い、2機1組であることを生かしての攻撃を行っている。1機が攻撃・追撃を行っている間、もう1機が上空もしくは後方にて援護・哨戒を行う。
1機を攻撃すればもう一機からの攻撃を受ける。二人は確実に消耗させられていく。
二人途中から大きく戦い方を変えたⅡ型に驚き戸惑っていた。
「…………こいつら、今までと動きが全然違う」
あまりの違いに思わずヴィータから声が零れ落ちる。
今まで、ヴィータたちが戦ってきたガジェットはほとんどがスカリエッティーが運用するガジェットだ。
もちろん田中を逮捕した時に一度戦っているが、その時はリミッターの解除が行われていたうえに、それほどガジェットの数も多くなかったため簡単に破壊できた。その結果、ガジェットの違いについてはあまり感じることが無かった。
スカリエッティーの元で運用されているガジェットは全て探索を目的にされており、戦闘はそこまで考慮されていなかった。
並みの局員相手だとAMFと機動力そして数で圧倒できるため、ガジェット用の戦術・戦法については研究が行われていない。
しかし田中の下で運用されているガジェットは、戦闘を目的とした効率良い運用が研究されており、基本的な戦術・戦法はもちろん組み込まれている。
その結果がこの戦闘である。
Ⅱ型は機械であることを生かして互いに高速通信を行い、全機の情報を統合し敵味方の位置関係を完全に把握する。
そして2機1組の基本的なロッテ戦法を基本としつつ、その情報を元に互いを援護行いあう。
最適な援護によって効率的な損害と戦果を実現するのだ。
「大丈夫か、ヴィータ?」
回避運動をとりながら、シグナムがヴィータに声をかける。
「あぁ、あたしは大丈夫だ。そう言うシグナムの方こそ大丈夫なのかよ」
シュワルベフリーゲンでまた1機を叩き落しながら、そう答える。
「むろんだ」
それに対して、シグナムもシュランゲバイセンで3機まとめて撃墜しながら答える。
しかし二人の言葉とは裏腹に息は荒く、疲弊しているのは明らかだった。
それに対して、ガジェットはミサイルの大半を失ったとはいえ、まだ100機近くが残っており、戦闘能力は健在であった。
「くそ! これじゃあ、向こうに合流するのは無理みてぇだな」
「あぁ、今はあの二人を信じよう」
ヴィータが悔しそうな言葉に、シグナムが答える。だがその顔もまた悔しさに満ちていた。
無理をすればⅡ型を振り切って二人と合流することはできるだろう。しかし、おそらくⅡ型もすぐに追いつくことになる。そうなると、なのはとフェイトに余計な負担をかける可能性がある。
しかし、何時までも考え事をしていることは出来ない。次々とⅡ型が二人に襲い掛かってきているのだから。
「ならせめて、ここで全機墜してやる」
ヴィータがアイゼンをⅡ型に向けて宣言をする。
「だな」
それにシグナムも静かに同意する。
そして、二人とⅡ型の殲滅戦が始まった。
~あとがき~
はい。一昨日にまた一歩おっさん度を高めたジャミーです。
今回は全然話が進んでいません。しかも田中が出てきてません。最初の三行で出てないことの言い訳をしているだけです。
しかし戦闘ばっかり書いててもだれますよね。読者的に。作者的には楽しいですがw
戦闘描写がうまく書けるのならまた別なんでしょうけどねぇ。
次には話を進めて行きたいと思います。
ところで、アコース査察官の思考捜査って記憶ごっそり見れるんでしたっけ?
六課にカルタスとUNズが捕まっているんだけどwww
うっかり、こいつのレアスキルを忘れてたw
これだからレアスキル持ちは嫌いなんだよ┐(´Д`)┌
投稿2009/09/21 20:27