他人の思考を完全に読むことは不可能である。
そこから思い違いを起こし、ミスを犯す。
重要なのは客観的に状況を見ることである。
by田中雄一
第19話 「田中救出戦」
前回から簀巻きにされている田中です。
手足だけじゃなくても口も猿轡状態で喋ることもままなりません。この扱いは人権侵害じゃないかと思います。法を司る管理局がこんなことをしていいのでしょうか。
ところで何故簀巻きにされているかと申しますと
~回想~
「ちょ!!!! ロックされてる!! ロックされてる!! グランドニック陸曹右によけろ!!」
「うるせぇぇぇ!! そんなことは言われなくてもわかってる!! それに俺はグランセニックだ!! 地上本部聞こえるか? こちら……」
うるせぇぇぇとは何だ。ロックされてるんだぞ。それに俺を無視して応援なんて頼んでるんじゃない。
後ろではフェイトとシグナムが何か話しているが、そんなのは今はどうでもいい。とにかく回避するんだぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!
っと、ロックが消えた?
よく見るといつの間にか出撃したシグナムとヴィータが撃墜したようだ。
ふぅ。脅かしやがって。
「って、またロックされてる?! しかも今度は2基にロックされてる!!」
やばい!! やばい!! これだけ何度もロックするってことは評議会の暗殺部隊か?!
「回避、回避するんだグランセドリック陸曹ぉぉぉぉぉぉ!!」
グランドセドリック陸曹の肩を揺らしながら回避を促す。
「うお!! 肩を揺らすな!! 操縦できないだろうが!! なのはさん、すいませんがこいつを縛っておいてください」
「え? あ、うん任せておいて」
先程までシグナムたちの戦闘を見ていたなのはは、突然声をかけられて事に驚いたようだったが、すぐに気を取り直してこちらに向かってレイジングハートを向けようと、って縛るだとおぉぉぉっ!!
「えぇぇい止めろぉぉぉぉ」
こちらの抵抗も虚しくバインドで縛られた。
「ついでに口の方も閉じさせておいてください。うるさいと集中できないので」
グランセドリック陸曹の悪魔のような声が耳に入った。
~回想終了~
いやさ、取り乱して暴れたのは悪かったと思うよ。でもさ、この扱いはないんでないの?
こんな扱いを平然とするのに、司法組織なんてよく言えるもんだ。
さて、愚痴はこれぐらいにして冷静に観察をするとしよう。
さっきまでは取り乱していたためミサイルしか見えてなかったが、今だとミサイルを撃っているのがⅡ型だとわかるので安心できる。
何故なら、仮にスカさんに渡したⅡ型が襲ってきているのだとしても、UNズが上位者として割り込み命令をすることができるのでいざとなったらどうにかしてくれるだろう。
それに、あれだけ大量のⅡ型を運用しているって事はUNズが操作している可能性が高いのでさらに安心。おそらく戦力を分断するために攻撃を仕掛けているんだろう。
まぁ、UNズが俺を裏切って攻撃をしてきたって可能性もあるけどそんなことは…………ないよな?
いやいやいや、よく考えればヘリをロックしたミサイルの数自体も少なかったし!!
なのは達が迎撃できる分だけ撃ちこんだって考えれば納得できる。それにいざとなればミサイルを自爆させたらいいだけだから撃ちこんだとも考えられる。
うん。大丈夫だ。俺は裏切られてない!!
~side out~
Ⅱ型はミサイルと熱光線で牽制しつつヘリを包囲し始めた。
ただ、ヘリの進行方向から包囲を始めたため、ヘリの後方からはまだ脱出できる。
「ヴァイス君、私とフェイトちゃんでガジェットの足止めをするからその間に退避を」
「了解しました」
なのはの声にヴァイスが返事を返すと同時にヘリが反転を開始した。
退避方向にまた未稼働なガジェットが配置されている心配はあるが、リミッターを解除できない状態では一人で応戦しきれない。一人は護衛としてヘリの傍にいたいが、一人で応戦した結果、突破されては意味が無い。
ここが廃棄都市であるため、敵にとってガジェットを隠す場所に困らないことが悩みだが、地上をなのはのサーチャーで索敵しながら進めば完全な奇襲は阻止できるということと、高度を保っていれば多少の攻撃ならヴァイスの腕があれば回避できるため、なのははヘリ単独での退避を決めた。
ヘリが反転を開始するのと同時にⅡ型の猛攻が始まった。大量のミサイルを吐き出し、、飽和攻撃を図る。
そしてⅢ型はエネルギーをチャージするための時間稼ぎを行うため、建物の影へと多脚の脚を利用し移動を開始した。
大量に押し寄せるミサイルに対して、フェイトが広域攻撃魔法であるサンダーフォールにてミサイルを一掃し、なのはがアクセルシューターで撃ち漏らしを掃討していく。
リミッターを掛けられているとはいえ、ガジェット程度ではそう簡単に落とされはしない。ミサイルの迎撃を終えると砲撃魔法でⅡ型の数を削っていく。
しかし、その後も続々とⅡ型が浮上してきたため、まだ空中には250機を越えるⅡ型が飛んでおり、地上にも少なくない数のⅢ型が蠢いている。
このⅡ型は大型化によってミサイルを本体に収納することが可能となっており、ミサイル搭載数が大幅に増やされている。収納されているものと露出している物を合わせると1機当たり12発のミサイル装備している。その結果、敵戦力が保有するミサイルは、12×250で3000発にもなっている。。
そしてⅡ型はそのミサイルの数を活かし、二人が攻撃をする間を与えずに攻め続ける。二人が撃墜したⅡ型は最初のカウンターで放った砲撃魔法以降では、ミサイルを使い切り熱光線で攻撃を仕掛けに来た数機だけだ。
しかしその熱光線で攻撃を仕掛けてくる機体も容易に撃墜できる相手ではない。
Ⅱ型はミサイルと違い直線で接近してくるわけではない。並の空戦魔導師よりも機動力のあるⅡ型は、半端な攻撃ならすり抜けて接近してくる。
そして現在も、6機のⅡ型がサンダーフォールによる攻撃を回避した後に、20発近くのミサイルと共に二人に接近していった。
「私が迎撃する。なのははミサイルを願い」
フェイトがⅡ型へ接近する。高速で接近されたためⅡ型はまともに回避行動を取れず、擦れ違いざまに3機が切り捨てられる。残りの3機は散開するが、すぐさま急制動によって反転し熱光線を放ちながら向かっていく。
「くっ、早い! 前回の時よりも機動が上がってる」
フェイトは放たれる熱光線を紙一重で回避しつつ、変則的な回避運動を高速で行う前方の2機に対してプラズマランサーで迎撃を行う。接近するプラズマランサーに対して2機は誘導に対応しきれずに撃墜されるが、1機はスラスターを吹かし、力ずくで制動をかけ回避する。そして次の瞬間には射線上にフェイトを捉える。
そして、Ⅱ型が熱光線を放とうとしていた。
「くっ!」
フェイトは襲ってくる衝撃に体を強張らせた瞬間、残りの1機が爆散した。
フェイトが辺りを見回すと、親指を立てたなのはがいた。
「ありがとう、なのは」
ミサイルを迎撃し終えたなのはが、アクセルシューターでⅡ型を撃墜したのだ。
フェイトは笑顔でなのはに礼を言う。
「うん。でもまだ終りじゃないよ」
それに対してなのはもフェイトに笑顔で答える。
しかし、なのはの言う通りまだ終りではない。Ⅱ型はまた新たなミサイルを放とうとしていた。
「いくらなんでもズル過ぎるんじゃない?」
NO893は戦闘の様子をモニターで見ながら呟いた。
すでに400発近くのミサイルが撃たれているのに直撃弾はまだでていない。数十発は命中しているが、バリアで防がれているため戦果は二人の魔力を多く消耗させただけで効果は薄い。
「あれでリミッターが掛けられているっていうの? 並の空戦魔道師なら、最初の一波で壊滅しているのに」
Ⅱ型は原作でも一般的な空戦魔道師を凌駕する機動性を持たされている。しかし、このⅡ型は田中の思想の元に主力兵器として開発されており、旋回能力、速力どちらも原作を上回る能力を持っている。
普通、旋回能力は速力に対して反比例するものだが、無人であるため無理な機体制動を可能とし、高度な旋回能力を持っている。
そのⅡ型に対して、砲撃や大規模魔法で撃墜するだけならまだしも、接近し切り捨てるという馬鹿げた芸当まで披露しているのだ。
「でも、どれだけ頑張れるのかしら? いくら質が良くても圧倒的な量を覆すのは無理よ?」
NO893の想像通り、二人は圧倒的な物量差で自然と防戦一方になっていく。
1対1なら圧倒的である高ランク魔道師でも、大多数を総合した戦力には勝てない。攻撃力だけならリミッターがない状態であれば対抗できるかもしれない。しかし手数だけはどうしようもない。誘導弾を放つにしても数百も操ることはできない。
現在は、一度に100発近く飛来するミサイルに対してサンダーフォールで一掃することでなんとか対応しているに過ぎない。
しかし、当然撃ち漏らしも出てくる。そして今、撃ち漏らした20発近くのミサイルがなのはに迫っていた。先程までなら、なのはがそれらを誘導弾で撃ち落としていのだが、今回はそれと同時に30機近いⅡ型がヘリへ向かっていた。
Ⅱ型かミサイルのどちらかしか撃ち落とすことが出来ない。フェイトはサンダーフォールを撃った直後で魔法を唱えるのが間に合わない状況である。
しかし、なのはは迷わずアクセルシューターをミサイルに向けて放つ。
アクセルシュータは1発も狙いを外さずに全弾がミサイルに命中したが、それと同時にミサイルがなのはに命中した。
「なのは!!」
フェイトが悲鳴に近い声でなのはの名を呼ぶ。
硝煙が立ち籠めるていおり、なのはの姿は確認できない。フェイトは焦燥感だけが積もっていく。
「フェイトちゃん。私は大丈夫だから」
硝煙の中からなのはの声が聞こえてきた。
その声にフェイトは安堵の溜息を吐いた。しかし、硝煙が晴れると逆に息を呑んだ。
硝煙から現れたなのはは、傷だらけであった。おそらくシールドが間に合わずバリアジャケットだけで防いだのであろう。
「なのは!!」
「大丈夫。まだやれるよ。それにまだ終われないよ」
なのはの言うとおり、戦闘の妨げになるような致命的な傷はなさそうだが、放っておいて良い傷などない。
しかし、フェイトはなのはの言葉を聞き諦めたようだ。なのはの言うようにまだ戦闘は終わっていない。今の攻防でヘリとガジェットの距離をさらに開けることには成功したが、気を抜けばすぐにでも抜かれそうである。敵にはそれだけの数がいる。
フェイトとしてはすぐにでもなのはに治療を受けさせたいが、そんなことをすればヘリが襲われるのは火を見るよりも明らかだ。
二人はガジェットの侵攻を食い止めるために、自身の疲労が溜まるのもかまわずに魔法での攻撃をより一層強めていった。
「よく頑張るわねぇ」
なのはやフェイトが戦っている地から遠く離れた場所に佇むNO893は楽しそうな声で呟いた。
予想以上に二人が抵抗したおかげで、予想に反しほとんど何のダメージも与えていないことやこちらの損害が大きいことは彼女にとって面白くなかったが、全体的に見れば彼女にとって何の問題もなかった。
ガジェットから送られてくる映像に映っている必死に戦うなのはやフェイトは、彼女から見たら愚かしいことこの上なかったのだから自然と笑みも浮かぶ。
「貴女達が必死になってガジェットを食い止めれば食い止めるほど私の作戦が成功する確率が上がるというのに……」
NO893は虚しそうな声をあげた。
しかし顔は満面の笑みを浮かべていた。
「さてと、じゃあマスターは返してもらうわよ?」
グシャリ
最初、ヴァイスはそれが何の音かわからなかった。
だが次の瞬間、体にかかる風圧でヘリに穴が開いたことを理解した。彼が振り向いた先では、ヘリに切り込みを入れてそこから抉じ開けようとしている透明な刃物が見えた。
彼の視線の先では、簀巻きされ転がっている田中が悲鳴を上げ、穴から離れようとしていた。
だが次の瞬間には穴が広がりそこから透明な何かが入り込み、逃れようとしていた田中を掴み上げた。
「クソ!!」
ヴァイスはコックピットに固定されていたストームレイダーを手に取りシュートバレットを放つが、放たれたシュートバレットは空中でかき消された。そしてすぐに見えない何かは田中を連れてヘリから離れていった。ヘリに止めの一撃を加えてから。
Ⅳ型
ステルス能力を有するガジェットである。
そのステルス能力は、至近距離まで近づいてもヴィータに気付かれないほどである。
3期前にはなのはを撃墜し、3期ではヴィータを半殺しにしたりと大活躍である。
~あとがき~
タイトルに習作と付けました。
ネタにするか、習作にするか迷いましたが習作の方が幅が広そうなのでこっちにしました。
a-23さん御指摘ありがとうございました。
滋賀から帰還しました。いや本当は9月上旬には帰還していて、先週には投稿しようと思っていたんですが、ちょっと家のほうで色々有りまして投稿が遅れました。
そして投稿したのはいいけど話が進まねぇwww
しかも戦闘描写が下手糞だ。まだキャラごとの心理を書いているほうがマシな気もするw
もうちょっと戦闘が続きそうだけど勘弁してください。
たぶん次は来週に投稿します。……出来たらいいなぁ。