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No.7535の一覧
[0] リリアンの魔女(原作:マリア様が見てる)(習作)[ALTO](2009/03/19 15:22)
[1] プロローグ[ALTO](2009/03/19 15:18)
[2] 中等部一年 四月~六月[ALTO](2009/03/19 15:19)
[3] 中等部一年 十一月下旬[ALTO](2009/03/19 15:19)
[4] 中等部一年 二月[ALTO](2009/03/19 15:20)
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[7535] 中等部一年 二月
Name: ALTO◆06189430 ID:e86f036c 前を表示する
Date: 2009/03/19 15:20
2月、失くしたシャーペンを探しに、音楽室へといった。


すると、中から歌声が聞こえてきた。


その歌声は澄んでいて、思わずドアの前で立ち止まり、耳を傾ける。


どれだけの時間がたったのかわからない。


歌声はいつの間にかやみ、静寂があたりを支配している。


ドアを少し開け中を覗き込む。


一人の生徒がこちらを見ていた。


私は部屋へと入ると、拍手をする。


『人の心を動かす、魅力のある良い歌だった。』


そう言うと、彼女は少し目を見開いたあと、微笑んだ。


『ありがとう。』


『事実を言っただけだよ。』


私は6時間目に使っていた机の中を調べる。


『探し物?』


『ええ。』


『探しものなら、ここの箱にまとめて入っているわよ。』


彼女はそう言うと、近くにあった箱をもってきてくれた。


中を見ると、シャーペンや消しゴムなど、様々なものが入っている。


そのうちのひとつに見覚えのあるシャーペンがひとつあった。


拾い上げ、筆箱にしまいいれる。


『ありがとう。』


そう彼女に礼を言う。


彼女は首を横に振った。


『たいしたことはしていないわ、リリアンの魔女さん。』


彼女は微笑んでいた。


悪意も恐怖もない。


ただ、楽しそうに、微笑んでいた。


『私のことだけ知られているのはフェアじゃないと思わない?』


『そうね。私は蟹名静。合唱部に所属しているわ。』


他の生徒が口にしていた名前だ。


リリアンでも有数の歌い手だったか。


『噂どおりのようで、なにより。』


個人的にはリリアンでも有数ではなくリリアン一の、でもよさそうだと思った。


人の心を震わせる歌を歌ったのだから。


『そちらは噂どおりに見えなくて残念。』


噂とは、魔女のことだろう。


まあ、見た目でついた名前でなし、仕方ないことだ。


『なら、魔女の力を見せてあげようか?』


『ぜひ。』


風に問いかける。


目の前の彼女のことを。


集まった情報はたいしたことないことばかりであった。


しかし、最後に伝えられたこと。


それには素直に驚かされた。


蟹名さんは私を中心に起こった風に驚いているようだった。


恐怖はない。


思わず笑みを浮かべる。


世界はやはり面白いものだ。


リリアンという限りなく狭い世界において、私を恐れぬものが三人も見つかった。


『たいした話はないわね。ただ・・・、風たちがあなたの歌を賞賛していたわ。』


私の言葉に、蟹名さんは驚いたようだった。


それもそうだろう。


私の言葉をそのまま受け取ると、私は風と話したことになるからだ。


そして、蟹名さんは一言言った。


『すごいわね。』


笑う、笑ってしまう。


その言葉は、4月のあの日、令に力を見せたときと同じ言葉だった。


『静、と呼んでもいいかしら?』


『あなたを亜里沙と呼んでいいのなら。』


彼女は、良い人だ。


『よろしく、静。リリアンの歌姫。』


『よろしく、亜里沙。リリアンの魔女。』


出会いは唐突に。


静との関係は、おそらくどれだけ離れても切れないだろう。


物理的にいくら離れたとしても、私と静が親友であることに違いはない。


時間などが作る擬似的な連帯感などではない。


刹那の時において認識するのだ。


私と静は、ともに存在しているのだと。




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