「よし……準備オッケーだな」俺は普段のジャケットを羽織ったカジュアルな服装から、シャドー・ナイト装備に変える。武器もリーヴェイグから双長剣に変えている。俺にとっての最強武器はその特性上の理由でリーヴェイグだが、他の武器の扱いもマスターしているからな、俺は。ちなみに俺が装備している剣はグラム。竜殺しの剣と言われ、対モンスター戦においてはラルフのレーヴァテインを上回る攻撃力を得られる。今回は対人戦だが、単純に武器としても優れているからな……問題あるまい。ちなみに、グラムとは俺が元居た世界の北欧神話……正確には民間に伝わる伝承らしいが。それに出てくる英雄シグルドの持つ剣と同名だったりする。2mはある大剣で、財宝を守る竜に化身した男……ファーブニルを倒した剣とされる。また、某運命では魔剣の類の中でも最高峰に位置する物らしい。まぁ、エクスカリバーの原型と言われるカラドボルグの更に原型とか言われているくらいだからな……分からなくはないが。俺としては、レーヴァンテインやグングニルとかの方がランクは上な気がするんだが……大概の二次創作だとグラムの方がランクは高い。確か原作運命でもランクは高かったんだったか?一応、オーディンはグングニルでグラムを壊したりしたし、レーヴァテインに至っては世界を焼き尽くす――とまで言われているんだがなぁ……。また、勘違いされがちだが、別段シグルドは不死身では無く、財宝を竜から得た後に財宝を狙った兄弟に暗殺されている。これは、この伝承を元に作られたと言われている物語の英雄、ジークフリードと混同視されているからだろう。余談だが、ジークフリードの持つ剣はバルムンクと言い、更に他の物語ではノートゥングと呼ばれたりしている……実にややこしい。と、話が逸れたな。とにかく、そんな伝説級の剣と同じ名前ではあるが、グロラン世界のグラムはそこまで大それた性能は無い。見た目も大剣という程大振りではないし。その能力を原作風に言えば『モンスターに対して攻撃力+20される』――だからな。それに、どうやら複数存在するらしい。原作では超高級品だが、普通に売られていたからなぁ……。だから俺はそのグラムを二振り、腰に下げている訳だ。しかし武器として優れているのも事実で、俺がある程度実力を出しても壊れない。流石に全力全開には耐えられない様だが。どうにも俺の全力に耐えるには、原作風に言えば攻撃力140は必要らしく、正に伝説級の武器でなければ耐えられないらしい。ダイの○冒険のダイ状態なわけですね分かります。難儀な身体だよ……マジで。まぁ、俺が全力を出す様な相手がこの世界に居るとは思えんが……。あ、リーヴェイグは原作では基本攻撃力こそ94だったが、その特性と俺のチート能力によって最強の剣となっている。……さっきから俺は誰に言っているんだろうな?そうこうする内に皆も準備が終わって、合流してくる。皆、シャドー・ナイト仕様だが、微妙に異なる。原作では分からなかったが、男女で服装に違いがあるのだ。まぁ、どこに違いがあるかは一目瞭然なんだが。「シャドー・ナイトって女の人はスカート着用なのね……」「えぇ、私を含めて女の構成員は少なかったけど……また、これに袖を通すことになるなんてね……」ティピの疑問に答えるリビエラ……やはり心境は複雑みたいだな。……もう気付いたかも知れないが、シャドー・ナイトの男女の違いはずばりスカートだ。スリットの入ったスカートだ……なんつーか、OLとかが着けてそうだ。そういえば、サンドラも似たようなスカートをはいていたな。後はショルダーアーマーが小さめになってる位か……見た目的な差異は。「思ったより軽いんだ〜」「まぁ、シャドー・ナイトは隠密部隊だからな……軽くかつ丈夫な装備でなけりゃあやってられないさ」しきりに感心するミーシャに俺が答える。「しかし、格好だけとは言え……流石に微妙な気分だぜ」「な、なんか恥ずかしいです……」原作でも見た、ゼノスのシャドー・ナイトルック……しかし、ゼノスはシャドー・ナイトを嫌悪しているので、やはり複雑そうだ。カレンは単純に恥ずかしい様だ。確かに、普段は目茶苦茶丈の長いスカートだからな……だが俺は言いたい。もっと恥ずかしい格好になったことあるだろうに……。温泉とか温泉とか温泉とか……い、いかん……みなぎりそうになる……。……あの時のことが無ければ、俺は未だにトラウマに囚われていただろうからな……本当、感謝してもしたりないくらいだ。「しかし、何と言うか……お前ら」「?何だいシオン?」「俺達の顔に何か付いてるか?」「付いてるというより、見分けがつかないっていうか……一瞬だがな」ラルフとカーマイン……同じ格好したらマジで見分けがつかん……。並んだらラルフのほうが背が高いし、表情や雰囲気から違いは分かるんだが……一見しただけじゃどっちがどっちか分からん。「確かに、雰囲気こそ違うが空気は似通っているからな……」「ウォレスさん、それってどういうこと?」「上手く説明は出来ないが、本質が同種のものと言えば良いのか……これも双子だからかもしれんな」ルイセに説明するウォレス。ウォレスの言いたいことは分かる。二人は同一人物を基にして作られた……所謂、同位体って奴だ。成長する過程が違うからこそ、性格とかに差異が出るが、互いに真っ直ぐ育ったためにその本質は変わらない……。その辺を見分ける……いや、感じ分けることが出来るウォレスは、やはり流石と言える。「さて、皆準備オッケーみたいだな?」皆シャドー・ナイトの衣装に身を包み、それぞれの武器を手にしている。流石に武器から個人を特定は出来ないから、構わないけどな。皆が頷いたのを確認し、俺達は森の中に身を潜めるのだった。俺とラルフは気を探れるからな……ランザックの動きは手に取る様に分かる。「こっちに進軍して来ているな……戦線を展開するにはまだ掛かりそうだ……ん?」「…これは」俺とラルフは妙な気配を感じた……数人程度だが、別行動している連中がいる様だ。ここいら一帯に戦線が開かれるというのは、戒厳令が敷かれ、一般にも知られている筈なので、旅人ということは無い。……本物のシャドー・ナイトが斥候に来たか……もしくは。「俺が行ってくるわ……とりあえず、作戦開始までには戻ってくる」「了解」俺はラルフにそう言い、その場から姿を消した。「?あれ?シオンさんは?」「少し気になる動きがあって、偵察してくるってさ」「大丈夫かよ……もうすぐ戦端が開かれるんだぜ?」「大丈夫だと思いますよゼノスさん」「…まぁ、シオンだしなぁ」なんて会話がされていたとは露知らず、俺はその怪しい気配の場所に赴く。そこには、バーンシュタイン兵……いや、バーンシュタイン兵の格好をした連中と、かつての盗賊団頭領……グレゴリーにそっくりな男が居た。やっぱりコイツらだったか……想像はしていたが。「お前ら、作戦の概要は理解したな?」「へい、ローランディア軍がランザック軍とやり合ってる間に、俺達がローランディア軍を襲う……」「そうすりゃあ、またローランディア軍とバーンシュタイン軍の間に確執が生まれるって訳ですね」「そうだ。せっかくの稼ぎ時だ……何があったかは知らんが、今バーンシュタインに引き上げられる訳にはいかねぇからな」「流石はグレンガル様、金を稼ぐことに関しては誰にも負けませんね!」グレンガル……グレゴリーの兄。所謂、死の商人という奴で、戦争の中で金を稼ぐために戦争を長引かせようと暗躍した男。原作においては暗躍した結果、カーマイン達に討たれた。最後の瞬間まで金のことを考え、ルイセに『悲しい人』と評された哀れな男だ。ちなみに、Ⅱに出てくるリング・ウェポンを作り、バーンシュタインに売り込んだのもグレンガルだとされているが、実際は完璧なオリジナルでは無いだろう。リング・ウェポンは魔道具の領域だ……どう考えてもグレンガルが魔導に精通してるとは思えない。Ⅲの時代には既にリング・ウェポンは存在していた……これは推測だが、グレンガルは何処かでリング・ウェポンの文献なり何なりを発見し、それを再現したのではないか?と、思っている。まぁ、それはともかく。何かしら仕組んでくるとは思っていたけどな……どうやら、ジュリア率いるバーンシュタイン軍が前線から退いたと思っていて、何やら思い違いをしているみたいだな。とは言え、放っておいたらややこしいことになる。「……潰しておきますか」俺はシャドー・ナイトの仮面を装着し、奴らの前に現れる。「!?だ、誰だテメェ!!」「貴様らに名乗る名は持ち合わせていない……悪いが、潰させてもらうぞ……」グレンガルの部下が俺を見て慌てるが、名前を名乗る必要なんて無いからな。とりあえず、気絶していて貰おうか。俺は必殺メンチビームを発動!ブワッ!!「「「あひゃうひぇああぁぁぁ!!!?」」」バタバタバタバタ!!!俺の殺気に当てられ、奇声をあげながらバッタバッタと倒れ気絶する三下ども。しかし……。「テメェ……ただ者じゃねぇな……」グレンガルと僅か2名は、何とか耐えていた。全力の殺気を込めた気当たりでは無いにせよ、それを耐えきったのは称賛に値する。「悪いがまだ捕まる訳にはいかないんでな……お前ら、後は任せたぞ」そう言い、グレンガルは一目散に逃げてしまう。「逃がすか……!」追撃しようとした俺だが、その前に立ちはだかるのは残った二人。「ここから先には」「行かせねぇぜ?」台詞は強気だが……。「そのザマで言える台詞では無いな……」「やや、やかましい!!」「こ、これは武者震いって奴よ!!」そう、コイツらの足……まるで産まれたての小鹿の様に震えている。もう面白いくらいに……。「……大人しくそこを通せば、見逃してやるぞ?」「だ、黙れ!!」一人が斬り掛かってくるが、僅かに体を動かして回避……逆に裏拳一発でのしてやる。「ヒ、ヒィィィ!!?」「さて、残った君には素性を吐いて貰おうかな?」「だ、だ、誰が言うものか!!」気丈にも抵抗する三下君しかし俺は。「あっそ」「ま、待て……何をする気だ……止めろ……止めろぉ!?グヒャヒャヒャヒャヒャ!!?た、助けウヒャヒャヒャヒャ!!!!?」数分後。情報を聞き出した俺は、気絶した奴らの装備を剥いでパンツ一丁にし、簀巻きにして転がしておく。グレンガルを追い掛けたかったが、気の感じからして、そろそろ戦端が開かれるみたいなので戻らなければならない。よって、俺は瞬時にその場を後にした。余談だが、簀巻きにされた者の内の一人は、痙攣して泡を吹きながら失禁して気絶していたが……別に死んでいるわけでは無いので、そのまま放置プレイです。********IF的オマケ。もしもシオンが。「お待た……せ……」「どうしたラルフ?それに皆も……鳩がマジックガトリング喰らったみたいな顔をして」「シ、シオンさん……その格好……」「これか?皆と同じではアレかと思って用意してみた。俺のことはパピヨンと呼んでくれ」「パ…パピヨン?」「パ・ピ・ヨン♪もっと愛を込めてっ!!」「いやああぁぁぁ!!先生が変態にぃぃ!?」……何ぞこれ?