キングクリムゾンッ!!……いや、言っておかないとなぁ……と、思って。――カレンとゼノスと別れてから……大体二年が経ったか?あれから俺達も成長し、俺が18歳、ラルフが17歳になった。身長も185㎝と、ゼノスに近いくらいになったんだぜ?確かライエルさんも、ゼノスと同じ――187cmくらいだったよな?ちなみにラルフは175㎝と、カーマイン君の公式データより、3㎝程大きくなっております。これが、俺との修行の旅に寄る影響なのかは――分からないが。とりあえず、回想してみたいと思う。**********グランシルから旅立って一年間――この期間は色々な地を巡った。傭兵王国ランザック……訪れたのはランザック領内の街――ガラシールズ。駐在している兵ではあったが、その練度は中々の物だったな……。ウェーバー将軍という優れた猛将も擁する――という情報も得られた。駐在兵を基準にした判断だが――軍隊としてはバーンシュタインに一歩及ばないが、個々の実力ならひけは取らないだろう……まぁ、インペリアルナイツは例外だが。ラルフは相変わらず商売の勉強に精を出してました。この暑い中熱心だねぇ……お兄さんびっくりだぁ。あちこち駆けずり回るラルフを見て、少し――『向こうの世界』のことを思い出す。営業で外回りだった時なんか……特に夏場がキツかったなぁ……。その後、スキマ屋にも顔を出す。ラルフは痛く感銘を受けていた様だ。――やめろよ、スキマ商売は……流行らんぞ?原作知識だが、ローザリアでスキマ屋を営むオッサンも、客が来ないと愚痴っていた筈だ――。ちなみに、ランザック王都には行かなかった。――何が悲しくて、ボスヒゲ爺とエンカウントする確率をあげねばならん……まぁ、この時期は猫を被ってる筈だし、大した力も無い。気にすることは無さそうだが……一応、念のためだ。油断は慢心に繋がる……父上の教えだ。あの爺のことだ……俺の――というか、力の強いグローシアンが近場に来ている事に――気付いている筈だしな。てか、敢えて気付かせているんだが。もし、俺を標的にすればルイセを狙わなくなる……ワケ無いな。ルイセは、ヒゲのかつての弟子であるサンドラと親子関係だ――繋がりがある……幾ら俺のグローシュパワーの方が上でも、グローシュを奪うなら懐に入り易いルイセを選ぶだろう……とは言え、俺の存在は幾らかの抑止力になる筈だ……。カーマインパーティーと合流出来たなら、尚更な。あのヒゲもより慎重になる筈。とりあえず、此処での目的は果たした。**********それからも、色々な場所に向かった――保養地ラシェル、ブローニュ村、鉱山街ヴァルミエ、メディス村にも。ラシェルでは、入院していた女の子に花束を持ってお見舞いに行った……本来ならカーマインの役回りだが、知ってて見てみぬフリをするのは気が引けたからな……。些細なことだが、俺達の旅の話とかをしたら喜んでくれた。今度は、GLチップスをお土産に買ってこようと思う。ブローニュ村は活気に包まれていた。なんつーか村人達も皆フレンドリーで好感が持てた。――アリオストとは出会わなかった。きっと、魔法学院で研究に没頭していることだろう。ヴァルミエには水晶鉱山を見に行きました。いやいや…めがっさデカかったです。俺、口ぽかーんでしたよ。ラルフも実物を見るのは初めてみたいなので、「凄いね……これが全部水晶だなんて……」――と、感激してました。これが――ゲヴェルを封印する為に、命を掛けたグローシアン達の……文字通りの『命の結晶』だと思うと、なんか胸に来る物がありました――。――水晶鉱山を見た後、ラルフは商売人としての興味から、俺は魔導具の作成に使えないかと思い、魔水晶に興味を持ちました。――が、ここで産出している魔水晶は魔法学院が管理していて手が出せません……チッ、あの爺が横流ししてる癖に……。とりあえず、あの爺はどうにかしなきゃな。メディス村は数々の薬草の産地でした。質も良く、種類も豊富。ラルフは早速、流通状況や等価などを調べてました……流石だねぇ。――薬草、か。……カレンは元気にしてるかな?……会いに行った方が、良いのか?とは言え、中々立ち寄る機会が無いんだよな……でも、手紙位は出そうかな?……うん、そうしよう。俺はそう決意して、早速雑貨屋で便箋を買った。……一応、村の奥にも行ってみた。そこにはやっぱり、段々になった花畑も、赤い屋根の小さな家も――無かった……。「ここに何かあるのかい?」ラルフがそう尋ねてくる。「いや、もしかしたら――家でも建ってるかな…って、思ってさ」「え?」「何でもない……行こうぜ?」俺は、あの狸爺はマジでどうしてくれようか……より一層強く考える様になった。**********……道中、俺は最悪のパターンを想定して、とある懸念を抱く。俺はこの世界がグロラン1の世界だと思っていたが……本当に、グロラン1『だけ』の世界か?……実はメジャーでは無いが、携帯アプリケーションにもグロランのゲームが存在する……。――オリジナルの主人公で、1と同じ時間軸の物語……その名も、『グローランサー・オルタナティブ』……この作品で1番のターニングポイントと言えば、主人公のリヒターであると言わざる負えない。普通の村人として育てられ、しかし戦闘狂の相棒と共に修練を積み、強くなっていった青年。しかしその正体は、かつてフェザリアンがグローシアンに奪われた生体兵器……ゲヴェルに対抗するために生み出した『人型生体兵器』。その戦闘能力も馬鹿に出来ないが、何より厄介なのが――対ゲヴェル用プログラム――【反転】だ。これは、ゲヴェル細胞を持つ者のみに有効な機能で、相手の心の属性を反転させ、塗り潰してしまう能力だ。簡単に言えば悪い奴を良い奴に、良い奴を悪い奴に変えてしまうという――はた迷惑な機能。しかも、一度反転させられたらそのまま……つまり二度と元には戻せない様だ。現に、グロランオルタではカーマインが反転させられ、ずっと元に戻ることが無かった――。この機能は普段は使えない……だが、リヒターはゲヴェル細胞を持つ者に出会うと覚醒、問答無用で【反転】を使用する。ある意味、俺以上のイレギュラー……それがリヒターだ。仮に戦うことになっても、負ける気はしないが……もし、エンカウントなんてしてみろ。ラルフもカーマインも、仮面騎士――ゲヴェルの尖兵に逆戻りだ。相対したら【反転】を使われる前に、直ぐさま倒すのも手だが……彼の仲間達が、それを許さないだろう。俺としても、そんなことはしたくないが………俺のダチを潰す様ならば……容赦はしない。まぁ、それもこれも確認してみなきゃ始まらないんだが……アイツらが住んで居るのがクレイン村……原作でも、色々と悲劇に見舞われた村だ。仮に、俺が出向いて確認しに行っても、ラルフが一緒ではリヒターが覚醒する恐れがある。――かと言って、俺が離れたらラルフがゲヴェルに操られる可能性がある。……俺のグローシュパワーから察するに、可能性は限りなく低いが――僅かでも可能性が残ってる以上は、危ない橋は渡れないのだ……何か、上手い手は無いかね?**********ローランディアには敢えて行っていない。流石に、カーマインとエンカウントするのはまだ早い。原作開始まで残り一年…見聞は深めた。ならば、もうバーンシュタインに帰っても良いか?……答えはNO!帰れば父上に士官学校へ入れられるだろう。そうしたらラルフとは離れなければならない……俺のグローシュ波動はかなりの距離をカバー出来るが、ラルフは商人だ。俺のグローシュ波動の範囲外まで行商にでも行かれたりしたら……それは避けねばならない。少なくとも、死亡フラグを叩き折るまでは。俺の最重要目的は、旅の序盤のカーマイン達にエンカウントすること。そしてパワーストーン使用フラグを叩き折り、パワーストーンを入手……或いは使用させて貰うこと。アレさえあればラルフを真実、人間にすることも出来る。カーマインとリシャールも同様だ。ただ、結局はタイミングが重要だけどな…タイミングを間違えたら最悪の未来になること請け合いだ。そこで、俺は野営中にラルフと話し合うことにした。実は最近、不穏な動きをする連中が現れた……という話を聞いた。誰から聞いたかって?蛇の道は蛇……そういう情報筋も旅するには必要ってことさ。「不穏な動きをする連中?何なんだいその連中は?」「シャドーナイツって――知ってるか?」「シャドー…ナイツ?」「バーンシュタインには幾つか騎士団が存在するが……その中でも有名なのが第一近衛騎士団……インペリアルナイツだ」「そんなの今更じゃないか。僕とシオンはバーンシュタイン出身、シオンに至っては父親が元インペリアルナイトなんだから」そう、だからこそ良く分かる。シャドーナイトの業の深さが……因みに、不穏な動き云々は間違いなく聞いた情報だが、シャドーナイトの情報自体は俺の原作知識からの抜粋だったりする。「シャドーナイトはそのインペリアルナイトとは対極に位置する者だ。インペリアルナイトが光を象徴とするなら――シャドーナイトは闇」薪を火に焼べながら話しを続ける。「対極に位置する者……光と闇……」「インペリアルナイトは、その一騎当千の力で戦場を支える光――対するシャドーナイトは戦闘能力云々よりも、謀略や暗殺などで敵を内から食い破る闇……と、言った所だな」「謀略や、暗殺……?それは、本当なのかい?」ラルフが少々の困惑と怒りを滲ませた瞳を向けながら聞いてくる。ラルフは結構お人よしだからな……こういうのが許せないのは分かるが。「マジだ。それで最近そのシャドーナイトが何やら暗躍しているらしい……何でも、実力のある奴をスカウトしているとか」「スカウト……人員確保……いや、補給かな?」中々に的確な所を突くじゃないか――ラルフ。裏の仕事に着くということは、それ相応の危険が伴う……ある意味では、表以上の危険が……ならば、人員の損耗率も激しいことだろう。……胸糞悪い話だが、要するに消耗品――それも、何かの部品の様な扱いってことだ。「さて、そのどちらかは分からないが……スカウトの仕方も、勿論マトモじゃない。恐喝、脅迫……その上での自作自演も当たり前だ」お話と言いながら、実はお話という名の砲撃だったりする様な物だ。「そんな奴らが、バーンシュタインに存在していたなんて…」「……でな?奴らのスカウト候補に、俺達のよく知る男がいてな。そいつは傭兵をやっててグランシル在住、可愛くて綺麗な妹と一緒に暮らしてる」「!!もしかして…ゼノスさん!?」「ご名答……そして、可愛くて綺麗な妹が居る……奴らが、どんなアプローチを取るか――想像着くだろう?」そう、奴らはカレンを狙ってくる……最終的には……。…俺は、相当凄い顔をしていたのだろうか?ラルフが俺を見て、少々青ざめている。少し、魔力とかを開放してしまったのかも知れないな。「シャドーナイト……!シオンが以前ゼノスさんとカレンさんを占った時に出た【影】という単語…シャドーナイトのことだったのか?」「さて、な――もしかしたらそうなのかも知れないし、そうじゃないのかも知れない――」勿論、ラルフの言う通りだ……直接的には言えなくても、あの時の言葉で少しでも良い方向に改善してくれたら――と思って、『占い』という形で知識を伝えたワケだ。「ん……!?」人の気配……2……4……5人、か。こっちに向かって来ている……殺気は無い様だが。「――ラルフ」「うん、分かってる――」俺達は、一跳びで木の枝に飛び移ると、そのまま木の上を――気配を消しながら移動し、こちらへ向かってくる者達の下へ、向かった。**********気配の場所まで行くと、男が――五人居た。一人は、まるでバイキングの様な装備を纏った男。残り四人は盗賊みたいな感じだ。(あのバイキング男……何処かで見たような?)俺が男のことを思い出そうとしてると、件の男が喚き出した。「あぁ!嫌だ嫌だ!!俺ぁつくづく嫌になったぜっ!!お頭の野郎!」「お、オズワルドの兄貴ぃ…声がデカイですぜ…」オズ、ワルド………こいつオズワルドか!?そうだ、そうだ!!原作でも最後まで生き残った奴で……確かにこんな格好をしていたな。……コイツをどうにかしちまえば、カレンも無傷で済むんじゃねーか?……無理か。コイツ、確か今の時点じゃ盗賊団の末端だしな……此処でコイツをどうにかしても、誰か代わりが送り込まれるのが関の山だ。「うるせぃ!!これが叫ばずにいられるかってんだ!!俺らがヤバイ仕事をしても、儲けは殆どアイツに流れちまうんだぜ!?やってられるかよ!?大体、お前らもそう思ったから俺に着いて来たんだろうがっ!」「そ、そりゃあまぁ……けど、これから俺達どうすりゃあ……」ふむ、どうやら頭と金銭関係で衝突して喧嘩別れしたみたいだな………原作には無い展開だが――これは……使えるかも♪「何なら俺が雇ってやろうか?」ラルフに目配せをして、共に奴らの前に現れる。「な、何だテメェら!?」突然現れた俺達に、警戒しながら戦闘体制を取るオズワルド達。俺は素晴らしい笑顔でこう言った。「お前ら……正義の味方やってみない?」――と。