私はマスターの道具……マスターの人形……マスターの玩具……。それだけの存在だ。それ以上は不要だ。そんな私を見て、マスターは感情が希薄でつまらないという。分からない。感情など必要なのだろうか?分からない。私に感情があるのだろうか?私の中にあるのはマスターに対する忠誠のみ。『あのな……こういう時には、人の親切は素直に受けとくモンだぜ?』……あの男、シオン・ウォルフマイヤー……。父が元インペリアル・ナイトであり、闘技大会優勝者……『白銀の閃光』と呼ばれる実力者で、その剣技は他者の追随を許さず、また、その魔力も同様……現状、ルイセ・フォルスマイヤー以上のグローシアン……。マスターの標的の一人……。集められる情報と、ミーシャからの情報を纏めた情報だ。あの男は何故、私に関与したのだろう?私はよく男に声を掛けられる……それは私に欲情するからだそうだ。この身はマスターに創られている……。マスターの創造した姿に欲情する男ども……理解出来ない。……だが。『……放っておけなかっただけだしな!』あの男は違う……そういう感情で接触してきたのではない。放っておけなかった……ただそれだけで私を…………?……あの時のことを、あの男の笑顔を思い出すと、胸の辺りの動悸が苦しくなる……理解出来ない。「失礼します、学院長」「うむ、入りたまえ」私は地下の研究室に赴いていた。学院長に許可を受け、研究室に入室する。研究室の扉が閉まる。すると、学院長……マスターの雰囲気が変わる。「それでは、報告を聞こうか?」「はい、連中は国内外を問わず、グローシアンの保護に奔走していました。同意した者には同行を促し、そうでない者には魔道具の様な物を預けておりました……この魔道具の用途は不明のままです」私は調査報告を読み上げる……すると、マスターの顔色が変わる。「おのれ……オズワルドとか言ったな……あの愚民は……して、奴らの背後関係は分かったのか?」「申し訳ありません……詳しい情報は掴めませんでした」「愚か者がっ!!」ガッ!!マスターは私に石の様な物を投げ付けてくる……恐らく、研究用の魔水晶か何かだろう。「申し訳ありません」私は頭から血が流れるのを気にせずに頭を下げる。「ふん!儡人形め!!お前の変わりなど幾らでも効くのを忘れるなよ……ふむ、しかし…………まぁ、良いだろう。お前の愚かしさは不問にしよう」「?ありがとうございます」私はそう言うが、何か気を良くすることでもあったのだろうか?「私が水晶鉱山に赴いた際に、覗かせて貰ったが……シオン・ウォルフマイヤーと接触したようだな?」「はい、あちらから接触して参りました」「ふふふ……どうやら私にも、まだまだ運が巡って来たらしいな……イリス、お前にはシオンに近付き、あわよくば取り入ってもらう」「取り入る……と申されますと?」「そんなことも分からんか?あやつを誘惑し、隙を作れと言っておる……ミーシャの視覚から見たが……あの男、正面から挑めばこちらが手痛いしっぺ返しを喰らうかも知れん……しかし、あのルイセを超えるグローシアンだ……何としても欲しい……フフフ、あれだけのグローシアンのグローシュがあれば、私がグローシアンの王になるのも、そう遠くはなかろう……ふぉーほっほっほっ!」成る程、あの男を篭絡しろとおっしゃるのか。……あの男が篭絡されるのだろうか……私に、出来るのだろうか?……私に、欲情するのだろうか?分からない……胸が苦しい。高らかに笑うマスターを見て、私はそう考えたのだった。********オマケん♪「ところでマスター、誘惑とはどの様にやるのでしょうか?」「むぅ?そんなことも知らんのか?……ホレ、この資料を参考にするが良い」『女学生の堕落』「……私は秘書なのですが」「何も学生になれとは言わんわ!!……その内容を参考にせよと言っておるのだ」私は資料をめくる……どうやら、清純な女学生が豚の様な男に凌辱され、調教される話らしい。成る程、男というのはこういうものに性的興奮を示すのか……。あの男をこの豚と一緒に見ることは出来ないが………。しかし、マスターはこういうものを所持していながら、そういう行為を望んでは来ない……何故だ?…………成る程、マスターは高齢だから致し方ないのかも知れない。いわゆる、不能なのだろう。「……今、無礼なことを考えなかったか?」「気のせいです」私は研究室を後にし、頭の傷にキュアを掛ける。傷を塞いだあと、私は仕事に戻る。仕事中にでも研究しなければならない。……成る程、嫌がる程興奮するのか。嫌がる過程で、嫌がらなくなる……その様がまた興奮するのか。……成る程。********後書キック!そんな訳で、秘書さん改めイリスさんの話でした。当初、彼女はミーシャの向こうを張り、まみむめも、の中から頭文字を取ろうとしたのですが、どうもしっくり来なく、こんな名前になりました。イリスと聞いてサ○ラ大戦を思い出した貴方はマニアックです。アトリエシリーズを思い浮かべた人は神です。名前の元ネタは、ガメラに出て来たギャオスの変異体だったりします。ちなみに、他の名前の候補集。マーサ→なんか雰囲気違うし、ドラ○エⅤを連想して没。マリア→サ○ラ大戦の立花さん的イメージ。しかし、聖母様のイメージが強く没。マリナ→取りあえず作品的に却下。マリーベル→雰囲気違うので没。と、マ行だけでもこれだけありました。