魔法使いの為のその一。――勉強。とは言え、二人とも基礎は既に覚えてるから、俺が二人に課したのは。・魔法の効率的運用法で、ある。まぁ、分かりやすくぶっちゃけると、MPアップや魔力アップに詠唱時間短縮などのスキルを覚えましょう!ってことだ。無論、この中に俺のアレンジスキル『高速詠唱』も含まれる。ちなみに…今一このスキルが理解できないという方へ、ゲームに沿った説明をするならば。『詠唱時間短縮』これは魔法の詠唱時間を短くしてくれる。−1/4だな。『高速詠唱』これは、人には聞き取れ無い位の早口で詠唱するという物だ。戦闘中に、各キャラにはウェイトゲージがあるよな?攻撃後硬直や詠唱する際のゲージ。このスキルは魔法詠唱時に限り、そのゲージの消費スピードを飛躍的に加速させるスキルだ。普段がググググ……というゲージスピードなら、ギューン!くらいにはなる。って、俺は誰に説明してるんだか……。とにかく、有用なスキルなのは確かだ。この二つを習得し、研鑽を詰めば、俺やラルフの様に瞬時に魔法を放つことも可能だ。「あ、ルイセは更に特別メニューな?」「はい、シオン先生!」「せ、先生?」俺は思わず、目をパチクリさせてしまう。「あ、あの、せっかく教えて貰うんだからそう呼んだ方が良いかなって……ダメかな?」先生……先生か。「ま、好きに呼べば良いさ」とか冷静に言っていたが、内心ではしんちゃん笑いで、いや〜照れるなぁ♪とかなってました。いやぁ、某喧嘩百段の空手家さんの気持ちが分かるわぁ〜。ちなみにルイセへの宿題は、グローシュを意識的に使える様になることだ。「グローシアンが、魔法使用時に無意識に元の世界へチャンネルを繋げてるのは知ってるだろ?この際、次元の歪みからグローシュを引っ張ってくることが可能だ……そしてそれが存在する限り、無尽蔵に魔力を行使することが可能だ」「無尽蔵に…ですか?」「理論上はな」疑問をぶつけて来たカレンに、俺はそう答える。俺は意識的に使いこなすことが出来るからな……多分ルイセにも出来ると思うんだが……。やはり、覚醒状態にならないと無理か?しかし、あんな思いはさせたくないしな……むぅ……ルイセの可能性に期待するしかないか。ちなみに二人には教材を渡してある、俺のお手製魔導書だ。いつ書いたのかだと?旅をしてたころにな。その名も『今日からあなたも大魔導師!明日への1・2ステップ♪』だ!!……いやね、たまには捻った名前にしようかな?とか考えて捻り過ぎた結果と言いましょうか。綺麗な装丁の本の表紙にそんなことが書いてあるから、滑稽かも知れない……しかし、当初の『猿でも出来る魔導理論』よりはフレンドリーかな?とか思ったり思わなかったり。……とにかく!カレンに渡したのは初級編、中級編、応用編。ルイセに渡したのは初級編、中級編、応用編、グローシアン編だ。初級編は魔力の流れを感知したり、大気に漂う魔力を感じたり等の基礎、そして魔法に対する簡単な理論。マジックアローを始めとした初級魔法、初級スキルなどを懇切丁寧に解説。中級編はファイヤーボールやブリザード、グロー系魔法などの広範囲魔法を分かりやすく解説。応用編は俺のアレンジ魔法や、アレンジスキルの初級編とも言う様なもので、攻撃魔法は各種マジックアロー体系、更に補助魔法からはディスペルなど、スキルは高速詠唱を始め、魔法関連アレンジスキルを分かりやすく説明。俺のアレンジ魔法などの中でも、魔技法に引っ掛からない様な、比較的危険度の低い物が揃ってると思って貰えれば良い。グローシアン編は読んで字の如く、グローシアンの能力の発露からその力の効率的な運用法、更にグローシアンの可能性なんかを解説してある。グローシアン専用の書だ。他にも、上級編、弩級編、至高編なんかがある。上級編はメテオ等の、一般的には最高位呪文とか言われる物に関する書。残り二つは魔技法に引っ掛かるような、禁書確定な物だったりする。この前使ったコロナボールに関しては弩級編に位置する。ちなみに類似品に、『今日からあなたも大英雄!ホップ・ステップ・ジャンプ♪』という物もあるが、それはまた別の話。ちなみに大きさ的には、学校の教科書サイズなので、結構コンパクトな親切設計!元日本人なめんなよ?まぁ、資金的に余裕があるからこんなの作ってるんだがな?で、教材片手に魔法の授業、実技で示したり、それに対し質疑応答したり。「あの、シオンさん……ここの項目なんですけど」「ん?ああコレは簡単な理論の応用でな?ここをこうすると……」等。「この魔法、マジックフェアリーは、自身の空間把握能力、繊細な魔力コントロール、魔力量によるスピード調節が重要なんだ」「ん〜〜……む、難しいよ先生……あ!?ごごごごめんなさい!」等。カレンもルイセも優秀で、魔導書の内容をスポンジの様に吸収していく。ルイセに至っては、マジックフェアリーの習得一歩手前まで行ったのだから驚きだ。……まぁ、空間把握能力の方に難がある様で、一つ俺に直撃しちまったが。この身体はチートだから、ダメージはほとんど無かったがな。そんなこんなしていると、日が傾いて来た。「今日はこれくらいにしよう。また、機会があれば講義を開くから、しっかり予習復習はしとけよ?」「はい、分かりました」「ありがとうございました」二人が丁寧にお辞儀して、その場で解散となった。ちなみに解散時、身体も鈍らない程度には動かしておく様に言っておいた。実戦で使うなら、身体もある程度は動かなければ洒落にならん。で、まだ時間が残ってた俺はウォレスを見付けたので話し掛けた。「休暇か……フッ、俺も任務明けの休暇は楽しみだったからな……任務を終えた後の酒の味は、格別だったよ」等と話した。よく分かるぜウォレス!今度、秘蔵の酒を飲み交わそうぜ!と、そろそろ集合時間だな。「みんな揃ったよね?じゃあ、戻ろうか」俺達はローランディアに戻り、休暇が終わったことを報告、その日は就寝した。**********そして翌日、ローランディア城にて。「お前たちに次の任務を与える。夢で見た怪物が本当に伝承でうたわれるゲヴェルなのか、それを調査して欲しい…そして可能であればゲヴェルの居場所を突き止めるのだ」これはまた……随分と難題な任務だねぇ……。まぁ、俺は大体は知ってるけど……言えないもんなぁ。「これは簡単に終えられる任務とは思えぬので、お前たちの最終的な任務だと思って欲しい」「恐れながら申し上げます。約20年前、自分は一介の傭兵として水晶鉱山を警護していたことがあります。その時、怪物が現れ、隊長と部下を失いました」ウォレスが王に過去、経験したことを語る。「おお、あの事件なら覚えているぞ」「その時の怪物が、伝承のゲヴェルと同一かも知れません」間違いなく同一人?物です。「何?水晶鉱山の事件は、ゲヴェルが起こしたと言うのか?……確証はあるのか?」「実はお兄ちゃんとラルフさん、お母さんを襲った仮面の男たちが、怪物に命令されているところを、夢で見たらしいんです」「それと、母を襲った連中も、ウォレスの眼と腕を奪った連中も、自分が夢で見た仮面の男たちと同じ連中でした」ルイセとカーマインが王にそう告げる。「何だと?それで、その方が怪我を負ったというのはいつの話だ?」「二年ほど前になりますが、バーンシュタイン王国にある、クレインという小村の側でございます」「クレインか、それはちと遠いな。ならば水晶鉱山のほうが近い……お前たち、闘技大会に優勝したのなら、コムスプリングスには行ったことがあるだろう?」「あの温泉の街なら、行ったことあるよ」まぁ、色々あったからな……色々…………や、止めろ!!思い出すな!!!ああ!鮮明に蘇るカレンの………だああぁぁぁぁ!!煩悩退散!煩悩退散!!喝!かぁぁぁっつ!!!くっ……絶対記憶能力が憎い……うぅ……殻を打ち破ったのが良かったのか悪かったのか……。アイツのことを思い出したのは辛いが良かったこと……だがな。で、王様が言うには、コムスプリングスから水晶鉱山に行けるので、そこから調べた方が早いんじゃね?ということだそうだ。で、魔法学院が水晶鉱山を管理してるので、ヒゲに許可を貰って来なさいと。「この書状をもって行け。水晶鉱山内への立入検査依頼書と、水晶鉱山までの通行手形だ」鉱山内の立入検査依頼書と、水晶鉱山通行証を手に入れた!「はい。がんばります!」そうティピが締める。どうでもいいが、こういう時のティピは本当に可愛らしいな。「じゃ、まずは魔法学院か?」「そうなるな…んじゃ、早速飛びますか!」ゼノスの問いに答えた俺はテレポートを唱える。目指すは魔法学院。*********―――と、意気込む暇も無く到着。早速ヒゲに面会しに行く。秘書さんに立入検査依頼書を提示、学院長室に入る。「失礼します」「おや、何の用かな?」「水晶鉱山への立ち入り許可が欲しいんですけど」「国から発行された、立入検査依頼書はあるかの?」立入検査依頼書をヒゲに提示、ヒゲはそれを読み進めて行く。「ふむ、ふむ……良くわかった。早速許可を出そう」「ありがとうございます」「そのついでと言ってはなんだが、頼みがある」「交換条件ってことか?」ウォレスがそう聞くが、本来これは国からの依頼だから、交換条件なんか出せやしない。まぁ、このヒゲの魂胆は分かってるがな。「交換条件とは人聞きが悪い……ただ『魔法技術管理法』を施行したいと言っているだけだよ」「えっと…『魔法技術管理法』…………たしか授業で習ったような……」ミーシャ……最早、語るまい。「通称『魔技法』と呼ばれ『魔法技術の独占禁止』『魔法技術の保護』などの目的でローランディア王国、バーンシュタイン王国間で取り決められた国際法。またこれらの目的を遂行する為であれば、軍隊の出動を要請でき、ローランディア、バーンシュタイン両国はこれを拒否することは出来ない…だったかな?」ミーシャの代わりに答えを言うルイセ。「付け加えるなら、戦争利用される様な技術、危険性が高いと判断される魔法技術も、魔技法の対象内だ……アリオストの飛行装置を例に上げれば分かりやすいか?」「成る程、だからアリオストさんは飛行装置を差し押さえられたのか……」俺はルイセの補足説明をした。ラルフは何やら納得した様だ。「その通り。さすがルイセ君じゃ。それに君も中々博識じゃな」ヒゲに褒められても嬉しくはないがな。「つまり、俺たちが協力を拒むことは出来ないってことか」「もちろん君たちではなく、ちゃんとした調査団を組織してもらっても構わないんだがね。しかしあそこへ行くなら、ついでに下調べをしてきてもらえると助かると思ってね」「ついでって、何をすりゃあ良いんだよ?」ヒゲの言葉にゼノスが疑問をぶつけた。「うむ…実は水晶鉱山で困ったことが起こっていてな……鉱山から採れる魔水晶を横流ししている連中がいるみたいなんじゃ」「横流し……ですか?」カレンは今一ピンと来ないみたいだが……。俺に言わせれば、よく言うぜこのヒゲ!って感じだ。