ふぅ……。私はシオンさんを見送った後、研究室に戻って来ていた。「楽しかったな……本当、学生の頃の気分だった……」彼は不思議な人だと思う……歳はカーマインと一つしか違わない筈なのに、どこか達観している様に感じる。子供っぽいと思えば、私より年長者だと感じる雰囲気もある……。「……………」私は最近の出来事を思い出す……あの毒の呪縛から開放された日の夜……。***********……もう回復したみたいね。フェザリアンの薬とは凄い物ですね……。私は夜に目を覚まし、すっかり回復したことを医師に知らせる。医師は私の状態の確認後、笑顔で頷き『おめでとうございますサンドラ様、もう大丈夫ですぞ』と、告げてくれた。私は医師にお礼を述べた後、医師は帰って行った。他にも患者は居るだろうに……彼が付きっきりで看護してくれていなければ、私はこうしていられなかっただろう。くうぅぅ〜〜……。「あら……」どうやらお腹が空いたみたい……寝たきりの時は、病人食ばかりだったので、何か味のある物が食べたいらしい。「そうね……久しぶりに何か作りましょうか」しばらく寝たきりだったし、最近は忙しくて中々作る機会は無かったけれど、本当は私がカーマイン達に料理を作っていたんですからね。私はベッドから立ち上がる……さてと、台所に行って……と。「え〜〜と、材料は……」私は冷蔵庫を捜す……うん、ここはまず……。私は料理をしながら考える……こうして料理をするのは何年ぶりだろうか……あの人が居なくなってから、研究に没頭する様になってしまって――。ルイセやカーマインが、家事を熟せる様になったのも原因の一つだけど。「ここで塩胡椒……それから」良い香り……あの人は美味しいって言ってくれたわね。『貴様らに名乗る名前は無い!……って言うのがお約束なんだがね』!っ!?何を考えてるの私は……そんな、助けられたからって。『アンタは病人なんだ。大人しく俺に抱かれてろ!!』彼の……シオン、さんの腕……逞しかった。あの時、私はドキドキしていた……年甲斐も無くと思われるかも知れないが、凄く胸が高まってしまったのだ……。あの人が居なくなってからは、こんな気持ちになることはもう無いと思っていたのに……。私は身体が昂ぶるのを感じた……私は自分の身体を抱きしめる。鎮まれ……鎮まって……!否応無く思い知らされる……私は寂しいのね。私の中の『女』が、慰めて欲しいと疼く――いやらしい……無様なのでしょうね。けれども、誰でも良い訳じゃない。彼が……シオンさんが良い……。きっかけは助けて貰った時なのは確か……だけど、それだけじゃない。私はティピに頼み込んで、ティピとテレパシーで繋がり、視界を共有して彼の姿を見せてもらった……それを見て益々私は惹かれて行った……。彼の優しさに、彼の苦悩に……。「でも、私なんて……」私なんておばさんだもの……彼には相応しくない。「……ん?この臭い……はっ!?」焦げ臭さが漂う……見ると火に掛けていた鍋が焦げていた……。「うぅ……少し焦げ臭い……」私はその料理を食べる……幸い、料理自体はダメージが少なく、少々焦げ臭いだけで済んだ。お腹を満たした私は、食器等を洗う。「……あんなことを考えていた罰かしら」ハァ……と、ため息を吐く。身体の疼きが治まったのは不幸中の幸いかしら……。「あの……」「?……貴女は」確かカレンさん……だったわよね?……彼を強く想っている。ティピに見せて貰った時に見たから分かる。「初めまして、私はカレン・ラングレーと言います」「サンドラ・フォルスマイヤーです。この度はご迷惑をおかけして……」お互いに頭を下げる。それから洗い物を終わらせ、私はカレンさんにお茶を出す。それで現在に至るわけですが……。「……………」「……………」互いに沈黙が続く……カレンさんは何かを言いたそうなのですが……あ、どうやら決意したみたい……そんなに言いづらいことなのかしら?「サンドラ様……失礼を承知でお伺いしますが……」「何でしょう?」私は紅茶を一口含む……良い味だわ。「サンドラ様は……シオンさんが――どれだけ好きなのですか?」「!?ぐ、ごほっ!ごほっ!!」私はカレンさんの唐突な質問に、紅茶でむせてしまう。「だ、大丈夫ですか!?」「え、ええ、大丈夫です……しかし、何故そんな質問を?」「あの……ティピちゃんに聞いて……」あ、あの子ってば……マスターである私に断りもなく、私の秘密を告げるなんて……やっぱり、一般常識はもっと教えるべきだったかしら……。「……教えて下さい。サンドラ様の気持ちを……」その真剣な様子に、私は答えてしまう……さっき考えた様に、諦めると言うつもりだった……しかし、私から出たのは別の言葉だった。「そうね……確かに私はシオンさんに惹かれています……私の全てを見てほしいと、身体が疼く位には」「…………」「理屈じゃない……彼の全てを知りたい、全てを受け入れたい……全てを捧げたい……」それは私の秘めた本音……ごまかしきれない想い。言ってしまった……。絶対に言うつもりは無かったのに……こんなおばさんを相手にしてくれる筈は無いのに……。でも認めてしまった……自分の気持ちを。「分かりました……サンドラ様の気持ち……だからこそ」一緒に愛しませんか?彼女はそう提案したのだった――。********それから……彼女から聞いた話は衝撃的な物だった。全ての判断を彼に委ねようというのだから……。仮に、彼が彼を愛する人全てを選んだら、全員でその寵愛を受けようと……正直、狂っていると思う……例え彼が激しく鈍感だとしても……だ。しかし私はカレンさんの手を取った……。協力して振り向かせようと……。私も狂っているのかも知れない……狂ってしまうくらい、彼に心酔してしまっているのだ。……それでも構わないと思う。それだけ愛おしいのだ……それだけ愛して欲しいのだ。………小難しく言うのは止めよう。「要は、それだけ好きになってしまったということですね……」結局はそれなんです。独占欲なんか沸かない――とは言わないけれど、それ以上に彼を想う力の方が強い。彼を知れば知る程、胸が高鳴る……身体が熱くなってしまう。あなた……あなたが居なくなってから随分経ったわ。その想いは今も消えていない……それでも。「また、恋をしても良いかな……あなた」私はもう会えなくなってしまった最愛の人に、そう尋ねていた。*******オマケ☆「もし、シオンさんと………ふふ♪そうなったらどうしましょう♪」私は想像の中で、あんなことやこんなことを想像してしまった……ああぁ……♪ふむ、仮に皆で寵愛を受けた場合の、合法的に一緒になれる方法を模索しなければなりませんね。とりあえずはこの国の法律を調べて……シオンさんはバーンシュタイン国籍でしたね。バーンシュタインの法律も調べてみましょう。最悪、王に直談判しましょう!あ、勿論、宮廷魔術師の仕事を疎かにしない様にですが。そういえば、『同盟』のメンバーはカレンさんだけでは無いそうですが、詳しくは教えて貰えませんでしたね……まぁ、本人の許可が必要とか言ってましたから、あまり気にしない様にしましょう。シオンさんを愛する気持ちに変わりは無いのでしょうから♪********A・TO・GA・KU⌒☆最初に言っておく。か〜な〜り!ごめんなさい!!m(__;)m相変わらずのキャラ崩壊……サンドラ様同盟参加の裏話でした。またの名を暴走の回……やっちまったな!感がありますが、大目に見て下さいまし。m(__)m