俺達はライエル卿に後を任せ、戴冠式が終わった後、再びここで落ち合うことを約束する……それは多分、叶わないのだろうがな。レティシア姫を見送り、報告の為に再びローランディアへテレポート。そして城へ行き謁見の間へ。またミーシャがごね出したのだが、俺が……。「ティピが応対しても怒られなかったんだぞ?」と言うと、俄然自信を取り戻した様で、ミーシャも謁見の間に同席することになったのだった。「あのさ、シオンさん……それどういう意味かな?」「……言って欲しいのか?」「ごめんなさい」頭にバッテンマークを付けながら聞いてきたので、軽く流し眼で問い掛けたら、自分も思い当たる節があるのだろう。素直に謝って来た……まぁ、ティピは基本的にサンドラ様以外にはタメ口だからな……それが王様だとしても。なら、ミーシャの方が対応としてはマトモだろ?妄想を垂れ流しでもしなければ。まぁ、アルカディウス王なら笑って許すかも知れないが。「ただいま戻りました!」「おお、もう送り届けたか」そりゃあテレポートを併用してるからな……早い早い。「はい。無事にお送りして参りました。バーンシュタイン王国内ではインペリアル・ナイトの方が護衛します」「うむ、ご苦労。では今回の手柄に対し、休暇を授ける」「休暇?」ルイセが懇切丁寧に報告、流石は宮廷魔術師の娘……礼儀作法は心得ているってワケだな。それでアルカディウス王が任務の手柄として休暇をくれるという。ティピは休暇と聞いて眼がキラキラしている。王様が言うには、本来は定期的な休みを取るらしいが、カーマイン達の任務は特殊な場合が多く、定期的な休みは取れない。で、任務の完了時に休暇を取ることになるそうだ。「それにお前たちの場合、仲間との親睦を深めるという意味もある。お互いの結束が深まれば、より困難な任務も果たすことができるであろうからな」どんだけお気遣いの紳士なのかと……こりゃあ人徳がある筈だわ……。文官の人から更に説明があった。休暇の日数は、こなした任務とその成果から判断されることになる。つまり、ちゃんと仕事したらその分の休暇が貰えるということだな。後、休暇を過ごす先は随時増えていくが、ここで予定した行き先通りに休暇をとることになる。休暇日数が二日以上の場合は、一日ごとにここへ赴き、行き先を申請する。何かあった場合に、連絡が取れなくなるのを防ぐためだそうだ。携帯でもあれば、そんな面倒はいらないんだろうな……。言っても仕方ないが。あと本来、休暇日数が限られてるのにあちこち場所を指定出来るのは、サンドラ様から俺とルイセが、テレポートを使えるということを聞かされているからだそうな……そりゃそうだよな。ちなみに今回貰った休暇は二日だ。まず選んだのは……。********休暇一日目・王都ローザリア「夕方になったらここに集合ね」そうティピに言われたので、俺達はそれぞれに散る……さて、俺は何をするかな?特訓でもするか?なんか、こっちの世界に来てから、トレーニングが日課になっちまったからな。と、城門前で考えてたら誰か出て来たな……あれは……。「サンドラ様?」「!シ、シオンさんですか?どうしたのですか、こんな所で?」?何で吃るんだ?しかも心なしか顔が赤い様な……まさかな。そんなことがあったら、マジで俺、恋愛原子核じゃねーか。ってか、さん付けとか……原作でも無かったよな?基本は名指しだった筈だ。「いえ、せっかくの休暇なので、どう過ごすかを考えていました……そういうサンドラ様はどうしたんです?」「私は研究の資料を家に取りに来たのです。ほとんどは研究室にあるのですが、その研究資料は家に置いたままだったので」成程……そういうことか。「ちなみに、何の研究ですか……っと聞くのはまずかったですかね?」研究者の中には、自分の研究を知られるのを嫌う者もいるからな……。「構いませんよ。私が今手掛けている研究は、魔水晶の魔力成分についてです」そういえば、原作でそんなこと言ってたっけ?確か……。「サンドラ様は、魔水晶からグローシュを取り出すのに成功したんでしたね」「そういえば、貴方が研究書を取り返してくれたのでしたね……改めてお礼を言います。ありがとう……毒の件と言い、貴方には助けられてばかりですね」「いや、研究書を取り戻したのは偶然です……それに、毒の件も解毒薬を手に入れられたのは、皆が頑張ったからです」そう、毒の件は結局俺は何も出来なかったことになる。「そんなことはありません……貴方はフェザリアン相手に交渉してくれたではありませんか。それに、貴方が魔法を掛けてくれなければ、私はこうしていられなかったかもしれません……」実際、そんなことは無い……と、言い切れ無いのが怖いよな。俺の存在や他の要因もあるのか、原作からは掛け離れて来てるしな。でもまぁ、あまり謙遜するのも嫌味だよな。「分かりました……ではそのお気持ちだけ、受け取っておきますよ!」俺は最高の笑みと一緒にウィンクをする。こういう笑みなら、微笑みたいにニコポしたりはしないはず……しかもウィンクなんてした日にはわざとらし過ぎてむしろ笑いが込み上げて――。「は、はい……」あるぇぇぇぇ??何で真っ赤になるのん?計算違いにも程があるよ!?もしかして暑苦しさが足りないから!?とは言え、ヒートスマイルは必須項目だから辞めたくないし。ってか、クールキャラになったらなったで、ど偉いことになりそうだし……そうだお笑い系……駄目だ!あれは実はモテてる場合が多い!!ああ!!美形な自分が憎い!!心の中で七転八倒しながら、一般的には贅沢な悩みで思考を回す俺。「あ、あの……どうかしましたか?」突然黙り込んだ俺を心配そうに見つめるサンドラ様……いかんいかん、イッツクールだ俺よ。「いえいえ、何でも……そうだ!良ければ研究を手伝いましょうか?」「えっ?」俺は話題を反らす為にそんなことを言う……休暇を持て余していたのも事実だからな。魔導具作りの腕や知識が活かせるかも知れんしな。「あ、勿論、無理にとは言いませんが」さっきも言ったが、研究を人に見せるのを良しとしない者もいるのだからな。「いえ、貴方の知識や技術の程は、何となくですが分かります……正直ありがたいのですが、構わないのですか?」そういや、サンドラ様はティピを通して見ていたんだったな……なら、知っていても不思議はないか。「ええ、どうせこのままだったら、訓練なり何なりに勤しんでいただけでしょうから」「そうですか。それではお言葉に甘えさせて戴きます」非常に綺麗な笑顔を向けてくるサンドラ様……彼女はスタイルと言い、その美貌と言い……十代の娘がいるとは思えんな……。そして俺達はサンドラ様の研究室へ向かう。で……。「効率良く、魔水晶のグローシュを抽出する方法は無いものでしょうか?」「まぁ、抽出したグローシュは残り滓程度でしかありませんからね」等。「やはりこの理論が気になるんですが……」「!成る程、盲点でした……私では気付け無かったことです」等。「はい、紅茶です。一息入れましょう」「ありがとうございます……良い茶葉ですね……良い香りだ」「フフフ♪気に入って貰えて何よりです」等、時には研究理論に没頭し、時にはバルコニーから景色を眺めながらマッタリお茶をしたりした。サンドラ様が楽しそうだったのが印象的だったな……。そんなこんなで時間も夕方に差し掛かる。俺は門の外に出て、サンドラ様に見送りをして貰った。「貴方のおかげで研究も捗りました……ありがとうございます」「いえいえ、俺も楽しかったですから……あ、すいません」イカンイカン……ついつい地が出てしまった。俺とか言っちまったし……。「構いませんよ、無理に言葉遣いを変えなくても……私も楽しかったですよ。まるで学生時代に戻った気分でした」「アハハ……面目ない。それじゃあ、俺のこともシオンって呼び捨てにしてください」「えぇ!?それは……その……」赤くなりながら、しどろもどろしてしまうサンドラ様……ヤバイ、オッサンはち切れそうだ!?イカンイカン……素数を数ry何でも、サンドラ様が言うには、俺が時々、自分以上の年長者に見えるんだとか。それ故の『さん』付け。まぁ、確かに精神年齢だけなら40以上だからな。サンドラ様はどんなに多く見ても30前半だろ?その辺をうっすら感じてるのかね?ま、サンドラ様が良いなら良いけどな。で、俺は見送られ、まだ集合時間まで時間があったので、ラルフと話した。「商売の基本は、良い物を安く仕入れること……これは商人の腕の見せ所だね」等、商売について話合った。で、完全に夕方になり再び城門前に集合、先ずは明日の予定を組んでから就寝ということで、城の謁見の間へ向かう。そして次に向かう場所も申請したので、カーマイン宅にて泊まることに。食事中、ティピが俺に愚痴を零していた。ルイセにマスタード入りクッキーを食わされたと。……そんなイベントもあったなぁ……。まぁ、話を聞くと…ティピの自業自得な部分もあるワケだが、大人しく愚痴を聞いてやることにした。で、一晩休んで翌日……。*******休暇二日目・保養地ラシェル「さて、解散しましょ〜うか。集合時間には遅れないようにね」「じゃあ、夕方ここでな。みんな、集合に遅れるんじゃねぇぞ」ティピとウォレスの念押しに頷いたカーマイン達は、それぞれ散って行った。ん?カレンとルイセが残ってる……おっ、こっちに来た。「シオンさんお願いがあるの」「宜しければ聞いて頂けないでしょうか」二人とも真剣な顔をしている……だから、真面目な話なんだろう。俺は二人から話を聞くと、どうやら魔法を教えて欲しいとのこと。二人とも、今現在のお荷物な状態は嫌なんだそうだ。別にお荷物でも無いんだがな……でも自分達ではそうは思っておらず、かと言って急激な身体能力の向上は不可能……しかし魔法なら……ということらしい。ふむ、まぁ俺としては断る理由は無く、二つ返事でOKを出す。「んじゃ、まずは軽く行くか」俺達はラシェルから外に出ていた。じゃないと被害が出そうだからな。「「宜しくお願いします」」二人は丁寧にお辞儀してきた。うむ、礼儀正しくて大変宜しい。先ずは、二人がどの程度魔法が使えるかを見る。ある程度は理解しているが、改めて…な。結論から言わせてくれるなら、ルイセの攻撃魔法は、マジックアロー、ファイヤーボール、ブリザード、トルネードなどを行使出来、回復魔法はキュアとファイン……後は補助系がアタック、プロテクト、レジスト、それにウィークネス……後はテレポートもある。結構万能だな……ルイセは鍛え方次第では、全ての魔法系統を習得出来るからな。逆にカレンは偏っていた。攻撃魔法はマジックアローのみ、回復魔法はキュアからヒーリングまで使えて、更にファイン。補助系はサイレンス、スロー、バインド、ルスト、ウィークネス、アタック、プロテクトなど。回復系や補助系を得意としてるみたいだな。鍛え方次第ではカレンも、ルイセ程じゃないが色々魔法が使える様になるはずだ。さて、まずはお勉強タイムだな。