アリオストに男同士の約束を誓い、改めて東の歌声のする場所に向かう。まずはテレポートでラシェルへ向かい、そこから徒歩で遺跡へ向かうことに――。ちなみに、道中の敵との戦いは割愛する。と言うのも、大体がメンチビーム喰らわせると逃げるし、逃げずに襲い掛かって来た奴らもあっという間にミンチですから。「ここがグローシアンの遺跡だ」「………うむ。微かだが、歌声が聞こえるな……」「か細くて、悲しそうな声……こりゃあ、大分参ってるみたいだな」そりゃあそうだな……幾ら普段は気丈に振る舞っている女王とは言っても、人間に捕まって羽を傷つけられて、揚句の果てには閉じ込められる。某財閥の御曹司みたいに、閉所恐怖症になっても不思議じゃないぞ。あ、奴は暗いとこも駄目だったな。「やっぱりここか。よし。中に入ろう」「でもどうやって入るんですか?ここは中が危険だからって、まだ調査が済んでないんでしょ?」「そうだよ。それに鍵は学院長がもっていて、開かないはずでしょ?」ルイセとミーシャが疑問を挙げる。まぁ、そこはアリオスト先生が説明してくれるだろう……俺は……っと。「それは、そこの入り口の話だよ。あれは内部調査をするために学院が無理矢理開けた穴だ。グローシアンだけにしか反応しない、本来の扉がある。ルイセ君、シオン君、君たちなら開けられるはずだ」ヒュインッ……ゴゴゴゴゴゴ……!「なぁ、入り口ってコレかぁ?」俺は一応、先に入り口らしき場所を特定して、そこで待機していた。「そう、それが入り口だ!よく分かったね?」「シオンさん、すっごーい!」アリオストとミーシャが感心してるが。「壁を何となく調べてたら突然……な?それに、アリオストの説明通りなら、グローシアンは誰でも入れるんだ……つまり、俺が凄いんじゃなくて、遺跡の機能が凄いんだって」さて、早速遺跡に入りますかね。「魔法学院の南にある遺跡に行った時もそうだけど、こういう所に入ると遺跡に潜ってた頃を思い出してワクワクするね」「ラルフもか?なんつーか、トレジャーハンター魂が擽られるよな」まぁ、トレジャーハンターは言い過ぎかも知れないが。「そういえば、シオンさんとラルフさんは、そういうこともしてたって言ってましたね……手紙にも書いてありましたし」「遺跡に潜り出したのはカレン達と別れてからだけどな……それに、こういう学院の管理してる様な遺跡には入っていない……大体は調べ尽くされてたいしたお宝も無いしな」しかし、隠された遺跡はお宝の質も凄いがトラップの質もパネェのよ……それこそイン○ィ・ジョ○ンズ並の奴がゴロゴロと。「ま、それはともかく、ここの内部構造ってどうなってるか分かるか?」「ここの内部は3階層だと聞いたことがあるけど、詳しくは僕にも分からない」アリオスト先生が分からなきゃお手上げだな……しゃあない、注意しながら進みますか。俺達はまず、床にあるスイッチらしき物を押していく。すると光る床みたいな物が現れ、道を繋げる。これはグローシアンの遺跡にはよく見られる装置の一つだ。もっとも、トラップと連動しているのもよくあることで――案の定、スイッチを押したら光の床と一緒にモンスターまで現れた。軽く蹴散らしてしまったが。やはりこのパーティー、戦闘力がパネェ……特に前衛が。数も9人いるからな……Ⅱ並だぜ?んで、階段を上がって行く……そして全員が階段から上がり切った時……なんと降りる階段が消えてしまった!!いや、知ってたけどね。「あ、階段が……ど、どうしよう……」「心配すんな……こういう場合、必ずスイッチがある……ほらな?」焦るティピに俺は安心させるように言い聞かせ、上り階段の方に向かう。するとありましたよスイッチが。「こういう場合、どれかが当たりで……」「どれかが外れ……ま、お約束だな」俺とラルフは何度もこういうのを経験してるからな……。「ちなみに、4つスイッチがあるけど、どれが当たりなんだ?」「このタイプは、ランダムに切り替わるタイプだな……つまり分からんってわけ」ゼノスの質問にスラッと答える俺。「じゃあ適当なんだ……ならコレとか!」ブゥン………ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ!!ミーシャ……期待を裏切らない迂闊者っぷりだ……。「え?ええ?何、何〜!?」真ん中の大穴から現れたのは巨大な防衛兵器……確かヘビーパンツァーだっけか?「来るぞ!?」奴は最長部にある穴から魔力弾で砲撃してくる。俺達はそれを散開してかわす。「う〜ん……どうも周りの発光体の様な物が、あの巨大機械へのエネルギー供給源になっているような感じだな……」「アリオストの言う通り、アレを潰せば中央の機械は止まりそうだな」原作通りなら確実に止まる……それに、発光体と機械がチューブみたいな物で繋がってる時点で、ほぼ確定だろう。「ただ、発光体は全部で六つだ……なら直接、防衛兵器を潰した方が早いかも知れないがな」結局、どうするかはカーマインに任せることになった……カーマインの結論は真ん中の兵器をブッ壊すという物だった。ここからは早い。俺は魔法を詠唱し、瞬時にそれを叩き込む。「【コロナ・ボール】」【コロナ・ボール】ファイアーボールのアレンジ魔法で、炎の純度を高め圧縮……熱核運動を起こし、一つの超高熱の炎の玉を作り出す。言うなれば、小さな太陽……と言った所か大きさ的には、大体、人を一人まるごと包み篭める位の球形。その超高熱は全てを焼き尽くし、塵一つ残さない。また、この超高熱の玉の効果に指向性を持たせてあり、熱量などの向かう方向も変えられるので、着弾した後にこちらに熱風を来させない様にすることが出来る。――でなければ、近付いただけで黒焦げになる所か、骨一つ残らない超高熱だ。ちなみに着弾させる前までは魔力でコーティングしてある為、近付いても平気。他人が触れば腕が融解して蒸発するが。結論から言えば、防衛兵器は跡形も残らなかった……ということだ。……やっぱり強力過ぎるな……イフリート、とかサラマンダーとか……火の属性を持つ奴には効かないだろうが……こうして使ってはみたが――コイツは極力封印だな。皆もポカーーンとしてるし……いや、マジで自重しよう。やっぱり俺も基本前衛、後衛の場合でもマジックアロー系で対処しよう。気を取り直して、スイッチを押して光る床を出現させ、上の階層へ。目の前には壁……恐らくここにステラ女王は閉じ込められているんだろう。俺達はその扉を開けようと試みるが、押しても引いてもびくともしない。「開かないみたいね」「これは暗証キーだね……5色のボタンがあるだろ?これのうち4つを決められた順番に押せばいい。1つは使わない……4つが正しい順番に押されたならば、鍵が開くはずだ」「さすがアリオスト先輩!」「こういう機械のことは、学院の誰にも負けませんね!」ミーシャとルイセに褒め讃えられるアリオスト。「早速やってみよう」「待った。この手の仕掛けは、適当に押したらトラップが作動する様になってる……まずはこのスイッチの情報が無いか探してみようぜ?」ウォレスにストップを掛け、俺達はヒント探しをすることに……周りを調べると、幾つかの石版があった。それらの情報を纏めると、どうやら青、緑、黄、赤の順で押すとロックを解除出来るらしい。よし、早速やってみるか……ポチッとな。ビーッ!ビーッ!!ビーッ!!「えっ!?何、これ!?」《ロック解除行動を察知。時間内に解除しない場合、違法進入者と判断し、このフロアーごと爆破します。マジックタイマーをセットしました》「お、おい、早く解除してくれ!」「慌てなさんな!こういうのは焦ったら負けなんだからな!!」俺は慌てふためく皆さんを宥め、解除ボタンを押していく。《ガーディアン配置完了。これより、カウントダウンを開始します》「……どうも、進入者と見なされてる様だな……俺たちは」カーマインを始め、皆が武器を抜いて構え始める。改めて思うんだが……普通、パスワード打ってる最中にガーディアンとか無いだろ?昔のグローシアンって何考えてたんだろうな…っと!ガチャリ!ヒュイイィィィン……と言う駆動音と共に扉が消えて行く……中に居たのはぐったりしたステラ女王だ。「開いた!」「皆、敵を各個撃破だ……!!行くぞ!」カーマインの指示に皆がそれぞれに散る。俺はステラ女王の容態が気になったため、女王に駆け寄った。「羽が傷ついてるだけか…とは言え、傷が思ったより深い…しかも衰弱してるな……ヒーリング!」光の柱が女王を包む……そして傷を瞬時に癒していく――。「う…ん……」お、女王が目を覚ましたな。「気付かれましたか?女王陛下?」「………そなたは………そうか、やはりそなたらも仲間だったのだな……」その瞳には失望の念がありありと浮かんでいた……どちらかと言えば、ガッカリしたという風だが。俺は女王を助け起こす。とりあえず座る形を取ってもらうことにした。「!な、何をする!無礼者…め……?……コレは」「ご期待に添えない様で申し訳ありませんが、我々は貴女を助けに来たんですよ」俺が女王へ見せたかったのは、皆の戦っている姿だ。皆が何を守る様に戦っているのかを……。「その若さで女王にまでなっている貴女だ……俺達が何の為に戦っているか、アレを見れば分かる筈……」「……何故だ。何故わらわを助ける……それは解毒薬のためか?」「それも一つの理由でしょう……けどそれだけじゃない。俺達は――アンタを助けたいから助けに来たんだ……その辺を間違わないでくれよ?」俺はニッ!と、ナイススマイルと一緒にサムズアップする……やはり暑苦しさが足らないな……。なんか爽快な笑みになってしまう自分が憎い!って、言葉遣い戻ってるやん!?いかんいかん……。「……そもそも、あれだけ譲歩してくれたのに、誘拐とかありえないでしょう?」そう、冷静に考えれば分かる……女王を誘拐しても俺達に得は無い。「……………」あ、なんかヤバそうな予感……。「それじゃあ、俺も行ってきますんで……ここで待ってて下さい!」「待て……わらわの羽を治したのは……そなたか?」俺は呼び止められたので、振り返って答える。「治せる力があるのに、放っておけないでしょう?人として!」それだけ言うと、俺も前線に突っ込んで行った。「………おかしな人間だ……彼らは皆、ああなのだろうか………」**********敵はどんどん召喚されていたが、召喚装置を破壊してからはとんとん拍子で敵を駆逐していった。カレン、ルイセ、ミーシャ、アリオストは後衛から魔法攻撃。残りの野郎どもはひたすらに攻撃しまくる。全滅させるまでさほど時間は掛からなかった。「ご無事ですか、女王?」「そなたらのお陰で助かった……礼を言おう」「そんな……私たちはただ助けたくて来ただけですから…」「俺たちは放っておけないから、来ただけだ…言うなら、ただのお節介だな。だから、礼を言われる程のことじゃないぜ」カレンとゼノスはそう言う。まぁ、ここにいる皆がそうなんだろうけどな?「まぁ、何はなくとも外に出ませんか?いつまでもここに居ては気が滅入ってしまうでしょう?」こうして俺達は遺跡を後にするのだった。