早速聞き込み開始!やはり東から歌声が聞こえてくるらしい。一応、アイリーンにも会った。俺やルイセ程では無いが、確かにグローシュを感じる。この感じからして、月食か日食のグローシアンなんだろうな。う〜〜ん、ここは大分原作とは違う展開だな……カレンは医療に興味がなかった訳では無いらしく、色々聞いたりしていたが……まぁ、薬学の知識があったのも、傭兵稼業当初のゼノスが、傷だらけで帰って来るのを見兼ねて覚えたのが始まりらしいからな。しかし、カレンとアイリーンのフラグを叩き折ったことになるんだな……俺は。無論、カレンを助けたことに後悔なんかしていないが。さて、それじゃ…歌声の確認に行く前に。「よ!元気にしてたか?」「あ!お兄ちゃんたちだ!」俺は入院している女の子の所に顔を出した。以前、ラシェルに来た時に見舞いに来たのだ。本来、カーマインの役目だったんだが放っておけなくてな。「お兄ちゃんたち……あれから全然来てくれないんだもん……」「ゴメンな……お兄ちゃん達も忙しくてな……そのかわり、今日はお兄ちゃんの友達を一杯連れてきたんだぜ?」俺は皆に部屋へ入って貰う。俺は女の子に皆を紹介していく……予め皆には事情を話してある。見舞いに行って良いか頼んだら、皆、快く頷いてくれた。どうでも良いが、この人数が病室に入ると結構窮屈だな……。俺はまた、旅の話を聞かせた……仲間との出会いや、馬鹿みたいな話なんかを。「へぇ〜♪」とか、「アハハハ♪そうなんだぁ♪」とか言いながら話を聞いてくれた……どうやら楽しんでくれた様だ。「さて、お兄ちゃんたちはそろそろ行くよ」「……また、来てくれる?」「おう!今度は、もっと早くに顔を出してやる!」テレポートを覚えたからな……それこそ地球の裏側からだって直ぐに飛んでこれる。俺達は女の子に別れを告げてから、病室を後にした。今度はGLチップスを買ってきてやらなきゃな。「あの子の両親……まだ……」「ああ……親の心、子知らずとは言うが……この場合は逆だな」俺とラルフは、互いに溜め息を吐いた。治療費のことで言い争うとか……子供に聞こえる所ですんなよマジで。「皆もありがとうな……こんなことに付き合ってくれて」「気にしないでくれ…」「そうそう!仲間なんだから♪」「そうだよ、シオンさん」「ま、気にする程じゃねぇさ」「俺たちも、話を聞いた上で付き合ったんだ……気にすんな!」「そういうことさ」「アタシもあの子と話してて楽しかったし☆」「私も……いえ、私達も気持ちは同じですから」カーマイン、ティピ、ルイセ、ウォレス、ゼノス、アリオスト、ミーシャ、カレン……皆がそう言ってくれる。……本当にありがとうな。で、いよいよ出発……というところで、アリオストに頼み事をされる。東の森から聞こえる歌声が自分の母の物なのか、フェザーランドに行って確かめてみたいんだそうだ。「どうするんだ?カーマイン?」俺はこのパーティーのリーダーである、カーマインに意見を促す。「アリオストの気持ちも分からないわけじゃない……行こう」「当〜〜然、だよね?」「母親を思う気持ちは誰でも同じだ。みんなで行ってやるとしようぜ?」満場一致で決まりだ。俺達は早速フェザーランドに向かう。テレポートしたのはルイセな?まぁ、十中八九、あの歌声はステラ女王だろうがな。んで、フェザーランドに来た訳だが。「何だ、お前たちか。今はお前たちに構っている暇はない。早々に立ち去れ!……お前たちが来なければ、こんなことには……」「えっ?」フェザリアンの言い分に、どういうことか分からないアリオスト……まぁ、これもヒゲが一枚絡んでるんだがな。そこに、もう一人のフェザリアンがやってくる。「議会の結果が出るぞ…そんなやつらなど放っておけ!」「おお!」フェザリアンたちは走り去って行った。「何があったんだろう?」「気になるな……行ってみよう!」アリオストの提案で、俺達はフェザリアン達の後を追う。そこではフェザリアン達が集まり、何かを発表しているところだった。「では議会の結果を発表する。被害率が高いと予想されるため、救出は行わない事とする!」「やっぱりそうか」「仕方がないな」「ああ、仕方がない…さて、持ち場に戻るか……!」お、こっちに気付いたな……走って来た。「何だ、お前たち。こんなところまで入ってきて!」「今の話は何ですか?」「白々しいことを抜かすな。お前たちも奴の仲間だろう!」「奴?仲間?」「とぼけるな!人間の魔法使いが我が女王をさらっていったのだぞ!お前たちの仲間だろ!」魔法使い……ねぇ……。というか、頭に血が上りすぎだ。少しはクールになれよフェザリアン?「女王様がさらわれた?」「そうだ!」「それで、どうするのぉ?」「それで、とは?」ティピの問いに、本気で分からないという風に答えるフェザリアン。「助けないの?」「何故だ?」「なぜって……」「もし我々が救出に向かえば、人間との間に争いが起こるであろう。そして犠牲者も出る筈だ……女王は別の者がなればよいが、もし戦死者でも出せば、ことはそれだけでは済まない」成程……言ってることは正論だ。「それが合理的だというのか?」「そうだ。確かに今の女王は良くできた方だ。あの方の代わりはそうそういまい」「だったら、どうして助けないんですか?」ルイセが非難する様に言う……気持ちは分かるが話はちゃんと聞こうな?「彼らの言い分はさっき言った通りだ」だから俺が代弁してやる……正直、正論だけで世の中成り立ってると思ったら大間違いだぜ?「女王は代わりの者がなれば良い……そう彼らは言った。同じでは無いにしろ代わりはいる……危険を侵してまで助け出そうとするよりは、危険を出さずに一人を犠牲にする方が良い……そう言う考えなんだろう?」俺はネゴシエイターモードでは無く、地で話し掛ける。「そうだ」大の虫を生かし、小の虫を殺す……政治家的考えって奴だな。それが悪いこととは言わない……彼らには彼らの信念があるんだからな……。「一つ聞きたいんだが、犯人の顔は見たのか?魔法使いと言うからには、それっぽい格好をしていたとか?」「いや……顔は見ていない。だが、魔法を使ってきたのは確かだ」成程ね……原作でも言っていたが、襲撃犯は何人か居たらしいからな……どうやら彼らは主犯格の奴は見ていないみたいだな。主犯格は間違いなく、あの男だろうからな。「分かりました。情報の提供に感謝します……皆、行こう」「待ってくれ!僕は」俺がフェザリアン達に礼を述べてから、崖の方に移動しようとする。アリオストが駄々をこねたので……。「良いから来い……去勢すっぞコラ」「っ!?」俺は暗黒オーラを滲ませながらアリオストに言う……せっかく俺がした交渉をお前まで駄目にする気か?フフフ……そうか、そうなのか……。「わ、分かりました。僕が全面的に悪かったです!だから勘弁してください!!」アリオストがジャンピング土下座を敢行する。嫌だなぁ……俺は平和的に話し合いがしたいだけなのに。何故かフェザリアン達や、カーマイン達も青ざめた顔で後ずさっていた……何で?で、フェザリアンの人達に挨拶してから移動した……終始ビクビクしてましたけど。「さて、話を整理するぞ?まず、ラシェルの東から聞こえてくるフェザリアンの歌声……これは間違いなくステラ女王だ。女王一人を犠牲に……という話の流れからも、さらわれたのは女王一人ということになる……」俺は皆と情報を整理することにする……ルイセとティピは膝を抱えて震えていて、それをカーマインとラルフとミーシャが必死に慰めてる状態だ……う〜〜ん、そんなにだったか?「犯人の人数は不明……ただ、魔法を使う者が居たと考えられる……今の所は情報はこれくらいか……何か質問はあるか?」「あの……何でさっきアリオストさんを止めたんですか?」カレンが疑問に思って聞いてくる。アリオストもやっぱり気になる様で、思わずジャンピング土下座をしてしまったものの。「それは僕も気になる……教えて欲しい」と聞いて来た。なので俺は答えてやる。「最初、フェザリアン達は誘拐犯を俺達の仲間だと言ってきた……何故だと思う?」「え〜〜と……同じ人間だから?」そうミーシャが自信なさ気に答える……どうやらルイセとティピも復活したらしいな。「半分正解だ」「じゃあ、残りの半分は?」ティピがそう聞いてくる……少し考えれば分かることだけどな。「誘拐犯はどうやってこのフェザーランドに来た?空を飛ぶ翼の無い人間がどうやって……」「ま、まさか……」「流石アリオスト……気付いたみたいだな。そう、アリオストの作った飛行機械……あれと同じ様な物で侵入したんだろう」「ちょっと待てよ!アレは確か、魔法学院に抑えられたはずだぜ?」「そうだよ、あの時にシオンさんもあそこに居たじゃない」「ゼノスやルイセの言いたいことは分かる……確かに俺はあの場にいた。学院長が魔技法を施行するということを告げたのも聞いた」まぁ、その学院長が1番信用ならねぇんだが、それはミーシャがいるここでは言わない。「考えられるのは、アリオストさんみたいに誰かが発明した場合……」「……もしくは、学院の研究成果が流れている可能性だな」俺はラルフに続いて言葉を紡ぐ。「そんな、そんなことがあるはず」「無いとは言い切れない……発明品自体は持ち出せなくても、データを持ち出して作成するということも出来る筈だ」ルイセの意見をバッサリ切り捨てる俺。原作ではどちらだったかは判然としていないが、数人の実行犯が居たという事実から考えて、俺は後者だと思っている。「ありえない話ではないな……」「でも、おじさまが管理してる学院でそんなこと……」「……学院長も完璧というわけではない……穴があっても不思議じゃないさ……」「カーマインお兄さままで……」ミーシャが釈然としていないが、本題は違うんだよな。「まぁ、どういう経緯で飛行機械を手に入れたかは、今は問題じゃない……要は誘拐犯のせいで、俺達までが悪印象を受けている……ということさ」「??どういうこと?」「……つまり、誘拐犯の飛行機械を作ったのがアリオストだと思われていて、仲間である俺たちも誘拐犯の一味だと思われている……ということだ」俺の説明を理解出来なかったティピに、カーマインがもう少しかみ砕いて説明する。「お前さんのことだ……母親がここに居ると分かったら、会わせてくれって言うだろう?こんな状況でそんなこと言えばどうなる?また貴様の欲望のせいで……とかなじられた揚げ句、解毒薬のことも無かったことにさせられかねない」「それは……」「だから、女王を助け出してから堂々と頼むんだよ……母さんに会わせて下さいってな?」「……え?」落ち込みそうになってるアリオストに克を入れる。「そうしたら、後は俺のネゴシエーションで、一気に話を持って行ってやる……男同士の約束だ!」