「失礼します」「やぁ、いらっしゃい。いったいどうしたのかな?」「アリオストさん、今、暇ですか?」「今?今はマジックタイム停止装置の調整をしていただけだけど……」「マジックタイム停止装置?あの遺跡とかにある、魔法仕掛けの自爆装置等の経過時間を止めるとか言う……あれか?」「その通り!よく知ってるね?もっとも、僕の作ったこれは試作品で――正確には時間を遅らせるくらいしか出来ないけれど――」「だったら、名前を変えた方が良くないか?それに、使用時に魔力波でダメージを受けるのも問題だぜ?」「う〜〜ん、そうなんだけど……これ以上機構を変えるのは……」「例えばここをこうすれば……どうよ?」「成る程、そうか!僕としたことが見落としていた……まさかこんな方法が……」「あの〜〜シオンさん……本題がズレているんと思うんですけど……」俺とアリオストがマジックタイム停止装置について、熱く語り合い、尚且つ分解して改良までしだした辺りで、流石にマズイかな……と思ったんだろう。カレンがツッコミを入れてくれた。「悪い悪い!何分、魔導具を作ったりしてるから、つい気になっちまって……本題は違うんだったな。アリオスト、コムスプリングスに行かないか?」「ということは、野暮用は終わったのかい?」アリオストも改良を終えて、話に加わってくる。「ああ、ちなみに優勝したのはシオンとカレンだ」「優勝だって?これは驚いた……確かに、君たちは強かったけど」ウォレスの言葉に、純粋に驚かれる……まぁ、仕方ないな。俺達の戦いをアリオストが見たのは、あの遺跡の中くらいだもんな。アリオストはプロの戦士でも、武術家でもないから、どんだけ強いかとかは分からないだろうしな。「そんな訳で、旅券も貰ったし、一緒に行かないか?」「ありがとう。感謝するよ!」アリオストを加えた俺達は、その足でコムスプリングスに向かうことにした。テレポートを使っても良かったんだが、徒歩でもそんなに掛からないくらいの距離だし、せっかくだから旅券を使うことにしたのだ。こんなに近い距離までテレポートを使ってたら、運動不足になっちまう。急ぎの用件なら話が変わってくるが。「そんで、やってきましたコムスプリングス!」「久しぶり……と言うわけでも無いかな?」そういやそうだな……この前シャドーナイトの動向を探りに来たっけな?んで……俺達は住宅街に向かう訳だが……。「コムスプリングスと言えば温泉!お兄さんも入っていかないかい?心も体もリフレッシュするよ!」「温泉かぁ〜♪ねぇ、入って行こうよ♪」「ティピ……俺たちの目的は、ダニー・グレイズに会ってフェザリアンのことを聞くことだろう……」店員の呼び込みに反応したティピが提案するが、そこをカーマインに突っ込まれる。「だってさ、せっかく話しを聞くなら、さっぱりと身体の垢を落としてからの方が、いいんじゃない?」「それは一理あるかもね」「……ラルフ!?」「それに今日の宿は取っておかないとな?話しを聞き終わるくらいの時には、多分夕方だぞ?」俺は太陽の位置から、そう計算付ける。今日は泊まりになるな……。まぁ、それも悪くないだろ……時間的猶予はまだまだあるからな。とりあえず皆も反対はしない様だ……んじゃ、早速チェックインと行くか。店員さんに旅券を見せる……すると、休むかどうか聞かれたが、まずは風呂に入ることになってたので、そのことを伝えると、浴場に繋がるドアまで案内された。「それじゃお兄ちゃん、また後でね」「カーマインお兄さま、ラルフお兄さま、しばらくのお別れですぅ☆」「それではみなさん、また後で」「じゃあねぇ〜☆」こうして女性陣は去って行った……。「さて、俺たちも風呂を浴びに行くか」「そうですね。ここの温泉は疲労回復によく効くという話ですから」「そうなのか……温泉……普通の風呂とは違うんだろうか……?」「まあ、場所にも寄るけどな?ここはかなり広いぜ?」「そうだね……何より温泉は気持ち良いしね」「そんじゃ、じっくり疲れを取るとするか!」こうして俺達も男湯へ向かうのだった。***********「ふぅ……いい湯だな……」「まったくですね」「極楽じゃあ〜〜、オッサンの身も心もリフレッシュだぜぇ……」「オッサンって…そんな歳じゃねぇ筈なのに、妙な貫禄を感じるなお前……」「……これが温泉……良いな……」「はぁ……疲れが取れるよ……」皆がみんな、ふやけきった顔をしています。そして物凄い筋肉率!!ウォレスは体中が傷だらけで、まさに戦士の貫禄と言った所か。そして筋肉!ちなみに眼鏡は着けたままです……まぁ外したら見えなくなるから仕方ないか。似た感じなのがゼノス。ウォレス程では無いが、傷を持った体と、そして筋肉!!バンダナみたいなのは外してます。カーマインとラルフは細身だが、鍛え貫かれた体付きだ。まだ鍛える余地はあるが、ある種の完成型に近い。アリオストは……意外にもヒョロイと言うことは無く、平均的な体付きだ。ん?俺?俺はある種の完成型ってやつだな。細くもあり鍛え貫かれた体……全身ピンク色筋ですから。チートな身体能力に胡座をかかずに鍛え続けてますから。ちなみに、修学旅行?のお約束でもある、男の勲章たる、お宝の大きさチェックは俺が断トツだった……みんな驚いていたな。……少し、勝ち誇っていたのは秘密だ。「それより、あのフェザリアンをどうやったら納得させられると思うよ?」「そうですねぇ……具体的にどうすればいいのか……」「薬を貰える状態ではある……だが、生半可な答えでは納得はしない……」「まぁ、全てはダニー・グレイズって奴の話を聞いてから」そんな話をしていた時。ザブーンッ!『もう、ティピったらぁ。飛び込んだりしちゃダメだよぉ……』『何よ、そんなこという娘は、こうだ!』バッシャーーンッ!!『きゃーーーっ!ちょっと、やめてよ!』『面白そ〜♪アタシも、え〜い♪』バッシャーーン!『本当に、やめてよ!やめてったらっ!……ふぎゅ……ふえ〜ん……(泣)』『もう!みんなはしゃぎ過ぎです。大丈夫、ルイセちゃん?』『えぐっ……カレンさぁーーんっ!!(大泣)』…………………。「……この向こうが、女湯だったんですね……」「そのようだな。目の見えない俺には関係ない話だが」目が見えてたら関係あるんかい!一応、心の中で突っ込んでおく。ん?ゼノスが立ち上がった……まさかコイツ。うわ、カーマインまで立ち上がったぞ?「君たち、どこへ行くつもりだい?もしかして、女湯を覗きに行こうなんて思ってるんじゃないだろうね?」そこは優等生のアリオスト、見咎めないわけはない……何しろ、ミーシャ君もいるわけだし……とは原作の本人の談。「それの何が悪い。妹や乳臭いガキンチョには興味は無い……だが男足る者!女湯があれば覗きに行くのが嗜みの一つだろうがっ!!」あ、熱い!この漢、無駄に熱い!!……ゼノスって……何と言うか、修学旅行で率先して覗きに行くタイプだよな……ベルガーさんの血筋故に……とは思いたくないが。「き、君、何を堂々と……恥を知りたまえ、恥を!」「別にそれくらい、いいんじゃないのか?見つかって、あとで酷い目に会うのが怖くなければ行ってこい」「ウォレスさん!?」ゼノスに絶賛説教中だったアリオストは、ウォレスの言葉に寝耳に水のようだ。「ま、よく考えて決めるんだな」「……俺は行く、妹が泣いているのを黙って聞いてはいられないからな……」ウォレスの言葉にカーマインが前に出る………ウワァ……あの顔はマジだ、マジでルイセを心配してる顔だ。下心が全くないってどうよ?君ももう少し、アリオスト君を見習いなさい。「……なるほど。確かに兄としては当然の行動だね。だが君がやりすぎるといけない。僕もついて行くとしよう。何しろ、ミーシャ君だっているわけだし……」出たぁ!アリオストの言い訳!カーマインをダシに愛しのミーシャ君のHA・DA・KA☆を拝もうって下心が丸見えだっつーの。何しろ顔が緩んでて説得力が無い。流石アリオスト……ナイスムッツリスケベと言っておこう。「ウダウダ言ってねぇで、さっさと行ってこい!!」「そうだ!ウダウダやってる暇はねぇ!!行くぞお前ら!!」ウォレスの克入れに、ゼノスが火を付けて突貫して行った。カーマインも後に続き、アリオストも慌てて後を追った。「「行ってらっしゃ〜〜い」」俺とラルフは三人を見送った。ゼノスがいても、原作と大差無いだろう。念のために保険はしてあるしな。「お前らは行かないのか?」「まぁ、こうして温泉に浸かってる方が良いですから」「それに、結果は見えてるしなぁ……」くっくっくっ……と、邪笑を浮かべる俺であった。********「……真っ暗だな……だが、もう少しで女湯が……」「なんか、声が嬉しそうだな……アリオスト?」「失敬な!僕は純粋に君たちの監視で来ているだけであって……」「その割りには、率先して先頭を歩いてるよなぁ?最初は先頭だったのは俺なんだぜ?」「こ、これは……その……君たちに変なことをさせないための処置だ!」うむ……よく、これだけ言い訳が出てくるなぁ……俺でも分かる。これがムッツリスケベって奴だな。「それにしても、女湯に向かうためにこんな細い穴があるなんて……」「考えることは同じってことだ……これで綺麗なお姉さんがいりゃあ言うこと無しなんだが」お前ら……って、理由こそ違えど、こんな所まで来てる俺が言えることじゃないな。『ミーシャの胸っておっきいねぇ……』『そんなことないよぉ。ルイセちゃんだって…………あはは……なんでもない……』『……う〜……どうせ、わたしは……』『大丈夫よルイセちゃん、女の子の魅力は胸の大きさじゃないんだから』『それ、カレンさんには言われたくない台詞だわ……』『そうだよね……コレってアタシより……』『そ、そんなにジロジロ見ないで……恥ずかしいから』『……うぅ……どうせわたしなんてぇ……(泣)』ルイセ……お前は14にしては発育は良い方だと、俺は思うぞ?……周りが反則なだけで。「むぅ、ミーシャ君は……そうか……ほらっ、なに止まってるんだ!先へ進むぞ!」俺たちはアリオストを先頭に苦難を乗り越え、遂にそこが見えてきた……。「後少しで……後少しで……」『それじゃ、そろそろあがろうか?』『そうだね』『お兄さま達が待ってるもんね☆』『そうですね、皆さんを待たせても悪いですから』ざばばばば〜〜ん。どうやらみんなが上がったようだな。「あ゙……」アリオストの悲痛な声が響き渡る。「まだだ!アイツらがあがっても、まだ綺麗なお姉さんがいるかもしれん!俺は諦めん!!」あっ、ゼノスが突貫していった。カチッ!カチッ?ベッシーーーン!!「ぶっ!?」ゼノスが突然現れた何かに叩かれて吹っ飛んできた。それは看板で、そこには『だ〜〜め!』という言葉と共にバッテンマークを作る人の絵が…気のせいかシオンに似てる様な…。「………帰ろうか」「……そうだな」俺達は気絶したゼノスを引きずり、男湯へと帰還したのだった。