その後、俺は皆と合流した。カーマイン達は俺達を労ってくれた。「やったな!」「おめでとうと、言わせてもらう」「流石シオン……だね」「おめでとうございます!」「ま、俺は始めから心配してなかったがな?」「いや〜、魔王様降臨しちゃった時にはどうしようかと」ピシッ!!ん?空気が固まった……何で?というか、魔王様って何さ?カーマインを始め、男連中は何故か汗ダラダラだ……あのウォレスまで。ルイセはカーマインに縋り付き、涙目で「怖いよぅ…怖いよぅ…」と震えている……一体なんなんだ?「ティピ……ちょっと来い……」「あ、ゴメン!ゴメンなさい!!アタシが悪かったから許してっ!」ティピがカーマインに鷲掴みにされて連れていかれた……どうでも良いが、ルイセにしがみ着かれながら歩く姿はかなりシュールだな……なんか、某音大を舞台にした漫画の先輩後輩みたいだ。まぁ、そこはカーマイン。あそこまで粗雑に扱わず、ルイセの歩幅に合わせてるのは流石だよなぁ。「つーか、一体なにが…」「いい!お前は気にすんな!な!?」「……そういえば、ジュリアンが外で待ってるって言ってたぞ?カレンも一緒に行ってるが……」ゼノスとウォレスに話を逸らされた―――あからさまに怪し過ぎる……だが、ここで何か追求するほど俺は空気が読めないわけじゃない。「そうか、じゃあカーマインが戻ってくるのを待ってから」『でっひゃあああぁぁぁぁぁ!!?』……その叫びはあれか?某仮面のブラウン?それからカーマインと合流、俺達は外に向かった……ちなみにティピはグッタリしていたのを明記しておく。「やあ」闘技場から出て、街中へと続く入り口でジュリアンとカレンは待っていた。「おめでとう、ジュリアン。俺は眼はよく見えないが、お前の戦いぶりは良くわかったぜ。剣に迷いがなかった……もっとも、エキシビジョンの時には何故か迷いが出ていたが……」「そのことは……追求しないでくれ……」ハハハ……と、渇いた笑みを浮かべるジュリアン……いやマジゴメン。だけど、お前らもイケないんだぞ?公衆の面前で喧嘩なんかして……幾ら温厚な俺でも、チラッとくらい怒るよ?「ウォレス……もしかしてエキスパートの試合も観戦してきたのか……?」「ああ、お前たちの試合以外は見てて退屈しちまったからな……俺は目がよく見えないから尚更そう感じちまってな」つまり、俺達の試合以外はエキスパートの試合を見に行ってた……と?なんつ〜バイタリティ溢れるオッサンなんだ……同じオッサンとして見習いたいぜ……。「ところでお前ら、何の話をしてたんだ?」「内緒よ兄さん。心配しなくても喧嘩なんかしてないから……ね、ジュリアンさん?」「ああ、先程の非礼を詫びたあと、少し話しをしてただけだ」……俺が言うのも何だが、何でそんなに早く仲直りしてんの君ら?さっきまで一触即発だったのに……そこは俺の説得が通じたんだろうが。……なんか、背筋に寒気というか、くすぐったさというか……そんなものを感じる。……なんぞコレ?「そういや、自己紹介がまだだったな?俺はゼノス、そこにいるカレンの兄貴だ」「ジュリアンだ。妹君には失礼なことを言ってしまった……すまない」「いや、そうやって謝ってもらってるし、カレンも許したんだろ?なら俺が言うことはないぜ」二人は握手なんかを交わす……う〜ん、青春の香りだなぁ……とか言っちまう俺は、改めて内面がオッサンなんだなぁ。「せっかくジュリアンさんと再会したんだもん、ここで立ち話するより、街の方で話さない?」そう提案してくるのは、脅えから立ち直ったルイセ。流石はお兄ちゃんパワー……お兄ちゃん分を補充したんですね分かります。「賛成!」「そうだな、行くとするか」俺達はそのまま街中へ……そして何気ない話しをしながら中央まで来た時……。「つもる話もあるだろう。俺達は先に行っている……そうだな、街の入り口あたりで待っている」「まぁ、久々の再会なんだろ?ゆっくり話して来いよ?」「わたしも先に行ってます……それでは、また後で(頑張ってね、ジュリアさん!)」そう言って、ウォレス、ゼノス、カレンが先に行ってしまった。「気を使わせてしまったようだな……後で礼を言っておいてくれ(ありがとうカレン!恩に着る……)」「ところでジュリアン、本当に迷いはなくなったの?」ティピが質問をする……まあ、答えは分かってるがな?「ああ。今までの私は、父に誉められるために剣術を磨いていた。確かにインペリアル・ナイトになることは名誉なことだが、本来は国と民を守るということだ。私はそれを目指してみたい」「そうか…ジュリアンならなれるさ、インペリアル・ナイトに」「そうそう。だって大会の優勝者でしょ?」カーマインとティピがジュリアンに賛同する……まぁ、そこまで甘いものじゃないけどな。「そう簡単なものじゃないけれどな。インペリアル・ナイトには、心技体全てに秀でた者しか叙任されないんだ」「それ故に大陸最高の栄誉……なんて言われてるんだぜ?国民の憧れの的……国の象徴なんだからな」「僕も小さい時は憧れたりしたよ……インペリアル・ナイトなんて、子供にとってはヒーローだからね」ジュリアン、俺、ラルフの順で説明してやる。一応、俺達はバーンシュタイン国民だしね?これくらいは常識だよな。「頑張ってね、ジュリアンさん!」「インペリアル・ナイトになれるよう、陰ながら応援してるからな……」「うん、僕も応援させてもらうよ」「アタシも応援するからね!」「そういうわけだジュリアン、これはプレッシャーだぞ?勿論、俺の応援も込みでな?」上からルイセ、カーマイン、ラルフ、ティピ……それと俺だ。幾ら原作では一時的に敵同士になるとは言え、ここまで夢に向かって強い希望を持つジュリアンを見てると、応援したくなるのさ。「ありがとう……皆」ジュリアンは、微かに微笑みを浮かべながら礼を言った……。「ところで優勝の賞品はコムスプリングスだって?」「そうだよ!あ、ひょっとして、一緒に行きたいの?」「……(一緒に……マイ・マスターと一緒に温泉…お背中を流して……その後は……♪でも、彼らも一緒ではその作戦は使えない…カレンは『同盟者』だから良いが、流石に他のみんなには言えない……ここはカレンと協力して……どのみち無理か……やるなら温泉を貸し切らなければならないし…私の資金ではそれは出来ないし……うぅ、ここは諦めるしかないのか……)……いやいや、そんなわけじゃない。それに私はバーンシュタイン王国の人間だ。何度か行ったこともあるしな」気のせいか?原作より間が大きく感じた様な……ゲームと現実の差か?「ちぇっ!羨ましがると思ったのにな」「ハハッ。(羨ましいに決まっているだろう!……うぅ……せっかくのマイ・マスターへのアピールチャンスがぁ……)とにかく、楽しんでくるといい」「そうだな……じゃあお言葉に甘えて……というのも変か、俺も行ったことあるしな!」ハハハハ!と、皆から朗らかな笑いが零れる……ああ、のどかだ。「さて、そろそろ私も戻らないと……また会えるといいな」「そうだね」「あ、ちょっと待って!」「どうしたんだい、ルイセちゃん?」ルイセはいそいそと、道具屋の前に向かった……この道具屋って確か……。俺達はルイセの後を追った。「ねぇ、お兄ちゃん。これ、買って!」「あっ、コレってカレンさんが着けてた」「うん、プロミス・ペンダントだよ♪」やっぱりかぁ……そういえばこんなイベントもあったなぁ……俺も以前グランシルを去る時に、カレンへプロミス・ペンダントをプレゼントしたっけ……何だか懐かしいなぁ……。「プロミス・ペンダント?」「このペンダントに誓いを立てるの。そしてその誓いを実行できたとき、望みが叶うんだって。学院の女の子の間で流行ってるんだ♪」「まぁ、願いが叶った例が近くにいるしねぇ……」ん?ルイセとティピが俺に視線を送ってくる……なんぞ?しかしプロミス・ペンダントかぁ……本来はジュリアンがプレゼントするところなんだが……よし、決めた!「お姉さん、それを二つ売ってくれないか?」「かしこまりました♪」俺は売ってもらったそれを、ルイセと、そしてジュリアに渡す。「ありがとう、シオンさん!」「その……私にも……か?」「ジュリアンの優勝記念にな?何が良いか迷ったんだが、興味津々だったみたいだし、な?ルイセにも頑張ったで賞の、オマケだ」そんなに高い買い物じゃないし、資金は大量に稼いでたから余裕あり過ぎなので問題無し。「あ、ありがとう……あの、大事にし、させてもらうよ」しどろもどろになりながらも、微笑と共に礼を言う……どうやら喜んでくれたみたいだな。よかったよかった♪「ねぇ、ジュリアンさんはどんな誓いをたてるの?」すっかり上機嫌のルイセがジュリアンに尋ねる……ここは当然ナイトになること……だろうな。「そうだな……私はこのペンダントにナイトになることを誓おう」「それで、望みは?」ここは当然、もう一度みんなと会えるように……だろ?「そうだな……『もう一度、みんなと会えるように』これが私の望みだ」「なんだか控えめな望みね」「正確には、少し違うんだが……コレは今、口にしてしまうと叶わないような気がするから……それで、君は何を誓うんだい?」ん?一瞬ジュリアンが俺を見た気がするが……ま、気のせいだろ。なんか原作と微妙に違うのが気になる……って今更かコレは。「う〜ん……あ、そうだ!わたし、お兄ちゃんを泣かせてみせる」「……なに?」「カーマインを泣かせる…?」「……あのね……」上からカーマイン、ラルフ、ティピになっております。カーマインなんか、ハァ?という顔をしている。「だって、わたし、お兄ちゃんの涙って見たことないんだよ?わたしのことは泣き虫っていじめるのに……」「……それは昔の話だろう……」「ハハハ……良いんじゃないかな?それで、何を望むんだい?」ルイセの言い分に頭を抱え込むカーマイン……それを見て楽しげに笑うジュリア。「ええと、『みんなが幸せになれますように』かな?」「今度はずいぶん大きく出たな……」「やっぱり、変かな……?」「良いんじゃないか?何と言うか、ルイセらしくて」というか、俺も似た様な願いをプロミス・ペンダントにしているしな。「アンタ、今すぐ泣きなさいよ。それでみんなが幸せになれるんだから」「……そう……言われてもな……泣く……泣く……むぅ……」カーマインもほとほと困り果ててしまった様だ。「……アタシが悪かったわ。でも、とりあえずアタシは、ルイセちゃんの味方をするからね?」「なら、僕もルイセちゃん側に着かせてもらうよ」「もち、俺もな?」「…裏切り者どもめ…」いやぁ、そう言われてもな?君にとっては必要なことだぞ?「わたし、絶対お兄ちゃんを泣かせてみせるからね?覚悟して!」「大変なことになったな。彼女の意志は固そうだ。注意してくれよ」何と言うか……孤立無援?「……と、俺、ジュリアンと二人で話すことがあったんだ。悪いんだが、先に戻っててくれないか?」