やっぱりエキスパート代表はジュリアだったか……。「久しぶりで……だな」「やっぱり優勝したんだな……とりあえず、おめでとうと言わせてもらうぜ」俺としては、前回優勝者のバズロックってのも見てみたかったんだがな。つーか、また敬語話しそうになったな?「ありがとう。君たちこそ、優勝おめでとう」「あの……シオンさんのお知り合いですか?」「そうか……カレンは知らないんだったな。彼はジュリアン・ダグラス……俺の親父と彼の父親が知り合いで……ま、昔馴染みって奴だ」本当のことは言えないしなぁ……嘘は言ってないけどな?「そうなんですか……私はカレン・ラングレーです。今は兄と一緒に、シオンさんと旅をしているんです」「……ジュリアン・ダグラスです」カレンは丁寧に頭を下げ、それにジュリアンが返事を返すが……何だ?なんかカレンと俺を交互に見ている……なんだか恨めしそうだが。……なんだ?「その……不躾なことを聞くが……シオンと、貴女はどんな関係なんだろうか……?」……何を聞いてくれちゃってますかこの子は?「かか、関係って!?私達はそのぉ……」「大事な旅の仲間だ……これで満足か?」「………シ、シオンさぁ〜ん………」?こ、今度はカレンが恨めしそうに俺を見て来たぞ?つか、涙目!?だから何故に?「そうですか……いや失礼……私はてっきり……」待てジュリアン……いやジュリア?何その勝ち誇った顔は?てっきりなんなんだ?「貴女の様な女性なら、シオンと恋仲でも可笑しくないと思いましたよ……」「そ、そんなぁ……♪恋仲なんて……♪」いや突っ込むところソコ!?って、なに顔赤くしながら頬に手をやり、身体をくねらせてるかなこの娘は?オッサン勘違いしちまうだろう!?「ま、しかし私の勘違いだったようです。やはりシオンの伴侶には……もっと強き女性のほうが似合うと思いますよ(私とか……申し訳ありません!マイマスター!出過ぎたことを考えました……でも……ああ……♪)」ピシッ!!あっ、カレンの動きが止まった。お……プルプルしてる。「……それは、私では役者不足だと……?」「おっと失礼……つい本音を……」髪をファサッ!とかき上げて、そんなことを言うジュリア……なんか某伝説の木がある高校に通う、某財閥の御曹司みたいだな……そういえばアレも女だったしな。「確かに……私は弱いかも知れませんが……背中を支えるくらいは出来ます!」何か、二人の間で火花を散らせてるような……なんぞこれ?「支える?出来るかな、貴女に?私なら、隣にて共に戦うことを選ぶが――」「貴方は!シオンさんの凄さを知らないから、そんなことを言うんです!」「知っているさ。貴女よりはね?」あ〜……えーと、そろそろ試合しない?ほら、観客もシーンとしてるし、国賓で来てるリシャールも、目が点になっているという――非常に面白いことになってるぞ?「何なんですか貴方は……まるでシオンさんを……その……男性なのに不健全です!」「な、何を勘違いしている…!わ、私は純粋にこの方を尊敬しているだけであって……」「なら、私にとやかく言う資格は無い筈です……!!私はシオンさんを……その……」赤くなりながらチラチラ俺を見てくるカレン……俺を……なんだよ?気になるだろう!?「フッ……己の想いも素直に言い表せない者が、よく言う……」「!!あ、貴方に言われたくありませんっ!!そもそも、シオンさんは女性が大好きな健全な人です!貴方みたいな不健全な人は駄目です!!禁則事項です!!」か、カレンのテンションが高い……というか、俺を引き合いに出すな!その言い方だと、俺が無類の女好きみたいじゃないかっ!?――いや、人並みに女性は好きだけどな?つーか、お前は某団員の未来人か!!「くっ……言わせておけば!!だから違うと言っているだろう!!」「シオンさんは私のことを……美人だって言ってくれました!それに……プレゼントだって……貰いました…!!」「ふふん!それくらい私だって……私だって……………」「どうしました?何も言えないみたいですね?」「うぅ……私だって……」勝ち誇るカレン……そしてチラリと俺を見てくるジュリアン……うむ、捨てられた犬みたいな視線を向けてくる……何故に?……確かにプレゼントはしたこと無いが……プレゼントが欲しかったのか?闘技大会優勝記念に何か買ってやろうかな?う〜〜ん………って、何か険悪な雰囲気だな……。「ならば……どちらが正しいか、証明しようじゃないか……幸いここは闘技場だ」「争いごとで解決しようなんて……野蛮です……けど不思議ですね?私も同じ気持ちですよ……」カレンは魔法瓶を両手に構え、ジュリアは剣を抜き放つ……って待て。実力差は明らかだろうに……流石に止めるべきだな。「お前ら少し落ち着け……」「「シオンさん(マイ・マスター)には関係ないです!!引っ込んでいてください!!!」」ぷちっ。……なんだその言い草は……こっちは心配して声掛けてやったんだろうに……二人ともなんだか知らんが、俺を引き合いに出したあげく関係ないだぁ……?ガシッ!!俺は二人に近付きその首根っこを掴む。「「な、何をするんでっ……ヒッ!?」」俺を見て二人が短い悲鳴をあげる………フフフ、嫌だなぁ?そんな恐がられるなんて心外な……。俺は心に邪悪な笑みを浮かべながら、しかし顔は一切笑わず、冷たい視線と共に万感を込めて言ってやる。「少し……頭、冷やそうか?」「「ッッッッッッ!!??」」それからしばらく……俺は二人とキッチリ『お話』しました……そしたら、ちゃんと分かってくれたよ。やっぱり、人間……誠意を持って接すれば分かって貰えるものだ。ちなみに、某管理局の白い悪魔の様なO・HA・NA・SI☆では無く、普通のお話だからな?……説教とも言うが。「良いか、もう喧嘩しないな?」「ハイィィ……もうしませんんん……!!」「ゴメンなさい……ゴメンなさい……!!」二人が涙目になりながら、謝罪してくる。首根っこ掴んだままなんで、猫みたいだ。というか、俺はちょろっと説教しただけなんだが……これでは俺が悪いみたいじゃないか。まぁ……軽くイラッときたからか、少しイジメ過ぎちまったかも知れないが……仕方ないだろ、なんか知らんがゾクゾクしちまったんだから。俺は二人を床にゆっくり下ろす。「で、どうするジュリアン?一応コレ、エキシビジョンマッチらしいんだがな……やる?」「うぅ……やりますぅ……やりますから……見捨てないで下さい……」あ、やるんだ?っていうか、涙目な上に敬語出ちまってるぞ?さっきもマイ・マスターって口走ってたしな。「つーか、見捨てたりしないって。ホラ、カレンも立って……」「ご、ゴメンなさい……っ!お、お願いします…き、嫌いに、ならないで……」こっちも涙目になりながら謝ってきてる……。そんなに怖かったのか……?「って、嫌いになんかなるかよ。ほら、二人とも……」俺は座り込んでしまっている二人に手を差し延べる。二人はビクビクしながらも、その手を取ってくれた。「二人とも反省したんだし、俺はそれ以上言わないよ……だから、な?」「「は、はい……」」ようやく二人も落ち着いてきたようだな。「んで、本当にどうする?乗り気じゃないなら止めても」「いえ……コホン!いや、やらせてくれ!私もあれから修業したんだ……その成果をシオンに見てもらいたい」お、言葉遣いが戻ったな。なら、相手しようじゃないの……まぁ、ゼノス達の手前……負けてはやれないけどな?「カレンは後方で待機……良いな?」「は、はい!」よし、なんかえらく時間が掛かった気がするが、やっと始まるな。「あ、すいませーん!!もう始めちゃってくれませんか?」俺は絶句しているアナウンサーに声を掛ける……どうやら気絶していたらしい……何で?「ハッ!?え〜と……で、では、これよりエキシビジョンマッチを始めます。両者、宜しいか?……試合開始!!」そのアナウンスで会場の者達も気付き、何事もなかったかの様に歓声が巻き起こる……どうやら八割近くが気絶してたらしい……それ何て集団催眠?********お、恐ろしい……カレンとあのジュリアンとか言う奴が言い争いを始めて、黒い何かを滲み出し始めた時もちっとビビったが……その後が問題だった……。「怖いよぅ……怖いよぅ……」「ア、アタシ……もう絶対シオンさんだけは怒らせない……」「気を失ってたほうが……良かったかもな……」「…だね…」「……むぅ……これほどとはな……」現状をかい摘まんで説明すると、ルイセは怯えて膝を抱え、その横でティピも膝を抱え、カーマインとラルフとウォレスは冷や汗ダラダラになりながらも、何とか堪えていた……かく言う俺も同じだ。あの暗黒空間には近づきたくねぇ……。例えるならそう……。――魔王降臨――って感じか。うぅ…俺も気絶しときゃあ良かった……。「…どうやら試合が始まるみたいだな」ウォレスが言う通り、試合が始まるみたいだ……さっきのはアレだ!忘れよう!記憶の彼方にしまい込もう……。「勝てよ……シオン!」俺は何事も無かったかの様に――いや、様にでは無く、何も無かったんだっ!!とにかく!シオンの戦いを見守ることにした。*********えーと……今、ジュリアンと剣を合わせてるんだが……確かに強くはなったんだが……ゼノスと大差無い感じだな。「どうした?次、行くぞ?」ギキィィン!!「くぅ……流石は……」それに何故かどことなくぎこちない……もしかして。「さっきのことを引きずってんのか?」ビクッ!「……図星か」仕方ないな……このまま勝ってもなんだしな……。「気合いを入れろ!修業の成果を見せるんじゃないのか!?」「……は……はい……」鍔ぜり合いで圧されながらも、何とか答える。また敬語になってるし。止むを得ないな。俺はそのまま剣を弾く……そして一気に踏み込み、そこで方向を変え、後方に回る。前方に剣を振り下ろしたジュリアン……しかし、既にそこに俺は無く、後方より、剣を首元に突き付ける俺がいた。「これで……チェックだ」「ま、参った……」たく、これならゼノス達のほうが歯ごたえがあったぜ?「おぉっと!ジュリアンが負けてしまった!エキスパートがフレッシュマンに負けるとは!これは前代未聞だ!」まぁ、当然だな。ジュリアンの奴、さっきのことを気にしてたからな……そんなに引きずることもないだろうに。「今回のはノーカンにさせてもらうぜ……いずれ本気のお前と剣を合わせてみたいものだな……」それが戦場で…というのは勘弁だが。「ああ……また来年、今度はエキスパートの部で戦うことになるだろう……それまでに腕を磨いておくよ」「良いのか?その頃、お前はインペリアルナイトになってるんだろう?忙しいナイトの身で時間が作れるかな?」「ふふ……なれたら、の話しですよ……」穏やかな笑みで小さく言うジュリアン……なれるさ。俺が保証してやるって。「これで本年度の闘技大会を終わります!またお会いしましょう!さようなら!」アナウンサーの言葉に、俺達は惜しみない拍手と声援をもらった。少し感傷に浸っていたら、ジュリアンに話し掛けられた。「久々に会えたんだ。外でゆっくり話さないか?」「そうだな、俺は構わないぜ?」「それは良かった……その前に、カレンさんを少し借りて良いか?先程のことについて謝りたい」カレンを?まあ、カレンが良いなら構わないが。