時は闘技大会開始より遡る……。*******初めまして、私はリーセリア・ウォルフマイヤーと申します。シオン・ウォルフマイヤーの母です♪って、私ったら誰に向かって話してるのかしら?「それにしても、ジュリアン君は大きくなったわね〜♪」「いえ、リーセリア様は以前とお変わり無く……」今、目の前でお茶をしている男の子はジュリアン・ダグラス君。私の主人、レイナード・ウォルフマイヤーのかつての同僚である、ダグラス卿のご子息。以前は度々、我が家にダグラス卿と共に来ていたんだけど、ここ最近は顔を見せてなかった。話を聞くと、諸国を巡っていたのだそう――。……なんだか、うちの息子みたいねぇ……。「それにしても、ジュリアン君……昔も女の子みたいだったけど、すっかり綺麗な男の子になっちゃったわねぇ」ゴフッ!!あら?ジュリアン君ったら、紅茶が変なところに入ったのかしら?「ごほっ!ごほっ!……き、綺麗と言われても、男の私としては複雑な心境ですね……」「ゴメンなさいね♪変なこと言って♪」だから紅茶を吹いちゃったのね……悪いことしちゃったかなぁ……多分あちこちで色々言われてるんだろうなぁ。まぁ、容姿なら私の息子も負けてないけどね。私とレイの良いとこ取りみたいな感じだし……あ、レイっていうのは主人のことね?ガチャリ。「済まない……待たせたな」「あら、あなた♪」そこにやって来たのは、私の主人のレイナードだ。改めて見ても良い男よねぇ〜〜♪「よく来てくれたねジュリアン君。それで、一体どんな用件かな?」「はい、実は旅先での話ですが……ご子息であるシオン殿とお会いしまして……それをお知らせしようと」あ〜〜、そのこと?私はレイに視線を送る。レイもそれに気付いて頷く。「彼が旅立ってから3年……その間、音沙汰が無く……?どうしたのですか……その、申し訳無さそうな顔は?」「その……実はだね?」「あの子、定期的に手紙をくれるの……ついこの前も手紙をくれたのよ」ズルッ!そんな感じで肩透かしをくらうジュリアン君……あらあら、椅子に座りながら……器用ねぇ。「そ、そうだったのですか……それでは差し出がましい真似をしてしまいましたね――」「あら、そんなことは無いわよ?ね、あなた?」「ああ、ジュリアン君……息子は元気そうだったかな?」「……はい、私と一緒に国に戻らないかとお尋ねしたのですが、まだその時では無いと……」「全く……昔から変に達観したところがあったからな、シオンは……アイツのことだから何かしら考えがあるんだろうが……」そう、あの子は妙に達観しているところがある。それが顕著に現れたのが、二歳くらいからだろうか?それ以前から、話が出来ていたし、歩き回る様になっていた……読み書きを完璧に熟せる様になったのは五歳くらいからだけど……それでも早熟よね〜……?何より、自由に動ける様になってから、一度も一緒にお風呂に入ったことないのよ!?いつも逃げられて……そんなにお母さんとのスキンシップをしたくないのかしら……あ、思い出したら悲しくなってきた……。オシメだって変えてあげてたし、お乳だってあげてたのに……愛情たっぷりで育てた筈なのに……何でお風呂には一緒に入ってくれなかったの……お母さん悲しい……。「そういえば、今度息子は闘技大会に出るらしい……まぁ、息子のことだから心配はないだろうがな」「そうなのですか?私も出るつもりだったのです……そうなると、彼とぶつかることも考えなければなりませんね」うんうん♪男の子してるわね♪あ、そういえば……。「そういえば、あの子ったら女の子と仲良くなったらしいのよ♪何でも、一時期お世話になったご兄妹の妹さんらしいんだけど……フフ♪隅におけないわよね♪」ビキッ!!「……その話……詳しく!聞かせて戴けませんか?」「?ええ、構わないわよ」私はその女性の話をした。名前をカレンさんと言い、息子より二つ年上。何でも、危ないところを息子が助けたらしい。凄く綺麗なお嬢さんみたい。「だが、仲の良い友達くらいの仲だと、手紙には書いてあったが……」「そう言えばそうねぇ……てっきりあの子にお嫁さんが出来るかと思っちゃったわ……早とちりだったかな?」「……あの人のことだ……無自覚に引き寄せたに違いない……とは言え、四六時中一緒にいる訳ではあるまい……」「確か、今は兄妹と一緒に行動を共にしてるんだったな?」「そうそう!ラルフ君の弟さん達も一緒に旅に出ているらしいわね?なんか賑やかねぇ♪」ガタンッ!!あら?ジュリアン君が立ち上がったわ。「こちらから訪ねて来て、大変申し訳ないのですが……急用が出来たので!今日は失礼させて戴きます……(マズイ……マズイマズイ!?マイ・マスターが何処の誰とも知れない者と四六時中……そんなマイ・マスター!?私を見捨てないで下さいっ!!)」それから、挨拶もそこそこに、ジュリアン君は慌てて出ていってしまった……。「……どうしたのかしらジュリアン君?」「さてなぁ……急用みたいだったが……」なんだか分からないけど大変ねぇ……。シオンも頑張ってるのね……なら私も頑張らなきゃね♪「ねぇ…レ〜イ♪」私はレイにしな垂れかかる。「!?な、なんだ……リース?」「今度、シオンが帰って来る時に、驚かせてあげたいと――思わない?」「ど、どういうことだ?」「もう、鈍いんだから!もしあの子が帰って来た時に、弟か妹が出来ていたら……あの子も驚くでしょ?だから今夜……ね?」「お、お前……自分の歳を考えろ……というか、俺の歳をだな……」「あら?私はまだ綺麗なお姉さんで通るわよ?年齢もまだ30代前半だし……むしろ今を逃したらチャンスなんか無いわよ〜……それとも……嫌……?」「!!……分かった。後で後悔しても知らないぞ?」「後悔なんてしないわよ♪……愛してるわ、レイ♪」「……私もだ、リース」シオン……貴方が何をしようとしてるのか……お母さんには分からないわ……。けれど……精一杯頑張りなさい。私……ううん♪私達も頑張るからね♪弟か妹か……今から楽しみね♪