――んで、俺達は学院長に遺跡に立ち入る許可を貰いに行ったが……不在だった。ちなみに、学院長の秘書は原作でも言われている通り、かなりの美人だった。「どうしたのアンタ?鼻の下伸びてるわよ?」ティピがカーマインをからかうが、カーマインは何処吹く風。「そんなことは無い……というか、そういうことは俺じゃなくゼノスに言え」「な、なんで俺に振りやがるっ!?」そりゃ、あんだけガン見してりゃあな……当然だろ?「ゼノスさんってば……実は結構……♪」「あのな、あんだけの美人だ。多少なりとも興味が沸くのが男ってもんだ!な、シオン?」ここで俺に振るか?まあ、良いけど。「そりゃあな?ガン見したりはしないが、美人がいるなら、男としては――何となく気になりはするけど」あくまで、俺の基準の話だから参考にはならないだろうが。「……つまり私は美人じゃないと?」カレンが何故かどよーんとしながら聞いてくる。皆は何故か怯えてるみたいだが……何故に?。「?なんでそうなるんだ?カレンだって美人じゃないか」俺にしてみれば何を今更って感じだが、カレンは目を丸くしている。「……え……だって……」「さっきのはあくまでも例えだ。カレンが美人じゃないなんて一言も言ってないぞ?」「それじゃあ……その……」カレンがモジモジしている……ヤバイ……なんかクるモノがあるな。「まぁ、カレンだって綺麗で可愛いんだし、気にすることないさ。少なくとも俺はそう思ってるし」「は、ハイ……ありがとう……ございます」カレンは真っ赤になりながら俯いた。ん〜、なんか悪いこと言ったか俺?「どうした?何をごちゃごちゃ言ってるんだ?」「あのね、受付の女の人があんまりきれいだったから、ちょっと……」確かにこの人も綺麗だ。ゼノスが、ガン見するのも分かる気がする。カレンとはまた違ったベクトルの綺麗さなんだよな。カレンはなんつーか、癒し系だからな。「ほほぅ、そんなにきれいなのか!くそっ!目が見えりゃあなぁ……」「本当よ!赤くて綺麗なピアスが似合ってて、もう凄くセクシー」本気で悔しがるウォレスに、ティピが秘書の特徴を説明してやっている。そう、所謂クールビューティって奴だ。何と言うか……サンドラ様が彼女と近い感じだが、もう少しクール度を強めた感じ……だろうか?というか、応対が全部無表情……とは言え、感情が無いわけじゃない。原作で狸ジジィを先に倒すと、仇を討とうと気合いを入れるし……。つーか、原作じゃ分からなかったが……この秘書さんも胸がデカイ……ミーシャもそうだったし……あの狸ジジィの趣味か?「ほほぅ、もう少し詳しく教えてくれ……」喰いついた……ウォレスも結構好きなんだな……もしかして、目が見えてたら温泉イベントにも参加してた……無いか。これは秘書が綺麗だって言うから興味が沸いたんだろうし……冷静に考えたら、眼の保養ということがウォレスには出来ないんだよな……ふむ、魔法の眼の改良を計画してみるか……。「えっとね、ピアスはルビーのティアドロップだよ。で、口紅の色がね〜……」「申し訳ありませんが、用が無いのでしたら、お引き取り願えますか」ぐだぐだ言ってる俺達を、バッサリと切り捨てる様に言う秘書さん。仕方ない、ウォレスには後で、俺が補足をしておいてやろう。「あ、あの……院長先生はいらっしゃいますか?」「学院長は、今、屋上の方にいます」「屋上ですか……」「はい。時空の歪み計を見に行っているのです」ルイセは怖ず怖ずと狸ジジィの居場所を尋ねる……そういや、屋上がファーストコンタクトだったよな。んで、屋上に来た訳だが……居たよ狸ジジィが。「学院長先生!」「おお、ルイセ君。どうしたのかね?」「実は学院長先生を探しに来たんです」「ワシをか?ならば詳しい話は部屋で聞こう。ワシは先に戻っているぞ」こうして狸ジジィ……マクスウェル学院長は部屋に戻って行った。……なまじ原作を知ってるだけに、あのジジィの態度が白々しく感じるぜ……。と……ティピが眼の前にある機械に興味を示した。「何、これ?」「これはね、時空の歪みを測定するための装置だよ。エレベーターの上にあるセンサーが捕らえた歪みをここで記録しているんだ」「時空の歪み?」ティピは時空の歪みとは何か、疑問に感じたらしい。似たような説明は今までにも受けて来た筈なんだが……学院の教授さんは親切に答えてくれた。「我々の世界は、無理矢理2つの時空を重ねることで成り立っている。つまり非常に不自然な世界なのだよ。この2つの時空が離れるということは我々にとって死活問題だ。だから観測を怠るわけにはいかないのだよ」「もし、2つの時空が離れたらどうなるの?」ティピが当然の疑問を口にする。まぁ、答えは簡単なんだがな。「元の世界へ戻ることになるだろうな。だが元の世界は、太陽が異常をきたしたため、死の世界となってしまった」正確にはⅢのラスボスが暗躍してたせいなんだがな……。ちなみにソイツは、俺と名前が同じだったりする。髪の毛の色も似ているが、当方は一切関係ございません。「死の世界に帰るってこと!?」「そうなるな。その兆候が起きないか、常に監視しておるのだよ」「うひゃ〜、そんなに大切な物だったんだ!おじちゃん頑張ってね!」ティピが教授にエールを送る。だが、実際……元の世界に戻っても、太陽の異常はとっくに解決されている……なので、ほとんど無問題なんだがな。もっとも、カーマインやラルフはその限りじゃないんだが……。そんな訳で、絶対に時空分離だけはさせてはならない。んで、再び学院長室前。ようやっと許可証が手に入る。秘書さんに話し、中に入れさせてもらいました。「おお、来たな。で、ワシに用とは、何かな?」「実は、南の遺跡に入る許可をいただきたいのです」「南の遺跡?最近流行っておるのか?今日はもう1人、許可を取りに来たやつがおってな。知っているじゃろ。アリオスト君じゃ」「やった!やっぱりそこだったんだ!実はアリオストさんを探してたんだ」「ん?こ、これは……」ガシッ!「きゃっ!」マクスウェル学院長がティピを掴み取る。「……ふむ、ふむ!」「何すんのよ!放せ、バカ、エロじじい!!」学院長は興奮気味にティピをじっくりと観察する。「ほぉ〜、良くできたホムンクルスじゃ。これは、やはり……」「はい。お母さんの作です」「サンドラ殿のか。さすが良くできておる」頷きながら感心する学院長……駄目だ。やっぱり白々しく聞こえる……顔には出してないが、嫌悪感が拭いきれねぇ……。「いい加減はなせぇ〜っ!」「思い出すのぉ、彼女がまだ学生だった頃を」「テ…ィ…ピ…ちゃ…ん……キーーーック!!」ドゲシッ!!「ほげっ!!」おっ、良い角度で蹴りが顔面に入ったみたいだな。へっ、ざまぁ。「ティピ、ナイスキックだ!」俺はティピにサムズアップしてやる。するとティピも、それにサムズアップして答えてくれる。「当〜〜然っ!乙女を鷲掴みにした罰なんだから!というわけで、さっさと許可証を出しなさいよ!」「バカ!さっさとあやまれ!」ウォレスが諌めるが、謝る必要はないだろ?「そんな必要ないだろ。大体、ティピを物みたいに扱うのが、そもそも間違いだと思うが?幾ら造られたと言ったって、命は命だ。ティピは生きているんだからな」サンドラ様が創造したホムンクルスなのは分かる……分かるが、まるで物みたいに扱ったり、誰々の作だとか言う言い回しは気にいらねぇ……。「いやいや、君の言う通りじゃな。年甲斐も無く興奮してしまった様じゃ……ほれ、許可証じゃ」苦笑いを浮かべながら許可証を渡してくる。俺はそれを受け取った。「すみませんでした、院長先生!」ルイセはティピのしたことについて謝る。「よいよい、ワシの方に非があるのじゃから、気にせんように。早くアリオスト君のところへ行ってやりたまえ」俺達はその場を後にした……たく、あのジジィ白々し過ぎだ。1ミクロンもそんなこと思ってないくせによ……。「ったく、ヒドイ目にあったわ!」外に出てから、ティピは先程のことについて憤慨する。「学院長って、どんな人なんだ?」「マクスウェル学院長?悪い人じゃないんだけど、ちょっと研究熱心っていうか……」「研究熱心というより、変態っぽかったぜ……アレは」「何と言うか……集中すると周りが見えなくなるタイプだね」それぞれが意見を述べている。順番はウォレス、ルイセ、ゼノス、ラルフだ。「で、どんな研究をしているんだ?」「いろいろ手広く研究してきたみたいだけど、メインは『グローシュと通常魔力の差違について』だったかな……」「ふ〜ん、グローシュねぇ……ルイセちゃんも研究材料にされないよう、注意しなきゃね!」「えっ!?」ティピの言葉にルイセは衝撃を受ける……将来的には当たることなだけに……笑えねぇ……。「さっきのアタシみたく捕まって、あんな事やこんな事……」「……うぅ……」「おまけにそんな事までされちゃったり……うわ〜、悲惨よね〜」「…うぅぅ…………」うわ……ルイセ涙目だよ……なんつーか、嗜虐心が擽られるのは分かるが……些かやり過ぎ感が漂う。「おい、ルイセ泣きそうになってるぞ?」「大丈夫ですよルイセちゃん。そんなことされる訳無いじゃないですか」ウォレスが指摘して、カレンが慰めている……ルイセも幾分涙目が治まってきたようだ。「う…うん……」「それにしても、アンタ、本当に泣き虫ね〜」「……うっ……」ティピにバッサリと言葉で切り捨てられ、再び涙目になるルイセ。「まぁ、実際用心しておくに越したことは無いけどな。……あの手のタイプは腹に一物持ってるのがお約束だし、な」「……偉く辛辣だね?僕にはそんな人に見えなかったけど」ラルフがそんなことを言う。しかし原作をプレイした俺だからこそ、言えることだが……アレは相当の狸だ。断言しても良い。「あくまでも用心に、だよ。杞憂ならそれに越したことはない」「……うぅぅぅ……」あ、やべぇ……ルイセ本格的に泣きそう……。「……大丈夫だルイセ、仮に何かあったとしても、俺が守ってやる」カーマインがルイセの頭を撫でながら、力強く言ってやる。「お兄ちゃん……うん!」一気に明るくなったよ……流石お兄ちゃんLOVE……。「どうでも良いが、俺もグローシアンなんだが……どうなんだその辺?」「シオンさんは……仮に捕まっても自力で逃げ出しそうなイメージね。ていうか、相手返り討ちでしょ?」ティピがそんなことを言う……そんなイメージだったのか。まぁ、概ね合っているんだが。「……それと、さ。さっきはありがとね」「?さっきって?」「ホラ、あの学院長にアタシのことを怒ってくれたじゃない。なんか、本気で怒ってくれた感じだったから……その、嬉しくてさ」あぁ…アレか。「俺は思ったことを言っただけ。だからあまり気にすんなよ?そのお礼の気持ちだけ、受け取っておくさ」「う、うん!」うむ、ナイス笑顔!若干顔が赤いが。「……むぅ〜〜」カレン……何故むくれているよ?********おまけ♪「髪は金髪のセミロングで、ティピの言っていた様に赤いピアスをしていてな……見た目はクールな美人で、しかも胸がデカい。目測だが、90はあるんじゃないか?」「成る程な……それから?」「後は……」「なぁ、シオンとウォレスは何をやってるんだ?」「さっきの学院長の秘書についての詳細を教えてるんだとよ」外野(カーマインとゼノス)が五月蝿いが、気にしない様にしよう。「………(……シオンさんのバカ!私だって…胸なら……)………」………何故か、カレンからの視線がめがっさ痛いが……気にしない様にしよう。それから俺は約10分近く、ウォレスに学院長秘書の詳細を語ってあげたのだった。