「……はぁ…はぁ…はぁ…はぁ……はぁ〜〜………」様子を伺うが……何やら息を整えてる様子。とりあえず此処からはノンストップでお送りします。「誰だろ、今の人……。この学院の人じゃないよね?…あぁ〜…素敵な人だったな………」「……ミーシャ?」「思い出したら、ドキドキしてきちゃった……。ひょっとして、これが恋かも……って、やっだ〜、ハッズカシィ〜!」「ミーシャ?」「でもでもぉ!これってリンゴの花だし……ってことはやっぱり?これって、運命!きゃ〜〜〜っ☆」「……あの、ちょっとミーシャ?」「チェッ!こんなことなら、せめて名前だけでも聞いておくんだったなぁ!」「ミーシャってば!」「きゃあっ!?……あー、びっくりした〜!………あら、ルイセちゃんじゃない。どうしたの?」「それはこっちの台詞!呼び止めてるのに、走って行っちゃうんだもん!」「……あ、ごめ〜ん、気づかなかった……それより、聞いて、聞いて!さっきね、すっごく素敵な人に会ったの!」「へっ?」「ちょうど角を曲がったときにぶつかっちゃってさ〜。これって、運命の出会いよね!……ああ、もう一度会いたいなぁ……」「……あ、あのね……」以上、妄想眼鏡っ娘と真面目で優しい親友の会話――でした。とりあえず言えることは……妄想少女、恐るべし……。思ってることが全部口から出てくるとは……。某煩悩少年を彷彿とさせるな……。つーかリンゴの花とか何処から出した!?……突っ込みどころに困らん娘だわぁ……。「恋する女の子って……皆、ああなるのか……?」「そんなことは………無い…筈です……」俺の疑問にカレンが答えるが……何故か徐々に自信なさ気になってくる……まあ、カレンも原作ではゼノスの絵を肌身離さず持っていたくらいだからな……今でも持ってんのかな?「ちょっと、いつまで待たせるのよ!」ティピが怒鳴り込んで行く……どうでも良いが、図書室って静かにするもんじゃないのか?「っ!」「あ、ごめんね、すぐ戻るから!」とりあえず俺達はエレベーター前に戻ることにする。「ルイセちゃんっ!!」「きゃあっ!急に大声出さないでよ!」「んなことは、どうでもいいの!―――誰、誰、だれ、彼っ?」「もう、ちゃんと紹介してあげるから、こっちきて!」「ルイセちゃんの知り合いなんて、ラッキ〜☆」どうでも良いが、こっちまで漏れ聞こえてるぞ……図書室使ってる奴らから大顰蹙じゃね?あ、こっち来た。「紹介するね、こっちがウォレスさんとティピ、それからゼノスさんとカレンさんに、シオンさんとラルフさん。それと、うちのお兄ちゃん」「カーマインだ……宜しくな」そうミーシャに俺達を紹介して、俺達も自己紹介をするが……明らかにカーマインしか目に入ってないな。もしかしたらカーマインの自己紹介しか聞こえていないのかもしれない。「彼女は私の友達で……」ガバッ!おお?ルイセを押し退けて前に出た。「ミーシャです!お兄さまと呼ばせてもらえますか!?」「お、お兄さま……?」カーマインは困惑している。そりゃあ唐突にお兄さまじゃなぁ……。「……ルイセちゃん。彼女って、いつもこう?」「う〜ん、否定は出来ないけど……もうちょっと、まともだったような気が……」実に酷い言われようだな……これがミーシャクオリティか。「お兄さま……か。良かったじゃないかカーマイン?可愛い妹がもう一人増えて」「茶化すなよラルフ……」ピシッ!あっ、ミーシャが固まった。どうやらようやっとラルフを視界に入れたみたいだな。「え、えええぇぇぇぇ〜〜っ!?お兄さまが二人ぃ〜〜〜!?」いや、本当に今更だな。恋する乙女は盲目らしいが……どうなんだかな。てか五月蝿い。「あ、あのねミーシャ」ルイセがラルフとカーマインについて説明しようとするが……。「こ、これは……いつも頑張ってる私に、神様がご褒美をくれたに違いないわ!!……右を向いてもお兄さま……左を向いてもお兄さま……あぁ〜♪幸せ……♪」い、いや……それはどうなんだ?つーか、神様がそんなに殊勝な奴なら、俺はこの世界に転生なんかしていない……って、趣旨が違うよな。なんつーか、出会ったばかりなのにどんだけポジティブなんだよ。「……良かったなラルフ、可愛い妹が出来て」「あはは…さっきの仕返しかい?」カーマインの返しにラルフが苦笑いを浮かべる。もっとも、二人とも嫌がってるわけじゃないみたいだが。「こんな運命があったなんて……クールな雰囲気のお兄さま……優しい雰囲気のお兄さま……正に両手に花?いや〜ん、ミーシャ困っちゃ〜〜う☆」……とりあえず現実に引き戻してやるか。でなきゃ話が進まん。「ティピ〜♪ちょ〜〜っと良いかな?」「ん?どうしたのシオンさん?」この時の俺の背後には、某奈落の大佐が降臨なされたとか。「……やっちゃいNA☆」「……オッケ〜〜☆」ティピは実に良い笑顔で答えてくれた。やっぱりフラストレーションが溜まっていたのだろう。この世界のカーマインは優秀だから蹴れないだろうしな。標的はクネクネ身もだえながら、妄想を垂れ流している眼鏡っ娘。「そんな♪駄目ですお兄さま〜〜♪そんな二人一緒になんて〜〜♪あ、でもでも!これじゃあ将来重婚なんてことに」「見敵必殺っ!!ティピちゃあぁぁ〜〜〜んっ!キィィィィィィィッッック!!!!」ドゲシッ!!「ふぎゃっ!!」ビッタァーンッ!!あ、壁に顔面から突っ込んだ。ズズズズズズ………。しかも顔面を基点に、ズルズルと下がって行く……けし掛けた俺が言うことじゃないが……ぶ、無様だ……むしろ哀愁が漂うくらいに。皆も何と言えば良いのか分からず、固まっている。てか、眼鏡は大丈夫か?顔面からモロだったけど……。「ああ〜!快・感♪最初に蹴ったのがコイツを起こす時、そして次に蹴ったのが盗賊の下っ端……それ以来全く!蹴って無かったから……靴を磨いて待ってた甲斐があったわね☆ありがとうシオンさん♪」ティピは大変満足そうだ……笑顔がキラキラ輝いている。此処まで喜んでくれると良いことをした様で気持ち良いな。「どう致しまして。良かったな、ティピ」俺もティピに答える様に、満面の笑みで返す。「ぜ、全然良くないぃ〜………」ペタン。と、顔面から地に着いたミーシャが呻く様に言う。しかもケツが上を向く感じで。形にしたら↓の感じだ。_∧。何と言うか本来なら、かなりけしからん体勢だが、状況が状況だけに、笑いと哀愁しか湧いてこない……申し訳なく思う気持ちは勿論あるのだが。「だ、大丈夫、ミーシャ!?」「い、痛いよぅルイセちゃん…」ようやっと思考が起動を開始したルイセが、慌ててミーシャを助け起こす。ミーシャは鼻とオデコが真っ赤になっている……眼鏡は壊れて無いんだな……鼻に掛ける様な小さいサイズだからか?「しかし、これでやっと話せるな……計算通り」ニヤッ……と、邪悪な笑みを浮かべる俺。「も、もしや全て計算づくか?お、恐ろしい奴……」ゼノスが顔をひくつかせながら、ズサッ!と後退る。俺とティピに抗議しようとしたルイセも、それを見て涙目になってしまう。……て、そんなにアレだったか?「なぁ、そんなに怖かったか?」俺は手近に居るカレンに聞く。「は、ハイ……その、ドキドキしてしまいました……(何故かしら……あの冷たい感じのシオンさんも……良いかも……)」……そんなにか。やべぇ、少し凹む。てか、計算通りとか言う奴って……頭脳は優れていても大概は迂闊者やん。反逆の黒の皇子しかり、新世界の神を気取ったムーンさんしかり。こうして、なんとかラルフのことを説明出来た……が、なんか恐ろしく長く感じた……これがミーシャクオリティか……。「つまり……ラルフお兄さまはルイセちゃんのお兄さまじゃないけど、カーマインお兄さまのお兄さまで、カーマインお兄さまはルイセちゃんのお兄さまなんだね!」言ってることは確かに合ってるんだが……非常に分かりにくいのは何故だ……答えは簡単。それはシンプルな答え……お前はお兄さまと言い過ぎた。てか、カーマインとラルフにお兄さまと付けるのは、既にデフォらしいな。「う〜〜ん……どうなんだろう?ラルフさんはお兄ちゃんのお兄ちゃんだから……私にとってもお兄ちゃんに……なるのかなぁ??」「僕はルイセちゃんのこと、妹みたいだって思ってるよ?」素で返すラルフ……ルイセが照れてる。微笑ましいなぁ……それを見てさりげなく微笑むカーマインも流石だ。「そういえば、ルイセちゃんはお母さんのところで実習してたんじゃなかったの?」「う〜ん、ちょっと用事でね」ルイセは、心配掛けたくないんだろうな…。詳しい事情は説明しない。「用事?なあに?」「ねぇ、ねぇ。アリオストさんって、知ってる?」「アリオスト先輩?さっき研究室の入り口でぶつかったけど……」「ぶつかった?」何故か、気まずそうに眼を反らすミーシャの反応に、ウォレスが疑問を尋ねた。「あは…あはは……」返って来たのは渇いた笑いだった…。「それじゃ、アリオストさんは今、研究室に居るの?」「擦れ違いになった、ということでしょうか?」ルイセはミーシャに聞き、カレンは疑問を口にした。何しろ今さっきアリオストの研究室に寄ったばかりだしな。「ううん。なんだか急いでフェザリアンの遺跡へ向かったけど……」「南の?」「そう。南の遺跡。『あれがあれば、完成するんだ』とか、興奮してたけど……」アレ……飛行機械に取り付ける奴か。「急げば遺跡の中で会えそうだね」「ルイセちゃんたちも行くの?」「うん。またね、ミーシャ」「うん、またね!本当は一緒に行きたいけど、今、急いでるから。気をつけてねぇ」さて……いよいよあのジジィと御対面ってわけか……ミーシャを通じて俺達のことは筒抜けだろうし、お目通り願うとしますか。……と、その前に。俺はミーシャの対面にしゃがみ込み、書類を集めだす。「ふぇ?」「手伝うよ。急がないと怒られるんだろ?」原作をプレイしてて思ったことなんだが……書類拾うのを、手伝ってやれば良かったのにな〜……と。「いやぁ、そんな悪いですよ〜」「さっきティピをけし掛けちまったしな……そのお詫びってことで」俺はわざとらしく、ウィンクなんぞをしてみた。おどけて見せれば、少しは落ち着いてくれるかと思ってそうしたんだが……。「は、はい!じゃあ、お願いしますっ!」何故か更にテンションが上がってしまった……何故?「……あたしはお兄さま一筋……あたしはお兄さま一筋……アレ?でもお兄さまは二人いるから一筋じゃない?う〜ん……でも、お兄さま達に負けず劣らず……格好良いかも〜♪でで、でも運命の人はお兄さまで、これは白薔薇だもん!だから――」なんか、色々悩んでるみたいだな。ラルフとカーマイン……二人同時に現れたわけだしな。悩め少女よ……それも青春だ。……ん?ふと見ると、カレンがしゃがみ込んで、同じく書類整理を手伝い始めた。「わ・た・し・も!手伝います。良いですよね♪」「ん?サンキュ♪助かる」カレンがやる気を出してくれてる。皆も手伝ってくれりゃ良かったのに……何故かこっちに近づいて来ない。なんだか怯えてるみたいだが……何故に?