※※※※※※※ラルフ・ハウエル、バーンシュタインの豪商ハウエル家の義理の一人息子。そしてゲヴェルの先兵の一人。今でこそ友人だが、最初は警戒していた相手の一人。ゲヴェルの巣が近いこともあり、思念波だったか?それの影響も強力だろうと推測出来た。だがしかし、俺のグローシアンパワーはマジでパネェらしく、なんと王都全体をそのパゥワァで包めるらしい。らしいというのはそれを意識して行ってる訳では無いからだ。無意識でそれなら意識して使えばどんだけなのか…少なくとも覚醒状態ルイセやヒゲより半端ねぇだろうな……多分。そんな俺だから早々に消されるかと考えたが、ラルフは俺より一つ下で、どうやら俺の波動に思念波を遮られながら成長した結果、一人で行動出来る位になった時には、既にゲヴェルが介入出来ない様になっていたみたいだ。確信は無いんだが……な。「どうしたんだい?僕の顔に何かついてる?」「いやいや。少し考え事してただけだって♪」ついじっと眺めてしまったが……。友人になって分かったんだが、コイツ凄い良い奴なんだよなぁ…品行方正で優しく、俺が何かポカするとフォローしてくれたり……何より、インペリアルナイトの息子である俺と普通に接してくれる数少ない奴だ。複製戦士だからなのか身体能力もそれなりにある。英才教育の賜物か頭も良い。通り縋りのお姉様に微笑んだらお姉様が赤くなる…こういうのをニコポって言うんだよな?流石将来の美形…今は可愛らしい少年だが。俺には真似出来ん。まぁ容姿は俺も負けていないがな……。母上譲りの銀髪と父上譲りの蒼い瞳と甘いマスク。…これ何て名前のロストカラーズ?声だけで絶対遵守させることが出来たりしねぇーだろうな……?いや、俺は微笑んだりしないけどな……アレはカリスマ持ちにだけ許される技だと思うのよ。狙って出来ることじゃない。狙ってやろうとした奴は、大概ニコポ出来ないNotカリスマである。二次創作の転生無いし来訪系非オリ主は大概このオチ。なので、それは俺にも当て嵌まるだろう。幻の美形を気取っていたら痛い目に遭う。そもそも、自分がオリ主だっ!!とか主張するほど、俺の神経は図太く無いワケで。それはともかく、コイツは死なせたくないなぁ……原作介入とか考えられないが、父がインペリアルナイトでオマケに俺はグローシアンだ。ほぼ確実に俺は物語に巻き込まれる……俺は平穏に暮らしたいんだがねぇ。生憎と俺には力がある…らしいし、知識がある。正義の味方なんざ柄じゃねぇが、ダチを助ける位はしてやりたいよなぁ…こう考えるのは傲慢かね?※※※※※※※彼は不思議な人だ。僕と彼が出会ったのは――二年くらい前だったかな?父さんと街を散歩していた時に彼を見た。輝く様な銀色の髪、澄んだ空の様な蒼い眼、何処か皆と違う纏った雰囲気……神秘的、とでも言うのかな?そんな空気を感じた。街のみんなは彼を見るとぺこりと頭を下げて挨拶している。彼は苦笑いしながらも丁寧に挨拶を返してた。父さんに「あの子は誰?」と聞いたら――。「あの方はウォルフマイヤー卿のご子息だよ」――と、言った。ウォルフマイヤー卿と言ったら、史上最年少でインペリアルナイトになったということで勇名を馳せている人だ。この国に住む人なら誰でも……子供だって知ってる最強の騎士インペリアルナイト。男なら一度は憧れるヒーロー。勿論、僕も憧れている訳で…父さんに武器の手ほどきを受けたりしているから……というのもあるからかもしれない。父さんが言うには『商人たるもの自分が扱う商品には精通してしかるべきだ』……ということらしいけど。「ん?」こちらに気付いたのか、彼がこっちにやってくる。「ハウエルさん、こんにちは」「これはシオン様、お元気そうで何より」「ハハハ……まぁそれだけが取り柄みたいな物ですから……そちらは?」彼が僕に視線を向けた。「ハイ、息子のラルフです。ほらラルフ」父さんに促され僕は挨拶をする。「ラルフ・ハウエルです!よろしくお願いしますシオンさま!」ペコリと頭を下げると彼は一瞬眼を見開くと、近くに寄り僕をマジマジと見詰める。……何だろう?彼が傍に来たら胸の奥が暖かくなった……それになんだか、少し身体が重く感じる……けど、それは嫌な感じじゃあない。「あの…?」「ラルフ君…だったよね?君、歳は幾つ?」「んと…んと…二歳です」「そっか♪俺は三歳なんだ♪良かったら友達にならないか?」その言葉に、僕は何故かすんなりと頷いてしまった。父さんは滅相もない!とか、恐れ多いとか言っていたけど。僕も勉強や訓練が多かったから、友達はすくなかったというのもあるんだけれど……。結局父さんも彼に強引に押し切られたのか、最後は折れてくれたから良かったよ。そんなことを考えてると、彼が僕を見てるのに気付いた。「どうしたんだい?僕の顔に何か着いてる?」そう尋ねると彼は……。「いやいや。少し考え事してただけだって♪」そう言って人好きのする笑顔を向けてくれる。こういう笑い方は狡いと思う。心の中に染み渡るというか、何と言うか。彼は本当に仲が良い人にだけこの笑顔を向ける。最初は僕にも、その笑顔は向けてくれなかった。それを知ってるだけに僕は嬉しい。それは本当に僕を友達だと思ってくれてるということだから……。※※※※※※※「それじゃあ何をしようか?」「先ずは柔軟だろ?」そう言って準備運動をする。これから二人で剣の訓練をしようというのだ。使うのは木剣。さっきも訓練しただろ、だと?それはそれ、これはこれ。少し休憩したんだから良いんだよ。才能皆無の俺にとっては修練は欠かしてはいかんワケだし。何より対人戦訓練は一人じゃ出来ん。ラルフの奴は才能がありやがるからか、単純な技術なら俺より上だ……四歳児のくせしやがって。まあ身体能力では宇宙の帝王と猟銃持ったオッサン位違うから一撃たりとも貰わないがな。…極端に言い過ぎか?そんなこと無いよな?……うん、長髪の野菜人と猟銃持ったオッサンにしよう。「じゃあ始めるか?」「今日こそ一本取らせて貰うよ?」「やってみろ!!」こちらから攻める……無論だが、身体能力はラルフと同じ位に抑えてある。でなきゃ力押しで瞬殺出来ちまう。あくまで技術の向上が目的だ。「はぁっ!」真正面から切り付ける。「っ」それをラルフは横に跳びかわす。しかし俺はそれを読み、剣先を横に追尾させた。それをラルフは木剣で受け流す。再び俺が切り付ける。ラルフが受け流す。十合、二十合とそれを繰り返す。しかし…「!そこだっ!」単調なリズムになった所を、肩透かしを食らう形になった。向こうがリズムを変えて来たのだ。リズムを乱され不格好に体制を崩した俺を、隙有り!と追撃してくるラルフ。「ヤバッ!?」俺は咄嗟に力を込めてラルフの剣を迎撃した。その剣閃は加速して力を増し、ラルフの木剣を見事に弾いてしまう。「つぅ〜〜!」「あっぶね〜…て、大丈夫かラルフ!?」ラルフは利き手を押さえてその場に蹲り、俺は冷や汗をかきながらラルフの様子を伺った。「うん、大丈夫。あーあ、惜しかったなぁ……」苦笑いしながらも、快活に答えるラルフを見て……俺は安堵のため息を洩らした。「たく、また腕を上げやがったな?冷や冷やしたっつーの」「でも、今日も一本取れなかったよ……悔しいなぁ」「ふふふ……一年とは言え、俺の方が年上なんだ。負ける訳にはいかんぜ!」実際は遥かに年上だけどな……だからこそ余計に負けられないつーの。精神年齢が30超えた男が、四歳児に負けたら立つ瀬が無いでしょうがよ。「よし!訓練はおしまい!!これからはスーパー遊びタイムだ!」「……よくわからないけど、分かったよ!」その後、日が暮れる迄修練をし、そして遊んだ。だって俺らお子ちゃまだもの。遊ぶのも大切よ?俺も童心に返って遊び、時刻は夕方近くになった。互いに別れを告げそれぞれの家路へ……。ちなみに今回した遊びはインペリアル・ナイトごっこ。俺が悪役を演じて、ラルフがナイト役。ラルフが必死にナイト役を志願した。まぁ、訓練の延長みたいな遊びだが……しかし、ラルフ……あんなに必死になって…大人びていてもやはり子供よのう……。将来、この話をネタにからかってやろうっと♪――アイツは、もうゲヴェルに操られない…俺が近場に居る限り、俺のグローシュ波動が弱らない限り。だが、それだけじゃ駄目だ……アイツを――俺のダチを何とか助けてやりたい。けど――その為には……。「パワーストーン…かぁ」正確に言えばパワーストーンとその制御装置か……。前途多難だなオイ……。※※※※※※※二人が子供らしくない感じですが、英才教育受けてるからということで、どうか一つ(--;)