「うわ、来ないでください!」エリオットを切り付けようとしていた盗賊の顔面に、軽く蹴りを叩き込んでやる。「へぶっ!?」またスーパー歌ry「大丈夫か?とりあえず、アイツらはすぐに追っ払ってやるから――安心しなっ」俺はエリオットにそう告げてやる。「は、はい。僕より、父さんと母さんを……」自分のことより両親の心配か……良い子だねぇ……なら、オッサンも少し頑張ってやっかな!「俺に…いや、俺達に任せろよ。アイツらをけちょんけちょんにして、君ら親子を助けてやるからな?」左手の親指でサムズアップしてやり、ニッ!と、力強い笑みを向けてやる。……この顔なら、さぞかし微笑って奴が似合うのだろうが、元来、俺のスマイルはどちらかと言えば、某さすらいの修理屋ザ・ヒート寄りだ。……もっとも、あそこまで暑苦しくはないけどな?会社の連中からは親しみ易いって結構評判良かったし、シオンになってから…両親やラルフ達にも評判の笑顔なんだからな。「は、はい!」ほら、エリオット君も笑顔で答えてくれた。やはり笑顔はLOVE&PIECEの象徴だな。エリオット君の緊張が解れたようだ。「そんなわけで、あなた方も後方に下がってて下さい。奴らは俺達が相手しておくんで」「あ、あなた達はいったい……」エリオット母が俺達のことを尋ねてくる。「ただの旅人です。さぁ、早く」「申し訳ない!」エリオット父が頭を下げて後方に下がって行く。「オズワルド、お前はビリー達と一緒にあの人達の守りに着いてくれ。……周りに十数人、伏兵がいる」原作でオズワルドが伏兵置いてたので、このグレゴリーも同じ手を使うと思ったら……案の定、気配を多数感じるんだもの。どうやら村に入って来る前には周囲を包囲させていたらしい。…見た目や言葉遣いと違って、頭を使うらしいな。まぁ、一つの組織を運営するんだから多少は頭が回らなきゃ、お話にならんのだろうが。「伏兵…ですか。グレゴリーの元頭もワンパターンだねぇ…」そう言うなオズワルド。つーか、原作ではお前が好んで使った手だぜ?「ジュリアンも頼めるか?コイツらだけじゃどうにも不安だからさ」「わかりま……では無く、分かった。任せてくれ」今、敬語を話しそうになったな?……たく、未だに俺に敬意を表してくれてるらしいな……嬉しいが、なんだか複雑だぜ。さって、戦況はっと……ウォレスが一人倒した……ルイセが上手く牽制している様だ。カーマインとラルフは正に破竹の勢いだ。二人のコンビネーションは抜群で、実力的にもラルフがリードして引っ張っている感じだ。もっとも、それに着いていけるカーマインも凄いんだが。「貴様ら…俺様の邪魔ばかりしやがって……許さんぞっ!!」「俺はお前さんの邪魔をしたのは初めてなんだが……いや、オズワルド達にフォローさせる様にさせたのは俺だから……間接的には二回目か?」ふむ……どうやら沸点が低い奴らしい。カルシウムが足りてないんじゃないか?牛乳に相談しなさい牛乳に。「まぁ、あまりよろしくないことばかりするお前らが悪い」そこに偶然通り掛かる俺達もまた然別。通り掛かかった以上放っておけないだろ?普通。「馬鹿野郎!これは仕事だっ!」「仕事!?誰かに頼まれたんですか?」怒鳴り散らすグレゴリーにエリオットが尋ねる。原作だとオズワルドが対峙していたが……やはり今回も……。「言えねぇなぁ!これ以上邪魔するっていうなら、こっちにも考えがある!!」やっぱりな……この手の類が言うことはいつも同じ……正に『お約束』。いや、アイツ風に言えば『テンプレ通り』……という表現だな。正確には『テンプレすぐる』だったか。あ、今のオズワルド達は除外ね?今のアイツらは、なんだか全然違うから。「おい、野郎ども!ここの村人も皆殺しにしろ!!」「へっへっへっ!了解だぁ!!」下卑た笑いを浮かべる手下ども。やはりお約束の展開だが……。「なんと卑劣な!」ジュリアンが憤りを露にする。口封じに誰かを消すというのは物語ではお約束だ。俺は全能の神でも、正義の味方でもない……だが――気にいらねぇ。「ゲスが…悪いが骨の二、三本は覚悟してもらうぞ…!」俺は怒りを滲ませながらグレゴリーを見据える。「フン……この俺様に何の策もないとでも?出てこい野郎どもぉ!!」「へっへっへっ!」「きゃあ!来ないでぇ!?」林の中からグレゴリーの手下が現れる。しかも村人の女性の前に。「ああ、アイツの手下が!」「村の人が危ないよ!」ティピとルイセが伏兵に気付き、声を上げる。「大丈夫、彼がこれくらい読めていない訳はない」ラルフがティピ達を安心させるように言う。まぁ、その通りなんだがな。ドガッ!!「ぐぼぁ!?」今にも襲い掛かろうとしていた手下Aに一つの手斧が飛来し、手下Aの顔面に直撃……血をばらまきながら倒れた。「悪ぃな。元は同じ釜の飯を食った仲だったが……むざむざやらせる訳にはいかねぇんでな!」オズワルドだ。それだけじゃないぜ?「悪党に情けは無用だ……ハァッ!!」ズバッ!!「グハァッ!そ、そんな……」ジュリアンの斬撃により倒される手下B。更にはビリー達には二人一組になって一人を相手させた。オズワルドとジュリアンが倒し損ねた奴らをビリー達が倒す。これにより、実力的に差が無くても有利に運べる筈だ。戦いは数だよ!!と、某中将もおっしゃっていた。……大体は質のほうでどうにかしちゃうのが俺達だったりするけどな……まぁ、イイトコ取りってことで。「さて……じゃあ約束通り、骨の二、三本…覚悟してもらうぞ」「舐めるな小僧が!!」グレゴリーが裂帛の気合いと共に俺に切り掛かってくるが、俺はその場をほぼ動くことなく避ける。今の俺はラルフ並の身体能力に抑えている。つまりラルフもこれくらいは出来るということだな。「うぉぉぉぉぉぉぉぁぁぁぁっ!!!!」その手に持つ大斧で、切る!切る!!切る!!!しかし俺はそれを避け続ける。スウェーやステップ、跳躍などを駆使して。「おのれちょこまかと!!」当たりさえすれば……とか思ってそうなので、その考えを正してやるとしますか。俺は愛剣リーヴェイグでそれを受け止める。「ぐっくっくっ……俺様と力比べか。面白ぇ!!」その台詞は死亡フラグだぜ?殺す気は無いけど。「はぁぁ…!?ぬぅ!?ヌォォォォ!!!」奴は押し切ろうとするが、俺はびくともしない。俺はかなり細身に見えるが、その実、体重は結構重い。それは身体中が持久力と瞬発力を兼ね備えた筋肉……某ケンカ百段の酒の鬼いわく、全身ピンク色の筋肉という奴に変化しているからだ。某哲学する柔術家と同じ仕様と言う訳だな。筋肉というのは脂肪より重い……故に体重自体は結構あるわけだ。「どうした?力には大層自信があったみたいだが?」それでも、奴の方が重い筈ではあるが……何故動かないか。実は丁度良い位置に石が埋まっており、それを踵で支えにしております。単純な力では俺の方が圧倒しているので、後は梃子でも動かないだろうな。「さて、それじゃあこっちも反撃に移らせてもらうぜ」「ヌ、ヌオッ!?」俺はゆっくり大斧を押し退け、弾く。「ボディがお留守だぜ?」「グボハァ!?」体勢を崩した所に無数の拳打を加え、最後に蹴り飛ばす。木に叩きつけられたグレゴリーは悶絶する。感触からして、約束通り肋の二、三本はへし折ってやれた様だ――。「さて……御縄を頂戴といこうか」血を吐き、震えながら立ち上がるグレゴリーにそう言い放つ俺。「ゴホッ!ガハッ……お、おのれ……一度ならず、二度までも……覚えていろ!!……後は任せたぞ!」「へ、へい!」「おいおい……逃がすと思うか?」というか、残った人数はせいぜい二人…それを残して逃げるか。…悪いが此処で逃がす訳にはいかない。コイツを潰せば、カレンが襲われる可能性は減る。まぁ、別の奴……もしくは別の組織に依頼される可能性もあるからな……絶対とは言えないが。「へっ…!悪いが逃げさせてもらう。丁度迎えが来たみたいだからな……」「何……!?」「モンスター!?」そこに飛来する一つの影…それは大きな飛竜……ワイバーンとそれに乗る男だった。「やれ…」男が命じると、ワイバーンは火のブレスを吐く。「チッ」俺は思わず飛びのいてしまう。ブレスは避けたが、その隙にグレゴリーが連れ去られてしまう。クッ……まさかモンスター使いが仲間に居るとは……原作には無かった展開だ……どうする?魔法で落とすか?「ウラァァァ!!」そこへ残った内の一人が、背後から襲い掛かってくる。「邪魔だ」俺は裏拳一発でそいつを殴り飛ばした。「チッ……逃げられたか……」既に豆粒くらいになっている奴らを見て舌打ちをする。――追えば追いつけるだろうが……。「つ、強ぇぇ……」ドサッ……。最後の一人をカーマインが倒した所だった。「やったね☆」「……怖かった……」ティピが勝利を喜ぶが、ルイセは震えて座り込んでしまう。当然だな…実戦経験も少ないだろうし、何よりまだ14歳……だったよな確か。「…よく頑張ったなルイセ」カーマインがルイセの頭を撫でてやる。「お兄ちゃん……」ルイセが赤くなりながらも、カーマインに潤んだ瞳を見せる。これが噂のナデポという奴か!しかし、カーマインと言いラルフと言い……何でこうもポすることが出来るのかね〜?これはベルガーさんもポ族だったのかも知れんな。「大丈夫か、君?」「怪我はねぇか坊主?」近くで護衛していたジュリアンとオズワルドが、それぞれにエリオットへ声を掛けた。「はい、おかげで助かりました。ありがとうございます」エリオットが丁寧に御礼を言う。と、俺達の所にエリオットの両親がやって来た。「あの、お願いがあります」「何か?」俺はエリオット父へ応対する。なんでも、エリオットをローランディアの王都に連れていって欲しいとのこと。一緒に連れていくだけで構わないらしい。「王都だったら、アタシ達も帰るところだけど?」ティピがそう言う。まぁ、構わないだろうな……現に俺達やジュリアンもその類なんだから。「構わないが、あなた達はどうするんですか?」カーマインがそう尋ねると、二人は急ぎの用があるとのこと。ヴェンツェルに報告でもしにいくのかね?「母さん…」エリオットが悲しげな表情で母を見詰める。「いいかい?ここに手紙をしたためておいたから、ちゃんとお渡しするんだよ」そう言ってエリオットに何やら書簡……手紙を握らせる。その表情はやはり悲しげだが、慈愛に満ちていた。「今までお前と暮らせて、幸せだったぞ。元気でな」エリオット父も優しい微笑みを浮かべながら、そう言う。「父さんも、お元気で」「愛してるわ、エリオット」親子は別れを惜しみながらも、両親はこれ以上は辛くなるとばかりに、その場を走り去った。母親は途中で一度エリオットへ振り返ったが。こんなに良い人達なのに……後に敵対しなければならないなんて、な。「………」エリオットは、それをただじっと見送っていた。「みんなも、無事か?」「はい、無事です」ウォレスが村人の安否を気遣う。そういや、ウォレスは此処に住んでいたんだったよな。