俺達は外に出る。お〜お〜、団体さんの御着きだぁ〜。まぁ、この面子を相手にするには明らかに役者不足な団体さんだけどな。「さて……んじゃ先ずは牽制だな」俺は高速詠唱にて即行で術式を構築…端から聞いてたら何を言ってるのか聞き取れ無いだろう。現にカーマインパーティーの中で、1番魔法に精通してる筈のルイセは眼を丸くしていた……というか、眼が点?「あ…あの……その呪文は…マジックアロー……ですか?」「ん?マジックアロー……の、アレンジ。バリエーションって言っても良いかな?」へー…詳しく聞き取れなかった筈だけど……詠唱呪文がマジックアロー関連だというのは分かったんだな……なんつーか末恐ろしい才能だな。今更説明するまでも無いが、俺はラーニングというスキルがあり、技や魔法を受けるとそれを覚えることが出来る……そして、『アレンジ』することも可能なのだ。この高速詠唱も通常詠唱のアレンジなんだが…俺は詠唱時間短縮のスキルを覚えてるので、組合せれば呪文にもよるが、ほぼ一瞬で魔法を行使することが出来る。――話を戻すが、魔法を例に挙げれば……術式の再構築に魔力構成の変更、属性の追加等々。これから放つのはマジックアローのアレンジ……初級の魔法だからか――結構、術式や構成に穴があったから色々弄くらせてもらったが。……あくまでオリジナルでは無いのが俺らしいな…。あ、当然だが普通の魔法も使えるぞ?「とりあえずいっとけ…【マジックガトリング】ッ!」その一声を受けて頭上に魔法陣を展開…マジックアローの陣とほぼ同じ陣だ。ネーミングが安直なのはご愛嬌。こういうのは分かりやすいくらいが丁度良い。魔法陣が光を帯び、そこから無数の魔力の矢が広範囲に放たれる。その数は十や二十では効かないだろう。「ぬぐっ!?」「おわっ!?」「ひぃ!?」もちろん、俺に当てるつもりは無く、魔力の矢群は奴らの後方をことごとく吹き飛ばす。仮に当たっても致命傷にはならない程度の魔力しか篭めていないけどな。必然的に奴らは前に逃げた……狙い通りにな。横に逃げられない様に横にも打ち込んでおいたからな。つまり前方以外の周囲だな。前には必然的に俺達がいるわけで…。「団体さんいらっしゃ〜〜い、ってか?」「じゃあ…丁重にお迎えしなきゃね」俺のやり方に慣れているラルフはちゃんと返してくれたが……他は少しア然としている。「す、凄い……ナニアレ……」ティピが冷や汗を流しながら呟く……だから手加減したっての。本気なら更に数も多く、威力も上げられるし。俺とラルフが駆け出したのを見て、カーマイン達も続いた。動揺しながら走ってくる盗賊風の男を軽く殴り飛ばす。……スーパー歌舞伎みたいに吹っ飛んで行ったな……手加減した筈なんだがなぁ……とりあえず、ラルフくらいに身体能力を下げてはいるが……あっ、ラルフの蹴りでスーパー歌舞伎ry……。俺達は剣を抜き放つ。俺の武器は大剣リーヴェイグ。原作では現在HPの1/8を攻撃力にボーナスとして追加する魔剣だ。実際は生命力が高ければ高い程切れ味と頑強さを増すという特性らしい。究極の肉体……という神懸かった特性を持つ俺にはお誂え向き過ぎる剣だ。正直、原作の最強大剣であるエクスカリバー(某運命の腹ぺこ騎士王の持つ約束された勝利の剣の様な、真名開放なんて破壊力抜群なことは出来ないが…一定時間毎にHPの5%を回復するスキル…リジェネレートを得、アイテムとして使えば、十字架状に聖なる光で敵を屠る魔法…ホーリーライトを詠唱出来る様になる優秀な大剣)を攻撃力的には圧倒的に凌駕しているだろう。ラルフの剣はレーヴァテイン。世界を焼き尽くす魔剣……と言われているが、この剣にはそこまでの力は無い。北欧神話のスルトが持つ剣の様に……いや、杖か?……まあとにかく、その刀身には神話の様に炎を纏っているが……これは刀身に炎属性があるのと、複数の炎の玉で相手を囲み、それをぶつけ合わせ、ある程度の範囲を爆発させる魔法……ファイアーボールを詠唱出来る様になるくらいの特性しか無く……あ、多少魔法の威力を上げる――杖の様な特性もあったか。まあ、武器としても勿論優秀だが……当然、世界を焼き尽くしたりは出来ない。そう言えば原作ではラルフが炎の刀身の剣を使っていたが……これも修正力って奴か?それから乱戦になるが……ハッキリ言って勝負にならなかった。何分も掛からなかったんじゃあなかろうか?俺は敵の武器を切り捨て、剣の腹で敵を打ち飛ばしたり……武術なんかで戦ったりした。リーダー格の相手もしっかりのして捕らえました。なんつーか……全力なら七万の軍勢どころか、2000万の軍勢すら殲滅出来そうな肉体のチートさに、全俺が咽び泣いた。ラルフも似たような戦い方だ。剣で武器を弾いたり切り捨てたり……敵には肉弾戦で応対していた。いや〜、強くなったねぇ……不殺を通すには圧倒的実力差が必要だからな。その実力は推して知るべし……だな。ニールは実力的には盗賊風の敵とどっこいどっこいだが、装備が良いのでなんとか倒していた。カーマインは、三人程に囲まれたが大立ち回り……然程苦労せずに片付けた……てか、この時点にしては強すぎないか?あれか?M2仕様か?…って程大袈裟なものじゃないけどな……ジュリアンやゼノスと五分五分くらいか……充分凄いって。絶対レベル二桁だって。アレか?俺が存在するための歪みか?――んなわけねぇか、面識無かったカーマインに影響を与えるワケ無いしな。ティピはカーマインの近くで応援している。そこだーっ!やっちゃえーっ!!とか……応援……なのか?ウォレスは特殊両手剣を巧みに使い、接近戦では敵を切り裂き、遠距離においては剣をブーメランの様に投げ付けて敵を切り裂いた。更には格闘戦もこなし、敵を殴り飛ばしていた。動きはカーマインよりも鈍いが……原作でも身体だか勘が鈍ってるとか言っていたな。だがそこは、その豊富な戦闘経験で補っている様だ。ルイセは魔法による補助だ。回復魔法を掛けたり、補助魔法を掛けたり……攻撃魔法も使っていたが……俺のやり方を見たからか、牽制に使っていた。んで現在……周りは屍々累々……俺とラルフが相手をしていた奴らは一応は無事で、身ぐるみ剥いで簀巻きにして放置していたが……小数の…カーマイン達が相手していた奴らは……。……こんなのが日常茶飯事な世界……とまでは言わないが、戦いが身近にある世界だ……割り切らなければならないし、俺のやり方を押し付けるつもりもない……俺もいずれは誰かを殺めるのだろうか……。「…………」ん?ルイセが少し青ざめてる、か?当然だな……人の生き死にを……しかも自分が手を降した訳ではないにしろ、命を摘み取ったのだから……カーマインも少し顔を歪めているところを見ると、まだ慣れてはいないみたいだな……。「む……これは……」ん?また援軍か?声のした方を見るとそこには……。「ジュリアン?どうしてここに?」「いや…加勢は多い方が良いだろうと思って追って来たのだが……どうやら遅かった様だな」「もうちょっと早く来てくれたら良かったのにぃ」応援に駆け付けたジュリアが……いや、ジュリアンだったな。ティピと話している。「迷いは断ち切れたのか?」ウォレスがジュリアンに問い掛ける……そういやそんなイベントもあったな。「あの時、聞き忘れたことがある。あなたを戦いに駆り立てる信念とは何なのか」「……うむ。それを聞いて納得するなら、話してやる。十数年前、俺はある傭兵団にいた…だがある事故で傭兵団は壊滅してしまった。その時行方不明になった団長を探している」ベルガーさんだな?確かラシェルに行った時にそれらしい人は見掛けたな……あの妙に鍛えられた身体をした人がそうか?「大事な人なのか?」「恩人だ。元々団長に拾われた命、彼のために使おうと決めている」「でももう十何年も探してるんでしょ?正直見つかると思えないなぁ……」「ティピ!」正直な意見を述べるティピをルイセが諌める。ティピ君……君はもう少し空気が読める様になろう。だからジュリアンに羽虫とか言われるんだぞ?「分からないぜ?案外何処かで記憶喪失とかになってるかもしれないだろ?」「そんなご都合主義、あるわけないでしょ!!」と、突っ込まれてしまったが……あるんだよなぁ、そんなご都合主義。「その事故とはいったい……」外野は無視して話しを進めるか……てか、未だに俺達に気付かないとか……よっぽどウォレスの信念という奴が気になっていたんだな。「俺達はバーンシュタイン王国にある水晶鉱山を警備していたんだが…ある時、化け物が暴れるという事件があった……警備についていた部下は全滅。化け物を追った団長はそのまま帰らなかった」ゲヴェルのことか……実際に見たことは無いから何とも言えないが…確か、原住生物のゲーヴを基にして作られてるんだったよな。「……そうか」「ここまでみつからんと生きているのか……だが自分なりのケリが付くまで、俺は旅を続けるつもりだ。自分でそう決めたからな」成程な……それがウォレスの『信念』ってワケか。……今度、【占い】でもしてやろうかな?「だが元の生活に戻る前に、鈍った体を戻さないとな」「……私も……私もしばらく一緒にいて良いか?皆の生き様を見ながら、私なりの信念について考えてみたい」「それは俺よりもコイツらに聞くべきだな」そう言ってウォレスはカーマインとルイセに視線を送る。「俺は構わない……気の済むまで一緒にいてくれ」「そうだね。一緒に行こうよ」カーマインとルイセは快諾した。何と言うか良い奴らだなぁ…。「シオンさん達はどう?」お、ティピが俺達にも聞いて来た。「俺も構わない……つーか、俺達も着いていく立場だしな。偉そうなことは言えないさ」「勿論、僕も良いよ。旅は道連れってね?多いほうが楽しいしね」「俺もオッケーッスよ」とりあえず満場一致ということで……。「シオン……シオンだと!?」ん?やっと気付いたか??「久しぶりだなジュリアン……というか、気付くの遅いぞ?」実は俺とジュリアンは知り合いです。今明かされる衝撃の事実!!というわけでもないな。互いの両親が元ナイツ同士なんだから…交流もあったワケです。勿論、ジュリアンの秘密も知ってますが何か?「す、済まない……話しを聞くことに集中していて……三年前にお前が旅に出て以来だな……元気にしていたか?」「まぁ、ボチボチな。そういうジュリアンこそどうしたんだ?…って、さっきの話しから何と無く想像がつくが…」「ねぇねぇ?シオンさんとジュリアンは知り合いなの?」俺達の話しにティピが入ってくる。「ん?あぁ、親同士が職場とかが一緒で懇意にしててな。その関係でな」「そうだったんだ」ルイセも話しを聞いていて納得したのか頷く。「っと、本来なら直ぐにローザリアに向かうべきなんだろうが、つもる話しもあるし、少し中で休んでいかないか?」「休むって?」「この山小屋さ。何も無いところだが、疲れくらいは癒やせるだろ?つーか、昨日はここに泊まったんだし」まぁ……やりたいこともあったし。「そうだな……少し休んで行こう」カーマインも承諾してくれたし、皆も不満はなさそうだ。その後、皆は山小屋に向かった……俺はとりあえず残ったが。「さて……始めるか」俺は戦って死んだ奴らを一人一人埋葬してやることにした。流石に吹きっさらしにしておくのはあんまりだろう……最悪、血の匂いに釣られてモンスターがやってこないとも限らないし――これも、所詮はただの自己満足なんだろうけどな……。