バーンシュタイン北東の森林「邪魔だ!!」『ゲギャアッ!?』俺達はゲヴェルの居城に向けて進軍している。無論、敵の物量はかなりの物だが、俺らの勢いはそれ以上に凄まじい……。なにしろ、俺とルイセというグローシアンがいるので、ただでさえ強力なグローシュパワーが相乗し、仮面騎士やユングどもを半端なく弱体化させるに至り、更には俺ら全員が並以上の実力者でもある。―――はっきり言おう。「失せろっ!!」「ガハアァァッ!!?」無双状態である――。もうアレだ。ポカッ!敵は死んだ。スゥイ〜ツ♪……的なLevelの無双ぶりなワケで。「うぉりゃああぁぁぁぁ!!!」「……馬鹿な……あぁ……………」正に粉砕!玉砕!!大喝采!!!という感じだ。とは言え、それだけで済ますのはアレなんで、端的に説明するならば――――。俺→最前線にて切り込み隊長として無双しつつ、マジックガトリング等で援護射撃。ちなみに、冒頭の「邪魔だ!!」というのは俺の言葉で、群がってくるユング達をリーヴェイグで文字通り『薙ぎ払った』時の台詞。カーマイン→俺と同じく前線担当。群がってくるユングの掃討をしている。ラルフ→遊撃担当。時には前線に、時にはバックアップに回ったりと大忙し。ウォレス→前線担当。投擲剣や気合い拳で活路を切り開きつつ、近寄る奴はぶん殴ってぶっ飛ばしている。ゼノス→前線担当。闘気を纏いつつ、仮面騎士やユングを相手に無双。「うぉりゃああぁぁぁぁ!!!」という台詞は、ゼノスが仮面騎士を唐竹割りにぶった切った際の物。ポール→前線担当。その手に持つ双刃剣で、敵陣深くに切り込み、ユングどもをちぎっては投げ、ちぎっては投げ……時折、魔法をぶっ放している。ジュリア→遊撃担当。周囲の敵をその剣で薙ぎ払いつつ、後方を狙う敵を斬り捨てている。「失せろっ!!」というのは、後方を狙って来た仮面騎士を斬り捨てた際の台詞。アリオスト→遊撃担当。時には爆薬、時には魔法、時には剣で周囲の敵を倒している。ルイセ→後方援護担当。その類い稀なる魔力を生かして、魔法無双。マジックアロー系を中心に、範囲魔法等も使って敵を一掃。カレン→後方援護担当。魔法による攻撃もそうだが、アタックやプロテクト等の補助魔法による援護も忘れずに行っている。リビエラ→後方援護担当。魔法による攻撃に専念。更にバインドで足止めしたりもしている。ミーシャ→後方援護担当。魔法攻撃――主にマジックフェアリーで援護射撃。近寄って来た敵にはハンマーでガッツン!!イリス→後方援護担当。魔法による援護射撃、更には補助魔法による援護――近寄って来た敵にはレイピアで攻撃。――と、言ったところか。あ、ティピは皆に発破を掛けていた。そこだいっけぇー!!とか、あったれぇーぃ!!とか―――。耳元で叫ばれるカーマインは堪ったものではあるまい。仮面騎士やユング以外にも、元からこの森に棲息しているだろうモンスター……翼竜種のワイバーンや、植物タイプのプラントというモンスターも居た。無論、返り討ちだがね。ワイバーンはメンチビームで撃退……プラントにはメンチビームが効かないので殲滅したが。「にしても――やはり敵の本拠地があるだけあって、敵が多いな……」「これでも少ない方だと思うがな……恐らく王都に攻め入る際に兵力をかなり注ぎ込んだんだろうな……まぁ、仮面騎士は俺らが……ユングの群れは父上達が倒したんだけど」「じゃあ、アタシたちタイミング的にはラッキーだったんだね!……とてもそうは見えないんだけど……」周囲の敵を片付け、軽く愚痴るカーマインに、俺はこれでもまだマシだと説明する。ミーシャはそれを聞いて明るく振る舞う……が、直ぐさまそれが苦笑いに変わる。これで少ないのか……と言う哀愁を込めての苦笑いだ。「とは言え、この辺の奴らもあらかた片付いた。それに――どうやら着いたらしい」「……アレがそうなのかよ?」「他にそれらしい物も無いから……決まりだろうね」ポールの一言に、前方を見やるゼノス。それを肯定する様に言葉を纏めるアリオスト。俺達は森を抜けて沼地にやってきた。前方には巨大な岩山……そこには縦に裂けたかの様な巨大な亀裂が……。もはや崖の底と表現するのが正しいのかも知れないな……。「この岩場の裂け目から、ゲヴェルの波動を感じる……」「間違いないというワケか……」ゲヴェルの波動を感知したルイセの反応を見て、確信を深めたのはジュリア。ん?俺?勿論、感知してますよ?グローシアンとしてゲヴェルの波動を感知し、尚且つゲヴェルの気をも感知しているワケで……間違えようが無いってことさ。「さて……それじゃあ行きますか?」「そうだね……ケリをつけに行こう」俺の呟きに答えたのがラルフだ。とりあえずこれで全てにケリが着くワケじゃねぇが……な。俺達は覚悟を決めて岩の亀裂の中へ入っていく。***********フライシェベルグ1Fしばらく歩くと、遺跡の様な建造物が見つかる。あれがゲヴェルの居城――フライシェベルグへの入口か……。と、その場所を眺める暇も無く、中から複数の気配を感知。「奴らは!?」「やっぱりここなのね!」「外の森にも連中は徘徊していたので、関連性を疑うべくもありませんが……」ウォレスも迎撃に出て来た奴らに気付いたらしい。ティピはティピで、迎撃に出て来た仮面騎士やユングを見て、改めて確信を持った様だ。イリスはそんなティピに冷静にツッコミを入れていたが。「………ダメ。ゲヴェルの思念波が強すぎて、完全に遮断できない……」「俺はそうでもないが……思念波を完全に遮断するためには、ある程度近寄らなきゃ駄目だな……まぁ、この距離なら余裕だが」ルイセは若干の弱音を吐く。フライシェベルグはゲヴェルの細胞より生み出された迷宮……つまりゲヴェルそのもの……ゲヴェルの体内と言っても良い。つまり、ゲヴェルの波動が充満している様な状況であり、幾ら覚醒したルイセと言えどもそんな状況ではゲヴェルの思念波を完全に断ち切ることは不可能なのだろう。俺にしても、遠く迄、広範囲に作用していたグローシュ波動に枷が着いた様な感覚を感じていたりする。まぁ、それでも若干でしかないから、普段と大差は無いんだが……そうだな……某竜の紋章の騎士が主役の漫画……に出てくる破邪呪文を喰らっても平然としていた大魔王……と言えば分かりやすいかも知れん。「どちらにせよ簡単だ、立ち塞がる奴はブチ殺せばいい」「荒っぽい言い分だが……確かにな!!」ゼノスの極論を肯定するウォレス……まぁ、ここまで来たらやることは変わらないんだがな。俺達は、迎撃に出て来た仮面騎士とユング達に向かって行った……ちゃんとグローシュ波動で弱体化させてのフルボッコ。……そもそも、人数が俺らの方が多い上に地力も俺らの方が上だったりするワケで……。……ここまでやるとイジメだな。迎撃部隊を蹴散らした俺達は先に進んで行く――周囲の造りが、建造物的な物から生物的な物に変わる……。だが、幾らも進まない内に行き止まりになってしまった。「なんだ?行き止まりか?」「う〜ん……何か仕掛けがあるのかな?」ウォレスが周りを見渡す……そしてティピはティピで周囲を探っている……と。……ジロッ。「うわぁっ!ナニ、コレェ!?こっち見てるぅ!?」壁にある、オブジェと思われていた目ん玉が、近付いてきたティピの動きを追う様に動いた。それに気付いたティピがビックリして飛びずさったのである。「ふむ……他に怪しい所も……いや、怪しい所だらけだが……一番怪しいのはどう考えてもアレだと思うんだが……どうよ?」「そうだね……アレが何かの鍵になってる可能性は高いと思う。問題はどうやってそれを作動させるか……か」「あんなの、普通の遺跡じゃ、まずお目にかかれないしね」俺としては答えは分かっているのだが、一応皆にも意見を聞いてみる。アリオストとラルフの言う様に、パッと見はどうすれば良いか分からない。何しろ、壁に目玉が一つ……ギョロギョロと動いているのだから。これが一番怪しいとは理解出来ても、それに対してどう対処すれば良いのか……中々判然とはしないだろうさ。俺にしても、知ってる原作知識は『ゲームとして』の物に過ぎないワケだ。この壁は、一種のガーディアンであり、こいつを倒せば扉は開かれる……が、それはゲームの話だ。ただ漠然に倒すと言われても、どの程度のダメージを与えれば良いのか……またはどの程度のダメージまで耐えられるのか――。あくまでこれは『ゲーム』では無く『現実』。ならば、やり過ぎて先に進めなくなることも――有り得ないことじゃない。――まぁ、いざとなればゲヴェルの待ち構える場所まで、気合い拳――オーラバスターか、ソウルフォースのアレンジ魔法で一気にブチ抜けば良いだけの話だが。「悩んでても仕方ないか――皆、下がってな」俺は皆を後ろに下げると、目玉に向かってマジックアローを放つ。それは目玉の中心を的確に捉え、奴の目玉が鮮血に染まった……と。グチャア……。なんとも粘着質な音と共に、すぐ側にある地面に穴が開く。よく見ると、穴の周囲に血管みたいな物が躍動しているのが分かる。中の穴はそんなに汁っ気は無いみたいだが……やはり肉壁が躍動しているためか……中々グロいな。「どうやら、鍵は開いたらしいな……」「って、まさかこんなところに入るのっ!?」「……アタシ、入りたくないなぁ……」ポールがあのガーディアンが鍵だったことを確信して、言葉を発するが……リビエラはまさかの事態に悲鳴じみた声を上げ、ミーシャは苦笑いしながら穴を見つめていた……。無論、女性陣は嫌悪感をあらわにしていたが、俺らだって好き好んで入りたくは無い。例えるなら、ゴ○ラやガ○ラのケツの穴に飛び込む様な心境だと思ってくれたら分かるかも知れん……いや、分からんか。とにかく、俺を含めて皆は些か躊躇してしまう。それに此処はゲヴェルの細胞で出来ている……。もしかしたら通り道と見せ掛けて、何かこう……グロい感じに消化される可能性も無きにしもあらずだろ?……いや、多分仮面騎士やユングの通り道にもなっている筈だから、それは無いか。「迷っていても仕方ないか………些か気が引けるがやむを得まい。先に行ってる、ぜ!!」「シ、シオンさん!?」カレンの悲鳴じみた声をそのままに、俺は穴の中に飛び込んだ……おぉっ!?なんかスッゲェ浮遊感!?多分下ってるとは思うんだが……。ほら、アレだ……真・女○転生Ⅲのマニアクス(マニクロでも可)のアマラ深界を移動する際の経路……あのミニゲームチックなことが出来る穴ね?アレと似た様な感じだな……。俺はてっきり、こう……肉壁で押し出す感じか……良くて滑り台みたいな感じなのかと……。まぁ、下るだけじゃなく、上る時にも地面の穴に飛び込むんだから……これなら一応納得だな。**********フライシェベルグB1F「よっと……」穴から文字通り飛び出した俺は、上手く着地して周囲を伺う。ふむ……あちこちに気配を感じるな。まぁ、近くには居ないから大丈夫か……っと、来たな。「おっと……」「最初はラルフか……」俺と同じ様に、危なげなく着地したラルフを見て、俺は言葉を零す。「いやぁ、凄いね……まるで飛んでる様な感覚だったよ……けど、どういう仕組みなんだろう?」「そこは、ほら……ツッコんだら負けってことで」ラルフの問いに、俺はうやむやに答える。考えるだけなら考えることは出来るんだが……あくまで仮定を立てることしか出来ないからな。等と話してる内に、皆がポンポンと穴から飛び出してくる……。上手く着地出来た奴と出来ない奴が居た……。男連中は皆上手く着地していたが……。女性陣の一部が着地が決まらず、こけそうになった。「きゃ!?」「っと……大丈夫かルイセ?」「お兄ちゃん……うん、ありがとう♪」まぁ……。「ほいっ、怪我は無いか?」「シオンさん……ありがとうございます♪」「なに、気にするなよカレン………って、リビエラにジュリア……なんでそんな目で見るんだよ?」「何でもないわよ(なーんで上手く着地しちゃったかな……私)」「気にするな(羨ましい……マイ・マスターに抱き留めて貰えるなんて……)」誰が誰とは言わないが……。「うわわっ!?」「おっとっと……大丈夫かい、ミーシャ君」「ありがとう、アリオスト先輩♪」誰が誰かは……分かるよな。まぁ、それはともかく……。俺達は進軍を開始した。しかし……分かってはいたが、周囲が……リアルで見るとグロいんだよなぁ……。壁にはカタカタと動く口……いや、あそこまで行くと歯と歯茎か?なんかがあり、床自体は鉄というか、金属質の物体で出来ていた。が、それ以外はヌチャグロそのもの。金属床以外の床や、壁なんて……思い切り躍動しており、正に生物の内臓……モツだよモツ!!しかも金属床以外の床には水状の液体が張られているし……。なんかこう……タラの白子(その形状から、鱈菊と呼ばれる)みたいな形状をしたピンク色の何かとか……。正直、色々キッツイわぁ……。まぁ、そう思ってるのは俺だけじゃないんだろうが。そんな環境の中、俺達は先に進んで行く……。道中、ユングの群れが立ちはだかるが……正直、今の俺らの敵では無く、奴らをボロ雑巾にしながら進んで行く。すると、またさっきの目玉のガーディアンが居たので破壊。ちなみに、破壊したのはカーマイン。案の定、地面に穴が開く。皆も二回目なので慣れてはいないが、ポンポンと飛び込んで行く。**********フライシェベルグB2F位置的に考えて、地下二階にたどり着いた俺達は、再び歩みを進める。すると、右、左、中央という三つの分かれ道が現れた。「道が分かれてますね……どうしましょう?」「これだけの人数が居るんだ……本来ならそれぞれに分かれるのが効率的ではあるが……ここはゲヴェルの根城だからな……罠が無いとも限らん……」皆に意見を求めるイリス……それに答える様に発言するのはウォレスだ。確かに――そう考えるのが妥当だろうな。戦力は13人だからな……分担したほうが効率が良い。しかし、分かれ道という物がある場合、正解の道は一つのみで、後は偽物の道だというのがセオリーであるのは確かだな。原作知識では、基本どの道を通ってもゲヴェルには辿り着けるんだがね。とは言え、鍵のこともあるからな……。「とりあえず、今は戦力を纏めておこう。ウォレスの言う様に、ここは敵の本拠地なんだし、肝心のゲヴェルまで、あとどのくらい掛かるか分からない……戦力の消耗を抑えつつ、慎重に進もう」「了解、そうと決まれば行くとしますかね」カーマインはウォレスの提案に頷き、慎重に進むことを提案。俺達はそれに頷き、一つ一つ調べていくことに。右と左を調べたら、道が途中で途切れており、先に進めなかった。だが……。「これ、なんだろう……?」「なぁに、ルイセちゃん?……鍵穴みたいね?ねぇ、みんなぁ!!」ルイセとティピが鍵穴を見付けたらしく、俺達は何らかの鍵があれば先に進めるのだと判断。……いや、俺は知っていたんだけどさ?「しかし、鍵など……来る途中にあったか?」「可能性としては、残る中央の道に何かがあるかも知れないことだが……」「とにかく、行ってみよう」ジュリアの疑問に答えたのはポール。そのポールにしても、最悪の場合は何も無いことを考慮しているのだろう。あくまで可能性の話だ……と、いうことを言っていた。ラルフが俺達を促す形で、中央の部屋へ……。そこは広い空間だったのだが……。「敵よ!みんな、がんばって!」ティピの言う様に、敵が待ち構えていた。右にはスケルトンの上位種であるスケルトンナイト。左には魔法を操る中級悪魔……レッサーデーモン。そして、中央の1番奥にはガーディアンの一種である一つ目の化け物が……ただ、今迄の壁の目玉とは違い、何やら触手みたいな器官を持っている。こいつの名前は確か……ブラッディ・アイだったか?「全員、散開して各個撃破!行くぞ!!」「「「「「了解!!」」」」」カーマインの指示に従い、俺達はそれぞれの敵に立ち向かっていく。俺、ラルフは中央を――。カーマイン、ゼノス、ジュリアは左――。ウォレス、アリオスト、ポールは右に向かった――。残った面子は魔法による援護。「さて、行くか?」「いつでも」俺とラルフはそう言うと、一気に駆け出した。中央はブラッディ・アイの他にも、レッサーデーモンとスケルトンナイトの混成部隊が陣取っているのだから――。「だあああぁぁぁぁ!!」「はあああぁぁぁぁ!!」俺達は一陣の嵐となって敵を蹂躙していく……と。ジュワァ……。「危ねっ!?」スケルトンナイトとレッサーデーモンを殲滅した所に、ブラッディ・アイがその触手から、溶解液を吐き出したのだ。咄嗟に飛んで避けた俺は、そのままの勢いでブラッディ・アイを唐竹から真っ二つにしてやる。すると、奴は仮面騎士と同じくドロドロに溶けてしまった……ん?俺はブラッディ・アイの死骸である液体の中から、光り輝く何かを見つけ、それを手に取った。「それは……鍵かな?」「みたいだな……と、皆もケリが着いたみたいだな」敵を蹴散らした皆が、こちらにやってくる。全員が集まったのを見計らって、俺は鍵を見せた。「これって……鍵?」と、ティピが首を傾げた次の瞬間……壁の口が語り出す……あ、何人かびっくりしてる。『…鍵…鍵…数…少ない…』『…部屋…部屋…数…多い…』『…鍵…鍵…使う…減る…』『…部屋…部屋…仕掛け…楽…』これだけ喋ると、壁の口は沈黙した……。「ん〜?何の事かしら?」「さっき、鍵穴がある部屋を見付けただろう?多分、この鍵はそこで使うんだろう……で、こっからは推測なんだが……似たような……或いはえげつない仕掛けがあって、そこで鍵を使うと先に進む際に、仕掛けの発動を阻止出来、楽に進めるのだろうさ」「成る程な……」俺の推測に、カーマインはウンウンと頷いている。俺は更に続ける。「ただし、『鍵の数が少なく、部屋の数が多い』と言っていることから、鍵穴はこの鍵の数……四つよりも多いってことだ」「つまり、むやみやたらに鍵を使うのは控えた方が良いと?」「使える場所じゃ使った方が良いが、慎重に考えようってことさ」俺の推測に問い掛けたのはアリオスト……なので、更なる答えを提示する。「……しかし、ゲヴェルは何を考えてるんだろうな?」「どうしたんだよ?」「この鍵や、この迷宮にしてもそうだが……明らかに俺たちの侵入を拒んでいる反面、俺たちを先に進ませようとしている様にも見える」ウォレスは、ふと疑問を浮かべた。ゼノスはその様子が気になり、ウォレスに尋ねた。すると、ウォレスが疑問を口にした。まぁ、その疑問は俺も考えた。幾ら、仮面騎士が出入りするとは言え……この長過ぎる迷宮は不都合だし、侵入を防ぐ為ならワザワザ鍵を入手させはしないだろう。「アレじゃない?あの仮面の騎士が鍵を無くした時に、合い鍵としてあの目玉の奴の中に鍵をしまっておいた……とか?」「もしかしたら、そうかも知れないね」とか、ミーシャやルイセが、のほほんと言うが……アレか?玄関の植木鉢とかの下に、鍵を隠しておく様な感覚か?………それは無い――とは、言えないんだよなぁ……。原作なら『ゲームだからなぁ……』の一言で片付くんだが。だから、案外ミーシャの言う内容が正しいのかも知れないし。――単純に俺らを疲弊させて、最終的に自ら止めを刺す算段なのかも知れないし。「いずれにせよ、此処で考えていても埒があかない。先に進もう……万が一、罠があるなら――その罠を打ち破って先に進めば良い……だろう?」「ポールの言う通りだな……今はとにかく先に進もう」ポールとカーマインの意見に従い、俺達は先に進む。分かれ道まで戻り、右へ……。右の部屋の鍵穴は一つ……左の部屋の鍵穴は二つ。鍵を温存するためにも、右の部屋で鍵を使うことにしたのだ。早速、床にある鍵穴に鍵を差し込み……回す。ゴゴゴゴゴゴッ……と、地響きの様な音が鳴り……音が治まり、先に進んで行くと……無かった筈の通路が現れ、通路が繋がっていた。「成る程……この金属の床がスライドして、通路を繋げたのね」「此処から先にも、こういう仕掛けがある……ということですか」リビエラとイリスが納得した様に頷いている。更に慎重に歩みを進める。道中、ユング、スケルトンナイト、レッサーデーモンが纏まって襲い掛かってくる場面が何回もあったが、ことごとく撃退して行った。時には鍵を使って、無駄な戦いを避ける様にしてはいたが。そして奥まで進み、再びあの目玉を潰し……通路を開く。流石に三度目なので、最初の様に躊躇せず、皆は穴に飛び込んだ。**********フライシェベルグB3F さて、とうとう地下三階相当にまで辿り着いた俺達だが……此処から先に待っていたのは、容赦の無い連戦だった。レッサーデーモンや、スケルトンナイト……ユングがぞろぞろとお出迎え……揚句に仮面騎士まで出向いて来る始末。まぁ、全部返り討ちなんだが。ほぼ、一本道なので迷いはしなかったが……とにかく長くて、敵が多い!!百や二百は裕に越えているだろう。もしかしたら、四桁近いかも知れん。「大体、半分位は進んで来たか……?」「どうだかな……そう願いたいものだが……皆、大丈夫か?」カーマインが確認する様に呟き、それに答えたウォレスが、皆の調子を伺う。「うん、大丈夫だよ」「まだまだ余裕ですよ」「この程度でへこたれるかよ!」「気を引き締めて行きましょう」「まだまだこれからっ!てね」「はい、大丈夫です」「問題ありません」「よぉし!アタシ、ファイト!!」「問題ないさ……この程度はな」「そうだな……この位なら問題ないな」「と、まぁ……全員やる気十分……つーワケだな?」ルイセ、アリオスト、ゼノス、ラルフ、リビエラ、カレン、イリス、ミーシャ、ポール、ジュリア、俺……の順番で意気込みを語る。皆、まだまだ余力がありそうだな。「よぉし!!気合い入れて行きましょ!!」ティピに克を入れられ、再び俺達は歩みを進めた……。やはり、敵が群れを成して襲い掛かってくるが、今更その程度で怯む俺達ではなく、一気に突き進んで行く……。すると……。「また通せんぼだよ!?」ティピの言う通り、鉄柵の様な物で道が塞がれている。「でも、床の印とか、怪しいよね?こっちに3つ。向こうに1つ……」ルイセが試しに……と、床の仕掛けを一つ踏む。すると、床の模様が赤く光った。「この手のタイプの仕掛けは、印を全て踏まないと駄目なタイプだな……恐らく、俺達のうち三人が印を踏むと道が出来る……あっちの印と、こちらの印は連動しているだろうと推測して――」「こちらの印を押している間に、残りのメンバーが向こうへ行き、向こうの印を押している間に、こちらに残ったメンバーが向こうに渡る……ってワケだね?」「さっすが相棒!話が早くて助かるぜ」俺の説明を聞いて、ラルフが補足を付ける。流石は我が相棒!伊達に一緒に遺跡に潜ってるワケじゃねぇ……ってな!「とは言え、このパーティーのリーダーはカーマインだ。判断は任せるぜ?」「分かった……」俺はカーマインに判断を委ねる。結果……こちらに残って印を踏むのは、俺、ルイセ、カレンとなった。ルイセとカレンが残ったのは、1番接近戦が苦手だからという理由。俺は、二人の護衛としてこちらに残った。万が一、背後を奇襲された場合の措置だそうな。まぁ、背後に気配は感じないから、大丈夫だとは思うがね。俺達三人がそれぞれ床の印を踏むと、前方の鉄柵がスライドして開く。「やったね☆後は向こうの印を踏むだけだよ!」「しかし、案の定……待ち伏せか」「皆、頼むぜ?印を踏んでいなければならない以上、俺達に出来るのは魔法での援護くらいなんだからな」ティピは鉄柵が開いたことを喜んでいるが、向こうには無数のユングが待ち受けていた。俺は皆に発破を掛ける意味を込めて、全てを任せた。皆は頷いたり、「任せろっ!」と言ってくれたり、気合い十分だな。うっし!任せたぜ!!「どけっ!!」「邪魔だっ!」『グギャアッ!?』こちらに向かってくるユングを、ラルフとカーマインが先頭に立ち、切り捨てる。「下郎どもめっ!!」「ぬぉりゃああぁぁ!」「息の根止めてやるぜ!!」「遅いっ!」『グゲェ!!?』それに続いて、ポール、ウォレス、ゼノス、ジュリアが切り込んで行く。その様は、一陣の嵐の如く。更にその後にアリオスト、ミーシャ、イリス、リビエラが続く形を取る。アリオストは爆薬で敵を爆破しながら進んでいる。「これだな……!」カーマインが向こう側のスイッチを踏んだ。と、同時にこちらの印の下からガチャリと音がした……どうやら向こう側のスイッチに切り替わったらしい。「二人とも、もう動けるぞ!」「うん!」「わかりました!」俺達も急いで向こう側に渡り、ユングの殲滅戦に移行する。俺達が全員移動したのを見計らって、カーマインも戦線に復帰し、全員でユングを殲滅した……。「もう敵はいないよね?」「ああ……今までに輪を掛けて数が多かったが……」ティピが周囲を確認し、それに頷いたのがカーマイン。「まぁ、そろそろ終わりが近いってことだ」「おい、それじゃあ……」「うん、この先からゲヴェルの強い波動を感じる……」俺の言葉に反応したゼノス……そして、ゼノスの疑問に答えたルイセ。そう、ルイセの言う様に……この先にゲヴェルが居る。「いよいよだな……」「あぁ……」「奴を倒しても、無事帰れる保証はねぇぜ?」気を引き締めるウォレスに、頷くカーマイン。そして、ウォレスは俺達に問う……生きて戻れる保証は無い……それでも良いのか……と。「みんながいるから、怖くはありません」カレンがみんながいるから……と、凛と答え……。「俺は他人任せってのだけは、好かねぇんだ。どんな結果になっても、自分で決めたなら後悔はねぇよ」ゼノスは後悔はしないと力強く答え……。「全ての元凶を討つ……これが平和への一歩になると信じて……」アリオストは決意を固め……。「絶対に勝って、みんなで帰るんだ!!だから――頑張ろう!!」希望を捨てずに、ミーシャが宣言し……。「何気ない日常……それを謳歌する人々のためにも……」強く輝く瞳の光……覚悟を決めたイリスが……。「ゲヴェルと決着を付ける……奴の呪縛を打ち払う……この手で!!」己が足で前へ進むため……過去を断ち切るため、覚悟を決めるポール……。「バーンシュタインのみならず、大陸の平和までが掛かっているこの戦い……負けられないさ」静かに……静かに闘志を燃やすジュリア……。「此処まで来たら一蓮托生……最後まで付き合うわよ」リビエラが不敵な笑みを浮かべ……。「後悔はしない……これが僕の選んだ道だから。必ずゲヴェルを倒す……そして、皆が笑顔でいられる様に……」ラルフは自分の意思を確認する様に、ゆっくり頷き……。「グローシアンの責任として、ゲヴェルは絶対倒さなきゃ!」ルイセは過去のグローシアンの責任は、現在のグローシアンの自分が果たすと誓い……。「俺はグローシアン云々よりも、皆を傷付けて来たゲヴェルを許せねぇ……大陸の平和云々よりも、仲間や家族、ダチを苦しめた奴を許せねぇ……そういう皆が幸せに笑っていられる為に戦う……っていう個人的な理由だが……だからこそ、悔いなんか無いぜ!最後まで、俺は俺の信念って奴を貫くだけさ」俺は俺の無理を……筋を通すことを告げた……。皆が皆、一様に負い目なんか無い……この戦いに終止符を討つ。そこに躊躇いなどは無かった……。「よぉし!いくわよ、みんな!!」ティピの声が後押しとなり、俺達はゲヴェルの待ち構える場所へと歩を進めたのだった……。***********「……とうとうここまで来たか……」そこは、酷く開けた場所……城で言うなら、玉座というところか。そこで、ゲヴェルは待ち構えていた……。「お前の悪事もここまでだぜ」ウォレスのその言葉を皮切りに、俺達は臨戦体勢を取る。「……この地下の城は我が肉体から造られている。つまり、お前たちはこの中から逃げられはしないのだ」「成る程……道理で随分グロいと思ったぜ」ゲヴェルの告げた言葉に、ゼノスが答えた。やはりゼノスもグロいと思ってたらしい。「逃げられないのは互いに同じです。あなたはわたしたちがいるだけで苦しいはずでしょう?」「しかも、皆既日食のグローシアンが二人……お前さんにとっては、苦しいを通り越して吐き気がするんじゃないか?」厳かに事実を口にするルイセと、不敵に笑ってやる俺……そんな俺達を見て、ゲヴェルは苦々しげな声で吐き捨てた。「忌々しいグローシアンどもだな……だが、いずれ分かるだろう。自分たちの非力さがな!!」ゲヴェルは自信満々に告げるが……その程度で俺達が怯むと思うか?「悲しい存在ですね……私たちがその呪縛を解き放ってあげる」「もっとも、優しくってわけには……いかないけどね!」「此処で決着を着ける!!」「貴様を野放しにしてはおけん!」「どっちにしろ、死ぬのはお前の方だ!」「絶対負けない!!」「必ず討ち果たします」「人々の未来のためにも」「お前を倒す……僕の全てを賭けて」カレン、リビエラ、ポール、ジュリア、ゼノス、ミーシャ、イリス、アリオスト、ラルフ……それぞれにタンカを切る。ゲヴェルに表情があれば、苦々しい顔をしたことだろう。「いくぞ!みんな!!」俺達が敵に向かって駆けるのと、奴がユングを大量に生み出すのは……ほぼ同時だった。奴はピンク色をした、円筒状の幕の様な物からユングを生み出している。此処は原作通りだが、その数がまるで違う……ハッキリ言って10や20以上……そこから順次ユングを生み出している。「チッ、欝陶しい!!」俺は群がるユングを薙ぎ払う。そして、マジックガトリング………それだけでかなりの数を屠ることが出来たが……。「無駄だ!無駄、無駄ァ!!!」「復活したぁっ!?」「ここが我が体内であることを忘れるなよ!」ゲヴェルがどこぞのオラオラ漫画のラスボスみたいな台詞を吐き、順次ユングを生み出していく……こっちはこっちで、皆が奮闘しているが……。「このままじゃ、キリがねぇな……」「手っ取り早く、本体を叩いた方がいいかもな!」ウォレスの言う様に、今のペースでユングを生み出されてたらキリが無い。ゼノスの言う通り、本体を狙った方が早いか……ならば。「ラルフ!お前が行け!雑魚は俺が引き受けてやる!!」俺はラルフに群がるユングに向かい、比較的手加減したオーラバスターを叩き込む。それだけでも、連中を消し炭にするには十分!!そして……そこに道が出来る!!俺自ら相手しても良いが……やはり、ケジメを着けるならあの三人以外には無い。カーマインとポールは、まだ時間が掛かりそうだしな。「分かった!!」ラルフは駆けていく……そして辿り着いた。「ゲヴェルーーッ!!」「ヌゥ……!!?」ラルフのレーヴァテインがゲヴェルに襲い掛かる……ゲヴェルは両腕をクロスすることで何とかその一撃を防いだ様だ……と!「テメェらの相手は俺達だってんだよっ!!」俺は再びユング達に切り掛かって行く……。さて、比較的手加減少なめで行くからな……覚悟しやがれよっ!!**********僕はゲヴェルと対峙している。皆はユングと戦っている……。実力ではこちらが圧倒的に上だけど、数だけは向こうが上……でも、ゲヴェルを倒せば……!!「我を倒すことに何の迷いもないようだな」「何を言っている!」「ここに2人……いや、3人か。我と命を共有する者たちがいる……。誰だか分かるか?」ゲヴェルの言葉に、僕はハッとする……。それは……。「考えていなかったのか?我が私兵は、すべからく我が能力の波動を受けて生きている……我を倒すということは、命の供給源を絶つことだ!」「う、ウソよ、そんなの!脅しに決まってるわ!!」ゲヴェルが告げた言葉は、少なからず皆にショックを与えた様だ……見るからに動きが鈍っている……シオンとカーマイン……それにポール君は全く動きが変わらないけれど……。僕らにゲヴェルとの繋がりがあるのは理解していた……けれど、皆はまさか命に関しても一蓮托生とは思わなかったのだろう……最初から『識っていた』シオンや、感づいていたであろうカーマインと彼は、あらかじめ覚悟を決めていたのかも……。「そうかな?そいつは我に操られたことがなかったか?我が声や、他の私兵の声を聞いたことがなかったか?それが、我と精神的な繋がりがあるという証拠だと思わんか?」「それが……お兄ちゃんたちの夢になって……」ティピちゃんの否定を更に否定したゲヴェルの言葉……。ゲヴェルがカーマインを指し示した時、カーマインの表情が歪んだことから考えて、カーマインは操られたことがあるんだろう……。ルイセちゃんの言う通り、夢という形になって僕達はゲヴェルと繋がっていたのだろう……。「それだけではない。我を倒した後、この迷宮が無事で済むかは、我にも分からん!貴様たちが生きて出られる保証はないのだ!!それでも我を倒せるかっ!?」僕の覚悟は決まっている……だが、あの二人は……。「躊躇うな……ラルフ」「っ!?カーマイン……」「俺の覚悟も決まっている……お前と同じくな」ユングの群れを抜けて、カーマインが僕の横に並ぶ……。「一度拾った命だ……友のため……民のため……仲間のため……そして、こんな私を息子と呼んでくれる母のため……私もこの命は惜しまん!!」同じくポール君もやってきて、僕の横に並ぶ……。「ふん……そこの出来損ない2人はともかく、貴様にまで牙を向かれるとはな………リシャール!!」「なっ!?」ゲヴェルが彼の……ポール君の正体をばらしてしまう。それを知らなかった皆は驚愕の表情を表す。……ちなみに、ジュリアさんが1番驚いてたな……。けれど……ポール君は不敵に笑って言った……。「リシャールは死んださ……今ここに居るのは、死にぞこなった罪人……ただの道化。だが、道化になろうとも、貴様だけは討つ……例えこの命、ここで尽き果てようとも!!」彼の覚悟も伝わった……なら、僕の答えも決まっている……。「僕はさっき言った筈だ。ゲヴェル……お前を倒すと……それが僕の、僕達の答えだっ!!!」僕は剣をゲヴェルに突き付けて吠える!!「……コイツらが覚悟を決めてるんなら、俺達にだって迷いはねぇよ」「まっ、そういうことだ!!」「お兄ちゃん……」ウォレスさんとゼノスさんは、僕達を後押ししてくれる……ルイセちゃんは、カーマインが心配みたいだけど……。「そうよ!アタシ達は一心同体だからね!死ぬも生きるも一緒なんだから!!」「俺としては、皆で生き残る方に賭けるけどな?方法だって無いわけじゃないし……なっ!!」ティピちゃんが高らかに告げ、それに皆が頷く。シオンはシオンで、僕らが助かる方法がある……と言ってから、ニヤリと笑いながら、ユングを一掃している……凄いな……その動きが。まるで竜巻に巻き込まれたかの様に、あの周囲のユングがちぎれ飛んで行く……。辛うじて見える程度だけど……今の僕ではあそこまでの動きは出来ない……多分、他の皆には見えないんじゃなかろうか……。「ええい、虫酸が走るわ!!ならば望み通り殺してやる!!」「やってみろ!!行くよ、二人とも!!」「「ああっ!!」」僕達三人は、一斉にゲヴェルに襲い掛かる。「せえぇぇい!!」ガキイィィィィンッ!!!金属音が響き渡る……ポール君の剣閃を、ゲヴェルは右手で受け止め……。「貴様ごときが……造物主である我に敵うとでも……「よそ見をするなよ」ヌグッ……!?」ガキイィィィィン!!!再び金属音……今度は左手でカーマインの攻撃を防いでいる……。あの腕……保養所の時より頑強になっている!?―――だけど!!「ええいっ!!欝陶しいわっ!!」「ぐっ……!」「チィッ……!」ポール君とカーマインが弾き飛ばされる……今だ!!僕は全身に気を纏う……そして、僕に出せる限りの全力で――ゲヴェルに肉薄する。「な、何ぃ!?」「これが僕の……全力だあぁぁぁぁぁっ!!!」ズシャアアァァァァァァ!!!「ぬごぉぉぁあぁぁぁぁっ!!?」ゲヴェルは僕の剣閃を防ごうと、再び腕をクロスさせたが……今度は止められず、両腕を両断した後、肩から腰に掛けて大きな切り傷を与えた。鮮血がほとばしる……間違いなく致命傷だ。僕は勝利を確信した。カーマインとポール君の助力もあるし、仮に一対一でも勝てる……という確信を、剣を合わせたことで改めて理解した。だが……奴は……。「まだだぁっ!!」突如、奴から強烈な波動がほとばしり、両断した腕……そして周囲に居たユングを吸い寄せ始めた……吸収している……のかっ!?「ぬぅおおおぉぉぉぉあぁぁぁぁぁぁっ!!!!」奴は雄叫びと共にまばゆい光に包まれ、中から現れたのは……。「う、ウソ……」「なんと巨大な……」ミーシャちゃんやジュリアさんが、愕然としている……。無理もないな……目の前に居たのは、ゲヴェルだけど……大きさが違う。さっきまでも大きかったケド……その大きさはせいぜい5m前後……だが今はその倍以上……両腕や傷も再生し、その腕は、人間などたやすく握り潰せるくらいに巨大だ……いつぞや見た、水晶鉱山の人型と同じサイズに………だが、変化したのは見た目だけではない……強くなっているんだ。恐らく、一対一で戦っても勝てる……と、断言出来ない程に。「忌々しいグローシアンめ!あの時を思い出すわっ!!」「あの時?」「我を水晶に封じたあの時!あの時も5人のグローシアンが、自らの命を水晶にして我を封じた!!周囲の水晶からは、我を苦しめるグローシュの波動!!あの身動き出来ぬ水晶の中で、永遠とも思われる時を1人過ごした………もう二度とあの中には戻らぬっ!!!」「!カーマイン、避けろ!!」「なっ、がああぁぁぁぁ!?」ドゴオォォォォォン……。奴の剛腕が、カーマインに迫る……あの大きさなのに、速さが変わらない……!避けるのが困難だと悟ったカーマインは、自身の武器を盾に防いだが、敢なく武器を砕かれ、そのまま壁に叩き付けられた。「おのれっ!!」「くわあぁぁぁぁっ!!!」「ぐっ、ぬあぁぁぁ!!?」ポール君が切り掛かるが、ゲヴェルは口から波動のブレスを吐いて迎撃……ポール君を吹き飛ばす。……二人とも、何とか立ち上がったが……フラフラだ……カーマインに至っては武器まで破壊された……。「ゲヴェルーーーッ!!」「ぬうぅぅんっ!!!」ゲヴェルの拳と、僕の気を纏ったレーヴァテインがぶつかり合う………くっ、何て力だ……僕の身体と剣は気で強化してあるのに……互角……いや、パワーでは負けている!!パワーで勝てないなら……受け流す!!僕は真正面から受けるのでは無く、支点をずらすことによってゲヴェルの攻撃を受け流して行く……。「破壊の力よ!!ソウルフォース!!」「ちゃんと制御出来ますように……マジックフェアリー!!」「覚悟してください!ホーリーライト!!」「魔力よ!マジックガトリング!!」「打ち砕け!サンダー!!」「行きます。ファイアーボール」そうこうしている間にも、ルイセちゃんの光の槍が、ミーシャちゃんの魔法の妖精が、カレンさんの聖なる十字架が、アリオストさんの魔法の矢群が、リビエラさんの雷の咆哮が、イリスさんの炎の球体が――ゲヴェルに襲い掛かる。「ぐがあぁぁ……おのれぇ!!!」!?ゲヴェルの口にエネルギーが集約して……マズイッ!?「皆!!離れろ!!」僕らは咄嗟に離れたが……ルイセちゃんが!?「ルイセッ!!?」カーマインがルイセちゃんを庇った……!?駄目だ……間に合わない!!?「グガアアアァァァァァ!!」咆哮と共に放たれたのは、先程のブレスなど比較にならない程のエネルギーの奔流……ウォレスさんのオーラバスターすら飲み込む程の、巨大なエネルギー波だった……。**********ゲヴェルに殴り飛ばされた俺とポールは、シオンに直ぐさまグローヒーリングを掛けて貰い、ダメージを回復した。回復したのは良いが……。「手が――出せない……」そう、ラルフとゲヴェルは互角に渡り合っている……そのレベルが余りにも高過ぎて、手が出せないのだ。速い……ラルフはそのスピードと技でゲヴェルを撹乱している。一方のゲヴェルも決して引けを取らず、スピードや技では及ばないが、パワーではラルフを上回っている。あれだけの体格差があるのだから、当然とも言えるが……。と、ルイセ達が魔法を放った……それを喰らって、奴は明らかなダメージを受ける。「……手が出ないか……なら、魔法を出してみるか!!」「そうだな……せめて援護くらいは!」俺とポールは詠唱を始め……。「皆!!離れろ!!」突如、ラルフの声が上がったかと思うと、ゲヴェルから凄まじい勢いでエネルギーが高まるのを感じる……アレは――ヤバイ!!?俺は咄嗟に避けようとして……見てしまった。「ルイセッ!!?」ルイセが逃げ遅れていたのを……くっ、あのままでは……!!「ルイセ、早く!!」「お兄ちゃん!?」駄目だ……間に合わない!!?俺は咄嗟にルイセを胸の中に抱き包んだ……せめてルイセだけでも……この身体を盾にしてでも――!!「だ、ダメだよお兄ちゃん!!私のことは良いから――!?」「……お前を見捨てる位なら――それこそ、死んだほうがマシだ……」「……お兄、ちゃん……」ルイセが元に戻った時――俺は心底ホッとした。そして、誓ったんだ……もう、ルイセを傷付けさせやしないって――。――改めて思い知ったから……俺は、ルイセのことを――。「グガアアアァァァァァ!!」奴の咆哮と共に放たれたソレは、圧倒的な熱量と共に襲い掛かって来た……俺は最近何とか使える様になった、気を纏う。ラルフやシオンの様に上手くは無いが、せめて盾になるくらいの強度は―――。「『極光』」届く筈の熱量が届かず、俺の耳にそんな言葉が届く……そして、不思議に思って振り向けば……。「やれやれ……チート野郎の面目躍如って所かね?」「シオン……」「先生……」俺達を背に庇い、優しい光を放つエネルギー波動をその手の平から放ち、ゲヴェルのエネルギー波動を迎え撃つ男の姿が――そこにはあった……。***********カーマインとポールを回復させた後、俺は援護に徹すると決めた。ここで奴を倒すのは、恐らく簡単だろう……だが、ソレは皆に任せた……ラルフなら負けないと信じていたし、他の皆の援護で十分フルボッコの筈……何より、決着はラルフ達に着けさせてやりたかったからな――。とは言え、俺自身ゲヴェルに思うところが無いか……と、聞かれたら嘘になる。……ゼメキス村長の息子さんや、近隣の村人達……彼らの犠牲は間接的にはコイツにも原因がある。むしろ元凶はコイツだ。赤の他人ではあるが……知ってしまった以上、許せない気持ちはある。まして、『識っていながら』見捨ててしまった俺としては……せめて俺の手で元凶を……という気持ちだった。しかし、ラルフ達の覚悟を聞いた以上……それをするのは彼らにこそ相応しい……そう思ったんだ。だが、それも……。「グガアアアァァァァァ!!」仲間の危機を見逃してまで、遵守したい気持ちではないがな――!!俺は瞬時にカーマイン達の前に立ちはだかり、奴のごん太エネルギー波に立ち向かう。……オーラバスターでも打ち勝つことは可能だが……奴の弱点は魔法……ならば!!禁術クラス――行くかっ!!『高速詠唱』、『詠唱短縮』のスキルで、瞬時に紡ぎ……右手の平を奴に向け……。「『極光』」手の平に展開された魔法陣から放った……。それはエメラルドグリーンの輝きを放つ砲撃……。『極光』魔法、ソウルフォースのアレンジ魔法。発想は『三本の矢も束ねれば……』という所から来ており、色々弄った結果、三本の光の槍を降らせるのでは無く、無数の光の槍を束ね、放つという……所謂『収束砲撃魔法』的な何かへと変貌した魔法。『エネルギーのベクトル』は、ソウルフォースと全く同じなので、その破壊力は凄まじく、全力で放てば文字通り星すらも破壊出来る代物。単純な破壊力なら、俺の魔法の中でもピカ一。威力は込める魔力量に比例する……単純な魔力消費量が馬鹿みたいなんで、実質俺専用魔法だが……ルイセなら、全力を出せばなんとか使えるかも知れない。まぁ、山を吹き飛ばすのがせいぜいかもしれないが……。ちなみに、両手で放つ『大極光』なんてのもあるが……こっちは使う機会は無いだろうな……強力過ぎるから。(ちなみに、後にこの極光をベースにして、一般人でも扱える様に改良された砲撃魔法『ブラスト』が登場することになるが、それは甚だ余談である)「やれやれ……チート野郎の面目躍如って所かね?」「シオン……」「先生……」俺が軽口を叩きながら、後ろをちらりと見遣ると、呆然とした表情でこちらを伺うカーマインとルイセが。「さて……一気に押し返すぜ!!ハアアァァァァッ!!」拮抗『させていた』極光に更に魔力を込める……グングンと奴のエネルギー波を押し返し……そして。「ぬがあぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!?」ゴアアァァァァァァァァッ―――――!!!ゲヴェルは極光に呑まれ――光が過ぎ去った後に表れたのは、ズタボロになったゲヴェル………上半身の三分の一が吹き飛び、銀の外殻は無惨にもボロボロ――。血液だか何だか分からない液体を身体中から吹き出している。何とか避けたのか……かなり手加減したとは言え、直撃してれば奴の上半身位なら、消し飛ばしていた筈なんだがな……。しかも、あんな状態なのに生きているのは執念なのか……それとも、急所を外したのか……だが。「グ、グローシアンとは言え……こんな……」「良いのか?……よそ見して」「なっ………!?」満身創痍のゲヴェルが見たのは、衝撃から立ち直った……。「でりゃああぁぁぁぁ!!」ウォレスのレイスラッシャーによる投擲攻撃と……。「死にやがれえぇぇぇっ!!」ゼノスの渾身の一撃と……。「とどめだっ!!」ジュリアの絶対なる一撃と……。「消え去れっ!!!」ポールの疾風怒涛の剣……。そして………。「これで……終わりだあぁぁぁぁっ!!!」ラルフの全霊の一撃が……ゲヴェルに炸裂した。「ぬぐああぁぁぁぁぁぁぁっ!!!??」ズシュウウゥゥゥゥ!!!!奴は縦横無尽に切り裂かれ、身体中から液体を飛び散らせて………。「まさか…まさか…お前たちごときに……!」俺達に怨嗟の念をぶつけながら………。「ぐうわあああぁぁぁぁぁぁぁぁ………………」断末魔の叫びを上げた奴の身体は、グズグズに溶けて行き……そして消えて行った……。ゲヴェルか……コイツはコイツなりに運命って奴に抗っていたのかも知れないな……。孤独を嫌い、暗闇に閉じ込められるのを恐れて……。もし、コイツが人類に害を為す様な存在で無ければ……。或いは………いや、よそう。仮定に意味は無い。「せめて眠れ……俺はお前を忘れない……」行き先は贔屓目に見ても地獄だろうが……な。「終わったな……」カーマインがゆっくりと息を吐く。「長かった……だがこれでやっと終わる」それはウォレスも同様で……。「とりあえず、外に出ねぇか?こんな辛気臭い所に居たら、気が滅入っちまうぜ」「うん、賛成!それにここが崩れたら大変だしね?」ゼノスの提案にティピが賛成を示した。まぁ、ティピの言う様に直ぐ崩れたりはしないと思うが……。あの仮面騎士も、ゲヴェルの波動を遮断されても、直ぐには死ななかった様に……ゲヴェルの細胞で作られたこの城もまた、直ぐには消えないだろう。ゼノスの提案に関しては俺達も賛成で、俺達は来た道を戻ることに。途中、さっきまでは無かった移動用の穴を発見……恐らく、ゲヴェルが死んだことで出来たそこに、俺達は飛び込んだ。皆は怪しんでいたが、俺が先に飛び込み、入口に繋がっていたことを確認し、皆にそのことを告げたら、皆も飛び込んだワケで……。フライシェベルグから外に出た俺達は、木漏れ日を確認した……あれだけ淀んでいた天気が、晴れ上がっていたのだ。まるで、俺達の勝利を祝福してくれているかの様……なんて、それは流石にご都合過ぎかね。「う〜ん、いい天気♪アタシ達、勝ったんだね?」「そうだな。ルイセとシオンの能力があったしな」「違うよ。みんなが最後まであきらめなかったから、勝てたんだよ」「そういうことだ……力を合わせたから、こうして皆で生きて戻れたんだ……だよな、カーマイン?」ティピは晴れ上がった天気を見てご満悦、そして勝ったことを誰にともなく聞いた。答えたのはウォレス……ウォレスは俺達のおかげだと言うが、それは違うと言うルイセと俺。実際、俺だけでも勝てたのかも知れない……もっと早くに手を打てたかも知れない……だけど、終わった今となっては、これはこれで良かったんだと思う。皆の力で脅威に打ち勝ったという事実……。カーマインとラルフ……そしてポール。この三人には、これから先の可能性が生まれた……。……勿論、俺の選択によって失われた命についても、決して忘れはしないが……。「ああ……みんなの力の勝利だな」「ああ、何だかいいわよねぇ、こういうのって!」俺の問いに答えたカーマインは、清々しい笑顔を浮かべている……それを見たティピもまた、同様だ。「ま、これで世の中も平和になるってもんだな。これからどうする?」「う〜んと……あっ!」ウォレスもやり切った表情を浮かべている。そんなウォレスの問いに答えようとして、何かに気付いたティピが声をあげる。すると、向こうから兵を数名引き連れたインペリアル・ナイト……ライエルがやってきた。「ん?どうしたのだ、こんなところで……まさか、もう……」「ああ、ゲヴェルは打ち倒したよ」「遅かったか……」ライエルが怪訝な顔で尋ねて来たので、ポールがそれに答えた。ライエルは困った様な表情をして溜め息一つ。「もしや……援軍か?」「ああ……加勢は多い方がいいのではと思い、やってきたのだが、どうやら遅かったようだな……」「もう少し早く来てくれればな……とも思うが。大方、王都に攻め込む敵を一掃するのに時間を喰っちまったんだろう?仕方ないさ」「すまない……」ジュリアの呟きに、若干疲れ気味に答えるライエル。俺はそんなライエルを労う様に言う。実際、ゲヴェルの本拠地なのに仮面騎士が予想以上に少なかったしな。王都方面にも、幾つかの気配を感じたし……。それでも謝るライエルは真面目なんだな……と思うよ。「ところで、これからみなさんはどうなされますか?」そんなライエルの問いに皆が答える。「お父さんのことが気になるので、保養施設に行った後、お父さんと一緒に家に帰ることになると思います」カレンはベルガーさんを迎えに行った後、実家に戻るようだ。「俺もカレンに付き添いたいが……俺は騎士だからな。カーマインたちと一緒にローランディアに戻ることになるだろうな」ゼノスはカーマイン達とローランディアへ……か。休暇が出たら家に帰るくらいはしてやれよ?「戦争も終わって、ゲヴェルも倒したんだ……また学院に戻って、フェザリアンを納得させる方法を考えなきゃね」アリオストは学院に戻ってフェザリアンとの融和を模索する……か。「私も学院に戻ります。仕事も溜まっていますので」「アタシも戻るよ。卒業を目指して、頑張るんだ!!早くルイセちゃんに追い付きたいし」イリス、ミーシャの二人も学院に戻るらしい。まぁ……今の二人なら大丈夫だろう。「私はシオンの下で働いていたからね……これからもそうするつもりよ。だから、バーンシュタインに行くことになるのかな?姉さんたちも居るしね」リビエラは俺達と来るらしい……いや、もうお前は自由なんだぞ?無理に働く必要は……え、無理じゃない?いや、まぁ……お前が良いなら良いんだが……。「私はナイツだからな……全てが終わったからには、再びナイトとして職務に励むとしよう」ジュリアはインペリアル・ナイツに戻り、民のため、平和のために頑張るそうな……俺も頑張らなきゃな!「私もだな……もっとも、私は試験を受けなければならないが……」ポールもナイツとして頑張ると……まぁ、ポールなら大丈夫だろう。何しろ、一度受かってるのだから。「俺もだなぁ……まぁ、父上との約束もあるし、何よりやらなきゃならないこともあるからな……国に戻るさ」俺もポール同様、試験があるし……見聞の旅も十分だ。何より、ボスヒゲの動向も気になるからな……また色々暗躍しつつ、世のため平和のため……頑張りますか!!「僕も国に戻るよ。随分長い間、旅に出ていたからね……そろそろ商人として家を継ぐ――くらいはしなきゃ、父上から大目玉を喰らいそうだから」ラルフも国に戻るらしい……とりあえず、もうラルフが操られることは無いからな。一先ず安心だな。「では、私も戻るとしよう。いろいろと世話になった。また会おう、ローランディア王国の騎士よ!」そう言って、ライエルと兵士達が引き上げて行く……俺達もそれに続いてそれぞれ……っと、そうだ。俺はカーマインの所に戻って……。「これをやるよ」一つの指輪を渡した。「……これは?」「こんなこともあろうかと、作り上げたお守りだよ……肌身離さず持ってろよ?――時間稼ぎにしかならないが……無いよりはマシだからな」「何を言って………いや、分かった。ありがたく受け取らせて貰う」俺はカーマインに渡した指輪について、ごまかして渡した。ルイセの居る場所で死刑宣告はキツイ……と、思ったからだ。カーマインと……それからウォレスは何かを悟った様だが……幸い、ルイセとティピは気付くことは無かった。「そういえば言って無かったな………ありがとうシオン。あんたのおかげで、俺もルイセも助かったんだ……」「ありがとう、先生……」「……精進しろよ二人とも。互いに『大切な相手』を守れる様にな?」二人は俺に礼を言うが、俺はお茶を濁す意味でニヤリと告げてやる。……真っ直ぐな感謝の気持ちが、小恥ずかしかったからじゃないぞ?……多分。「おまっ!?なに言ってっ……!?」「そそ、そうだよ先生!?」「クックックッ……俺は『互いに大切な相手』と、言っただけで、それがカーマインとルイセのこと……とは言ってないんだが……おや?顔を真っ赤にして……どうしたのかにゃ〜〜?」真っ赤になりながら言い訳を紡ごうとする二人に、止めの一言。二人とも言葉に詰まった様だ……まぁ、これ以上は可哀相だから止めとくかね。それにラルフとポールにも、これを渡したいしね?「そんじゃ、俺も帰るわ……またな!」俺は笑いながらも華麗に我が家へと……。「……たまには母さんに顔を出して安心させてやれよ……コマシ野郎!!」帰ろうとしてステーーンッ!と、ズッコケた俺は悪くない筈だ……多分。**********とりあえず、からかわれた意趣返しは出来たな。「コマシてへんわい!!人聞きの悪いこと言うなやっ!?」そう言って立ち上がりながらも、最後には笑って帰った辺り、悪意が無いことには気付いたのだろうな。そういう機微には何故か、敏感な男だからな……アイツは。自分のこととなると、そうでも無いらしいが。「アタシたちも帰りましょ?」「お母さんも心配してるしね!」「よっしゃ、帰るか!」――こうして、俺達は遂にゲヴェルを倒し、帰路についた……。帰った俺達を待っていたのは、ゲヴェルとの戦いを後世の為に書へ記すという――任務という名のカンヅメだったりするのだが……それはまた、別の話である……。俺の手には二つの指輪がある……奇跡を起こす秘石が嵌まった指輪と、シオンから受け取った指輪……。恐らく、この指輪には何らかの意味があるのだろう……。俺がゲヴェルによって生み出されたことに関する、何らかの意味が……。**********おまけif自重しないシオン「どうやら、鍵は開いたらしいな……」「って、まさかこんなところに入るのっ!?」「……アタシ、入りたくないなぁ……」ポールがあのガーディアンが鍵だったことを確信して、言葉を発するが……リビエラはまさかの事態に悲鳴じみた声を上げ、ミーシャは苦笑いしながら穴を見つめていた……。無論、女性陣は嫌悪感をあらわにしていたが、俺らだって好き好んで入りたくは無い。例えるなら、ゴ○ラやガ○ラのケツの穴に飛び込む様な心境だと思ってくれたら分かるかも知れん……いや、分からんか。とにかく、俺を含めて皆は些か躊躇してしまう。……よし、ぶち抜こう。「みんな、下がってろ……この床をぶち抜くから」「ぶ、ぶち抜くって……ちょっとシオン?」リビエラが何か言ってくるが、それはスルーし、気を高める。……ついでだし、ゲヴェルも纏めてぶち抜くか。「な、なに……この空気……」「まるで……大気が震えてるかのような……!?」俺は気の炎をその身に纏い、更にバチバチと電気の様なエネルギーがスパークする……なんか、ゴゴゴゴゴゴゴッ!!!とか、ビシビシッ!!という地割れみたいな音が聞こえるが……気のせいだ!!「シ、シオン!?これってマズいんじゃ……ぐぅ、何て圧力……近付けない……」「くっ……み、みんな!ここはヤバイ……急いで避難を……!!」フハハハハハ!!み・な・ぎ・っ・て・キターーー!!「全力!!全壊!!!オォォラァッ!バスタアァァァァァァ!!!!」ゴアヒュウアアアァァァァーーッ!!!!!…………カッ!!…………。………。……。……その日、一つの星が消え去った。それは運命の悪戯なのか、はたまた絶対なる事象だったのか……それは分からないが。一つの世界が終わった……それは動かしようの無い事実である。BAD END1漲るシオンさん***********あとがき皆さんお久しぶりです。m(__)mようやくゲヴェル編が終わりました。些か駆け足感は否めませんが……。次回から、シオン視点中心の日常話を少し、それからラスボス編になります。ようやくグロラン編に終わりが見えて来ました。こんな駄作ですが、皆様にお付き合い戴けたら幸いです。それではm(__)m