カーマイン達が病室に行ってからしばらくして、大きな『力のうねり』を感知し、その後―――大きなグローシュの波動を感知―――どうやら、上手くいったらしい。それから数分後――。「ルイセちゃん!?」「お、おい……大丈夫なのかよ?」カレンにゼノスが――。「ルイセ君――!」「ルイセちゃん……もしかして記憶が……?」アリオストとラルフが……いや、パーティーのメンバー全員がルイセに殺到する。「……みんな……」「ルイセちゃん……本当に……」「ごめんね、ミーシャ……でも、もう大丈夫だから」「ルイセちゃん…………ルイセちゃああぁぁ〜〜んっ!!」涙とか鼻水とか、色々な物を垂れ流しながらルイセに抱き着くミーシャ。そんなミーシャをルイセは慈しむ様に抱き留めた。「やったな!やりやがったな!!めでてぇじゃねぇか、コンチクショウ!」「本当、心配かけて……でも、良かった……」普段は見せない、大喜びをしてみせるウォレス。慈愛に満ちた表情を浮かべながら、安心しているリビエラ。「すごいよね、これって奇跡だよね?」それに負けないくらい喜んでみせるティピ。「あのパワーストーンのおかげか?」「ううん。プロミス・ペンダントのおかげよ」ゼノスの問いに、ゆっくりと首を横に振るルイセ。まぁ、俺は一応真実を知っているが……言うつもりは無い。近い内に知ることだしな。「プロミス・ペンダント。目的を達成した時に願いが叶うというペンダントですね。確か、学院の女生徒の間で流行っている……」イリスは冷静にプロミス・ペンダントについて分析する。まぁ、単に思ったことを口にしてるだけだろうが……な。「そうそう☆コイツったらね「だあぁぁぁぁっ!!?」…モガモガ……」ティピが何か口にしようとして、カーマインが慌ててティピの口を塞いだ。………こんな面白……もとい、慌てたカーマインは初めて見たな。「な、何でもないからな?気にしないでくれ……」「ゲホ、ゲホッ!アンタ、アタシを窒息させる気!?」「『約束』しただろう……もう忘れたのかこの揮発脳!!」何とかいつもの調子を保とうとするカーマインの魔の手?から逃れたティピは、文句を言うが……カーマインからしても今のは腹にすえかねた様で、文句を言い返していた。「……今のはティピが悪いよ?」そう言ってやんわりと二人を止めるルイセ。……どうでもいいが、随分と雰囲気が大人びたなルイセは。これも覚醒した影響かね?そう思いながら、俺はニヤリと悪い笑みを浮かべつつ、カーマインに止めを刺す。「……どうやら賭けはルイセの勝ちらしいな?」「ぐっ……何故……!?」「これでも記憶力は良いんでね?ルイセにプロミス・ペンダントをプレゼントしたのは……誰だったっけなぁ?」ついでに言えば、ルイセがペンダントに誓いを起てた時にも居たし、今さっきのルイセの言動からも予測するには十分―――まぁ、原作知識という反則技があるのは否定しないが―――。「うぐっ――」「まぁ、お前さんの面白……珍しい表情を見れたことだし、武士の情けってことでコレ以上は勘弁したるわ」「今、面白いって言おうとしたな――?」「さてな〜?ま、冗談はともかく――良かったな!」バンバンとカーマインの背中を叩く俺。無論、加減はしてますが。「――ああ!」清々しい顔で言うカーマイン君は、間違いなくイケメンだろう。かつての悪友が見たら『もげろもげろ』と、五月蝿いだろう程の清々しさだ。「……皆、喜んでいるな」と、ポールが心なしか嬉しそうに微笑んでいる。「当たり前だろ?ルイセは俺達の仲間なんだ……その仲間が復活したんだ。喜ばない方がおかしい」「仲間……か。分かってはいたが、良いものだな……」そう優しく微笑むポールもまた、爽やかなイケメンだろう……いや、美少年というべきか?まぁ、目元は仮面で隠れているが。ポールにはああ言ったが、皆にとってルイセはただの仲間という訳では無いのだろう。ある者は妹の様に――ある者は娘の様に思っていた筈――ん?俺?俺は―――そうさなぁ……弟子と師匠であり、娘みたいなモノであり、妹みたいなモノ……かな?「そういえば、ベルガーさんは?」「私なら此処だ」そう言ってベルガーさんが奥からやってきた。ベルガーさんは怪我らしい怪我も無かったが、一応診察して貰っていたらしい。幸い、どこも大事は無かったとか。……まぁ、そのために俺はゲヴェルを殴り飛ばしたんだがね。カレンの悲しむ顔も見たく無かったし……。「本来なら、奴を倒すのに力を貸したいところだが……残念ながら、今の私では力になれないだろう……」「何を言うんです隊長!隊長は奴と互角に戦ったじゃないですか」「それは昔の話だ……戦ってみて分かった。私は大分衰えた……恐らく、正面から奴と渡り合えはしないだろう……」弱音とも取れる台詞を言うベルガーさんに、ウォレスが物申すが、ゆっくりと首を横に振ってそれを否定するベルガーさん。「でも、さっきはゲヴェルと良い勝負をしていた様に見えたけど?」「ベルガーさんの言ってることはある意味では正しい」「シオンさん?」リビエラの疑問には俺が答える。その言葉にカレンが首を傾げている。考えてみれば簡単なことなんだがな……。「20年近く剣を握っていなかったんだぞ?どうしたって戦闘の勘は鈍る。それに、保養所に保護されてから……或いはそれ以前……記憶を無くしてからでも良いが、まともに鍛練をしたのか?答えは否だろう。そうすると、筋力は確実に衰える……何故か見た目からはそうは感じさせないが」その説明を聞いてウォレスはハッとなる……ウォレスに限らず、ベルガーさんの戦いぶりを見ていた面々は似たような反応を見せる。あれで衰えているとは信じられない……と。分からなくは無いがな。もし、俺に原作知識が無く、ゲヴェルについて知らなければ……俺も似たような反応をしただろうしな。ウォレス自身、かつてはインペリアル・ナイト(この場合のナイトは我が父上のことだが)と、互角に戦り合う程の実力を持っていたのに、数年の療養をしていただけで、旅に出たばかりのカーマインより身体能力に関しては劣るという状態になってしまった。義手に義眼というハンデを差し引いたとしても……だ。(まぁ……何故かこのカーマインは最初から結構強かったのだが……)にも関わらず、20年近くまともな鍛練をしていない筈の、ベルガーさんの身体能力があれほど迄に保たれていたのは、恐らくベルガーさんの秘密に関係があるのだろうと推測している。新型ゲヴェル開発のための被験体……。言うなれば、新型ゲヴェルのプロトタイプ。それがベルガーさんの隠された秘密……。推測でしかないが、ゲヴェルの細胞の影響で、身体能力の劣化が常人より遥かに緩やかなのかも知れない。だが、幾ら身体能力の劣化が緩やかだとしても、衰えたのは事実なのだろう。かつてはゲヴェルと互角に戦ったベルガーさんだが、原作において保養所でゲヴェルに重傷を負わされている。「――君の言う通りだ。短時間戦う分には問題無いが……正直、長時間戦う体力は今の私には無い。奴の腕を切り飛ばすことが出来たのも、奴の腕に深い傷を負っていたのを見付けたからだ。私はその傷に剣を合わせたに過ぎん」「アタシ……それだけでも凄い気がするんだけどな〜……」ベルガーさんの言葉に、ミーシャは苦笑いしながら呟く。実際、ミーシャの言う通りだと俺も思う。何でもないことの様に言うが、ベルガーさんの技には半端がない。その洞察眼と経験により放たれる剣は、驚異の一言に尽きる。こと、経験というカテゴリーにおいては、この場にいる誰よりも濃密なモノを持っていると言っても良いだろう。その経験という引き出しによって、20年近く……正確には19年という年月の隙間を埋めたのだ。故に、ゲヴェルに会心の一撃を見舞えた。「へっ、まあ良いさ。奴の始末は俺たちがつけてやるよ……だから、親父はゆっくり養生しろや。年なんだからよ」「……すまんな、ゼノス」そう言ってベルガーさんを気遣うゼノスに、礼を言うベルガーさん。素直になれないのか、プイッと視線を逸らすゼノス……ツンデレですね分かry。実際、今この場にいるメンバーの単純な力量をランク付けするなら――。俺>>>>>>>越えられない壁>>>ラルフ>>高い壁>>ポール>>>>カーマイン>>ゼノス>ベルガーさん>>ウォレス>>>アリオスト>リビエラ>イリス>ミーシャ>カレン、ルイセ。―――と、言う所だろう。尚、これは気の大きさを基準とした身体能力の順番で、魔力……精神力換算だとまた違って来る。魔力の容量を基準とした場合はこうだ。俺>>>>>越えられない壁>>ルイセ>>果てしなく遠い壁>>イリス>リビエラ、カレン>ポール、ラルフ、ミーシャ>>カーマイン>アリオスト>>>>超えられない壁>>ベルガーさん、ゼノス、ウォレス。と……なる。尚、後者三人は魔導を学んでいない為にこの位置。アリオストはフェザリアンとのハーフな為か、魔力容量が若干少ないんだよな。もっとも、最近は自主鍛練で着々と魔力容量を増やしているらしいが。ちなみに、一般的な魔導師はアリオストの更に下くらいになる。まぁ、総合した実力だとまた順番が変わるんだが……ん?俺が常にトップなのは何故かって?まぁ、リアルチート野郎だからね〜……俺は。と、話が逸れたな。そんな訳で、ベルガーさんは保養所に残るらしい。正確には退院とかの手続きやらなんやら、色々あるらしいが……。俺的には今のままでも、十分戦力になると思うんだけどなぁ……ベルガーさんは。そもそも、ゲヴェルとタイマン張れないことを前提に言っているっポイが……そもそもあんなのとタイマン張るという考えなんて、普通は無い。多分、今現在ゲヴェル(全力)とタイマン張れるのは俺とラルフ……後はボスヒゲ(黒)くらいだろう。原作でも数人でボッコしてんだし……。ベルガーさんにも何か考えがあるんだろうが……あれか?某龍玉の主人公みたいに、『後は若い奴らの時代だ』的な考えなんだろうか?ちなみに魔人編ね。まぁ、推測だが……自身の正体やその他諸々について隠したい気持ちもあるんじゃなかろうか?新型ゲヴェルの被験者であること、過去からやってきたこと……そして、カレンとゼノスのこと。原作でも、自らの死の直前で全てを語っていたことを考慮すれば、あながち的外れとも言えないと思う。「ねぇ、もしよかったら魔法学院に行きたいんだけど……」「えっ?どうして?」「もし本当にプロミス・ペンダントにグローシュを取り戻す力があるんだったら、これを調べて貰えば、アイリーンさんも治るかもって……」と、ルイセが言い出したのでティピが首を傾げる。ティピだけじゃなく、皆が似たような心境だと思う。ルイセは、プロミス・ペンダントにグローシュを戻す鍵がある……と、睨んでいる様だが……。「アイリーンさんが治るのですか?」「わからないけど、可能性があるかもって。だから学院に行って、このペンダントを調べてもらいたいの」原作とは違って、それなりにアイリーンと接点があったイリスが尋ねる。ルイセはあくまでも可能性の話だと言うが、例え小さな可能性でも調べる価値はある……と。『ルイセちゃんはああ言っているケド……鍵は僕とカーマインなんだろう?』『まぁ、な。だが、調べるというのは悪いことじゃない……俺の知識と違って、本当にそういう効果があるのかも知れないしな?』……ラルフがアイコンタクトをしてきた。なので、俺は肩を竦めつつアイコンタクトを返した。お互い、それで意味が通じる辺りに付き合いの長さを感じる。アイコンタクトで訴えかけて来たのは、言葉にするとウォレス辺りに聞かれてしまうかもしれない……というラルフの配慮だろう。「分かった。魔法学院に行ってみよう」カーマインの決定により、俺達はベルガーさんと別れ、一路魔法学院を目指す。使うのはルイセのテレポート。**********で……魔法学院に到着し、副学院長に会いに行こうとした道中……。「ただいま戻りました、先生」「ご苦労さま。それで、どうだったかね?」「やっぱり先生のおっしゃるとおりです。グローシュの放出量が増えているようです」「……そうか……出来たら、思い過ごしであって欲しかったが……」学院校舎入口で、こんなことを話している教授と男子生徒がいるのを発見する。気になったのだろう……ルイセが話し掛けた。「……あの、どうしたんですか?」「おお、ルイセ君か」「何だか、深刻そうですが……」「……うむ」ルイセの質問に教授が重々しく口を開く。「実は『歪み計』が異常な歪みを検出してな」「歪み計ってなんだっけ?」重々しく放たれた言葉に、ティピは首を傾げた……って、ティピよ……。「な、なによ二人して、かわいそうな人を見る目をして……」「まぁ……ティピだしな」どうやらカーマインも俺と同じ様なことを考えていたらしい。それと、カーマインの返答が何気に酷いが……まぁ、ティピだしなぁ……。「この世界が、2つの世界を重ねているって話はずっと前にしたことあったよね?その重なりのずれを計る装置のこと」「あ、屋上にあったやつだ」どうやら、ルイセに言われて思い出したらしい。うん、これで思い出せなかったらどうしようかと……。「この歪み量は自然のものとも思えんのだ。何か悪いことが起きなければいいのだが……とにかく、観測を怠らずに慎重に調べてみる」「がんばって下さい」ルイセは教授を応援するが……まさかその歪み量が、自分の復活した時に生じた歪みだとは思わないだろうなぁ……。教授と別れ、改めて副学院長の元へ向かう。エレベーターに乗り、上級職員用職員室へ。「あの、副学院長先生はいらっしゃいますか?」「はい、どうぞお通り下さい」ルイセの問いに頷き、部屋の扉を開けてくれる、副学院長秘書さん。「失礼します」「おお、君たちか」部屋に入った俺達を副学院長は迎えてくれた。挨拶もそこそこに、本題に移ることにする。「あのね!ルイセちゃん、元に戻ったんだよ!」「なんだとっ!?いったい、どうやったのだ?私も手は尽くしているのだが、なかなか方法が見つからないのだ!」「実はそのことで、頼みがあってきたんです」「どうしたのだ?」嬉しそうにルイセ復活を報告するティピ。それを聞いて副学院長は、その方法を聞く。その副学院長に、ルイセは頼みがあると切り出す。「これを調べて貰いたいんです」ルイセは副学院長に砕けたプロミス・ペンダントを渡した。「これは、プロミス・ペンダントか?」「わたしもグローシュを奪われて、ラシェルの保養所にいました。しかし、このペンダントが割れたとき、わたしのグローシュが戻ったんです」ルイセの説明を聞き、しばし考え込む副学院長……。「……むぅ。こんなペンダントにそれほどの力があるようには思えんが……」「しかし、副学院長がプロミス・ペンダントのことを知ってるとは……正直意外です」そんな副学院長に、純粋な疑問をぶつけたのはイリス。女生徒に人気があるのは知っていたが、まさか副学院長まで……という意味なんだろう。「これでも私は教職者なんだよ?……というのは冗談でな。このプロミス・ペンダントに使われている宝石は呪術学を研究する私にとって、それなりに身近な物とも言える物でな」「もしかして危ない物とか……?」「そうではない。この宝石は人の念を増幅させる物でな。呪術を扱う場合にはよく触媒として用いられる。このペンダントはその宝石の特性を生かし、持ち主の念……この場合は想いと言っても良いそれを、自身の運気として変換している物なのだ」説明する副学院長に、おっかなびっくりと尋ねるミーシャ。そんなミーシャの意見を否定し、更に説明する副学院長。要するに、実際に願いが叶うアイテムではなく、ちょっと運が良くなる程度のアイテムらしい。「とは言え、今はワラにでもすがりたい気持ちだ。調べてみよう」副学院長はルイセの頼みを受け入れた。本人の言う様に、ワラにも縋りたい気持ちなのだろうから。「しかし、これで1つだけ謎が解けたよ」「えっ?何のこと?」「先日、時空観測器が、北の方角に局地的な歪みを記録したんだ。たぶん、ルイセ君のグローシュが戻ったときの波動だろう」「そんな波動があったんですか?」ティピは首を傾げる。副学院長は局地的な時空の歪みと、その原因について述べた。ルイセはルイセで疑問を尋ねていた。「時空の歪みが大きくなったときにグローシアンが生まれる。逆にルイセ君が戻ったとき、歪みが大きくなっても不思議ではあるまい。つまり、歪みを作ることと、グローシュが戻ることには関係がある」「それって、シオン君も言っていた……」「俺の憶測も、あながち間違っちゃいなかった……ってことか」副学院長の考察を聞き、アリオストが驚愕の眼差しを俺に向けてくる。俺は肩を竦め、いけしゃあしゃあと言ってのける。憶測も糞も、知っていたこと……なんだからな。「そして、ペンダントが割れたという事実……」「それじゃ、ペンダントを使って歪みを発生させることが出来ればいいんですね」「簡単に言えばそうなるが、それはこれから調べる。とにかく、貴重な情報をありがとう」ルイセには希望に満ち溢れた感が漂っているが……ペンダントは全く関係無いんだよなぁ……。副学院長は情報の提供について礼を述べた……。「そういえば、アレはどうなった?」「アレ?」「真のグローシュだよ!どうだね?あれはただの伝承なのか?それとも事実なのかね?」副学院長は少し興奮した様子で尋ねる。……研究者としての、純粋な好奇心なんだろうがな。「……多分、事実です。うまく説明できないけど、感覚が研ぎ澄まされたみたいな感じがするんです……だから」む?ルイセがこっちに視線を向けた……。「シオン先生のグローシュが、ものすごく強いってことも、よくわかるようになったよ――。先生のグローシュって、今の私よりもずっと強い……」「……今は隠してると言うか、抑えてるのに、そこまで分かるとはな……何と言うか、グローシアンとしては文句なしで一人前だな」多分、グローシュの効率的な運用法もあっさり出来る様になってるんだろうなぁ……。その後、副学院長にペンダントのことを改めて頼み、俺達はその場を後にした。そして学院内から外へ……。「……あっ、感じる……」「どうしたの、ルイセちゃん?」「これはゲヴェルの波動……方角はここから………あっ!?先に、バーンシュタインの王都へ急ぎましょう!あの、仮面の男たちが、攻撃してる!!」「なっ……本当なのか!?」突然立ち止まり、キョロキョロと辺りを見回すルイセ……ティピの問い掛けにも答えず、東の方角を見据える……。そして言い放たれたのは衝撃の言葉。ポールが真偽を確かめている。「……どうやら本当らしいな。俺も感知した……気も奴らの物だし、間違いないだろう」……もっとも、俺は意識を集中して漸く……って所だがな。気で探ることに頼っていたって部分もあるが……。グローシュパワーは俺の方が上だが……感覚的な部分はルイセの方が上かも知れん……。「どうやら急いだほうがよさそうだな!」俺達は直ぐさまテレポートでバーンシュタインへ……。**********バーンシュタインに到着した俺達は急いで街中へ向かう……そこでは……。「ぐあぁっ!!?」「ぎゃあぁぁっ!!?」バーンシュタインの兵士が二人、仮面騎士に切り捨てられていた……。二人だけじゃない……他にも何人も……。「愚か者め。我々に勝てると思っているのか?」「さすがにゲヴェルの作った兵士だ。警備兵では歯が立たぬか……」勝ち誇る仮面騎士を見て、顔を厳しく歪めているのはインペリアル・ナイトである、リーヴスその人……。「我々が戦うしかなかろう」「ああ……そうだな」その言葉に答えたのが、同じインペリアル・ナイトのライエルとジュリアだ……ジュリアも出撃していたのか。考えてみれば当然か……王都の危機に、貴重な戦力を遊ばせておくワケが無いからな。「しかし、御三方は昨日から一度も休みなく……」「我々が引けば、あっという間にここを突破されるであろうが」「自分たちがふがいないばかりに……申し訳ありません」兵の一人が三人を気遣うが、ライエルから事実を突き付けられ、申し訳なさそうに顔を伏せる。「相手が相手だ。仕方ないさ……とは言え、正直疲れてきたな。奴らに疲れはないのか?」「さあな。ゲヴェルの能力を受け継いでいるとなれば、我々人間を遥かに越えた回復力を持つのかも知れぬ」「例え相手が何であれ、我々に敗北は許されない……泣き言を言っている暇はないさ」兵を気遣いながらも、仮面騎士のスタミナに舌を巻くリーヴス。ゲヴェルとの関連性を指摘するライエル。そして、改めて気合いを入れ直すジュリア。「確かに泣き言は言いたくないが……こちらが不利だな」「……フッ。何があってもお前だけは守ってやる」「おや、私は守ってくれないのか?」「俺は男も女も平等に扱う主義でな……心配せずとも、俺の剣は二振りある……ならば2人守るのも造作もない」弱音を吐くリーヴスを慰める様に言うライエルと、場を和ませる様に軽口を叩くジュリア。そんなジュリアに本人なりの軽口で返すライエル……そんな三人を仮面騎士は嘲笑いやがった。「美しい友情というところか。だが、いつまで他人を気にする余裕があるかな?」「試してみるか?」「……よかろう」一触即発……戦端が再び開かれようと言う時に、俺達は駆け付けた。「アーネスト!オスカー!!」「…………ポールか!?」「助けに来たぜ!」「シオン……みんな!?」やってきた俺達を見て、驚愕をあらわにする三人。ライエルはやけに間が大きかったが……危うくポールの本名でも口走りそうになったか?「ありがたいが、奴らの力は……」「心配しないで下さい。絶対に負けませんから!」「……まぁ、仮にもグローシアンが二人も居るんだしな」忠告するリーヴスに対して、力強く宣言するルイセ……そして俺とルイセを見て頷くカーマイン。「……あの娘は!?馬鹿な……グローシュが戻っている!?」どうやら、ルイセのグローシュが戻ったことに気付いたらしいが……もはや手遅れだと教えてやる。「やるぞ、ルイセ!!」「はい、先生!!」俺はルイセに指示を出す……ルイセも何をしようとしているのか理解し、素直に頷く。「あなた達の闇の波動を……」「断ち切ってやる!!」俺達は仮面騎士達にグローシュ波動をぶつける……覚醒したルイセ、元よりチートな俺。そんな二人のグローシュ波動は相乗効果を生み、仮面騎士達に襲い掛かる。「……や、やめろぉ……うぅ……」「よそ見している余裕があるのか?」「なに!?ぐぅっ……!!」強烈なグローシュ波動を浴びて――普通の人間どころか、それ以下に弱まったであろう仮面騎士に、強烈な斬撃を見舞うライエル。辛うじて防いだが、思わず後退る仮面騎士。「――ん?どういうことだ?」「どうしたんだ?」「さっきまでの手応えが無い。これなら、たやすく倒せる」「……なるほど。僕も試してみよう」訝るライエルに、疑問を尋ねるジュリア。ライエルいわく、手応えがなくなったという。それを自分も試してみようとするリーヴスとジュリア。俺達のグローシュ波動で極限まで弱まった仮面騎士は4人。こっちは一般兵込みで20人以上。大勢は決した……結論から言うとフルボッコである。少々哀れに感じるくらいに………。もっとも、容赦はしなかったがね。仮にも俺はインペリアル・ナイトだから、王都を襲う輩を捨て置けんし……それを差し引いても、屑野郎には容赦は出来ない。「もうあいつらはいないみたいだな……」「うん……少なくとも王都の中から気配は感じないよ」カーマインとラルフがそんなことを言う。確かに王都や城には奴らの気配は感じないが……な。「すごいな……。僕たちが2日戦っても勝てなかった相手を、こんな短時間で……」「これがグローシアンの能力なのか……」なんか驚かれてるが……それだけグローシアンというのは、ゲヴェルにとっては天敵だってことさな。「そういえば、どうしてグローシュが強くなったんだろう?」「それはね、わたしが皆既日食のグローシアンだってこと」「うにゃあ?よくわかんない……」ティピの素朴な疑問に、端的に答えるルイセ……勿論、それを理解出来るティピでは無い。なのでルイセは続ける。「皆既日食って、お日様が完全に消えて、また姿を現すでしょ?わたしのグローシュも完全に消えてから、もう一度戻った……これって似てると思わない?」「つまり、一回無くなってもう一度能力が戻るってのが、真の能力の発動のきっかけだった……ってことか?」「そういうこと」ルイセの説明に、確認という形で問い掛けるカーマイン。その問いにルイセは肯定を示している。「だけど、どうすればもう一度能力が戻るかは分かってないんだろ?これじゃ、正確な方法が残っていないわけだぜ」「わたしの場合は、ただ単に運が良かっただけだね」ウォレスの言う様に、正確な方法が残っていなかったが、だからこそ伝承という形で残っていたのだろう。確かにルイセは運が良かったとも言えるが……事実はカーマインとの絆が生み出した奇跡……なんだよな。まぁ、言わんけどな。「恥を忍んで、頼みたいことがある」「どうしたんだアーネスト?」急に改まって頼み事をするライエルに、何事かと首を傾げるポール。「実はこの王都から北東に向かったところに、ゲヴェルの住処と思しき場所を見つけたのだが、我々には攻め入る手段がないのだ」「しかし今の戦いをみて実感したよ。グローシュを持つ君たちがいれば、ゲヴェルを倒せるだろう……厚かましい頼みだけど、君たちにゲヴェルを倒して欲しいんだ」ライエルとリーヴスの頼みとは、ゲヴェル打倒の件についてだった。他にも、王都を防衛しなければならないとか……理由は色々あるのだろうが……。「……言われるまでもない。奴は必ず倒す……」「ありがとう」カーマインの答えに、リーヴスは礼を言う。それに対して、俺達は――。「困った時はお互い様です」「そうよ、私たちに任せて!」「必ず、この戦いに終止符をうってみせる!」「まぁな……個人的にも、親父の分も含めてあの野郎にはお見舞いしてやるさ」「よーし!やるぞーっ!!」「うん、頑張るよ!」「そうだね……決着を着けなきゃね」「ああ……我々の手で……全てに!」「私も微力ではありますが……全力を尽くします」「やる気は十分ってね……まぁ、大船に乗ったつもりでいてくれよ」「ま、そういうわけだから、任せておけって!」上からカレン、リビエラ、アリオスト、ゼノス、ミーシャ、ルイセ、ラルフ、ポール、イリス、俺、ウォレスの順番だ。それぞれに意気込みを語ったのだ。「……頼む。この国の……いや、この大陸の平和は、君たちに掛かっている」「頼むよ。連中はこの街の北東の森の中、沼地の奥にいる」責任重大……だな。まぁ、俺達は負けないさ……必ず勝って戻る……必ずな。「――良ければ、私も連れていっては貰えないか?足手まといにはならないつもりだ」「……ジュリア?だが、良いのか?」「陛下には許可をとってある……頼む」突然のジュリアの申し出に、俺は少々思い悩む――個人的には連れていってやりたいが……。とりあえず、俺はリーダーの判断に丸投げすることにした。「……分かった。一緒に行こう」と、カーマインが判断したので、俺からは何も言うことは無い。まぁ、戦力が増えるのは喜ばしいことだがな。こうして、ジュリアを仲間に加えた俺達は、ゲヴェルとの決着を着けに奴の居城へと足を運ぶことになる……。これが全てとは言えないが……それでも、一つの区切りをつけるためにも――。**********おまけ1ボツ話・子煩悩ベルガーさんと理不尽シオン。「ところで君は、カレンと付き合ってるそうだね?」「はい……俺には勿体ないお嬢さんだと思います」「しかし――君は他の女性とも関係を持っているそうだね?」「はい……」突然何を言い出すかと思えば……カレンから聞いたのか?まぁ、父親としては心配するのは当然か。「君はふざけているのかね?それとも、娘を弄んでいるつもりかっ!?」「ふざけても、弄んでいるつもりも無いんですが……」気持ちは分かる……俺だって同じ立場なら耳を疑うもんよ。というか……今までが今までだけに、1番マトモな人に出会った心境だな。「娘の命の恩人らしいが……貴様の様なチャランポランな男にカレンはやれん!!どうしてもカレンが欲しいなら、私を倒してからにするんだな!!」「止めてお父さん!!」「止めるなカレン!!こういう奴には痛い目をだな……」「違うわっ!危ないのはお父さんよ!!」「なっ……!!?」なんか……お約束の展開になってきたが……カレンが止めに入った。しかもベルガーさんに止めをさしたぞ?あっ、ベルガーさんがショックを受けてる。「あ〜……えっと、俺も個人的にはカレンのお父さんに酷いことはしたくないんですが……」「貴様にお義父さんと呼ばれる筋合いは無い!!」いや、言ってねーし……多分字が違うんだろうな……。「覚悟しろ!!貴様は剣の錆にしてくれるっ!!」「無茶よお父さん!!」剣を抜き放ち、襲い掛かるベルガーさん……そんなベルガーさんを止めようと声を上げるカレン。わざと負ける……という選択肢は無い。それはカレンを悲しませる結果になる。引き分けると後々まで引きずる可能性があるし……そうなると結論は一つ。死なない程度に痛め付ける。*********しばらくお待ち下さい。*********「……満足しましたか?」「ぐふぅっ……馬鹿な……手も足も出んとは……」「お父さん、しっかりしてお父さん!!」「すまんなカレン……お前の言う通りに、話を聞いておけばよか………ガクッ!」「お父さん……お父さあぁぁぁんっ!?」ちなみに、気絶しただけです。しっかり手を抜いてましたから。………結局カレンを悲しませる結果になっちまったなぁ……。俺はベルガーさんを担ぎ、医者の元へ連れていった……。この結果、原作同様にベルガーさんが入院するはめに……せっかくゲヴェルを撃退したのに、本末転倒だなぁ……と感じつつ、俺はその場を後にした。**********ボツにした理由。・ベルガーさんキレ易過ぎ。・シオン若干上から目線過ぎ。・文中の様に本末転倒。などなどが理由です。実際はまだベルガーさんにはその辺(ハーレム状態)が説明されていません。仮に説明されても、ベルガーさんは大人なのでシオンを試しはしても、ここまで敵愾心剥き出しでは怒らないです。怒りはするかもですが、静かに怒る人だと思うので。***********おまけ2if話・あの人は今……。「そういえば父上達は?」王家の剣たる我が家は、王都の郊外に大きな邸宅を構えている。その誓いもあり、敵が王都に侵入しよう物なら、直ぐさま駆け付けそうなモノだが……。「ウォルフマイヤー卿は部隊を率いて、敵の迎撃に出ている。そのおかげで、王都に侵入した敵は少ないのだ」成程なぁ……父上達も頑張ってるんだな……。気を探ってみたが、ほとんど勝負はついたみたいだし……。余談だが、父上達が迎撃した敵はユング達のみだったので、なんとか被害を最小限で食い止めたらしい。運が良いと言うかなんと言うか……。もし仮面騎士が居たら、流石の父上でも苦戦しただろうがな……。「あ、オズワルド達……大丈夫か?」これまた余談だが、彼らは破竹の勢いでユングどもを屠り、父上の部隊でもかなりの活躍をしたそうな………え、忘れてたんじゃないかって?忘れるワケないだろう?あいつらにはとりあえず、父上のところで色々学んで貰おうと思ってね。もし、俺が正式なナイツになれたら、直属の部下として正式に雇うつもりですが何か?そのためにも、ゲヴェルの野郎とは早急に決着を着けなきゃな!