「王位奪還の手助け……ですか?」「そうだ。現在、総力を上げて進軍中らしいが、相手もさるモノ……攻めあぐねているらしい」休暇を終えた俺達は、謁見の間にてアルカディウス王から新たな任務を言付かっていた。いわく、エリオット達の手助けをしてくれと。ローランディアからも、援軍を送ってはいる。ダグラス卿と父上の連合軍にはベルナード将軍指揮下の部隊が……ジュリアの軍にはブロンソン将軍の部隊……更には、ランザックからはウェーバー将軍率いる部隊が応援に向かったとか……。ハッキリ言おう。原作以上の大軍勢だ。バーンシュタインの兵力は、確かに強大だが……この面子で攻めあぐねる……?ローランディアにしろ、ランザックにしろ……あくまで一部部隊の増援なので、押し切るとは言えないが、少なくとも優勢に事が運べている筈なんだが……。「これだけの軍勢を相手に、拮抗しているとは……」「うむ、何かあるのやも知れぬ。お前達には、それを調べて貰いたい。そして、問題があったなら、それを解決して来て欲しい」「はっ、かしこまりました」ウォレスが疑問に思うのも無理は無いな……。俺も、ジュリアの定期報告を聞いていなければ、疑問に思っていたかも知れんし。王から言い渡された任務を、カーマインが締め括る形で引き受けた。ちなみに、エリオットは原作より早めに行動に移っているため、城内襲撃イベントは起きなかった。「さて……どうする?」謁見の間を退出した俺達は、今後の行動について話し合う。カーマインが皆を見回して問う。「ジュリアンさんと、エリオット君……ジュリアンさんのお父さんと、先生のお父さん。どっちから応援に行けばいいんだろう?」「王様の話だと、どっちも攻めあぐねているって言ってたよね?」「となると……両方とも妨害を受けているんだろうな。恐らく……」「シャドー・ナイトか……チッ、胸糞悪い!」上から、ルイセ、ティピ、ウォレス、ゼノスだ。確かに、シャドー・ナイトの妨害もあるかも知れない……あのモンスター使いが、あれくらいで懲りるとは思えないし。他にも、グレンガルの野郎……あの金の亡者が、妨害しないワケが無い。所謂、死の商人であるが故に……。それとゲヴェル……奴も仮面の騎士を使って妨害していても、おかしくはない。原作でも、色々暗躍していたしな……。そして、未だに正体が見えない連中……青髪の双剣士と……ラルフの夢に出て来た男。前者は、その正体について朧げだが見当は付いている。だが、後者……ラルフの夢に出て来た男については、その存在も目的も理解出来ないが。一つだけ分かるのは、この二人は俺と同じ……転生した者かも知れないということ。これは、その言動の内容を伝え聞いた上での判断だから、状況証拠であって、絶対的な証拠にはなり得ないのだが。「これは、毎度お約束のパターンだが……パーティーを二つに分けるのが得策じゃね?」「そうだね……僕もシオンの意見に賛成するよ」俺の出した意見に、ラルフが賛成してくれる。他のメンバーも、特に文句は無い様だ。せっかく人数が居るんだから、それを上手く活用しないとな?「とりあえず、シオン君とルイセ君は別々で。何かあった時、テレポートが使えるからね」アリオストが言う。文字通り、テレポート要員ですね分かります。で、厳正な話し合いの結果……このようになりました。・カーマインチームカーマイン、ティピ、ルイセ、ウォレス、ラルフ、リビエラ・俺チーム俺、ゼノス、カレン、アリオストうん、存外バランスが取れていると思う。人数的にはこちらの方が少ないが、戦力的に。まぁ、俺の存在が明らかなバランスブレイカーになっているのは、ご愛嬌ってことで。ちなみに、このチーム分けに異議を申し立てた者が一人居たが、丁寧にお話して納得させました。まぁ……以前もカーマインチームだったからな……リビエラ。「じゃあ、俺達がジュリアンの方に向かい……」「…俺たちがシオンの父親である、ウォルフマイヤー卿の方に向かえば良いんだな?」カーマイン達に、父上達の方へ向かってもらい、俺達がジュリアの方へ向かうことが決まった。最初は逆で、俺達が父上達の方に向かう予定だった。何しろ、アンジェラ様やダグラス卿を説得した際に居た面子が、俺、ラルフ、カレン……そしてエリオットだったのだから。他にも、父上や母上が居るし……な。だが、俺は考えた。もしかしたら、ジュリアに送られた援軍は到着していないんじゃないか……と。原作においても、ブロンソン将軍はグレンガルの手勢に足止めをされていた……。その可能性を考えたら、カーマイン達より、俺達の方が適任だったりする。俺はバーンシュタイン国民だし、ジュリアの部隊の連中とは顔見知りだ。カーマイン達はベルナード将軍経由で、父上達に会えるだろう。今、確実に援軍として機能しているのは、ベルナード将軍とその部隊だろうから。シュッツベルグの手前に関所があるが……既にベルナード将軍の部隊が通っている筈だから、そんなに手間を掛けずに通れる筈だ。いや、援軍だと言えば……結局はどちらでも面通りは叶うとは思うが……念には念を入れて、な。物事を楽観視するのは、あまりよろしくないし。「多分、父上達は北の町、シュッツベルグより先に布陣している筈だから、オリビエ湖辺りから行くと良いかもな」「分かった。それじゃあルイセ……頼む」「うん!それじゃあ、テレポートするよ!」こうして、再びパーティーを二つに分けた俺達……。カーマイン達はテレポートを使い、オリビエ湖へ。そこから経由して、シュッツベルグ……そして父上達の陣へ。というのが理想的だろう。我がアジトを経由してから、シュッツベルグ入り……も、考えたが。実はオリビエ湖を経由するより、若干だが距離があったりするので却下にした。……原作だと、途中でゼノスによるイン○ィ・ジョー○ズ攻撃を喰らうイベントがあるが……。「ん?なんだよ?」「いや、何でもねぇよ」ゼノスは首を傾げている。まぁ、ゼノスは現在進行系で仲間だし……問題は無いだろう。あっちにはラルフも居るし……な。って、コレも楽観視か。「それじゃあ……僕たちも行こうか」「よし、じゃあ瞬転を使ってパパッと行くか!」瞬転なら、ジュリア達の目の前に現れることも可能!まぁ、大根が走り回る可能性大なんでやらないが。比較的近場に転移しておくさ。「じゃあ行くぜ……瞬転」こうして、俺達も目的地……ジュリア軍の陣地へ向かうのだった。**********「……はい、到着!」ルイセの言う様に、オリビエ湖に到着した。……あまり良い思い出のある場所では無いが。「シュッツベルグは此処から東にある……とにかく、今は東に向かうべきだね」「そうだな……」ラルフの言葉に頷いた俺たちは、オリビエ湖から街道に出て、東へ向かい歩き出した。道中、モンスターが襲い掛かって来たが、比較的簡単に撃退出来た。さりげなく、実力が上がっているのを実感したな……。途中、関所があったが……俺たちがローランディアからの援軍だと言うと、意外とすんなり通してくれた。やはり、ベルナード将軍の部隊は既に合流しているらしく、関所に居た兵士達はジュリアンの父…ダグラス卿の部下であるそうな。この先にある町、シュッツベルグはダグラス卿の領地らしいからな。「思いの外、すんなりと通れましたね」「ローランディアの部隊が、援軍として向かっていたのが大きいんだろうな……それに、早い段階でダグラス卿を説得出来たのもな。でなければ、今頃は門前払いだ」ラルフとウォレスが言う様に、様々な要因が絡まった結果なのだろう。そんなことを話しながら進んで行くと、坂道に差し掛かった。周囲には深い森と崖がある……まぁ、山道と言っても良いな。そこに……。ゴロゴロゴロゴロ………ッ!「何だ、この音は?」「何かが転がってくるような……」ルイセが言う様に、何かが転がって来る様な音だ……此処は坂道。転がって来るとしたら上からだ。……嫌な予感しかしないんだが。「転がる……って、アレ!!」ティピが指し示す先には……街道の道幅を超える巨大な大岩が……って!?「何ぃっ!?」「どうするのよ!こんなところに隠れる場所なんて……」リビエラが言うが……確かにその通りだ。右は崖……左は森だが、木々が密集し過ぎて、咄嗟に飛び込むには……って、考えてる時間は無……。「くっ……間に合わないか……!?」「もうダメーーっ!!」ラルフの気が高まる……何かしようとしたらしいが……ルイセの悲鳴が示す様に、大岩は目前に迫っていた。俺達は、このまま死ぬのか……?いや……死ぬものか……。死なせる……ものかあぁっ!!俺がそう強く念じた瞬間、大岩が俺達にぶつか―――ドガァァァ!!!――ガラガラ……………ズシーーーンッ!!――る前に、何かに弾かれ崖の下へと落ちて行った。「……何が起こったんだ?」「……今、何かに岩が弾かれて……」「…こ…怖かった……」ウォレスは目が見えないから、何が起きたか分からなかったが……。ティピが説明している……ルイセは本当に怖かったらしい。腰を抜かしてしまっていた。俺も生きた心地がしなかったからな……。「そういえばラルフ……貴方は何をしようとしていたの?」「いや、あの岩を斬るか砕くかしようと思ったんですけど……斬った場合、砕いた場合、流れ弾がみんなに当たる可能性があったから……受け止めるなり、崖に蹴落とすなりも考えたんですけど……その考えに至った時にはもう、そこまで気を高める時間が無かったので」……つまり何か?気を高めることが出来たら、あの大岩をどうにか出来た……と?「今回は運が良かったけど……考え過ぎて逆に皆を危険に曝してしまった……ゴメン」「いや、まさかお前にそんなことが出来るとは思わなかったし……な」実力に開きがあるのは理解していたが……そこまでなんてな。まだまだだな……俺も。……まぁ、運が良かったと片付けるには、不可思議な現象だったんだが。このまま突っ立っているワケにもいかないよな。俺たちはとりあえず先に進む……道中、不可思議な現象について話し合いながら。「悪運の強い連中だな」「誰だ!?」俺たちが坂を登り切った先には……あの仮面の騎士たちが待ち受けていた。「!?お前達は……」「お前たちを此処から先に行かせるワケにはいかんな」「そのグローシアンの娘共々、此処で始末してやる!」ラルフが驚愕の表情を浮かべている……奴らの狙いはルイセか!?もしや、あの大岩もこいつらが……!?「どうしてルイセを狙う!?」「邪魔なんだよ……」「何……!?」「我々の計画には、グローシアンは邪魔なのだ。特に、その娘とあの男が持つグローシュは強過ぎる!」あの男………シオンのことか?奴らの周りには、ユングと呼ばれた怪物が多数……。「やるしか……ないみたいだね」「ああ……奴らを蹴散らす!ルイセをやらせるワケにはいかない!」ラルフは言いながら愛剣であるレーヴァテインを抜き放つ……俺も決意と共に妖魔刀を抜き放った。「行くぞ……みんな!」「ああ!」「うん!」「よし!行こうか」「任せて!」上から俺、ウォレス、ルイセ、ラルフ、リビエラだ。みんながそれぞれの得物を構えた。「よぉし……いっけぇぇーーっ!!」ティピの号令と共に、俺たちは駆け出す。正確には、俺とウォレスとラルフだが……。「行くよ、カーマイン!」「ああ!」俺とラルフはユングの群れに躍りかかった。「でぇぇいっ!!」『グギャッ!?』ラルフの一太刀が数体のユングを、まとめて真っ二つに切り裂く……切り裂かれたユングは、レーヴァテインの炎により焼き尽くされた。『グギャギャ!!』突然、地面が隆起して襲い掛かって来た……が、俺はそれを見切ってバックステップ。ソレを避ける。「そんな見え透いた攻撃……喰らってやるかよ!」俺は瞬時に間合いを詰め、攻撃してきたであろうユングを切り捨てる。そして、振り向きざまに、近場に居た奴を。『ギャッ!?』切り裂いた。「行くわよ、ルイセちゃん!」「はい、リビエラさん!」「「マジックガトリングッ!!」」空から無数に、流星の様に降り注ぐ魔法の矢が、ユングたちを蹂躙していく。全く……頼もしい後衛だぜ。「二人とも、跳べ!!」その声を聞き、その場から跳躍する俺とラルフ。「ぬおりゃああぁぁぁぁぁぁっ!!!!」俺たちの眼下をエネルギーの奔流が走る。ウォレスのオーラバスター(シオン命名、だがシオンは豪殺気合い拳と呼んでいる)だ。エネルギーの渦に飲まれるユングたち……エネルギーの奔流が止まり、俺たちが着地した時には、ユングは片手で数える程度までに減っていた。「ば、馬鹿な……人間に此処までの力が……」仮面騎士たちが驚愕している……。まぁ、分からなくは無い。さして時間を掛けずに、殆どの戦力を潰されたのだから。ニヤッ……。!?コイツ……今……笑ったのか?「!?しまった!ルイセちゃん!!」ラルフが咄嗟に振り返る……そこにはルイセたちの背後から忍び寄るもう一人の仮面騎士が……!?「ふん!!」ガキイィィィン!!!「くっ……」俺は目の前の仮面騎士の剣を防ぐ……こ、コイツら……強い!?「邪魔はさせんぞ……お前には俺の相手をしてもらおうか?」「くそっ……邪魔をするなぁ!!」見ると、ラルフも仮面騎士に邪魔をされ、ルイセの救援が出来ない様だ。ラルフが相手をしている仮面騎士も、どうやら今までの仮面騎士より手強いみたいだ……。今、手が空いているのはウォレスとリビエラだ……だが、ウォレスが救援に向かうには距離がありすぎる……!!「気付かれたか……だが、そのザマではどうすることも出来まい……」「ば、馬鹿にしないでっ!わたしだって、やれるんだからっ!!」ルイセがカードの魔力を使い、仮面騎士に攻撃を加える……光の柱が仮面騎士を襲った。しかし、仮面騎士はそれを紙一重でかわしやがった……。そして一気に間合いを詰め……。「あ……」「死ねぇ!!」「やらせないっ!」その凶刃を防いだのはリビエラだった……。リビエラは自身が使う杖で、仮面騎士の剣を防いでいた。「ルイセちゃん……今のうちに……」「舐めるなぁ!!!」「うあぁ!!?」仮面騎士は、リビエラを思い切り蹴り飛ばした。木に激突したリビエラは、一瞬だけ息が詰まったかの様になったが……同時に不敵な笑みを浮かべた。何故なら……。「これが……わたしの力よ!ソウル……フォースっ!!」「しま……ぐああぁぁぁぁぁぁぁっ!!!??」ルイセの唱えた呪文が炸裂したからだ。『ソウルフォース』高度に練り上げた魔力を物質化し、目標を破壊する攻撃魔法。三本の光の槍が敵を貫き、合わさった魔力エネルギーが爆発し、相手を飲み込む。その威力は、既存の魔法の中では最強の破壊力を持つ。……シオンの編み出した魔法の中には、これより破壊力のある魔法もあるらしいが……。ちなみに、ラルフもソウルフォースは使えたりする……俺はまだ使えないが。「やったか……?」ウォレスが呟く……そして爆炎の中から現れたのは、ズタボロになった仮面騎士だった。「お、おのれぇ……まだ……まだだぁ!!せめて……貴様だけは道連れにぃ!」奴は、最後の力を振り絞ってルイセに襲い掛かりやがった!だが……。ドドドドッ!!!「ぐあ……あぁ……」その仮面騎士は、魔力の矢をその身に受け……力尽きた。そして、また以前の様に溶けて消えた……。「マジック……アロー……?」リビエラが腹を押さえながら立ち上がり……口にした言葉。そう、マジックアローだ。だが……一体誰が?リビエラはあの状態だし、ルイセはソウルフォースを唱えたばかりだった……俺やラルフは、今は手が離せない。ウォレスは呪文が使えない……。「どうやら間に合ったようだな……」現れたのは、白い外套を羽織った老人だった。「て、敵!?」「早とちりするでない」「えっ……」ティピは新手と思った様だが、どうやら違うらしい。「お前程のグローシュを持つ者を殺させるワケにはいかないからな……及ばずながら、手助けさせて貰うぞ」どうやら敵では無いらしい……もっとも、味方とも言い切れ無いが……。「今は……コイツらを片付ける……!!」「くっ、調子に乗るなぁ!!!」その後、勝負は意外に早く着いた。残ったユングを、ウォレス、ルイセ、回復したリビエラ、そして謎の老人で蹴散らし……ラルフはラルフで、仮面騎士に打ち勝ち…切り捨てた。そして……。「はぁっ!!」ザシュッ!!「ぐ……あ……」俺の方も決着が着いた。他の仮面騎士の様に、即死では無いが……致命傷ではある筈なので、コイツも直ぐに……。そこに、みんなが集まってくる。そしてウォレスが仮面騎士の前に立ち……。「……2年前、俺の目と腕を奪ったのはお前か?」「……俺であり、俺でない誰かだ……それを聞いてどうする……?」ウォレスの質問に、随分と抽象的な問いを返す仮面騎士。「……無くなっちまった利き腕の仇だ。その仮面の下の面をあばいてやるぜ」意味の無いことなのは、ウォレスも理解しているのだろう……。だが、それでも――何かをせずにはいられなかったのだろうな。「俺には見れないが……みんな、俺の代わりにしっかり見てやってくれよ!」そう言ってウォレスは仮面騎士の仮面を剥いだ………そこには……。「えぇっ!?」「……そ…そんな……」ティピとルイセが愕然としているが……それも当然だ。何しろ…その顔は……。「……………」不敵な笑みを浮かべるその顔は………。「……こ…これで、満……足……し……か………」最後の力を振り絞って、そう言葉にしたソイツは、他の仮面騎士たち同様……その身体を溶かしてしまった……。「奴はどんな顔だったんだ?」仇の顔を尋ねるウォレス……それに、ルイセが答えた。「……お兄ちゃんたちに……そっくり……」「なっ!?」そう、あの夢――ウォレスが目と腕を失う夢――で見た様に……似ていたのだ。俺やラルフに……。いや、似ていたなんてモノじゃない……。生き写しの様だ……まるで、俺たちみたいに……。「一体、どういうことなの……?」「わ、わかんないよぉ……」リビエラの独り言に答える様にティピが言う……。「……そう……なのか……」ラルフが呆然とした様子で、何かを呟いていた。……俺も、似た様な気分だがな……。仮面の騎士……これは偶然なのか……?それとも……。「終わったな……」 そう言って、老人がこちらにやってくる。……この老人、隙が無い。「あの……あなたは……?」「こんな所で立ち話をするのも些か、気が引けよう……詳しい話も出来ぬしな。この先の街、シュッツベルグに宿をとってある……話はそこでするとしよう。ついてこい」ルイセの問いに、そう返した老人。その足で先に進んで行ってしまった。「……どうする?」「罠……とも考えられなくはないが……」「……此処で議論していても仕方ないですよ」「ラルフさん?」俺の問いに、ウォレスが答える。罠……確かにその可能性が高いが……。ラルフの意見は微妙に違うらしい。「どちらにせよ、シュッツベルグを通るわけだし……もしシャドー・ナイツの謀だとしたら、僕達を助けるのは有り得ないことなんです。僕達は邪魔者なんだから……それも僕達の油断を誘うため……と言われたら反論出来ませんが」「あのお爺さんがシャドー・ナイトじゃない……って言うのは確かよ。少なくとも、私が居た頃には見掛けたことの無い顔ね……只者じゃないのは間違いないでしょうけど」ラルフとリビエラの意見は、至極真っ当な物だ。だが、絶対的な意見かと言うとそうでも無い。ラルフの意見は本人の言う様に、油断させる為かも知れないし、リビエラの意見は、リビエラが居た時に居なかっただけで、新しくシャドー・ナイツに入団した奴かも知れない……。「お兄ちゃん……どうするの……?」「……行く。此処まで来たら引き下がれないし。『毒を食らわば皿まで』とも言うし……な」ルイセの問いに答える俺……もし、罠なら真っ向から打ち砕けば良い。これは一種の賭けだ……。方針の決まった俺達は、老人を追って先に進む……そして遂に到着した、シュッツベルグ。宿の前にはあの老人の姿が……。「来たな……こっちだ」町並みに対する感慨に耽る暇も無く、老人に続く俺達。そのまま宿屋の一室に通された。「さて、ここなら話を聞かれることもない」「あの…あなたは……」「私の名はヴェンツェル。元バーンシュタイン王国宮廷魔術師だ」ルイセの問いに答えた人物の正体は、意外な人物だった。「ヴェンツェルって……確かマスターの先生の……」「いかにも。サンドラは優秀な生徒であった」やはりか……だが。「何故、俺たちのことを……?」「私は本来、ランザックにかくまって貰っていたのだが……エリオットが行動を起こしたと聞いてな……及ばずながら、力を貸そうと色々と根回しをしていたのだ……その過程で君たちの存在を知ったのでな」ランザックに……?どうやら、色々と裏があるらしいな……。「あんたは色々知っていそうだな……教えてくれないか?エリオットとリシャール王が瓜二つって事の理由……バーンシュタインに起きた一連の出来事をな」「よかろう……そうだな、この際サンドラにも聞いていて貰おう。証人は一人でも多いほうが良い。ホムンクルスのお前ならば、出来るだろう?」「えっ、あ、はい!」ウォレスの言葉に頷くヴェンツェル。ティピはヴェンツェルに言われて、母さんとテレパシーを繋げるみたいだな……。『マスター!マスター!今、ヴェンツェルさんと話してるんだけど……そう、そのヴェンツェルさん!うん、こっちで起こったことを、一緒に見てて欲しいんです!』どうやら念話で話してる様だ……しばらく間を置いて。「はい、用意はいいそうです」母さんの方も準備は調ったらしい。「久しぶりだな、サンドラ。こちらからは君の事は見えぬが、相変わらず美しいのだろうな」「あ、マスターが照れてる☆」……どうやら、恩師にそんなことを言われ、照れたらしい。母さんも純な所があるんだな……まぁ、シオンとのやり取りを見ていると、嫌でも理解してしまうが。「さて、前置きはこれくらいにして、本題に入ろう。今から話すことは、私が知る限りの真実だ……それを念頭に入れておいて欲しい」そう念を押してから、ヴェンツェル……長いので、爺さんと呼称しよう。爺さんは俺たちを見回して、尋ねてきた。「まず、お前たちがゲヴェルについてどこまで知っているか、だが……」「あの化け物の?」「そうだ」ゲヴェルについては、ある程度なら俺たちも知っている。だが、それとエリオットにどんな繋がりがあると言うんだ……?「それとエリオット君とが、どうつながるんですか?」ルイセも全く同じ疑問を抱いたらしい。「どう繋がるか、だと?繋がるも何も、すべては奴のせいなのだぞ?」「何だって!?」「はるか昔、グローシアンは人々を支配するためにゲヴェルを生み出した。そして人間を救おうとするグローシアンが、魔法を駆使し、ゲヴェルを水晶鉱山に封じた」「それは知ってます。そのゲヴェルが18年前に水晶から現れたって事も」これに関しては、ウォレスが正に生き証人だし……な。「うむ。すべてはあの時から始まった。いま起こっている戦争でさえ、ゲヴェルが人々を支配するために起こしたものだ」「どうしてそんなことを企むのかしら?だって、ゲヴェルを操るグローシアンはもういないんでしょ?」ティピの疑問も分かる。縛る存在がいないのなら、そんなことを企まないで大人しくしてれば良いのに……とでも思っているんだろう。「ゲヴェルとは人々を支配するためだけに生み出された存在。主であるグローシアンがいなくなっても、その命令だけで動いている。まず奴は、過去に自分が敗れ去った原因である、魔法を得ようと考えた。魔法を克服しなければ、また以前の二の舞になる。だがどうやっても魔法を得られぬと知ると、別の方法を考えたのだ」「別の方法?」「そう…『自分が使えぬなら、魔法を使える者を部下にすればいい』とな。その時に裏から人間社会を支配することを思いついた」爺さんの話からすると、ゲヴェルはそれなりに知恵が回るらしい。……益々厄介な奴だな。「まず、奴は自分の驚異的な増殖能力を使い、生まれたばかりのリシャール王子の複製を作り、すり替えた」「ちょっと待った!そのすり替えられた王子ってのは……」「その通りだ……エリオットこそが本物のリシャール王なのだ」そんな事実があったとはな……確かに、俺たちはエリオットを正当な王位継承者だとは思っていたが……リシャール王が造られた存在だったとは……。「しかし、何でアンタはそんなに詳しいんだ?幾らバーンシュタインの宮廷魔術師とは言え……ゲヴェルの内情をそこまで知っているなんて、普通有り得ないだろ?」俺はそんな疑問をぶつけた……疑惑と言っても良い。この爺さんは俺たちを嵌めようとしているんじゃないか……?そんな疑惑を……。「………出来れば言いたくはなかったが………」少し言いにくそうに(見た目には表情に変化は無いが)口を開いた爺さんは……衝撃の事実を話す。「王子の細胞を手に入れ、そして偽の王子とすり替えたのが、この私自身だからだ」「えぇっ!?」爺さんから話を聞いたルイセは驚愕する……いや、ルイセに限らず……だが。「あの頃の私はゲヴェルに従うしかなかった。なにしろ奴は驚異的な力を持っている。いつでも私を殺すことが出来たのだ」「俺のいた傭兵団を壊滅させたくらいの力だからな……」どうやら、半ば脅迫じみた事があり、やむを得ず従ったらしい。ウォレスも納得している様だ。「ゲヴェル自身が魔法を得るための研究。すり替わった王子が政権を得るまでの面倒をみること。来るべきゲヴェルの支配のための地盤固めをする手駒として、私は20年近くも働かされた……他の手駒と違って、宮廷魔術師という身である私は、かなり使い勝手が良かっただろうな。よほどのことがない限り殺すつもりはなかった……だが、そこに私の付け入る隙があった。奴の行動に目を光らせ、監視するには、手下のふりをするのが一番だったからな」言ってることは道理だが……随分、大胆な行動だな。東方の『諺』という奴では……『灯台もと暮らし』とか言うんだよな……確か。「だからこそ、始末されそうになった本物の赤子をこっそりと助け出し、育てることが出来た」「それでは、エリオット君が無事に育ったのは、ヴェンツェルさんのおかげだと……」ラルフの言う様に、エリオットの命の恩人とも言うべき人物なのだろう……この爺さんは。エリオットがこの場に居たら、感謝してもしたりないくらいに、感謝するかもな……。「正直に言えば、私はゲヴェルの計画を潰す切り札を得るために彼を利用しようとしたのだ。結果としてエリオットの命を救ったことになるだけに過ぎん」「なんか、素直じゃない感じね〜」「……話を進めよう」うお!この爺さん……ティピの茶化しをスルーした!?……出来るな。「先日の戴冠式で、ついにゲヴェルの操り人形が王位についた。役目を終えた私が奴らに始末されるのは、火を見るより明らかだ。そこで私は、魔法技術の確立されていなかったランザック王国に、魔法を教えることを条件にかくまってもらうことにしたのだ」「それで突然いなくなったんだね」母さんいわく、行方をくらましていた理由もこれで説明がついた訳だな。「あの……さっき、ゲヴェルがエリオット君の複製を作ったって言われましたけど、どうすれば、そんなことが出来るんですか……」「我々の体を構成するものすべてには、その者の情報が詰まっているのだよ。例え髪の毛一本でもな」「髪の毛一本!?」ルイセの質問に答えた爺さん……その答えを聞いて、ティピが驚いている。「子供が親に似るのは、両親の情報を半分ずつ受け継ぐからだ。だが一人の情報をそのまま受け継げば、全く同じ人間が生まれる。簡単な例をあげれば、一卵性の双子だ。一つの卵が二つに分かれ、母親の体の中で同じ情報を受け継いだ存在が2体出来たのが、一卵性の双子だ」「成る程……だからまったくそっくりなのね」リビエラが納得した様に頷く。まぁ、俺も納得ではあるがな。「つまり、俺とラルフが正にその見本ってワケか……」「そのことですが……一つ、お尋ねしたいことがあります」ラルフは爺さんに問い掛ける……その顔は強い決意が込められている。「なにかな?」「僕達には、本当の両親は居ません……僕もカーマインも、それぞれ違う家に引き取られ、育って来ました……そんな時、風の噂で聞いたんです……僕には双子の弟が居ると……そして、巡り巡ってカーマインと出会えました。僕らは双子の兄弟だと、信じて疑いませんでした……」……ラルフ、お前……何を……。「君は何が言いたいのかね?」「――単刀直入に伺います。僕かカーマイン……或いは二人とも、ゲヴェルに生み出された可能性は………ありますか?」!!?「な、なにをいってるのよラルフさん!?」「そうだよ!!そんなことあるはずないじゃない!!」「もしかして、さっきの仮面の騎士の顔のことを気にしてるの?だったら……」「ティピちゃん、ルイセちゃん、リビエラさん……いや、皆も思った筈だ。偶然にしては出来過ぎているって……」それは……俺も思った……。「それに、僕はまだ皆に言ってないことがある……ウォレスさんが仮面の騎士に襲われた夢を見た時……ウォレスさんが滝壺に落ちた後……その続きがあるんです」!ラルフ……まさかアレを……。「仮面の騎士が仮面を脱いで、落ちたウォレスさんを嘲笑っていたんです……その顔も僕らに瓜二つだったんです」「何だって!?」ウォレスが驚いている……当然か。もう、隠していても仕方ない……か。「俺もその夢を見た……確かにあの顔は……同じだった。俺たちと……」「……そんな……」俺もラルフと同様のことを告白した。皆も、少なからずショックを受けている。「……確かに、ゲヴェルは自分の身体から、自分の複製を作り出すことが出来る。この能力を利用してエリオットと全く同じ情報を持った赤子を作り出した……そして、とある人物から得た細胞から、自分を守らせる私兵を作り出したらしいが……」「それが、あの仮面の騎士……」「だが、私にもその人物が何者なのかは分からんのだよ。私自身、奴らの素顔を見たのは今回が初めてなのでな。だから、君達の問いには答えてやれん……君の言う様に、二人ともそうかも知れんし、違うかも知れん……奴らは君達の細胞から造られたのかも知れんしな……それに、君達がゲヴェルの人形だとしたら、奴の不利益になるようなことをしているのはおかしい……今の君達の行動は、明らかにゲヴェルにとっては不都合なのだからな」「そう……ですか」ラルフは納得のいかない表情をしていた……が、一瞬……何かを決意した様な顔をした気がしたが……気のせいか?…………………。周囲に変な空気が漂う……やむを得ないのかも知れないが。「話は変わるけど、ヴェンツェルさんの話からすると、今のリシャール王って偽物とは言っても、本物と違いがないってことにならない?」その空気を変えようとしてくれたのが、リビエラだ。「半分は当たりだ」「それじゃ、ハズレの半分は?」その流れに、爺さんとティピも乗ってくれたみたいだ……爺さんはポーカーフェイスだが。「ゲヴェルが自分の意のままになる人形を作る時に、何の細工もしないと思うか?例えばリシャールは、たったの14歳でありながら、他のインペリアル・ナイトを凌ぐ実力を持ち、ナイツ・マスターとなった」「あ、なるほど」「だんだん読めてきたぜ。エリオットの複製を利用して、自分にとって都合の良いように行動させる。ひょっとして、ティピとサンドラ様の関係同様、テレパシーで繋がってんじゃねぇか?」ティピは納得の意を示す。そして、ウォレスもゲヴェルとリシャールのカラクリを指摘する。「まさにその通り。それ故、奴が表舞台に出ることなく、自分の手駒を動かすことが出来るのだ」爺さんが、俺とラルフに関して、ハッキリ言えないのはその辺にあるのだろう。もし、俺とラルフが仮面騎士と同じ存在だとしたら、ゲヴェルの命令を受けて動かされている筈…………命令?あの時の声……初めて王都の外に出た時の……あの夜…………。まさか、な……。……仮にそうだとしても、俺のすべきことは変わらない。ゲヴェルなんかの好きにはさせやしないさ……。***********その後、爺さんは語る……エリオットがリシャール王と対面した際に、自分がエリオットの腕輪と、リシャールの腕輪を外して見せると……。腕輪の降りは、シオンから聞いていたので知っていたからな……。本物の腕輪には、時の宮廷魔術師3人の署名が彫り込まれていることも。爺さんが言うには、今現在……あの腕輪を外せるのは自分だけらしい。「話が長くなったな。エリオットの出生を証明する時には必ず駆け付けよう。私はそれまでにやらなければならないことがあるのでな……これで失礼させてもらう。宿はとってあるから、良ければ泊まって行くと良い」「やらなければならないこと?」「最初に言ったが……幾らか根回しも必要なのでな……もっとも、君達が優秀なので、私のやることは殆ど残ってはいないがね……そういうことだ、サンドラ。彼らを導いてやってくれ」「………うん。マスターが承知しましたって」ティピの言葉を聞き、静かに頷いた爺さんはその場を去ろうと……。「あ、待ってください。あと一つだけ、聞きたいことがあるんです」「?何だ?」ルイセがそれを呼び止めた……聞きたいことがあるらしいが。「さっき、仮面の騎士がわたしを襲った時、助けてくれましたよね?どうしてあの時、助けに来てくれたんですか?」「ゲヴェルは自分の創造主であるグローシアンの前では能力を失う。バーンシュタイン内で起こったグローシアン殺害事件は、自分の弱点を無くすため、ゲヴェルが命じていたものだ。魔法学院のマクスウェルが自分の研究のためにグローシアンをさらったのは、ゲヴェルによるグローシアン殺害事件を利用したに過ぎん。ゲヴェルはユングという自分の複製の他にも、シャドー・ナイツまで利用してバーンシュタイン王国内のグローシアンをすべて抹殺させようとした……もっとも、その企みもシオン・ウォルフマイヤーによって、未然に防がれていたみたいだがな?」「まぁ……ね。全員が全員と言うワケにはいかなかったけど……それにしても、やけに詳しいわね?私たちはかなり秘密裏に動いていた筈だけど?」リビエラは、訝しげに爺さんを見遣る。爺さんは爺さんで、リビエラの方を見ながら言っていたことから考えて、ある程度は『知っていた』のだろう。全く、底知れない爺さんだぜ……。「蛇の道は蛇……ということだよ」「にしては、随分シャドー・ナイツに関しても詳しいみたいじゃない?」「詳しくて当然だ。シャドー・ナイツは私が先の王に進言して作ったものなのだから……もっとも、半分はゲヴェルに命じられたのだがな……そして、私が初代マスターの座に就いていたからだ」「ええっ!?」リビエラの問いにあっさりと答える爺さんだが……結構とんでもないことだぞ?ティピがたまげているし……。「シャドー・ナイツは政治の裏の汚れ仕事を請け負う、言わば必要悪の集団として作られた……今やただの暗殺部隊に成り下がったがな」「それなら今のマスターは?」シャドー・ナイツにそんな背景があるとは……。ウォレスは、疑問を尋ねた。初代……ということは、今は別のナイツ・マスターが居ると言うことだからな。「おそらくガムランだ。奴の狡猾さ、毒物や呪術の知識があれば当然のことだろう……だが奴は残忍過ぎる……」「ガムラン……奴が……」ウォレスにとっては、傭兵団時代の戦友らしいので、思うところがあるのかも知れないな。「それで納得できたわね。ガムランがランザック王国をたきつけて、ローランディアを挟み撃ちにしようとしたんだ」ティピの言う通りなのだろう……その企みは俺たちで潰させて貰ったのだが。「ルイセよ。お前はグローシアンの中でも一、二を争う程の能力を持つ。言わばゲヴェルを倒せる数少ない存在だ。だから守った……それだけのことだ」そう言って今度こそ爺さんは去って行った。幾つかの謎は解けた……だが、同時に大きな謎も生まれた。俺とラルフの存在……。真実が何であれ、俺が俺であることに変わりは無い……。それはラルフも同じ筈だ……。その日はヴェンツェルの爺さんの好意に甘えて、宿に一泊することにした。外も日が暮れて来ていたし……な。**********おまけコンコン……。「お兄ちゃん……おきてる?」「……ルイセか?」こんな夜更けに……どうしたんだ?「鍵は開いてるぞ」そう言うと、ルイセが怖ず怖ずと部屋に入ってくる。「どうしたのルイセちゃん?」ティピも疑問に思っているらしい……。「あの……お兄ちゃん……わたしね……」言いにくそうに、何かを口にしようとするルイセ。……何となく分かったな。「ルイセ……俺は気にしてないぞ?」「え……」「大方、俺の出生に関して……俺が落ち込んでると思って、慰めに来たって所だろ?違うか?」「あ……その……」……分かりやすい奴。「……どうしてわかったの?」「俺がまだ、王都の外に出られない頃……ルイセが外の話を聞かせてくれた時があっただろ?あの時と似た雰囲気がしたから……何となくな」そう言ったら、ルイセは赤くなって俯いてしまった。可愛い奴だなぁ……。「さっきも言ったが、俺は気にしない。俺は俺だからな……それとも、ルイセは俺が人間じゃなかったら嫌か?」「そんなことない!!」うぉっ!?「お兄ちゃんはお兄ちゃんだもん……わたしの大好きな……お兄ちゃんだもん……」「ルイセ……」やばい……泣かせちまった。俺はルイセの涙なんか、見たく無いのに……。「ゴメンなルイセ……心配しなくても、例え話だって……そうかも知れないってだけで、そうと決まったわけでは無いんだからさ」俺はルイセを優しく抱きしめ、ポンポンと背中を叩いた。「お兄ちゃん……」「心配するな。俺は俺だ……例え、何があろうとルイセの側に居てやるから、な?」「うん……うんっ……約束……だよ?」俺はルイセの問いにゆっくり頷く。……ルイセは兄として慕ってくれているのだろうが……一人の男として、こいつを支えてやりたいとか考えるのは……贅沢な悩みかも知れんなぁ。*********後書き。そんなワケで、サンドラの師匠…ヴェンツェルの登場&カーマインとラルフ、真実に触れるの巻です。ちなみに、初めてパワーストーンを発動させてしまいました。カーマインが若干ポジティブ気味です。これは原作ゲームの選択肢なんかを鑑みた結果だったり。おまけはカーマイン主人公で、ルイセの好感度が高かったら……的イベントだと思って戴ければ。………ジュリア?だ、大丈夫……次回か次々回にはスーパージュリアタイム!……の筈?そ、それでは!m(__;)m