夕食が終わった後、皆はそれぞれの部屋に戻った。夜の帳が降りる頃……多分、それぞれの時間を過ごすのだろう。手紙を書く人も居れば、早めに休む人も居るわけで。まだ寝れなくて、時間を潰す人も当然居る。私?私はお風呂に入って、それから着替えて……。今はシオンの部屋に向かってる。……カレン達に言ったことを実行に移すつもりだったりする。つまり、夜這い。……無理矢理、肉体関係を迫ったりはしないわよ?シオンの想いを尊重したいって気持ちは私にもあるもの。他の皆は気付いてるか分からない……ケド、私には分かる。シオンが……その……凄く我慢しているってことを……。本当は私達とおもいっきり愛し合いたいって……私の自惚れかも知れないケド、私はそう感じた……。多分だけど、本気で私が……私達が懇願したら、受け入れてくれると思う……。「けど、そんないやらしいこと…………っ!」私はその光景を想像して、思わず身もだえしてしまう。こんなことを考えるなんて……欲求不満なのかな……?でも、大好きな人と一つになりたいと思うことは、自然なことだと思う。けれど、シオンも我慢しているのに、私が暴走するわけにはいかないから……。「でも、これだけ私達を想わせてるんだから……少しくらい我が儘を言っても良いわよね?」うん……せめて、抱きしめながら寝るくらい良い筈だ。シオンの暖かさと匂いに包まれて眠りたい……それくらい考えても罰は当たらない筈だ。……仮に、仮によ?その時にシオンが狼になったとしても、私は一向に構わないわけだし……。いや、その可能性はかなり低いとは、思ってるんだけどね……けれど可能性が無いわけじゃないじゃない?だから、お風呂に入って身体を隅々まで洗って、歯磨きして……あ、あくまで覚悟の問題であって、き、期待しているわけじゃないんだからね!?……と、そうこうしている内にシオンの寝室にたどり着く。カレン達も誘ったケド……来るかな?私は扉を前に深呼吸……すー…はー…すー…はー……よし、大丈夫。私はノックをする。コン、コン。控えめにした筈のソレの音は、思いの外響き渡り、私はびっくりしてしまったが、ここで止まる訳にはいかない。「……シオン?私だけど、今……良いかな?」私は中に居るであろうシオンへ、扉越しに声を掛ける。すると、部屋の中から足音が近付いて来る。そしてゆっくり扉が開かれ、中から現れたのは……。「カ、カレン…!?」「こ、こんばんはリビエラさん……」そう……中から現れたのはシオンでは無く、申し訳なさそうな顔をしながらこちらを伺うカレンだった。ま、まさか一番乗りを取られるなんて……ううん!今、一番重要なことはソレじゃないわ!カレンが申し訳なさそうな顔をしている……ということは……。ま、まさか……。「カ、カレン……貴女まさか抜け駆けを……っ!?」「!?ち、違います!!なんでそうなるんですかぁ!?」……違うの?ジト目を向ける私に、カレンは赤くなりながらも説明する。カレンが言うにはこういうことらしい。カレンは私に夜這いへ誘われたことで、自分もシオンの寝所に向かうことを決意。私より早くたどり着いたカレンは、部屋の扉をノック……しかし中から返事は無かった。少し疑問に感じ、寝ていたら悪いとは思いながらも軽くドアノブを捻ると……。「ドアが開いてしまい、中の様子を伺ったけど、肝心のシオンがいなかった……ってわけね?」「はい……」カレンが申し訳なさそうにしていたのは、シオンの部屋に無断で入ってしまったから……らしい。「けど、なんでまた部屋の中に?」「いえ、その……つい……(言えない……シオンさんのベットに横になっていたなんて……ついさっきまで、シオンさんが横になってたのかな?シオンさんの温もりと匂いが……嫌だ、私ったら……はしたない……)」カレンは真っ赤になりながら俯いている。……うん、深くは聞かないであげよう。何かをしていたのだろうけど、それを指摘するのは野暮だろう。……もしかしたら、私も何かしていたかも知れないし。今はそんなことより、シオンが何処に行ったのか……よね?「シオン……まさかこんな時間に外出……?」「それは無いんじゃあ……?剣が置いてありましたし、ベットも暖かかったので、さっきまで横になっていたみたいですから……」成る程……じゃあ、トイレにでも行ってるのかな?「そっか……ところでカレン?一つ聞きたいんだけど」「?ハイ、何でしょうか?」「何でベットが暖かかったって知ってるの?」……………。「!!?いや、それはその……少し触ってみたら……!?」真っ赤になったカレンが何か言ってるケド……まさか?「まさか……シオンのベットの上で……」「し、してません!匂いを嗅いでなんか……あ……」そこまで聞いてないのに……墓穴を掘ったわね、カレン?まぁ、そこを突っ込むつもりは無いけど、ね?私も同じことをしたかも知れないし……今はそれよりもシオンだ。「仕方ないわね……部屋の中で待たせてもらいましょう」「えっと……部屋で、ですか?」「ええ、部屋で待っていれば行き違いにはならないだろうし、何よりシオンを驚かせられるでしょう?」我ながらナイスアイディア♪そう思ったのだけど……。「あの……シオンさん、人の気配とか読めるらしいから、それは無理じゃないかなぁ……と」「……………」……そういえば。待ってよ、そうなると……。「事前に私達の気配に気付いて逃げた……なんてことは……」「………………」カレンは無言の肯定を示す。ひ、否定出来ないのが悲しいわよね……。人の気も知らないで……と言うことは無いんでしょうけどね。シオンの場合、私達の気持ちを知ってて逃げたり……シオンの気持ちは分からなくはないケド……。「……うん、やっぱり待ってましょう。幾らなんでも、ずっと部屋に戻らないなんてことは無いだろうし」シオンの性格上、ずっと逃げ続けたりはしない筈。……多分。「そうですね……待ちましょう」カレンもそれで納得した様だ。それから私達は部屋の中で、談笑をしながらシオンを待つことに。早く戻って来ないかなぁ……。********俺は今、外に出ている。位置的には結界の外だ。何故かって?(と、まぁ……こういうことがあってな?)『そうだったのですか……』(そっちはどうだ、順調なのかジュリア?)『ハイ、エリオット陛下が同行して下さっているのもあるのでしょう……兵の士気が高まっています。お陰で我が軍が優勢です』そう、ジュリアに渡した腕輪を通して、テレパシーで話していたのだ。定期報告……と言うより、近況報告に近いが。……決してカレン達から逃げて来たわけじゃあ無い……本当だぞ?(それは何より……だが、アチラさんにはインペリアル・ナイトが三人も控えているからな……まぁ、リシャール辺りは前線に出て来たりはしないだろうが……)『えぇ、他の二人……アーネスト・ライエル将軍とオスカー・リーヴス将軍は違います……現に、彼らの指揮する部隊には何度か苦汁を飲まされているのも――事実です』あの二人……特にライエルは原作でも最強クラスだからな……引退した筈なのに、そのライエルと互角にやり合える実力を持つ我が父上は何なんだ……現役時代はどれだけだったのかと……しかし、リシャールには負けたんだよな……丁度リシャールとライエルの間くらいの実力か?……と、考えても答えは分からないが。(気をつけろよ……恐らく、リーヴス卿相手なら互角にやり合えるかも知れないが……ライエル卿が相手だと、今のお前でも辛いかも知れない)仮に……だが、何かの流れで一騎打ちをすることになるかも知れない……そうなると、今のジュリアの実力ならリーヴス相手でも互角以上に戦えるだろう。だが、ライエルを相手にして勝てるかと聞かれたら……残念だが否と答えるしかない。実力的にも差はあるが、何よりライエルには甘さが無い。いや、これは正確じゃないな……。実戦に置いて甘さが無いという意味では、リーヴスやジュリアも同様だ。だが、リーヴスやジュリアは騎士道精神という物を掲げて戦っている。勿論、ライエルもそうだが……ライエルはリシャールの為ならば、その騎士道精神を捨て去り、非情に徹することが出来る……故に強い。『お気遣い、痛み入ります……ですが、ご心配は無用です!私は必ず勝利を掴みます!』(いや、俺が言いたいのは……)『その上で、必ず無事に戻ります……貴方の元へ……』(…………!?)『貴方の為ならば……私はもっともっと強くなれます……マイ・マスター。ですから、信じて下さい……私を……必ず無事に戻り、勝利を貴方へ…』成程……ジュリアは俺の言葉が力になると……想いが力になると。参ったな……。そこまで想われていることに……そこまで言わせてしまっていることに。なら、俺が言うべきは一つ。(分かった信じよう……勝って帰って来い、我が騎士ジュリア)『ハイ!我が剣に誓って……マイ・マスター!!』嬉しそうに言うジュリアの声に、苦笑してしまう俺。(だが、自分の大切な女のことを心配するのは仕方ないだろ?)『!?マ、マイ・マスター!?お戯れを……』(戯れじゃない……俺は本気だ。だから、危なくなったら俺を呼べよ?直ぐに駆け付けるからさ)『そんな……そこまで甘える訳には……』いや、ジュリアはあまり甘えたりしないだろ?(むしろ甘えが足りないっての……俺で良ければ容赦無く甘えると良い。しっかりと受け止めてやる)『……はい♪ありがとうございます、マイ・マスター……凄く嬉しいです♪』益々やる気が湧いて来ました!とはジュリアの談。それからしばらく、ジュリアと談笑をするが、明日も早いとのことなので、お開きにした。『それではお休みなさい、マイ・マスター……その、愛しています……』(ああ、お休みジュリア……俺も愛してるぜ)互いに触れ合うことは出来ないが、ならばと言葉を伝え合う。そこに確かな温もりがあることを信じて。「……っと、丁度来たみたいだな……」俺は気配を感じてソコへ向かう……俺が結界の外に出ていた理由……そいつがやってきたからだ。********マクスウェルの野郎に依頼され、俺様はオリビエ湖付近までやってきた……。何でも、この近くにグローシアンを囲っている場所があるとか……。しかし、それらしい建物は何処にも無い。マクスウェルが言うには結界が張ってあるらしいが……。まぁ、マクスウェルには優先的に品物(ブツ)を廻して貰っているからな……今は言うことを聞いておいてやるさ……今はな?「それにしても……敵意と害意のある者を通さない結界……か、どうやら眉唾では無いらしいな……」「グレンガル様、どうしましょう?」連れて来た手下の一人が、俺に聞いてくる。「バァカ……だからこそコイツの出番なんじゃねぇか」俺が取り出したのは、小さな宝珠。「フィールド中和装置……コイツがあれば大概の結界を中和することが出来る」強固なマジックロックですら、コイツで解けちまうって話だ。どんなに強固な結界でも……だ。「良いか?結界を解いたら、直ぐさま侵入してグローシアンを掻っ攫うぞ……その後は予定の場所で落ち合う……良いな」俺が手下どもに指示を出している時……。「やってみると良い……やれるモノならな」その声は響いた……。「だ、誰だ!?」手下達が動揺を現にしながら、周囲を警戒する……忘れもしねぇ……この声は……。森の奥から現れたのは、銀髪の男……以前、俺達の邪魔をした男だ。「テメェは……やってみろとはどういう意味だ?」「何、言葉通りの意味さ……俺の直ぐ後ろに結界がある……その中和装置とやらで、結界を解くことが出来るのか……やってみろって意味だよ」そう言い放つ男……随分と自信満々じゃねぇか……。「フンッ……良いのか?結界を解いた後で……後悔しても知らんぞ」そう警告しても、奴は表情を変えず、好きにしろと言わんばかりだ……上等じゃねぇか。「なら、解いてやる……後悔するなよっ!!」俺は奴に目掛けて宝珠……中和装置を投げ付ける。奴は首を軽く動かしてそれをかわし、中和装置は直ぐ後ろにて炸裂する。瞬間、光が周囲を包み込んだ……。光が晴れたソコには、変わらずに奴が佇んでいた。「残念だったな?何も変化は無いみたいだぜ?」「何……馬鹿な!?」「嘘だと思うなら突き進んでみな……俺は止めないぜ?」奴がそう言って目の前から立ち退いた……つまり、本当に変化が無い……?い、いや……ハッタリかも知れん。「行くぞお前ら!!」俺達は奴を素通りし、突き進んで行った。……数分後。「お帰り……満足したかな?」目の前に奴が現れ、皮肉げな笑みを浮かべながらその言葉を告げる………ば、馬鹿な……。「そんなことがあるか……あの中和装置は、マジックロックですら解除出来るんだぞ……それを」「我が魔力にて編まれた結界……そこいらのマジックロックと同一に捕らえてくれるな……例え世界中のグローシアンが集まったところで、この結界は破れんよ」クックックッ……と、愉快そうに笑う奴を前に、俺様は戦慄する。「貴様……一体、何者だ……?」「只の――皆既日食グローシアンさ……まぁ、普通のグローシアンより、魔力は有り余っているがな?」俺様が問い掛けると、この男はサラっと告げた。ふざけるなよ!!只のグローシアンが……俺様を虚仮にしやがったってのか!?俺は頭に血が上りそうになるのを抑え、冷静に考える。何も、結界の中に無理矢理踏み込むことはねぇ……目の前にはグローシアンが居るじゃねぇか。「……クックックッ、ならテメェを連れて行きゃあ良い。大人しくしてりゃあ手荒な真似はしないぜ?」皆既日食グローシアンなら、マクスウェルも文句は無ぇだろうよ!!俺の言葉を受け、手下どもが奴を取り囲む……俺様も含めて20人近く……これだけの人数だ……幾らコイツでも……。「……どうやら、俺の力をよく理解していないらしいな……」「何……っ!!?」ブワッ!!!「「「ウヒィィィ!!!?」」」瞬間、奴から放たれる夥しい殺気……こ、これはあの時よりも……。何人か気を失いやがった……使える奴らを選んで来たってのにだ……!!「……この身には、唯の一度も敗走は無い」奴が構えを取る……武器は構えていない、素手だ。その筈なのに……。「……化け物がぁ!!」殺気の波を耐え切った手下の一人が、奴に切り掛かった。だが……。「化け物……?違うな……」「ば、馬鹿な……!?」指一本で……剣閃を止めやがった……。ドゴンッ!!!!「ゲハァ!?」切り掛かった手下を、裏拳一発で吹っ飛ばした。手下は木に衝突し、気を失っちまった……。「俺は悪魔だ……少なくともお前達にとっては……な?」「くっ……!?」考えたくないが……コイツは想像以上にヤバイ……!?*********「俺は悪魔だ……少なくともお前達にとっては……な?」俺は某伝説の野菜人の台詞を、アレンジして言い放った。下っ端を派手にぶっ飛ばしたのもあり、全員腰が引けている。加減したとは言え、俺の気当たりに耐えた奴らなんだが……。某紅い弓兵の台詞も効いているのかも知れないな……。さて、コイツらをどうするか……。「お前ら!後は任せるぞ!!」グレンガルが逃げ出そうとする……全くパターンだなぁ。……逃がすわけないだろうが。俺は瞬時にグレンガルの進路に先回りし、逃げ道を塞ぐ。普通の奴には瞬間移動した様に見えるだろうな。「なっ…!?」「逃がすと思うか……?」世の中、どうやっても食えない奴と言うのは居る……クソヒゲ然別、ボスヒゲ然別だ。そして、このハゲも……。ぶっ殺した方が世の為、人の為だろう……。だが……まだ、その時では無い。「この場でお前をぶっ殺すのは簡単なんだがな……今回は見逃してやるよ。誰が黒幕かは知らないが……帰ってソイツに伝えな……俺の周りをうろちょろして、俺の仲間達を傷付ける様なら……必ずぶっ殺す。例え逃げようが、地の果てまで追い掛けて後悔を許さない程無惨に、無様に殺してやる……」俺はその台詞と共に、先程以上の殺気をプレゼントしてやる。バタバタバタバタ!!!グレンガル以外の連中が、次々に気絶していく。それどころか、お休み中だった鳥や動物達まで怯えて逃げ出して行く。「が……あぁ……テメェ……」「どうした……?逃げないのか……?」俺が見下しながらそう言うと、フラフラしながらもグレンガルは去って行く……まぁ、あれだけ脅しておいたんだ……。俺達に対して余計なちょっかいは出さないだろう。仮にちょっかいを出して来たら、さっき言った通りにしてやる。……俺はクズ野郎には容赦はしない。まぁ、奴も金が大好きなだけの商人なので、もしかしたら改心してくれるかも――なんて、チラッとは考えたりしたが――。多分、無理だろう――あの野郎は死の間際にすら金を求めた――自身の命より、金の方が大切と言う……文字通り筋金入りの守銭奴だからな。「さて……残ったコイツらだが……」俺は気絶しているグレンガルの手下達を見遣る……。「……剥くか」俺は全員の衣服や所持品を剥ぎ取り、パンツ一丁にして転がしておく。そのまま結界の中に戻って行った。「で、さっきから何をしてるんだサンドラ?」ビクッ!!俺は隠れている気配の持ち主に声を掛けてやる。すると、気配がビクつき……恐る恐るという風に、木の影からサンドラが現れる。「あ……あの、貴方が部屋から出ていくのが見えて……それで……」「分かってるよ」そう、俺がジュリアと念話をする為……そして、グレンガル達の襲撃に対処する為に結界の外へ向かった時……最初に俺の部屋に訪れようとしていたのはサンドラなのだ。「で、気になって後を尾けて来たと?」「そ、そんな……尾けて来たなんて……」困惑顔を浮かべるサンドラ……イカンなぁ……何かドキドキする。「悪い、サンドラのその反応が可愛いから、ついイヂめたくなった」普段、クールなサンドラだから余計にそう思うのか?こういうのがギャップ萌えという奴なんだろうか……?「か、可愛いって……あまりからかわないで下さい……」私なんかが可愛いわけ無いではないですか……。サンドラはそう言う。顔を真っ赤にしながら言っているので、照れているのが丸分かりだ。「からかっているわけじゃないんだがな……」俺はサンドラをスッと抱きしめる……。「ッ!!シオン……さん……」「サンドラは最高に綺麗で可愛いさ……カレン達になんら劣る所なんか無い……俺の大切な女だ……」「あ……私……」サンドラもしっかりと俺を抱きしめ返してくれる。うん、凄く温かで……優しい気持ちになれる。嬉しそうに微笑むサンドラを見ると尚更、な。「さて、そろそろ部屋に戻るか?」「あの……貴方の部屋へ行っても良いですか…?」「ああ……構わないぜ?ただし、我慢はして貰うが……」俺はサンドラに告げる。所謂、一線を越えるのは無し……これは俺なりのケジメでもあるからな。実際、俺も我慢するんだし……おあいこってことで。「分かっています……時が来る迄は、けれど……貴方の温もりが欲しいから……」「ん、それくらいなら喜んで」俺とサンドラはそのまま俺の部屋に向かうことにする……いつまでもカレンとリビエラを待たせる訳にはいかないし、な?結局、俺は幸せ過ぎるんだと思う。これがリア充って奴なんだろう。こんな美女達に慕われて……此処で逃げたら男じゃないだろう?……本音を言えば逃げ出したい気持ちもあるがな……だって、あんな美女達だぞ?理性が保つ自信が無い……。まぁ、言い出しっぺは俺だから、意地でも我慢するがね。「そう言えば……先程の襲撃者が現れることを……」「まぁね……何だか殺気だった気配が近付いてたのが分かったしな……放っておいても良かったんだが……一応、釘を刺しておけば懲りるかなぁ……ってね」正直な話、グレンガルはどうにかしたかったが……もう少し泳がせておくのも悪くない手だと判断した。エリオット側が優勢な今……グレンガルはその妨害に掛かる筈だ。普通に考えれば、始末してしかるべき相手……だが、奴を泳がせておけば上手く利用出来るかも知れない……と、言うのは建前で、結局の所はサンドラに言った様に懲りてくれることを期待しているのかも知れない。グレンガルは完全に打算で動く男だ……。俺の考えが甘いことも理解している……だから、もし次に奴が立ちはだかる様なら……皆に危害を加える前に、俺がこの手で殺す。もう、後悔はしたくないから――。***********で、サンドラを連れて部屋に戻って来た訳なんだが……。「……何してるんだお前ら」「あっ!?シ、シオン!?違うの……これは……!」「そ、そうです!これはその……」あ、ありのまま起こったことを話すぜ!?部屋に入ったらリビエラとカレンが俺のベットに横になって頬擦りをしていた。頭がどうにかなりそうだ……。眠っていたとか、ただ横になっていたとかでは断じて無い……もっと恐ろしい物の片鱗を味わったぜ……。……と、ジョ○ョネタは置いておいて……。本当に何をやってるんだよ君らは……。「その……シオンを待っている間、部屋の中でカレンと話していたんだけど……」「その……シオンさんが恋しくて……あの……」成程……大体は理解した。正直、この二人をイヂめたくなってしまい、ウズウズしちまったが。そうなると、間違いなく止まることが出来なくなるので……自重する。「……分かった、深くは追求しない。今日は少し疲れたから、もう寝ようぜ?」「う、うん……」「ハイ……」「分かりました……」そんな訳でお休みタイムに突入した訳で……その際に誰がどういう位置で寝るか……ということで議論になった。まぁ、三人だしなぁ……俺の使ってるベットはそれなりにデカいタイプだが、結構ギュウギュウ詰めだったことを明記しておく。誰がどの位置で寝たかは、各自で想像してくれ……って、俺は誰に言っているんだろう……?明日には手紙も書き上がっているだろうし、明日はローランディアに戻って、アルカディウス王に報告だな……。しかし……俺は果たして眠れるんだろうか……?幸せながらも、生殺しな状態のまま、俺は考えるのだった……どうか、俺の理性が保ちます様に……。