「ありがとうございましたシオン様。凄く楽しめましたわ♪」「どう致しまして……これくらいなら朝飯前ですよ」レティシア姫が礼を言ってくるが、俺は話をしただけなのでたいしたことをしたつもりは無い。……よくよく考えれば、裏に潜んで悪巧みする悪党ってのは、この世界でも成り立つ図式なんだよな……。バーンシュタインの裏に隠れるゲヴェル然り、ボスヒゲ然り……そのボスヒゲにしたって、元は真っ当な王様で、原住生物であるゲーヴの王、ゲーヴァスの魂をその身に封じたからあんな性格になった訳だし……。その辺を何となく含めての話だったわけだが。「私も大変楽しめました。中々に興味深い話でしたし」と、サンドラは言う。どの辺が興味深いんだと聞くと、取り巻く人間関係らしい。成程、サンドラは俺の言いたいことを理解出来たらしい……流石だな。「また、機会があれば別の物語もお話します……姫がそう望まれればの話ですが」まぁ、話すのは嫌いじゃないし、あれだけ喜んでくれたなら話した甲斐もあるしな?「はい、その時が来たら是非お願い致しますわ」ニッコリと微笑むレティシア姫……むむむ……可愛い!何と言うか、高貴なオーラが溢れ出ているのに、それが高圧的では無く、清々しい感じというか……。「それで……その、シオン様にお願いが……」「は、はい……何でしょうか?」赤くなりながら恥じらう様な態度のレティシア姫……い、イカン!オッサン勘違い………いや、待てよ?……あながち勘違いでも無いような?以前に旗みたいのを立てた自覚もあるし……けど、まさかね?幾ら何でもレティシア姫も……なんて、ガチで恋愛原子核もいいとこだぜ?「……私、シオン様が好きです」「!?」ちょ、マジかよ!?いや、半ば予想していたことだが……けど、なんぞコレ!?フワッ……。姫が俺に抱き着いてきた……良い香りだな……まるで花の様に……って違う!!?「レ、レティシア姫……お戯れは……」「戯れなどではありませんっ!!私は……本気です!」「…………」レティシア姫の真剣なその表情と言葉に、俺は何も言えなくなってしまう。「……本気……なんです……お話を聞かせてくれた時、貴方に守ると宣言された時、助けてくれた時……あの夜のこと……貴方は私に笑顔をくれました……絶望した時にも光を与えてくれました……その光が優しく包んでくれたんです」俺はレティシア姫の独白を、ただ黙って聞いている。「想いは時が経つに連れて募っていきました……この想いに嘘偽りはありません……」レティシア姫が抱き着く力を強める……それはあまりに一生懸命で、離したくないと訴えかけていた……。確かに俺もレティシア姫に好意を持っているが……。「……お気持ちは大変嬉しく思いますが……俺にはもう……」「……話はサンドラから聞きました」な……に……?俺はサンドラの方を見やる。「申し訳ありません……姫の気持ちを悟り、私が余計なお節介を焼かせて戴きました……これはカレン達の総意でもあります」そう言い放つサンドラ……そういえばカレンやリビエラが何かを言っていた様な……。恐らく、サンドラとも色々話し合ったんだろう……。迂闊だった……少し考えれば分かりそうなことなのに……。「つまり、姫も全て了承の上で、後は俺の答え一つだと……?」「……はい」赤くなりながら頷く姫……うん、分かる。どんだけご都合主義なのかと……。問いたい…問い詰めたい……小一時間問い詰めたい。誰に問い詰めたら良いか分からんが……。ここで姫を受け入れなければ、俺は最低野郎だし……受け入れても一般的には最低野郎だな。同じ最低なら……答えは決まってるか。「良いんですか姫……?サンドラから話を聞いてるなら分かると思いますが…俺は既に四人の女性と関係を持つ最低の女たらしですよ……?」「……それでも、構いません……私もお側に置いてくださいませ……お願い致します……」……不覚にもキュウンときてしまった。「……分かりました。これ以上は姫に恥をかかせてしまいますしね……」俺は姫を優しく抱きしめる。姫の身体がピクリと震えた。「俺のものになってくれ……レティシア。絶対に幸せにする……とは言えないが、一緒に幸せになって欲しい……」「!はい……!私は貴方のモノです……ずっと一緒です!…ずっと一緒にいて、一緒に幸せになります……」俺達は互いの温もりを確かめる様に、抱きしめ合ったのだった……。しかし、これで5人目……しかも隣国の姫様とか……良いのかね?外交問題的にも……。まぁ……今更か。彼女は求めて、俺は受け入れたんだ……ならとことん愛するまでだ!!「……シオン様……大好きです……」「俺もだ……」熱っぽい視線を交わした後、俺達は互いに口付けを交わしたのだった……。あ、ディープじゃないぞ?「ん……シオン様ぁ……」いや、そんな艶っぽい声を出されると……。み・な・ぎ・っ・て・き・て・し・ま・う・っ!!ヤバイ……落ち着け、Coolになれ……Coolになれ……よし、私は冷静だ。「あの……シオンさん……」「あぁ……こっちに来いよサンドラ」サンドラが凄く物欲しそうにこちらを見ていたので、手招きしてやる。そして、サンドラにもキス……。「……もっと、激しいのが欲しいんですけれど……」真っ赤になりながらそんなことを言うサンドラ……正直かなり来るモノがあるが。「駄目だ……俺に黙って暗躍してた罰として、これ以上は無しだ」「そ、そんな……」俺のその宣告にモジモジしつつガックリするサンドラ……フフフ、今日は悶々と過ごすと良い。等と、ドSモードになったりした俺だが、まぁ……その後ピンクな雰囲気になりつつも、ここまできたら耐えるしかないわけで。全てが丸く治まったら……ということになった。「分かりました……シオン様の意志に従いますわ……」「それよか、アルカディウス王には何て言えば良いのやら……」幾ら何でも……こんな複数と関係を持つ様な男との仲を一国の王が認めるわけが……。「あ、それなら心配いりませんわ♪お父様は全てご存知ですもの♪」「……………はい?」今、何て言いやがりました?「知ってるの……?アルカディウス王が……?」「はい、以前私がシオン様をお慕いしていることを告げたら、もしシオン様に愛している方がいたらどうする?と言われ……私はそれでも愛すると誓ったのです。そうしたら……」「……認めたのか、王が?」「はい♪お父様はお母様一筋でしたが、過去の王は重婚もあったと言いますし……だからかも知れません」マジかよ……何か?ローランディア王家に婿入りフラグか?いやいや……落ち着け……。……そういやぁ……最初アルカディウス王は俺のことを【シオン】と名指しだったのに、いつのまにか【シオン殿】になっいてたし……。アレってそういうことか!?俺はてっきりバーンシュタイン貴族だから敬意を払ってくれたのかと……。しかし……そうなると、父上辺りが五月蝿そうだな……。……………まぁ、良いか。なるようにしかならんだろうさ……。それもまた俺の物語なんだから、受け入れるしかないわな。それから俺達はイチャイチャしつつ、他愛の無い話なんかをしていたが、そろそろ時間みたいなのでお開きにすることに。名残を惜しみながら、別れた後……俺は城門を出た。もう皆集まっていたらしく、ティピに遅いっ!とプンスカ怒られてしまった。その後、改めて城内に入り、文官の人に休暇の終了と次の休暇先を告げて帰路に着いた。帰宅後、夕食時にそれぞれどんな休暇を過ごしたか話した。カーマインはルイセとキャッチボールをして遊んだとか……。「今度はお兄ちゃんのボールを取れる様になるんだぁ♪そうしたら、またお兄ちゃんが遊んでくれるんだもん♪」……何故だろう?ルイセに耳と尻尾を幻視してしまった……ルイセ、なんて犬チックな子!?それを聞いてミーシャが羨ましがっていたが……そこはご愛嬌だな。夕食が終わり、就寝時間になった時にカレンとリビエラを呼び、今回のことを話す。他の仲間には秘密でだ。カレンとリビエラはレティシアとのそれを受け入れた……というか、二人も一枚噛んでいたのだから当たり前ではあるが。とりあえず、事が明かせる様になるまではこの件は秘密ってことにしてもらう。協力者とは言え、敵国の貴族と姫様が恋仲となると、色々面倒なことになる可能性もあるからな。その後、サンドラ同様に罰を告げた後、(やっぱりズーーンと沈んでいた。大袈裟だっての)転移の腕輪の念話機能を使って、ジュリアへこのことを告げる。やはり苦笑いしながらも受け入れてくれた辺り……もうマジでガチなんだろうな。色々話したが、やはり少し寂しいらしい……近々会いに行ってこないとな。そんなこんなで、俺は眠りについた……。そして翌日……さて、次の休暇先は……。*********休暇二日目・保養地ラシェル「さぁて、どうすっかなぁ……って、ここに来てやることは決まってるんだけどな」皆が散らないのがその証拠。「んじゃまぁ……今日も勉強&修業すっか」ってな訳で、まずは予習復習の意味を込めての勉強。初めてのリビエラには、『今日から君も大魔導師』の初級、中級、上級、応用編を渡す。「前に約束した通り、キッチリ教えてやるからな?」「うん、ありがとうシオン」そう言って綺麗な笑みを見せるリビエラ。さて、勉強会を始めますか!「先生!この魔法なんですけど……」「どれどれ……これはルイセでもまだ早いな。まず基本系の魔法をマスターしないと」「シオンさんシオンさん!この蹴り技なんだけど……」「ああ、これは決まった技名が無くてな……『サンダーボルトスクリュー』とか『サンライズボンバー』とか……呼び方は色々だな」ルイセとティピの質問に答えたり……。「あと一息なんだが……どうにも煮詰まってな」「そういう場合は地味かも知れないが、座禅でも組んで精神修業をした方が良いかもな?地道な修業だが、気の感覚を掴むにはうってつけだぜ?」「くぅ!気なんてどう感じたら良いんだっての!」「敵と対峙していて、敵の強さを肌で感じることがあるだろう?それが気を感じるってことだ。それをもっと細かく探れるようになれば完璧だ」ウォレスとゼノスにもアドバイスをし……。「う〜〜……勉強苦手……」「頑張って、ミーシャちゃん!」自身の勉強をしながらも、ミーシャの応援をするカレン。カーマインとラルフは黙々と読み進めている。「シオン……これなんだけど、私にも出来るかしら?」「マジックガトリングか?これは数の多いマジックアローだからな……習得自体はあまり難しくないぞ?」リビエラも質問しながら読んでいるので、俺も質問に答えてやる。「さて……んじゃ、皆しばらく自習な?」「シオン、何処か行くの?」「ああ、ちょっと用事があってな……戻って来たら実習訓練だからな?」尋ねて来たリビエラと、勉強中の皆にそう言い、俺は保養所に向かった。せっかくGLチップスを買ったんだから、あの子にプレゼントしてあげないと…な?