さて、どう話したら良いのか……。まぁ、ここはある程度正直に話すべきだな。これが、裏で何を考えているか分からない狸野郎が相手なら、権謀術数を働かせるのも吝かではないが……。相手はアルカディウス王……気さくな『いいひと』である――アルカディウス王その人なのだ。信頼に値する人物だろう。まぁ……俺が現実から転生?してきた人間であり、ゲームになってたこの世界の原作知識を持ってまぁす♪……なんて余計な事は、それこそ死んでも言えないがな。まず信じられないだろうし、何よりそんな風に言われて気分が良い奴はいない。頭の痛い可哀相なコに見られてしまう。この秘密は誰にも言わず、墓の下まで持っていく所存です。……まぁ、俺にとっては既に此処は紛れも無い『現実』なんだがな……。と、それよりも説明、説明。「少し長くなりますが……」俺は話せる範囲のことを話す。以前、ゼノスがシャドー・ナイトにその力を狙われていることを知った俺達は、それを阻止するため秘密裏にシャドー・ナイトの動向を探っていたこと。「その際に、グローシアン惨殺事件に行き着いた訳ですが……」「それって、つまり……」シャドー・ナイト……つまりはバーンシュタイン王国がグローシアン達を惨殺していた……ということになる訳だな。俺がかなりの数のグローシアンを保護しているのは事実だが、中には事情を説明しても俺達に同行するのを嫌がる者達も当然いる。そういう人達には予防策として、このアイテムを渡す。俺は一つの腕輪を取り出し、皆に見える様に提示する。「その腕輪は?」「これは『転移の腕輪』と言って、簡易テレポートアイテムです。詳しい説明は省きますが、決められた場所にテレポート出来るアイテムです」王の疑問に俺は簡潔に説明する。詳しく説明した所で、これを理解出来るのはサンドラくらいだろうしな。ルイセも辛うじて……か?更に俺は説明する……。恐らく、グローシアンの行方不明者の大半に俺が関わっていること。保護したグローシアン達は俺のアジトに匿っていること。俺達が、グローシアンの保護に乗り出してから変死体として見つかった者は、俺達の話を信じず、腕輪も受け取らなかった者達であろうと……。また、行方不明者の大半は俺が保護しているが、一部には俺達は関与していないということも。「つまり、シャドー・ナイトでもシオン達でもない……第三者が絡んでいるってことか?」「あぁ……それが何者かは分からないがな。少なくとも、俺達はここ最近に行方不明になった者については関与していない」カーマインの質問に答える俺。シャドー・ナイトが動いたか……仮面騎士を動かしたか……あるいはクソヒゲが動きやがったか……。理由は幾らでも考えつくが……。「これが、私が話せる限りの情報です」「うむ……シオン殿を信じない訳では無いのだが……」俺の話を個人的には信じたいのだろうが……色々と信じられない要素もあるんだろうな。「そのアジトって何処にあるの?」「北にオリビエ湖っていう湖がある。その近くにある森の中だよ」ミーシャが尋ねてきたので、答えてやる。恐らくクソヒゲも見ているのだろう……だから追加でこう答えてやる。「ただし、周囲に結界を張ってあってな?外からは認識出来ない様になっていて、更に敵意や害意のある者は決して中には入れなくなってるけどな?」敵意や害意のある者が近づいても、迷いの森みたいに迷って辿り着けないだろう。この結界を破るには、契約者たる俺の魔力を超える魔力が無ければ不可能だが、正味な話、この世界の全ての者達の魔力が束になっても破られない自信がある。チート万歳だな。例外として、パワーストーンを使われた場合は分からないが……。「それと、私達がグローシアンを保護しているということは、出来る限り内密にお願いしたいのですが……」「それは何故でしょうか?」サンドラが聞いてきたので、答える。「何処に耳や目があるか分からないから……というのもありますが、この話を聞いてグローシアンの明け渡しを要求されたりしたらややこしいことになるので……」仮に……他の誰かがグローシアンの保護に乗り出したと言い出し、このことを知り――グローシアンの明け渡しを要求するかも知れないことを告げる。それが悪意ある者かも知れないと言う可能性も……。クソヒゲとかな!!秘密にしておけば、例えそういう輩が現れても対処することが出来る。『その話を何処から仕入れたんだ?』ってな具合にな。他にも色々言い分はあるからな……フフフ。「シオン殿の言い分も分かった……今までに色々と尽力してきたシオン殿の言葉だ……信じよう」「はっ!ありがとうございます、アルカディウス王!」俺は王の決断に礼を言う。まぁ、この王様ならそう言ってくれるとは思っていたけどな?しかし、そこまで信頼されていると何ともこそばゆい感じだな。「皆、ご苦労であったな。休暇を取り、ゆっくり身体を休めるが良かろう」こうして、任務を終えた俺達は休暇を取ることになる。与えられた休暇は三日だ。最初の休暇先は……。********休暇一日目・王都ローザリア「夕方になったらここに集合ね」ティピがそう告げると、皆はそれぞれに散っていく。さて、俺はどうするか……って、レティシア姫にお話をしてやるんだったな……。俺は門番に言って門を開けて貰い、城内に入る。「ふぅむ……弱ったなぁ……」城内に入ったのは良いが、よくよく思い出してみたら約束はしたが、特に待ち合わせをしたりとかはしていないことに気付く。幾ら協力者とは言え、部外者が城の奥まで立ち入る訳にはいかないしな……。「……どうするかなぁ……」俺が頭を抱えていると……。「あら?シオンさん……どうかしたのですか?」「!サンドラ…様」サンドラが通り掛かり、俺に声を掛けてくれた。丁度良い!サンドラに掛け合って貰うか!「実は……」俺はサンドラに事情を説明する。漫画的表現をするなら『かくかくしかじか』って奴だな。「と、まぁ…そんな訳で姫との約束を果たしに来たのですが……どうしたものかと悩んでおりまして……」「成る程……分かりました。では、私が姫に掛け合ってきましょう」サンドラがそう言ってくれる……正に渡りに船だ。「それでは、申し訳ないですがお願いします」「分かりました……では少々待っていて下さいね」そう言ってサンドラは姫のもとに向かって行った。しかし、俺はこの時失念していた……サンドラが『あの』同盟の一員であり、カレンやリビエラだけでなく、彼女もまた企んでいたことを……。……気付いていたら、あんなことにはならなかったのに……。程なくして、サンドラがやってきた。事情を話したら大変喜んでいたとのこと。んで、サンドラの案内で姫の部屋へ……って。「それは幾ら何でもマズイのでは……?」王族の部屋に、部外者が入るってのは……しかも姫の部屋に男の俺が入るとか……。「姫は『普段の貴方』と話がしたいのですよ。人がいる場所では敬語を使ったり、態度が堅かったりしますからね……貴方は」いや、確かに俺は堅苦しいのは好きでは無く、普段は砕けた喋り方だが……。それはあくまで普段の話だ。まぁ、我が家でも敬語ではあったが……旅に出てからは地が強くなったと言おうか……。そんな俺でも、公共の場では態度を弁えているつもりだ。……一国の姫様がそんなことを望んで良いのかね……?オッサン心配になってきたよ……。まぁ、好感は持てるけどな。そうこうする内に目的の部屋にたどり着く。「失礼します」「まぁ、シオン様!本日はようこそいらっしゃいました」ノックをして入ると、早速姫が出迎えてくれた訳だが。なんつーか、良いのかね?周囲を伺うと、広くてゴージャスだ。何と言うか、いかにも王族の部屋って感じ。我が家の自室も、かなりのモノだと思っていたが……上には上が居る。で、流石にこの部屋に二人きりでは色々誤解されるってことで、サンドラにも付き合って貰っている。「なんか、申し訳ないなぁ……」「気にしないで下さい。今日の分の仕事は終わりましたし、私も貴方のお話に興味があります」と、サンドラは言ってくれるが……そんな大層な話では無いんだけどな?そんな訳で、サンドラを交えてのお話の始まり始まり〜……っと。「さて……今回は何の話をしましょうか?」「以前、聞かせて頂いたお話の続きが聞きたいですわ♪」そう言うレティシア姫……と言うとラング○ッサーⅢの話だな?「承りました……では」まず、サンドラの為に今までの粗筋をダイジェストで話す。それを聞くと、サンドラは感心した様に頷いていた。「さて……続きからだったな」俺はストーリーの続きを話す。時間もあることだし、一気に語る。**********各地を巡り、仲間を増やしていく主人公達……。ギュードン屋の攻防や、歴代主人公の激闘なんてオマケを挟みつつ。帝国との戦い……裏で暗躍する魔族。魔族の頂点に立つ闇の皇子……彼が持つ闇の魔剣。光の聖剣の真の力を得る為に、一人の王が己が身を捧げた……。反乱の狼煙を上げた者達で立ち上げた、新たなる国の王が……。そして、苦悩する幼なじみと暗黒騎士の正体……。ここまで一気に語ったが、二人とも興味津々と言った感じで、話に集中している。語り手としては、結構嬉しい物だ。そして、闇の皇子は倒れ、魔族は打倒されたかに見えた……だが。帝国の王子の謀略により命を落とした帝国軍元帥の副官。怒りに震えた帝国軍元帥は、闇に墜ちる……。そう、第二の闇の皇子として……。彼は副官を闇の力で蘇らせ、その謀略を謀った王子を殺した。そして、新たなる闇の軍勢との決戦を迎えて、主人公は己の想いを打ち明けることを誓う。そして、新たな絆を紡いだ……。***********「結局、ディハルトが選んだのはルナでしたのね」「私としては、ソフィア辺りとも怪しいと思ったのですが……」と、それぞれの意見を言い出すレティシア姫とサンドラ。いや、あくまで俺の中のメインヒロインはルナなんだって。クレア?小説版?さて、なんのことやら……。***********そして、対峙する聖剣を携えた主人公と、魔剣に見入られた元帥……。戦いは熾烈を極めたが、副官の女性の呼び掛けや、聖剣の力もあり……闇の力から開放された元帥……。全てが丸く治まり、魔剣も再び封印されることになった……。これで平和な日々が訪れる……そう思っていた矢先。なんと主人公の思い人が掠われてしまったのである。犯人はかつて元帥に殺された帝国の王子……なんと混沌の神の力により、第三の闇の皇子として復活を遂げていた。闇の皇子は彼女を生贄に捧げ、混沌の神を呼び込もうとしていたのだ。主人公は助けに向かう……敵対していた元帥と副官も共に戦う仲間として……。彼女は信じて疑わなかった……彼が助けに来てくれるのを……。彼らは立ち塞がる障害を打ち倒しながら進み……遂には辿り着く……彼女の元へ。そして、闇の皇子を打ち倒し、彼女を救い出したのだった。こうして、彼らは本当の平和を掴み取り……幸せに暮らしていった。それから数百年の長きに渡り、その国には平穏な時が続いたという。**********「と、まぁ…こんな感じだな。このお話の教訓は、本当に悪い奴ってのは裏の裏に潜んで悪巧みしているってことだな」随分と長く語っちまったなぁ……仕方ないとは言え、そろそろ夕方になるんじゃないかな?