休暇三日目・観光地コムスプリングス「俺は、温泉にでも入ってるぜ」そのウォレスの言葉を皮切りに、それぞれ散っていく面々。さて……俺はどうするかな?とりあえず俺は温泉宿がある場所まで来た……。……ここでは色々なことがあったなぁ……。まぁ、何があったかは伏せておくが……また、みなぎりそうだしな。ここで起きた出来事が、俺にとってはある種の転機だったのは事実。カレンのことも……夢で見ていたアイツのことも……。「その後はマイナス方向に固めた俺の決意を、ラージン砦で見事に粉砕してくれたよな……カレンは」嫌われるつもりで言った、あの台詞……まさか受け入れられるとは……まぁ、妙な同盟を組んでいたことには――更に驚いたが……。その後、夢の中のアイツにちゃんと、もう大丈夫だと告げて……。俺の中から旅立って行ったんだよな……。ちゃんと生まれ変われたのだろうか……?いつかまた出会える日が来たら……その時は。「って、思わずしんみりとしちまったな……」俺は宿を見やる。「……まぁ、たまには良いか」俺は温泉に入ることにする。今日は温泉に無料で入れるらしいからな。店員への受け付けを済ませ、脱衣所へ。……と、脱衣所へと繋がる扉の前で見知った顔を見つける。「ティピじゃないか…何してるんだ?」「あ、シオンさん♪アイツが温泉に入りに行ったから待ってるんだ」カーマインが……か?「そか……んじゃ、俺も入って来るわ」「うん、ゆっくりしてきてね!」ティピに見送られた俺は脱衣所に向かう。そして衣服を脱いでカゴに入れ、温泉に入って行った。案の定、先客が居た。「よう、シオン」「シオンも来たのか」ウォレスとカーマインだ。「まぁ、たまにはゆっくり温泉に浸かるのも良いと思ってな?」そう言って湯舟に浸かる俺……は〜〜、良き湯かな〜〜♪「そういやぁ、二人で何か話してたみたいだが、何の話だ?」「あぁ……ウォレスが傭兵時代の話をしてくれるみたいでな……」あ〜、あたかも知り合いの話の様に話しておいて、実はその殆どが自分の体験談だったというアレな?「面白そうだな……俺にも聞かせてくれよ」「ああ、構わないぜ?……これは俺が居た部隊の話なんだが、その部隊に凄く面白いヤツがいてな。そいつは冗談ばかり言って、よく俺たちを笑わせてくれたもんさ」「成る程……ムードメーカーってヤツだな」俺はウォレスの言葉に頷いて言う。「そいつは新兵が来て、初の戦闘の時に必ず言うんだよ。『お前らはツイてるな、今日は俺と嫁さんの結婚記念日だ』ってな」「成る程……たいしたモノだな……」「流石はムードメーカー……って所か」俺とカーマインは、感心した様に言う。実際、俺は感心しているんだが。「2人とも俺の言いたいことがわかっている様だな……新兵は実戦経験がない。初めての戦闘は、そりゃ背骨に何かを差し込まれたみたいにカチコチに固まっちまう。だからそいつの、その何気ない言葉に、何人の新兵たちが救われたことか……と、まあ……こんな感じだったんだがな」「成る程……良い仲間だったんだな」実際、ムードメーカーが居るか居ないかで、味方のテンションは大きく異なる。不利になりがちな戦いも、切り抜けられる力を生み出す。ダ○大のポッ○然り、GS○神の横○然り。「まぁな……ゲヴェルの事件の後、次々と仲間たちは抜けて、孤独が平気……ってな顔をしてきたが……部隊の連中が集まって騒いだ狭い酒場が、広く見えた時は、何だか例えようもなく虚ろな気分になったのを覚えてるぜ……あいつらが居たからこそ、大事な物が見えてたんだな……」「見えるけど見えない物……だな」「見えるけど見えない物……?」ウォレスの言葉を聞いていてふと、この言葉が浮かんで来たので口にする。カーマインが疑問を浮かべたので、それに答えることにする。「人ってのは見えるが、その間にある繋がりは決して見えない……だが、確かにそこに『ある』。絆だとか友情だとか……そういう物はある種、空気の様に当たり前の物だ……しかし、それに本当の意味で気付くのはほんの一握りだ。当たり前故に見えない……気付かない。見えているつもりでも、見えていない場合が殆どだ……居なくなってから気付かされるなんて、そんなこともざらにある」俺も……ある意味ではそんな人間だったからな……。「そうだな……仲間ってヤツは、いなくなってから大切だと分かる場合が殆どだ……因果なもんだ」「仲間に限ったことじゃないけどな……家族や恋人なんかにもそれは当て嵌まる。……なくしてから気付くってのは、中々に辛いぜ?『一期一会』――その時々の出会いを、大切にな?」そして決して後悔しない様に……これは人生の先輩としての忠告だな。まぁ、俺自身……そこまで誇れる生き方が出来ているか……と聞かれたら微妙なんだが……。カーマインは俺達の話を聞いて、何やら考え込んでいる様子。「それにしても、シオンは随分達観しているというか……歳不相応だな」「?そうか?」「ああ、俺の若い頃にはそこまで達観した考え方は出来なかったからな」そりゃあ、精神年齢で言えばウォレスよりオッサンだし……よく、精神が身体に引っ張られるとか言うが、それほどでもなかったしな。「別に達観してる訳でも無いんだが……結構、奇想天外な人生を歩んでるからな……そのせいもあるかもな」転生?したなんて奇想天外以外の何者でもあるまいよ……。「そうか……まぁ、人生色々あるんだろうさ……さて、俺はそろそろ上がるぜ」深くは聞かず、風呂を上がっていくウォレス。「……じゃあ、俺もそろそろ上がる」「おう、俺はもう少し浸かって行くわ」先程から色々と考えていたであろうカーマインも、上がっていく。俺はもう少し浸かることにする……せっかくの温泉だしな。「…なぁ?」「ん?」「俺にも出来るか……?そういう生き方が……」「さて……とりあえず、悔いの無い様に生きてみなよ。それが実を結べば――自ずと答えは出るさ」「そうか……」こうしてカーマインは風呂から上がって行った……。悔いの無いように……か。偉そうに語っているが、俺にそんなことを語る資格は無いよなぁ……。「まぁ……ちょっとした老婆心ってヤツだ。少しは若人の心の足しになれば良いがねぇ」俺みたいに、後悔してからじゃ遅いからな……。それから暫くして、俺も風呂から上がり、身体を拭いてから着替え……。「………プハァ!!やっぱり風呂上がりにはコレっしょ?」コーヒー牛乳を飲んでいた。勿論、腰に手を当て一気飲み。酒も良いが、やはり風呂上がりにはコーヒー牛乳……コレ最強。まぁ、気分に寄ってはフルーツ牛乳やノーマル牛乳だったりもするが、大体はコーヒー牛乳!コレ最きry……。さぁて、時間がまだ余ってるな……んじゃ、涼みがてら外で誰かと話してくるか。俺は風呂場の入口辺りで休憩しているウォレスに声を掛けた後、外に出た。誰か居ないかな……お、ラルフ発見!俺はラルフと話をすることにする。「こういう観光地のお土産品って、後で考えると変な物だったりするけど、その場の空気かな?気付いたら買ってたりするんだよね……商売において、そういう空気も大切ってことかな?」確かにある……ペナントとか木刀とか……別にそこの名産じゃないのに買ってしまう……アレは一種の魔力だよな。なんてことを話していたら夕方になった……なので、集合場所に向かうことに。「みんな揃ったね?じゃあ、帰ろう」ティピがメンバーを確認した後、ルイセのテレポートで帰還。休暇の終了を文官さんに告げ、帰路に着いた。そして翌日……ローランディア城・謁見の間。「さて、次の任務だが、急いで行うべきものは今のところない。そこで、お前たちが調べたがっていた異形の件を調査してくるというのはどうであろう?」まぁ、ランザックと同盟協力は結べたし、今現在のエリオット軍への援軍はローランディア、ランザック両軍から派遣されるだろうからな……。ジュリアからの念話でも、今の所まだ戦況はこちらが幾らか有利らしいし……あ、ジュリアとは俺が渡した腕輪を通じて念話を交わすことが可能なんだ。って、今更誰に言ってるんだ俺は……。「もし異形があのゲヴェルだとすると、遠からず我々人類と事を構えることになるはずだ。その時のためにも異形の正体を知っておかねばならぬ」「そうだよね。元々の目的って怪物の正体を探ることだもんね」「思い出すだけで、この目が、この腕がうずくぜ……」確かに王の言う通りだ……ティピの言う様に本来の目的がゲヴェルの調査をすることだからな。その正体や目的を知っている俺だが、この世界では俺なんかがいることで、何かしらの歪みが生じているかも知れないからな……調べるに越したことは無い。もしかしたら、原作のソレとは違うのかも知れないし……。「かしこまりました」カーマインがそう締め括り、俺達は謁見の間を後にした。「で、どうするんだ?」「クレイン村に行ってみようと思う……あそこは以前、ウォレスが仮面の騎士に襲われた場所だ……そこに何かしらの手懸かりがあると思う」ゼノスの質問に答えるカーマイン。その意見に皆、異存は無い様で、しっかりと頷いて居た。「クレイン村は、以前レティシア姫を助けた場所から更に北東に行った場所にある」そう告げるのはウォレス……位置的にはほぼ北に位置する。しかし、クレイン村か……旅をしていた頃から現在までにおいて、唯一近付かなかった場所……原作では数々の悲劇に見舞われる場所で、俺がもっとも恐れている奴が居る可能性があった場所……まぁ、オズワルド達の調査の結果、奴は存在しないと分かっているから、幾らか安心だが……。「それじゃあ、早速……ん?」この気配は……。「シオン様〜〜!」「レティシア姫……どうなさったのですか?」なんとレティシア姫がやってきた……何やら俺に用事があるみたいだが……。「い、いえ……その、何分お忙しいのでしょうから、控えていたのですが……以前の約束がまだ……」以前の約束………あぁ、もしかして。「またお話をするという話ですか?」「は、はい……今すぐなんて申しません。ただ、約束の約束を取り付けたくて……如何でしょうか……?」むぅ……機会があれば……とか言ったの俺だしなぁ。「わかりました……では、次の休暇の時にでも」「!わかりました……では、約束しましたよ?」「かしこまりました……必ずやご期待にお答えしましょう」ズバッ!と、華麗に礼をする……完璧だ!いや、何が完璧かと聞かれたら困ry…。俺達は姫を見送り、その後に城の外へ向かう。「……まさかシオン、子持ちの未亡人だけでは飽き足らず、お姫様まで……?これはお姫様も……?」「レティシア姫にも、それとなく話してみるつもりなんですけど……」……なんてリビエラとカレンが話してるのが聞こえたが……オッサン聞こえない!!聞こえないったら聞こえないんだからね!?後、残ったメンバー……生暖かい視線を向けるなぁ!!いや、俺だって色々気にしてるんだから…マジで。そういう訳で、俺達は再び任務に着く……目的地はクレイン村だ!!