現在、俺達は謁見の間にて、事の顛末をアルカディウス王に説明している。「これでバーンシュタインとランザックの同盟も決裂かと……」「よくやってくれた。本来ならばこの働きを評価し、休暇を与えるところだが、今は事態が事態だ。もう一働きしてもらうぞ」カーマインの報告に満足気に頷く王……しかし、もう一働きして欲しいという。「どんなことですか?」「お前たちに以前頼んだ、ランザック王国との同盟の件だ。ランザックが我が国に進攻して来た理由を尋ねる……という大義名分もある。そこでお前たちには我が国の特使として、ランザックに赴いてもらいたい」「もうバーンシュタインの目を気にする必要もないもんね♪」やはり同盟の件か……最低でも不可侵条約は取り付けなければ、三つ巴の争いになるからな……。出来れば王位奪還を手伝って貰える様に持っていく。そこはあまり心配せんでも行けそうだけどな。上手く交渉してみるさ。と、カーマインが書簡と通行証を渡された。ランザック王への書簡と、ランザック王国発行の通行証だ。どうやら王様はカーマイン達のことを思い、通行証を入手していたらしい。了解の意を示した俺達は、簡単な話し合いの結果――ランザック……の手前のガラシールズに跳ぶことを決める。何故ガラシールズなのか?ルイセは勿論、実は俺もランザック王都には行ったことが無い。故にテレポートが使えない――。それに――気になることもあるから、むしろガラシールズに立ち寄るのは渡りに船だ。――大分、原作から離れたとは言え、奴が暗躍しているのをこの眼で見たからな――。三国が対立している状況……考え様によっては、死の商人にとっては最高の稼ぎ時になる。……あのグレンガルが黙って見過ごす筈が無い。まぁ、杞憂で終わるならそれに越したことはない。実際、原作とは違って遺跡を起動させなかったり、グレンガル達も事前にボコッておいたから……原作通りに進むとは思えんし……。――だが、グレンガルの性格から考えて、同盟を結ぼうとする俺達を妨害する為に何かをしでかす可能性も又――否定出来ない。ソレを確認する為、例えランザック王都にテレポート出来たとしても――俺はガラシールズに向かうことを提案しただろう――。「ってなワケで――ルイセ、頼むな?」「うん、それじゃあテレポートするよ」――こうして、俺達はルイセのテレポートでガラシールズへと跳ぶのであった――。***********「止まれ!」「な、何よ?」――案の定、ガラシールズの入口までやって来たら番兵に見付かってしまった。ティピなんか、めがっさ焦っています。多分、裏工作したのがバレた!?とか考えているんだろうなぁ……。「貴様ら、何者だ?何の目的でここへ来た?」「俺たちはローランディアの者だ。アルカディウス王の書簡をランザックの王に届ける任務で来た」「ついでに、いきなり我が国を襲ってきやがった説明をして貰いに……な?」ウォレスとゼノスがそれぞれに事情を説明する。ゼノスなんかは、少し威圧感込みで話す。しかし、何やらランザック兵は怒り心頭のご様子。「……お前たちか!?よくも我が軍の兵を殺してくれたな!」「えっ?」「とぼけても無駄だ!この街で次々と我が同胞が殺されている!お前たちがやったのであろう!」あ〜……やっぱり暗躍してやがったか。あのハゲめ……。空気がピリピリしているから、もしやとは思ったが……。原作の展開ならいざ知らず……本当にランザック兵を殺っていない俺達からすれば寝耳に水な話だ。ルイセも困惑している。「そんなことしてないよ!本当に王様からの書簡を届けに行くだけなのに!」「ならば証拠を見せてみろ!」「……正規の通行証だ。文句はないだろう?」異議を唱えるティピに、証拠の提示を要求するランザック兵。そこでカーマインは、アルカディウス王から預かったランザック王国発行の通行証を提示する。「……うむ……少し待っていろ。おい、隊長を呼んできてくれ」「了解!」そう頼まれた番兵の一人が走り去っていく。責任者を呼びに行ったんだろう。「疑り深いなぁ!」「戦争中だからね……仕方ないさ」ティピが愚痴るのをラルフが宥める。確かに戦争中なんだから、他国に警戒を抱くのはもっともなことだ。特に三国がそれぞれ敵対する様な現状じゃあな……。「アンタらは大方、ローランディアが復讐の為に兵を殺害した……とでも思っていたんだろうが……幾ら何でもソチラさんの事情も聞かずに、そんなことはしないっての」「むぅ……」俺は番兵と話し込んでいる。ローランディアの潔白、その理由……等だ。「俺達は戦争なんて、しない方が良いと思っている……だから特使としてここに来ているんだぜ?それなのに、対立を促す様なことをすると思うかよ?」「……それはそうだが……」実際に裏工作はしたが、一人も殺ってないのだから、そういう意味では間違いなく潔白だ。俺はみっちり交渉した……そのおかげか、番兵二人のピリピリした雰囲気は無くなった。「……シオン」「ああ、分かってる……」どうやら薄汚い殺気が漂ってるみたいだな……。ラルフも気付いたみたいだし。「?二人ともどうしたの?」「いや、何……犯人は意外と近くにいるモンだな……ってね。隠れてないで出て来たらどうだ?」リビエラの疑問に答えた後、近くに潜んでいた連中に声と若干の殺気を叩き付ける。「……よく分かったな?」出て来たのはグレンガルと、雇われた盗賊らしき連中。「!?貴様、何者だ!」「何者だと?お前たちを既に死んだ仲間に会わせる、案内役ってところだ」「貴様が、同胞を!!」グレンガルが律義に説明している。周囲を囲まれたが……幸い、俺達はランザック兵から離れなかったので後方に庇う形が取れた。「あ、あの人って……」「……あっ!確か盗賊の……」「だよね!?…でも、あの人は確か、インペリアル・ナイトの人に殺された筈じゃあ……」ルイセとティピはびっくりしている……他の面子も多少なりとも同じ様だ。「ほほう、お前ら弟のことを知ってるのか?」「弟……?」「ゴチャゴチャ話すつもりはねぇ……ローランディアとランザックの同盟なんて、される訳にはいかんからな……」カーマインが疑問に思うが、向こうは問答無用の様だ。「どうも、狙いはアンタ達で、奴らはアンタ達を殺した後、俺達に罪をなすりつけるつもりらしいな……そんな訳で街に戻っててもらうと助かるんだが?」「断る!今まで殺された仲間の仇を討つ!!」やっぱりな……気持ちは分からなくは無いが……。しかし、流石は脳筋と名高いランザック兵……もはや俺達をかけらも疑ってないみたいだ。少し頭が冴える奴なら、こいつらグルでは無いか……と疑う様なモノだが……。「仕方ない……ならば」俺は一瞬の内にグローアタックとグロープロテクトを掛ける。「!?身体に力が……」「これで多少は違う筈だ……俺達も協力する。思いっきりやっちまえ!!」「!かたじけない!!」こうして戦端は開いていく。メンチビーム……気当たりは使えない。グレンガル辺りに正体を悟られる可能性が出てくるからな……。まぁ、己の私利私欲の為に人を殺し、戦争を長引かせようと画策する奴を相手に――容赦をするつもりは微塵も無いがね?数は……僅かにこちらが上だな……って、もう勝負は決まったみたいなモンじゃないか。質で俺らを上回ることなんて出来ないだろうし、その上、量もこちらが上回ってるとなると……。「ハァ!」「フッ!」「だぁりゃああぁ!!」「セイッ!!」ズバッ!ザシュ!!ザンッ!ズシャ!!上からラルフ、カーマイン、ゼノス、ウォレス。この四人だけでほぼ全滅……。ちなみにグレンガルは……俺が援護し、ランザック兵二人組にぼこられ……。「やるじゃねぇか……だが、まだやられるわけにはいかねぇんだよ!後は任せたぞ!!」と、言い残し、早い段階で部下に任せてトンズラこきやがりました。追っても良かったんだが……変な疑いを掛けられたくないから自重した。「……今まで人を殺し過ぎた罰って奴か……さっさと殺しな」とか言う潔い奴も中には居た。俺はそいつを縛り上げ、兵に引き渡した。無抵抗の奴を斬る趣味は無いからな……。それに実行犯が居たという生き証人になる。……っと、こっちに気配が二つ……多分、警備隊の隊長とそれを呼びに行った奴だろう。「こっちで物音があったぞ?何があった?」「隊長!実は我が同胞を襲っていた連中が現れまして……」「何だと?それでそいつはどうなった?」「彼らと共に戦ったのですが、主犯格の男には今一歩のところで逃げられてしまいました……連中の内の何人かは捕らえたのですが……」悔しそうに言うランザック兵……そりゃあ、仇を取れなかったのだから仕方ないが……。「そうか……では、お前はその捕らえた奴らを、詰め所に連れていけ」「了解!」こうしてランザック兵Aに連れられて行く盗賊達。「私の部下が世話になったようだな」「いえ……」「どうやらさっきの奴は、ランザックとローランディアを仲違いさせようとしていたようだな…事情が事情だ…下手をしたら互いの溝を更に広げることにもなっていただろう」警備隊長の言葉に恐縮するルイセ。そして、いけしゃあしゃあと言うウォレス。実際には俺達もバーンシュタインとランザックの仲を違えさせたのだから、正に棚上げだ。「ふむ……そういえば、お前たちはアルカディウス王の使いであったな?」「ああ……ここに書簡もある」警備隊長に書簡を提示して見せるカーマイン。それを見て警備隊長も納得した様だ。「では、通ってくれ」そう言って道を空けてくれる。「よかったね」「一時はどうなるかと思っちゃったわよ」「とにかく、これで先に進めるな……シオンが気になってたのはこのことなんだろ?」「気付いていたのか?まぁ、気掛かりも拭えたし……じゃあ、ランザック王都に向かうとしますか!」皆がそれぞれに安堵する。ゼノスの問いについては正にビンゴなので、素直に肯定しますがね。その後、再び通行証を提示して先に進む。すると盗賊っぽい連中が群れていた。「ランザックの追っ手か!?野郎どもやっちまえ!!」何か勘違いして襲い掛かって来た。マトモに相手してやっても良いんだが、面倒なので……そぉい!メンチビーム!!シュミーンシュミーン!!!ブワッ!!「「「「ひいぃぃぃぃぃぃ!!?」」」」バタバタバタバタ!!!全員見事なまでに気絶……そこを全員縛り上げる。「なんなんだろう、この人たち……」「どうせ、さっき戦ったグレンガルの手下でしょ?これも世のため人のため。ザコはそういう運命をたどるのよ」「いや、ティピちゃん…まだ皆生きてるってば」ルイセの疑問に答えたティピだが、その物言いにツッコミを入れたのはミーシャ。あのミーシャが!?ざわ……ざわ……とか、効果音がなりそうだ。まぁ、ミーシャは完全なボケ的立ち位置だからな…仕方ないっていえば仕方ないか。「で、どうするの?」「まぁ、このまま放置は出来んよなぁ…」リビエラの問いに答えた俺。結局、気絶した盗賊達をガラシールズの詰め所に連れていき、兵士さんに引き渡してから、再びランザック王都に向かうのだった……。