初めまして。Neonと申します。
このssはネギま!をメインに都市シリーズが少しクロスしています。
ssを投稿するのは初めてですので、文法や表現、特に都市シリーズの設定に関しては至らない所も多いかと思いますがご容赦のほどよろしくお願いいたします。
交差点を曲がろうとした俺の視界が、突っ込んでくる車のヘッドライトで真っ白に染まる。俺はやけにゆっくりと宙を舞い、地面に叩きつけられた。耳には自分の骨が砕ける音が残っている。体から止めど無く流れ出す血の量からしても、明らかに致命的だろう。
(ああ……クソ……痛ぇなぁ……。俺が…何したってんだよ……。これで…こんなんで…俺は…お終いなのか?ハハッ……、あっけないもん…だな。畜生……)
「生きたいかえ?」
もう周りの音なんてろくに聞こえもしないくせに、その声だけははっきり聞こえた。
「もっと、生きていたいかえ?」
そうだな……できる事なら、もっと……
「生きて…いた…い」
「よかろう。ならばその命、妾が貰い受ける」
そこで俺の意識は途絶えた。
「俺は……生きてる…のか?それともここがあの世なのか?」
目を覚ましてすぐに周りを見渡す。体に異常は……見当たらない。足もある。それどころか血がべっとり着いていたはずの服まできれいになっている。
今居るのは、見慣れない場所だ。少なくともさっきまでの道路ではない。左右を背の高い本棚に挟まれている。ここは……。
「妾の書庫じゃよ」
背後からの声に振り返ると豪奢なドレスを着た少女がそこにいた。髪は艶やかな黒。瞳は澄んだ翡翠。浮世離れした儚げな姿からはどこか穢しがたい神聖さが感じられる。
「君の書庫?なんで俺はこんな所に?俺は…車にはねられて死んだはずじゃあ」
まざまざと思い出す。自分の命が失われていく、あの感触を。
「そうじゃな。そなたはおびただしい量の血を流して伏しておったの」
「っ!やっぱり……あれは夢じゃないんだな。じゃあここはあの世か。君は何だ?閻魔か?死神か?」
「天使かもしれんじゃろうが。失敬な。妾のどこがあの髭面に見えるというのじゃ。」
「……天使なのか?」
「違う。妾は…まぁ端的に言うと神じゃの。それとここはあの世では無い。彼岸と此岸の狭間といったところか。そなたの魂が輪廻に捕われる前に妾が拾いあげ、此処に招いたのじゃ」
「突っ込みどころは満載だが、この際いいや。で?その神様は何故俺を助けてくれたんだ?」
「ふむ、素直でよいの。ここでの読書も楽しいのじゃが、妾は少々退屈しておってな。ここはひとつ新たな遊戯でも、と思っての。そこで相談なのじゃが、そなた妾に付き合わんかえ?」
少女は身を乗り出して言う。
「もし断ったら?」
「輪廻に還り、その存在を浄化された上で次の誕生を待つことになるの。人とは限らんぞ?獣か。もしかしたら塵芥のような蟲かもしれん。付き合うのであれば愉快な経験ができるうえ、妾を満足させられたなら人への転生を閻魔に推薦してやろう」
「……わかった。付き合うよ。どんな遊びをするんだ?俺はババ抜きとか結構強いぞ?」
「二人でしてどうするのじゃ。そんな事よりもっと刺激的じゃ。そなたにはいま一度地上に降り、妾が楽しめるような心躍る物語を築いてきてもらう」
「生き返れるのは嬉しいが、俺に作家になれと?俺には文才なんか無いぞ?」
「本なら此処に山程あるわ。そうではない。人の生涯は最大の娯楽という。つまりそなたに波乱万丈な人生を送ってこいと、そう言うておるのじゃ」
「それこそ難しいんじゃないか?自分で言っちゃあなんだが、俺は至って平々凡々な人間だぞ?人を楽しませられる様な人生なんざ…」
「わかっておる。だから言うたであろ?愉快な経験をさせてやると。……それに、そなたを今までの暮らしに戻す事もできぬ。そなたは死んだのじゃ、もうあの世界には干渉できぬ。ゆえに……」
そう言いながら一冊の本を棚から取り出した。
「ネギま?なんでそんなモンが此処に?」
「妾は最近マンガやライトノベルの虜であっての。いやはや人間の想像力には驚かされる」
サブカルチャーの魅力には神様も抗えなかったようだ。本棚をよく見るとカラフルな背表紙が並んでいる。
「そ、そうなのか。それで?それがどうしたんだ?」
「聞いて驚くがよい。これよりそなたはこの世界に介入し、笑いあり!涙あり!バトルあり!な一大スペクタクル人生を送るのじゃ!!」
少女は芝居がかった大仰な身振りと共に世界に轟けとばかりに宣言する。
「マ、マジか!?(しかし作者も自分でそんなにハードル上げなくてもいいだろうに)」
「何を小声でぶつぶつ言うておるのじゃ?」
「いや、なんでも。とにかく俺はネギまの世界に行けばいいんだな?」
「そうじゃ。ちなみに厄介事は全て遠ざけて平穏無事に生きる、とかは却下じゃからな。基本的に妾は手を出さんがあまり白けさすようであれば……天罰をくだすぞ?」
「イエス、マム!」
怖っ!絶対この神様Sだよ。
「うむ、頑張って妾を楽しませておくれ」
楽しませる……ね。とにかく原作介入は決定だな。
「……しかし、何かこう、特殊能力とかくれないか?ある程度力がないとあの人外魔境には関われないぞ?」
死んじまったのは残念だが、生き返れて、しかも願いが叶うってんなら文句は無い。問題はここだけだな。上手くすればここから夢にまで見たオレtueee!ストーリーの始まりだ!!
「そうじゃのう。まぁ、その位は手を貸そうかの。では……王になる宿命を背負った男の力などはどうじゃ?」
「なんと!?」
ギアスか!?そうなんだな!?あれならどこの世界に行ったって大丈夫だ。エヴァンジェリンやフェイトだって楽勝だぜ!!
「うむ。気に入ったようじゃな。妾もあの作品は大好きでの。学生の身でありながら航空艦を統べ、一騎当千の若者を従え、守るべき女の為に世界へ挑まんとするあの生徒会長兼総長のエロ――――」
「死ぬわーーーーー!!」
不可能男かよ!?あんなもん権力と部下があってなんぼの力だろ!どうやって戦闘しろってんだよ!しかも悲しんだら死ぬとかやってられるか!
「不満かえ?では……異能を打ち消す男の力はどうじゃ?」
「おおっ!?」
幻想殺し!?魔法を全部無効化してお前の幻想をぶち殺すんですね、わかります。
「あれも良いの。女と見れば関わらずにはいられない、ぼろぼろにされても立ち上がる、鬼の腕をもった――――」
「うぉぉぉぉぉぉいっ!?」
今度は荒神かよ!!騒音の領主だと気は使えても魔法は使えないんじゃないか!?高畑的に呪文詠唱ができないとかで。いや、無詠唱は使えるのか?よく考えたら全く使えない幻想殺しよりはマシだが、どっちにしても明日菜とカブるしなぁ。
「てかどんだけ川上稔好きなんだよ」
「あやつは凄まじいの。妾の広大な書庫に於いても異彩を放っておるわ」
俺の本棚なんて二列も占領されてるっての。店員もカバー掛けられなくて焦ってたなぁ…。
「にしても不満の多い奴じゃの~。もうよい。適当に選ぶわ」
目を閉じてどれにしようかな~と言いつつ背表紙をなぞっていく。
「ちょ、待て!そんなんで俺の人生を左右するな!猫人とかになって他の作者様の迷惑になったらどうする!!」
「大丈夫じゃ!その時は運命をくれてやる!」
「それはちょっと、いやかなり欲しいかも……」
長大な黒刃を振るってスクナとかを一刀両断する俺。かなり、やってみたいです。
妄想しているうちに少女の手が止まる。
「これじゃー!」
しかし取った本を後ろに隠してしまう。
「おい!何だったんだよ!何故隠す!?」
「ふふん。あちらに行ってからのお楽しみじゃ。」
なぜだか得意げだ。やはり却下し続けたのが気に入らなかったのだろうか?
「いらねぇよ!そういう盛り上が……うわ!体が……!?」
体が光に包まれ希薄になっていく。
「そうじゃのう……ヒントをくれてやるとしたら……」
「茶々丸もおるし、差別はされ難いじゃろう。良かったの?」
「もうそれ殆ど答えだろーーーーーーーーーー!!!」