第五話~驚愕の事実が今明らかに……ってか嘘!?~
今日……久しぶりに村に帰ってきた。
何処の村かは言わなくても解るよね?
勿論マサキさん達の村の事だよ。
んでもって……今大いにどんちゃんさわぎの真っ最中です。
何故か……それは前に帰ったセルビアさんが初めてダンジョンに潜り、見事に制覇したと触れまわっていたからだ。
詰る所、僕のためのどんちゃん騒ぎ……嬉しいけど恥ずかしいねぇ。
「いやぁしばらく見ない間にエンも成長したんだなぁ……少しさびしい気がするぜ。」
マサキさんもお酒を飲みながらそんな事を言ってくる。
ついでにと僕のコップにも酒を継ぎ足してくれたのでありがたく頂くことに……。
ぐぐいっとな♪
うん、美味しい!
本当においしいなぁ……かなりいいお酒だよこれ。
きっと、僕のためにわざわざ持ってきてくれたんだろうなぁ……。
でも、やっぱりマサキさんに褒められるのは嬉しい気がする。
……ごめん、素直に嬉しいです。
だからだろう、きっとお酒を飲んでいたのも悪かったんだと思う……。
だから普段は色々とためらって聞けなかったこんな事を聞いてしまったんだ。
「そう言えばマサキさんてレベルいくつなんですか?」
とね。
凄いよ……まるで魔法だったよ。
僕がその言葉を呟いた瞬間その場の空気が音がしそうなほどの勢いで凍ったんだからさ。
いや……本気で……びびった。
ってかどうしようこれ!?
僕何か悪い事いっちゃった?
マサキさんのレベル関係の話ってそれほどまでの話なのか!?
僕は……そんな空気の中恐る恐るマサキをんを見つめる。
何か哀愁漂うふ雰囲気を漂わせながら非常に切なげな表情だ。
「……はぁ、やっぱり気になるよな。まぁ……何時までもかくしておけるもんじゃねぇし、隠すもんでもないからな……流石に……切なくなるが……これもこれで仕方ないか。気にしてない……とはいえないが、もう慣れてきたっての。だから皆もそんな禁忌に触れたような空気醸し出すんじゃねぇよ。エンだってすげぇ居心地悪そうだろう?すまねぇな。……んでもってレベルだったな……俺のレベルは1だ。聞き間違いじゃないぜ、本当に間違いなく1だ。」
ほれといいながらステータスを見ると本当にレベルが1だった。
……。
…………。
………………。
う、嘘だぁ!?
そんな……そんなわけないよ!
だってこの辺のモンスター低レベルなら一人で倒せるんだよ?
中レベルだってきっと倒す事出来ると思う。
そんな人がレベル1だって?
そんなの……でも、ステータスは偽証出来ない……。
ああ、レイラさんとララさんも信じられないといった表情で固まっている。
周りの村の人もかなり居心地悪そうだ……本当なのか?
……え、ええぇぇぇぇぇ!?
本当なの!?
……信じられない……動かぬ証拠を見せられても信じられない……。
だって、今僕レベル35になったけど、マサキさんに勝てる気全然しないよ?
混乱しながら慌ててる僕にマサキさんが苦笑を洩らしながら話しかけてくる。
「まぁ、エンは俺の事強いと思ってたみたいだからな。事実を知っちまってがっくりしちまったか?悪いな。でもな、レベル1だけど、それでも戦い方によっちゃ色々戦えるんだぜ。……でもまぁレベルが1な事にはかわりはしねぇ。期待させちまってたんなら本当に悪かったな。」
そう言って笑いながら僕の頭をなでる。
何でそんな風に笑えるんですか?
僕には不思議でしょうがない。
だって……僕ならきっと我慢できない。
レベル1でモンスターと戦う事も、その事実を受け入れることを。
マサキさんは少なくとも二百年以上は生きている……その間かなりの数のモンスターと戦ったはずだ。
なのにレベル1……色々と……バグなのかなんなのか解らないけど、酷く理不尽な状態だったろう。
それなのに何でマサキさんはそうやって笑えるんだろう。
謝らなければいけないの場僕なのに、僕の事を考えて、逆に謝れるほど大きいんだろう……。
……僕には詳しい事は解らないけど……凄いな……本当に凄い。
マサキさんはがっかりしただろうとか言ってたけど、そんな事ある訳ない!
逆に……そんなマサキさんの『強さ。』が凄く……まぶしい。
何時か僕も……そんな強さを持てるようになりたい……そう思った。
……ああ……だからセルビアさん、あの時あんなこと言ったんだ。
セルビアさんはマサキさんの背中を見て、追いかけていたんだ。
道理で凄いはずだよね。
僕も……何時かそうなれるかな?
ううん、何時かきっとそうなろう!
弱気じゃだめだ!
マサキさんにとっちゃ僕は物凄く恵まれているだろう。
周りから見れば普通でも、マサキさんからしてみれば嫉妬の対象になっていても可笑しくない。
……それなのにマサキさん……。
うん、僕にもやっと……目指すべき目標が出来た。
今更……といわれるかもしれないけど、今までなんとなく楽しいなぁ程度で遊んでいただけだった。
でも今、本気でマサキさんみたいになりたいって思えたんだ。
きっとなって見せるって。
この目標……達成できるまでどれだけ長い時間が経つか解らない……けど、絶対に……諦めない!
頑張って見せる。
だから僕は……マサキさんのコップにお酒を継ぎ足し、「そんな事ないです!何時か……何時かそんなマサキさんに追いついて見せます……いや!追い抜いて見せます!」そう言って、笑った。
今……僕はきっと笑うことしかできなかった。
だって……それ以外にどうしろというんだ?
悲しい顔は似合わない、同情なんてもってのほか、する意味すらない。
諦めるなんてものは最初から選択肢外。
苦笑や眼をそらすような中途半端はしたくない。
だから僕は今笑おう。
そんな僕にマサキさんは少し驚いたような表情で、「とっくに追い抜いてんだろうが!」と笑いながら乱暴に僕の頭をなでる。
うん、確かにレベルは抜いてるけど……その『強さ。』は、正直今じゃ全然先が見えないくらい離されてると思うんだ。
きっとマサキさんにいっても否定されるけど……僕はそう感じた。
だから……僕は決めたんだ、誰に何と言われても……マサキさんみたいな強さを手に入れるって……今この場で、この時に!
僕達がそうやってお互いに笑い合ってお酒を飲みだしてから漸く、場の空気が動き出した。
さっきまでと同じような温かくて騒がしい空気。
村の皆が応援してくれる。
大変だろうけど頑張れ!
そうセルビアさんも言ってくれた。
レイラさんとララさんも正気に戻ったらしく何時の間にやらやさしい笑顔で僕を見てくる。
その表情はやめてほしいな……。
そんな感じで……驚愕の事実を知ったけど……より一層マサキさんの凄さと強さが解った。
少し……マサキさんには悪い事をしたと思うけど、でも僕的には知れてよかった……。
本当に……。
よし!
明日から……目標に向かって頑張るぞぉ!