第三話~予想以上に盗賊楽しい!~
よっしゃ!
お宝ゲット!
今僕は、モンスターと戦いながらアイテムを手に入れている。
これぞ盗賊の素敵なスキル。
略奪!
むろんモンスターからのみですよ?
人さまからそんな事……出来ない訳じゃないけどやらないです。
いやぁ……予想以上に盗賊楽しいな。
最初はなんだかんだだまされたような感じで仕方なくなっちゃったけど……意外と僕にむいてる職業かもしれない。
今僕が使っているのは短剣だ……両手に一つずつ。
僕の旅立ちの日にマサキさんたちがくれた短剣……申し訳ないほどに良い代物で受け取れないというと、その気持ちがあるならそれで死なないように長生きしてくれって言われた。
そんな事を言われながら、言いくるめられ、ありがたくこの短剣セットをいただいたのだ。
……後々聞くと、両手に装備するためじゃなくて、一つは予備としてのために渡したようだったけど……勘違いした僕は二刀流のように両手に短剣を装備して戦えるように頑張った。
頑張った結果……何とか様になるようになってきたというわけだ。
ちなみに僕は今、マサキさんたちの住んでいた村とは全然違う場所にいる。
僕が盗賊に転職してから十年がたった。
といっても現実世界ではたった十日だけどね。
まぁ……こっちの世界で生活していた僕には本当にまんま十年たったような感覚があるけどさ。
んでもって、なんだかと結構強くなったと思う。
最初のころはひどかったなぁ……基本逃げる……そんな事ばっかしだった。
そのおかげでやったらとAGIだけはうなぎ上りにあがったっけ。
色々と教えてくれたララさんとレイラさんにも感謝だよね。
今こうしてモンスターと真面に戦えたり、スキルを使えるようになったのもあの二人のおかげだし。
ちなみに……彼女たちは今……僕の後ろにいます。
はい、何やら師匠として何かが目覚めたようです。
……そんな変なもの目覚めないでほしかった……。
とりあえず、今僕が使っていたスキル略奪。
それのほかにもAGIとDEXを戦闘中限定で自動で発動するスキル、俊敏と集中も取ってある。
後は隠蔽……つまり隠れるスキルだ。
後は遁走。
これ最初にとったスキルね。
モンスターから逃げるスキル。
このスキルだけ異常に伸びるの早かったよ……。
情けないとか言わないで!?
んでもってそれらが全部補助系スキル。
ララさんが言った通り戦闘系のスキルがほっとんどない。
ってか……全くないよ!
僕がしばらくたってからそういうと、ララさんがとぼけながら「言わなかったっけ?」とか言われた。
……もういいけどね。
はぁ……きっとこれからも僕はララさんに振り回されて、時々レイラさんに振り回されながら生きていくんだろうなぁ……。
ってこれゲームだよね?
そういやログアウトすればいいじゃん。
……そんな事を思ったけど……この二人がいる前じゃそんな事怖くて言えません。
やってしまえばこっちのもんだけど……次に戻ってきた時が怖すぎる。
もう完璧にはまりきってる僕にはやめるという選択肢だけは存在しませんよ。
一応……これでも五日に一回はログアウトしてるんだけど……数分で戻ってくるせいか全く実感がない……ってか、既にこの世界が僕にとっての現実になりつつあるよ。
…………というかララさんとレイラさんなんかは本気でそうなってるし、僕も……近いうちにそうなるんだろうなぁ。
そんなあきらめにも似たような事を考えながら僕はまた新しいモンスターを探して倒しに行くことにした。
視点、とある村の村長R
彼を初めて見た時何故かマサキを初めて見た時と同じような感覚があった。
少し不思議な、どこかほっとするような感覚。
マサキが笑いながら連れてきたせいかもしれない。
話を聞くと冒険者になってから全くと言っていいほど時間がたっていないらしい。
どうやら、誰かのいたずらか何かでこの周辺まで飛ばされてしまったという事だ。
彼が冒険者として初心者だというのは直ぐに解った。
ステータスのみかた一つ解っていないからだ。
マサキが何か懐かしいものを見るような感じで色々と教えていた……きっと、昔の自分とかぶっているからだろう。
……ふふふ。
何かそんな二人を見ていると見た目は兄弟程度なのに、父親と息子といった感じがする。
……ってかそのまんまよね。
もう家も出て行っちゃったけど、私たちの子供達もマサキとはあんな感じだったし。
……驚くくらい何故か子供に懐かれるのよねぇ。
はぁ……あの子を見てると、私の子供たちも元気でやっているのか心配になってきた……。
いや、元気でやってるという連絡はよく来るんだけど……やっぱり実際見てみないと実感できないでしょう?
マサキも時々お酒を飲んだ時そんな事を言っていたし、たまには帰ってこないかなぁ?
でも……この子を見ていると……本当に私たちの子供みたいな感じがして来て不思議だな。
何かかまいたくなっちゃう。
心配で色々してあげたくなっちゃうんだ。
マサキの時とは少し違う感覚だけど、どこか安心するというかほっとするというかそんな雰囲気を感じるところだけはよく似てる……。
マサキもかなり嬉しそうだし、しばらくいてくれるといいんだけどなぁ。
……等と考えていたのに、たった二年ほどで村から出て行ってしまった。
正直結構さびしい。
でも、今まで散々娘や息子たちとそういう経験しているのだから、慣れはしないまでも、笑顔で送り出すことくらいはできるようになっている。
どうやら、前に隣街で盗賊に転職した時にお世話になった方々と旅に出るという事だ。
その子たちは一応この子をある程度フォローできるようになるまで自分自身を鍛えてから迎えに来たようだ。
だって、たった二人であの森を超えてこれるくらい強い二人なのだから。
……この子、意外とモテルのねぇ。
解らない訳じゃないけど……将来女を泣かせるような男にだけはならないでほしいな。
……無理かもしれないわね。
無意識にどこか女の子をひきつける雰囲気を感じるもの。
旅立つというその日に、私たちは皆で協力して作った短剣をその子に渡した。
二振りの短剣。
一つは予備だ。
何かあったときに予備がないと困るだろうという事で二つ用意した。
それで……本当に無事に旅を続けてくれたらいいと思う。
マサキも遠ざかるその子の背中を見つめながらぽつりとそうこぼしていた。
……あの子は意外と几帳面というかなんというか……厄介な性格をしていると私でも思う。
だからこそ、あの子は今後もちょくちょく大変な思いをしてこの村に来るだろう。
私たちに会いに……元気な姿を見せに。
そんな子だと、どこかあった瞬間から感じていたからこそ、この村の皆も自然とマサキと同じように彼をうけいれていたんだろうな。
……私が言うのもなんだけどこの村の皆は酷く人がいい。
だけど……めったに外から来た人たちに簡単に心を開いてさらけ出すような人はほとんどいない。
警戒心が強いといっても良いかもしれない。
それなのにあの子はこの村に来た次の日からもう村の皆と仲良くなり、信頼されていた。
本当にこの村に突然来る人は不思議な人ばかりだなぁ。
マサキにしてもあの子にしても。
よし、それじゃあ私は今度あの子が帰ってきたときのためにとっておきの料理を用意してあげれるよう用意しておこう。
お酒が好きだと言っていたからか、マサキはそれを用意しておくかっていってたしね。
村の皆もさびしそうにあの子の背中を見送っている。
皆今度帰ってきたらあーするこーすると、次にあの子が帰ってきたときの事を話しだしているあたり、本当に気に入られているんだろう。
だから……きちんと無事な姿をまた見せに戻ってきなさいよ、エン君。