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No.7197の一覧
[0] 異世界の混沌 [三月十二日完結][榊 燕](2009/03/12 00:10)
[1] 異世界の混沌 プロローグ[榊 燕](2009/03/08 01:07)
[2] 異世界の混沌 第一話[榊 燕](2009/03/08 01:55)
[3] 異世界の混沌 第二話[榊 燕](2009/03/09 20:32)
[4] 異世界の混沌 第三話[榊 燕](2009/03/08 15:22)
[5] 異世界の混沌 第四話[榊 燕](2009/03/09 20:34)
[6] 異世界の混沌 第五話[榊 燕](2009/03/12 00:06)
[7] 異世界の混沌 第六話[榊 燕](2009/03/12 00:04)
[8] 異世界の混沌 エピローグ[榊 燕](2009/03/12 00:05)
[9] 異世界の混沌 感謝の言葉。[榊 燕](2009/03/12 00:09)
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[7197] 異世界の混沌 第二話
Name: 榊 燕◆972593f7 ID:e298aa1b 前を表示する / 次を表示する
Date: 2009/03/09 20:32
     第二話~とりあえず……盗賊がいいかなぁ?~





 いやぁ……慣れればこの辺のモンスターも何とかなるものだねぇ。
 最初の三日間くらいはなんだかんだで結構危ない場面があったんだけど、一週間もすればそれなりに危なげなく戦えるようになってきた。
 それも……ほとんどはマサキさんのおかげなんだけどね。
 マサキさんの戦い方は何というか……上手い。
 敵の隙を見て、そこを突く。
 敵の動きを観察し、無駄な部分をなくし少ない動作で攻撃を躱す。
 どれもこれも勉強になる。
 改めて思ったけど、マサキさんってかなりつよいなぁって。
 ……僕がそういうと、マサキさんは大爆笑しながら「俺ほど弱い奴はめったにいないぜ?」って言い出した。
 ……そんな事ないと思うんだけどなぁ?
 他の人達の戦いも見たけど……確かに力や素早さは全然マサキさんより凄い人ばかりだった……けど、マサキさん程、敵の攻撃を受けずに、的確に敵の弱い部分を攻撃していくような何て表現していいか解らないから、とりあえず上手いって言っとくけど、そんな戦い方してる人……出来てる人なんていないかったんだからね。
 とりあえず、僕はマサキさんの動きを真似しながら敵を倒していった。
 四日目あたりから一人で戦えるようになり、敵を倒した数も結構増えてきた。
 マサキさんの戦い方を見ていたせいか、何故かAGIの上がり方が非常に高い。
 というか……AGIの上りが5とすると、他のステータスの上がり方が2~3程度しか上がってないのは……いかがなもんなんだろうか……。
 ……まぁいっか。
 そのうち、足りないと思ったステータスが出てくればそのとき上げればいいや。
 そう考えて、今日もまた僕はモンスターを倒していく。
 最近じゃこの辺のモンスター(低レベル限定)の動きも大体把握できて来て、攻撃を受けるってこともなくなってきた。
 そろそろ慣れてきたかなぁ?
 もう一つ階段登りたくなってきたよ。
 ……そう言ったらマサキさんに「若いなぁ。」と言って苦笑された。
 自分じゃよくわからないけど、馬鹿にされたわけじゃないのは解った。
 でも少しだけふくれてしまってもいいだろう?
 そして一週間ほどたった今日、僕のレベルが5になった。
 ステータスも比較的順調に上がり、転職ってどうすればいいのかなぁと思って、マサキさんに聞いてみた。
 いつも通り乱雑だけどしっかりと転職について教えてくれたんだけど……。
 何でだろう……僕がレベル上がったりしたときと同じような酷く哀愁漂う雰囲気を醸し出しているのは……?
 思わずマサキさんの職業は何ですか?
 って聞きたくても、聞けない状態だった。
 とりあえず……転職の仕方を聞いた僕は、隣街といわれる『時果』という街に向かう事にしたんだが……。
 森直前でダッシュで引き返してきた。
 そんな僕をニヤニヤと笑いながらマサキさんが村の入り口で待っていたときは、やられたと思った。
 知っていてワザと教えなかったんだなぁ。
 森の直前で気付いたのは、森の中にいるモンスターの強さだった。
 ……ありえねぇー。
 あれは強すぎる……。
 森の入り口で、僕が一対一で何とか今だったら無傷で倒せる低レベルモンスター数十匹を、何でもないかのように倒しながら平然としているようなモンスターがいたんだ。
 ……森の入り口でだぜ?
 中に入れば入るほどモンスターの強さが上がるのはこの世界の常識らしい。
 これはギルドの親父に聞いた事だけど。
 そして……森の入り口のモンスターであれってことは……考えただけでも恐ろしい。
 もし気がつかず間違えて入ってしまっていたらどうしたことだろう。
 少し怒りながらそういうと、マサキさんはあのモンスターが門番がわりになっていて、あいつを普通に倒せるくらいにならないと一人じゃあの森を抜けられないようになっていると教えてくれた。
 ……あーなるほどですね、そうですか。
 確かにあんなの見せつけられりゃ誰だって尻込みしますよねー。
 はぁ……って事はしばらく転職できないのかぁ。
 僕がそうため息をつくと、マサキさんがさっきと違った笑みを浮かべながらこんな事を言ってくれた。

  「んでもって……だ。明日セルビア達が隣街に買い出し行くんだが……。」

 と。
 きっと僕の反応を見て楽しんでいたんだろうな。
 僕がはっと顔をあげると面白そうに僕を見ているんだから。
 思い通りになるのも何だか癪な気分だったけど……向こう見ずにしっかりと話を聞かずに飛び出した僕が悪いんだししょうがないか。
 そう諦めて、付いていっても良いですかって聞いたら、「おう、言っておく。」そう言って僕の頭をなでながら村に戻って行った。
 ……本当にかなわないなぁ。
 僕も苦笑を洩らしながらそんなマサキさん後に続いて村に戻ったのだった。





 隣街ば別世界でした。
 すげぇ……。
 こんな感想しか思い浮かばない。
 だってさ、僕が今までいた村は家なんて一階建ての木の建物だけで、家の数だって二十に届かないくらいのいえしかなかった。
 広さだって村の端から端まででもせいぜい100Mあるかどうか位の大きさだ。
 それと比べてこの街はどうだろう。
 建物の大半は石でできた建物で、高さも三階建てくらいまである。
 その上だ、街の端から端が全く見えない……。
 ……ってそんなの普通だよな……?
 村に慣れすぎていた僕にはそれだけで本当に凄い別世界に見えたんだけどなぁ。
 そして……何より凄いと思ったのが人の数。
 いやぁ……プレイヤーの人もいるんだろうけど、恐らくNPCであろう人達が酷く賑やかだ。
 商品を大声で「安いよ!」等と言いながら売ろうとしたり、色々といい点を並べながらの路上販売に精をだしたり、ナイフでジャグリングをして子供たちやその親から拍手を受けたり……そんな賑やかな事になっていた。
 ……はぁ……。
 思わず……本当に思わず口を開けてその光景を見ていると、後ろからセルビアさんが「初めてでしたら驚かれたでしょう?」そう言って笑った。
 少し恥ずかしかったけど素直にうなずくと、「私も最初はそうでしたよ。」そう言って僕の隣に立ち色々と説明してくれた。
 この街には各種職業の転職する支店以外にも各種道具の店、武器や防具の店、魔術道具の店等ほとんどの店がそろっているらしい。
 その上この街の住人は明るい元気な人が多いらしく、何時もこんな状態だと言っていた。
 なんだか面白いなぁ……けど、毎日がこんなんじゃ疲れちまう、僕にはあの村のほうがいいなぁ。
 僕がそうつぶやくと、セルビアさんは「ありがとうございます。」と言って嬉しそうに笑っていた。
 ああ……思わず声に出してたのか……。
 僕は恥ずかしくて俯きながら、「転職する支店を見てきます!」と言ってその場を後にした。
 後ろから、「今日はこの街の『安らぎ亭。』というところで宿と取っていますので終わったら来てくださいね。」と声をかけられた。
 僕は大きく「はい、解りました!」とそれだけ言うと走ってその場から逃げ去った。
 ……何て事をしながら街をうろつくと、少し離れた位置に向かい合うように四つの建物があった。
 全部同じ建物……ただ建物の上部に付いている文様からこれが各種転職するための場所何だと解った。
 剣と盾のマークが恐らく剣士。
 杖と火のマークが恐らく魔法使い。
 弓と矢のマークが恐らく弓使い。
 財布とコインのマークが恐らく商人。
 っと?
 少し奥に同じ建物がもう一個あった。
 少し隠れるような位置にあるその建物にあったマークは二つの短剣のマーク。
 ん?
 ……残っている職業から考えると恐らく盗賊かな?
 改めて僕は自分の今のステータスを確認してみる事にした。


     ――――――――――
     名 前:エン
     職 業:冒険者
     レベル:5
     STR:52
     VIT:55
     AGI:80
     DEX:67
     INT:45
     ――――――――――


 うん、何度見ても変わらない。
 素早さと器用さがやっぱり極めて高い。
 ……この事から相談するたびにお勧めされたのは弓使い。
 だけど……僕は弓というものが余り得意じゃないというか、好きじゃない。
 嫌いなわけじゃないんだけどね。
 ただ、剣類等で戦う近接戦闘のほうが僕はすきなんだ。
 だから僕は剣士になろうとしていたんだけど……この建物のマークから見ると盗賊も一応剣……短剣で戦うスタイルの職業なのか?
 少し気になったんでのぞいてみることにした。
 入り口から入るとそこは結構なにぎわいを見せていた。

  「おっ?新入りさんかい?始めてみる顔だな。……ん?もしかして……転職しにきたのか?」

 カウンターの中に座っていたまだ親父と呼ぶには少し若いくらいの、かろうじての青年がそう言って僕に話しかけてきた。
 その瞬間、近くのいた数名のプレイヤーと思わしき人たちが僕のそばに寄ってきたので……思わず逃げそうになったんだけど……次にその人たちか出た言葉でそんな気が一気になくなった。

  「おおー!とうとう、とうとう私たちに後輩が!?君盗賊になるんだよね!盗賊いいよ、素早さ上がりやすくて攻撃受けないし、敵からアイテムかすめ取ったりすること出来るから普通の職業よりお金稼ぎやすいし、何より装備が整ってなくてもある程度戦いやすいんだからさ!だからぱぱっと迷わないできめちゃおう!さぁ、さぁさぁ!早く私の後輩になって……ぐへらぁ!?」

 凄いテンションで話しかけてきた赤い髪の女性におびえて後ずさっているところ、後ろから思いっきり横殴りに殴られ、その女性は吹っ飛ばされた。

  「全く……初心者の子相手に何をやっているのかしら?怯えさせているじゃないの。これだから盗賊っていう職業、偏見を持たれて人気がなくなるのよ?もう少し気を使いなさいな!……それで、なんですが、あなたは盗賊に転職する気でこの場所へきたのかしら?確かに……世間じゃ色々と悪い噂ばかりだけど……実際その中にも本当の事が混じっているわ。でもそれだけが事実じゃないのよ?私たちは基本的にモンスターとしか戦わないし、モンスターと戦った時にモンスターからしかものを取ったりしないの。だから盗賊といっても村や街を襲ったりするような人達とは違うってことだけは……解ってほしいのよ。……ってごめんなさいね、突然こんな話してしまって……さっきのあの馬鹿が言った通り、盗賊という職業悪いものじゃないのよ。良ければ……色々私も教えてあげること出来るし、どうかしら?」

 う~んさっきの凄いテンションの人とは違うけどこの黒い長い髪の綺麗な人もなんだかなぁ?
 でも悪い噂ってなんだろう?
 僕は全然知らないけど……話しぶりからすると恐らく『盗賊。』って名前そのまんまを悪い意味で囚われてるってことだろうね。
 盗みや人攫いとかそういった事をする人と……。
 まぁこの女性二人は悪い人じゃないと思う。
 だって、どこかマサキさん達と同じような雰囲気をかんじるから。
 だからとっさに逃げようとしたんだけど、逃げられなくなってしまった。
 もともと興味をひかれていたこともあったんで、僕はもう少し色々教えてもらえませんかと言って、その黒い髪の綺麗な女性に話しかける。
 次の瞬間、その女性は劇的に表情を変化させた……驚いた!
 すっごい驚いた。
 だって、さっきまでの彼女は僕から見て結構大人な女性って感じに見えたからだ。
 それなのに……。

  「ほ、本当!?やった、やったよ!とうとう私たちに後輩できるのよ!良かった……私たちが最後に転職してから本当に今の今まで誰もここ訪れないし……同じ盗賊の人達もこの街まで来る人なんてほとんどいなかったから……本当に良かった!ララ!何時まで気を抜かしているのよ!この子話を聞きたいって言ってるんだからさっさと起きてお茶とお菓子持ってきなさい!」

 はぁ……。
 こんな感じですっごい良い笑顔で笑いながら僕を近くのテーブルに連れて行った。
 後ろの方で苦笑を洩らしているカウンターの青年がいたけど、なんとなく微笑ましい光景を見ているような表情だ。
 うん、助けなしだね。
 僕は諦めてその案内された席に座ると、さっきまで気絶していたはずの赤い髪の女性が、お茶とお菓子を持って僕の隣の席に座った。
 差し出されたそれらを「ありがとうございます。」と言って受け取ると、嬉しそうに笑った。

  「……ああ、ごめんなさい。少し……恥ずかしい所を見せてしまったわね。本当に此処にきて、話まで聞いてくれる子なんて久しぶりだったから……ごめんなさい。」

 僕の向かいに座った黒い髪の女性はお茶を一口すすると、ほほを少し赤くしながらそう言ってきた。
 うん、きっとさっきの地なんだろうなぁ。
 でもふだんはなるべくこういう話し方をするようにしていると……。
 なんとなくわかるかなぁ。
 こんな綺麗な人があのテンションで話したり、話し方をしたりすると違和感があるから。
 でも……それも決して悪くないと思うんだけどなぁ。
 彼女にしたらきっと余り良いと思える事じゃないってことか。
 僕がそんな事を考えていると、今度は赤い髪の女性が話し始めた。

  「それで……盗賊についてだよね。一応盗賊って職業は基本AGIとDEXが上がりやすい職業なんだ。戦闘の仕方もモンスターの攻撃を躱しながら削っていくっていう感じの戦い方。確かに一撃で倒したりするのは難しいけど……盗賊は盗賊らしい戦い方ってのがあるから、決して不可能でもないからがっかりしないでね?それで、武器なんだけど人それぞれ何だ。何でも使えるの。それこそ才能を必要とする魔法以外なら何でも使える。だけど……盗賊として特徴を本当に生かしきれるのは短剣とカタール系統の武器かな。後ブーメランとか爪もいいかもしれないね。後はスキルだけど……戦闘関係のスキルは余り多くないけど、補助系統のスキルが結構おおいのよ。例えば戦闘時のAGIやDEXに補正をかけるスキルとか、攻撃した際自動でモンスターのアイテムを入手するスキルとかね?詳しいスキルとかは追々その時になったら教えてあげるよ。……って今更なんだけど……聞き忘れてた。君の名前とステータス教えてもらえるかな?ちなみに私はララっていうんだ、盗賊でレベルは23、ランクはこれでも7なんだよ。」

 そう言って色々と説明した後に、少し苦笑をしながらも胸を張ってそういった彼女……ララさんに続き、今度は黒い髪の女性も続いて話しかけてきた。

  「あら、そう言えば本当にまだ自己紹介もしていなかったのね。私はレイラよ。盗賊でレベルは27、ランクは8よ。よろしくお願いね。」

 レイラさんというらしい。
 僕は相手にしっかりと自己紹介をされて何も返せないほど礼儀知らずじゃないですよ?
 だから最初に聞かれた質問を含んで自己紹介をしたさ。

  「初めまして、ララさん、レイラさん。僕はエンっていいます。今は冒険者でレベルもまだ5です。ステータスは……こんな感じです。よろしくお願いします。」

 そう言って頭を下げる。
 僕のレベルを聞いた二人は少し驚いたように僕をみていた。
 なんでだろう?

  「ねぇ、レベル5って本当?……はぁ本当なんだ。凄いねぇエン君。このあたりのモンスター最低レベル10はないと下手したら一撃で死んじゃうんだよ?それなのによく無事にたどりついたねー?一番近い街の『永楽。』からきたの?」

 なんと!
 この辺そんなにぶっそうなのか。
 遠目からセルビアさんたちが比較的楽そうに敵を倒していたから、村の周りより少し強いくらいの敵だと思っていたけど……戦おうとしなくて良かった!

  「そ、そうだったんですか。僕そんなこと全然知らなかったです。永楽っていう所は知らないんですが僕が来たのは森を抜けた所にある小さな村からです。村の人達が買い出しに行くというので連れてきてもらったんですよ。」

 僕がそういうと今度はレイラさんがすっごい驚いたように僕をみる。

  「あの村からきたの!?凄いわね……森を抜ける事だけでも奇跡的だっていうのに、村の人達とそれだけの親交があるなんて、あの村の人良い人ばかりなんだけど警戒心結構強くて外部の人にそうそう心をひらかないっていうのに……。どうやったの?教えて!私あそこにいる……。」

 そこまで言ってッハとまたレイラさんは暴走していた自分に気づいたらしい。
 今度は真っ赤になって今にも頭から湯気を出すんじゃないかってくらいになって俯いてしまった。
 ……警戒心が強い?
 そんな感じしなかったけどなぁ?
 僕が本当に初心者だったからかな?

  「あっははは、ごめんねエン君。レイラったらあそこの村にいるマサキさんって人にぞっこんラブなのよ。この世界の時間じゃ最後にあったのなんてもう100年以上前だっていうのに未だにその熱がさがらないのよねぇ。モンスターにやられそうになったところをかっこよく助けてくれて惚れた何て……何処の漫画の世界の話だって突っ込みたくなってもしょうがないよねぇ!」

 そう言ってケラケラと笑うララさん。
 でも気付いた方がいいですよ?
 後ろからもう……漆黒と言っていいほどの何か放ちながら近寄ってきてる何か(レイラさん)に。
 まぁ……言わないでも解ると思うけど、次の瞬間気絶することなくぎりぎりのところでいたぶり続けられるララさんがいましたとさ。
 にしても……マサキさんプレイヤーにまで恋心を抱かせるとは……そこにしびれる憧れるぅ!
 何て冗談はさておき、凄い人だなぁ……ってか、規格外にも程があるだろうに。
 でも……レイラさんがあの事実を聞いたらどうするんだろう……。
 ってかしってるのかな?

  「あのすいません、レイラさんたちが最後にあの村に行ったのって、大体何年前なんですか?」

 僕は思わずそう聞いてしまっていた。
 その後何故か平気そうに復活していたララさんが「う~ん。」と少し考えながら計算を始めた。
 この世界現実世界と時間の流れが違うのだ。
 二年ほど前に色々と問題が起きてから一度サービス停止になった事がある。
 その後また復活したんだけど、その後今度はサービスを停止しないまま運営がこのゲームを放棄した事があった……その後もまた戻ってきて落ち着いたんだけど……そのときにこの世界と現実世界での時間の流れに関して色々と変更が加えられた。
 ……それ以外にも色々と変更あったんだけどね。
 んでもってだからこそ計算がめんどくさくなっているんだろう。
 確か、情報掲示板を見ると前は一週間で一年という計算だった。
 今は一日で一年という前までの七倍もの時間を楽しめるようになっている。
 ……大丈夫なのかなん僕の脳……?
 ……い、今はそんな事かんけいないよね?
 きにすることないよね!?
 ……ああ、また話がそれた……一日が一年になってからまだ半年しか経っていないので、それだけ難しく考えるという事は少なくとも半年以上(現実世界の日数でね?)は行っていないということだろう。
 しばらくうんうん唸っていたんだけど、漸く計算を終えたらしく、「よくよく計算してみると、半年前の変更があったせいか二百年近くいってない事になるんだね。」ということだった。
 ……なるほど、マサキさんがたが結婚したのは百五十年くらい前だって言っていた。
 この世界の人達の時間のとらえ方の可笑しさに最初は困惑したもんだけど……もう慣れた……訳がないじゃないか。
 未だに困惑しっぱなしだっての。
 とりあえず……という事は結婚したという事実は知らないのか……。
 どうしよう、いったほうがいいのかな?

  「あ、あのね、エン君。それで……その……ま、マサキさんは元気なのかしら?」

 顔を真っ赤にしながらもちらちらとこちらを窺うように見てくる様子は酷くかわいらしい。
 だからこそ……少し……いいずらいなぁ。
 でも、秘密にしてても……酷い事だよね。
 だから僕は……言ってしまったわけだ。

  「はい、今マサキさんの所でお世話になっているんですが、凄い元気ですよ……奥さんともども……。」

 次の瞬間ほっと安堵のため息をつきながらも空気が凍った。
 ピキッ……そんな擬音が聞こえてきそうな音だった。

  「エン君……?聞き間違えかしら……『奥さん』ともどもとか聞こえたのだけど?」

 底冷えするような声で尋ねられても僕は声を出せなかった。
 ただひたすらコクコクと頷いて、聞き間違えじゃないという事だけ伝える。
 ……次の瞬間そのその空気は音を立てて壊れ果てた。
 パキンっ!
 とかの音じゃないよ?
 レイラさんの鳴き声によって壊された。
 いきなり瞳に涙をためたかと思うと、次の瞬間子供のように泣き出した。
 ……何だろう……見た目と中身が一致していない感じが凄いなぁ。
 僕はどうしていいか解らないのでそんな感じに現実逃避をしていたのだけど、ララさんに手を引っ張られ現実逃避終了。
 一緒に慰めてほしいという事だ。
 僕が引き金を引いてしまったのだから……それくらいはしないといけないと思って、素直にうなずいた。
 それからしばらくあれこれと、言いながら元気づけようとしたけど泣き続けるレイラさんは止まらない。
 恐らく……少し疲れてきてたから油断していたんだ。
 いや、別段嫌な訳じゃないから良いんだけどさ……こういう不意打ち的にってのはどうなんだろう?

  「エン君が盗賊になってレイラに色々教えてもらいたいって言ってるんだから、元気出して一緒に頑張ろうよ!」

  「はい。だから元気になって僕に色々教えてください……?」

 と言ってしまってから気付いてしまった。
 隣でニヤッと笑うララさんが少し憎たらしい。
 慌てて否定しようとしたら、突然レイラさんが泣きやんで、「本当に?」と聞いてきた。
 グッ!
 卑怯な!
 この状況で泣きやんでその表情は卑怯すぎるんじゃありませんか!?
 無理ですよ……人として……男としてその表情でそんな声で……聞かれたら「はい……。」としか答えられません!
 だって、涙を瞳に貯めながら、下からちらっと見上げ、よわよわしい子供のようなかよわい声でいわれたんだよ!?
 むりじゃん。
 無理無理。
 人としてこれで断れたひとじゃねぇ!
 畜生!
 ……こうして……何時の間にやら赤い小悪魔の策略によって僕は盗賊になる事を決めてしまったわけだった……。





 ああもう、畜生!
 やってやるよ!


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