第一話~この村に名前はないらしいから、始まりの村と名付けよう!~
はふぅ~。
僕は助けてくれた男性の奥さんから温かなお茶をいただき一息ついた。
そこで……漸く落ち着いたせいか、僕達はお互い自己紹介一つしていない事に気が付いたんだけどね。
正直……NPC相手に自己紹介と化しても意味あるのか解らないけど……一応助けてくれた人だし、そのあたりは例え誰であってもしっかりとしておきたいしね?
だからひとまず僕から自己紹介を始めてみましたよ。
「あっ!助けていただいて本当にありがとうございました。いまさらですが自己紹介もせず申し訳ありませんでした。僕はさ……エンっていいます。よろしくお願いします。」
何をよろしくお願いするんだろう?
そんな事を考えながらも、当たり前のあいさつ文だししょうがないだろうと自分にいい訳をしながら彼等を見つめる。
少し驚いたように男性が僕を見た後、柔らかく笑いながら自己紹介をしてくれた。
「ああ悪い、俺はマサキ……イワサキマサキだ、よろしくな。」
「私はレイスです。この村で村長をしていますので、何か問題がありましたら遠慮なく来てくださいね?」
そう言って、女性もやさしい微笑みを浮かべながら自己紹介をしてくれた。
マサキさんにレイスさん。
……話してみると本当にNPCに見えないし感じないなぁ。
誰かプレイヤーがロールプレイしてんじゃないのかなぁって思うくらいだ。
だからなのか思わず聞いてしまった。
「あのぉ……失礼ですがプレイヤーの方ですか?」
とね?
正直馬鹿な質問したもんだ。
んなもん、相手が本当にプレイヤーであれば正直失礼にも程がある。
プレイヤーじゃなければ不思議そうに可笑しな人を見るような眼で見られるんだろう。
だけど……僕のその思いとは違う反応が返ってきた。
「あぁ~違う違う。俺は……俺たちは唯の村人さ。この村の人間だよ。」
どこか……何か含んだようにマサキさんはそういった。
何だろう……何か違和感があるなぁ?
詳しく彼等をしらない僕がそんな事解る訳ないか。
ならいいや。
考えても仕方ないしね~。
「んぅ~もうこんな時間か……エン君は何処にも泊まるところがないんだろう?ならこの家に泊まっていくといい。困った時はお互いさまという事だしね。もし……この村を拠点にするなら俺の家の一室を貸してもいいしな。今日一日良く休んで考えてみてくれ。」
マサキさんはそういうと僕を部屋まで案内し、「お休み。」という言葉と共に離れていった。
その後ろから温かな感じのする、どこかほっとするようなにおいのする葉っぱを入れた入れ物をレイスさんから渡された。
「精神が落ち着いてよく眠れると思いますのでこれをどうぞ。今日は疲れたのでしょう?ゆっくり休んでくださいね、お休みなさい。」
そう言って二人は僕の部屋のドアを閉めて離れていった。
……良い人たちだなぁ。
今の現実世界じゃ絶滅危惧種並みに珍しいほど良い人たちだ。
僕は……彼らの言葉に甘えることにして布団に横になると、予想以上に肉体的にも精神的にも疲れていたんだろう。
直ぐに意識がなくなってしまった。
気付くとマサキさんが朝食が出来たといっておこしに来てくれていた……少し恥ずかしい……。
僕がこの村に来てから一週間がたった。
どうやらこの村に名前はないらしい。
だから僕は名義上、名前がないと呼びづらいので『始まりの村。』と勝手に命名していた。
そして……この村の人達は、マサキさんとレイスさんに始まり皆が皆良い人だった。
正直……居心地がよすぎる!
やばいやばい。
せっかくこういったゲームをするんだからレベルを上げて強くなって、色々と冒険したいじゃないか。
それなのにこの村にいたらそんなことしないで入り浸ってしまいそうだ……。
悪い事じゃないんだけど……せっかくだし頑張ろうよ……俺。
という事でとりあえずギルドに行く事にしました。
まずは登録作業が終わってるかどうかを確認したほうがいいと……どこか哀愁を漂わせたマサキさんから言われた。
どうしたんだろう?
そんな事を思いながらギルドの扉を開ける。
「おういらっしゃい!ぉっ!最近この村に来た新入りじゃないか、どうしたんだ?」
そう言って話しかけてくるのは、どこか威厳のある親父だった。
何か本当に一人一人のNPCに人間味ってのがありすぎる気がするぞ……。
「あの……マサキさんから一応登録されてるのかどうか確認してもらった方がいいといわれて……。」
僕がそういうとギルドの親父は少し不思議そうにしながらも親切にどうすればいいのかを教えてくれた。
といってもただ単に自分のステータスを見たいと思い浮かべれば良いだけらしい。
試しにステータスを開くように念じてみた。
するとどうだろう、目の前にステータスウインドウが現われて色々と表示されている。
ギルドの親父はそれを見ると、少しほっとしたように一息つき、簡単に説明してくれた。
ステータスの一つ一つの意味や、職業に関してとかを。
ちなみに僕の今のステータスはこんな感じになっている。
――――――――――
名 前:エン
職 業:冒険者
レベル:1
STR:10
VIT:10
AGI:10
DEX:10
INT:10
――――――――――
本当の初期ステータスらしい。
体力は50見たいだ……精神力なんかもあるんだ……たぶん魔法使うのに必要な者だろうなぁ……これは今30ある。
なるほどなるほど……これらのステータスが戦ったり、村の手伝いとかをすれば上がっていくわけだな。
職業もある程度条件を満たせば色々と選べるらしいし頑張ってみようかな。
僕はとりあえずレベル上げをしようと思って村の外へ向かって歩き出す。
その途中であった少し背の高い男性に驚いたように止められた。
このあたりは村から少しでも離れると凶暴なモンスターが現われて危険ですってね。
僕はレベル上げがしたいんです。
そう伝えると少し困ったようにレベルを聞かれた。
だから素直に1だと答えると絶句してしまった。
それからしばらくの間説教タイムに突入したわけだ。
三十分くらい……なげぇよ。
その説教の間に説明された内容によると……どうやらこのあたりのモンスターはレベル1でソロ狩りは難しいという事だ。
……何という事だ!
というかそんな場所の落とすなよ!?
そう文句を言いたくなったがこの青年にいっても意味がない。
僕はほとほと困り果ててしまった……。
そんな僕を見かねたのかその青年はリーダーに聞いてみますか……といって僕を連れて歩き始めた。
リーダー?
村長のことだろうか?
歩いていく方向も村長の家だし……恐らく間違いないだろう。
村長に何をききにいくんだろうかね?
僕は何も解らなかったんでとりあえず黙ってついていくことにした。
そして付いたのはやはり村長の家。
「すいません、セルビアです。入りますね。」
そう言ってノックをした後扉を開ける。
そこにはテーブルに座ったレイスさんとマサキさんが「突然どうしたんだ?」と言いながらセルビアと名乗った青年に声をかける。
その後僕に気づいたらしく、どうだった?
と声をかけてくれた。
僕はギルドであった事と、外に出ようとしてセルビアさんに止められた事を話したら……笑われた。
「あっはっは!悪い悪い、笑っちまって。そりゃ怒られるっての……って言っても仕方ねぇか……何もしらねぇんだろう?つぅことはセルビアが来たよう件もそれか。」
マサキさんがそう言ってセルビアさんを見ると、「そうです。」と言いながらうなづいた。
レイスサンはその間に僕とセルビアさんにお茶を出してくれた。
ああ……このお茶本当においしいなぁ……。
僕は「ありがとうございまs。」と言いながらお茶をすすった。
そうしてる間にマサキさんとセルビアさんで話が決まったらしい。
どういう話になったかというと……。
「しゃあねぇから、暇だし俺がついていこう。低レベルモンスター位なら俺でも問題ないからな。」
そう言ってマサキさんが付いてきてくれることになったのだ。
僕は流石にそれは申し訳なかったので断ろうとしたが、笑いながらこう言われた。
「昨日もいっただろう?困った時はお互いさまだってな。何より……この村の住人は揃いも揃って底抜けのいい奴らばかりでな、困ってる奴はほっとけねぇんだよ。まぁ俺は別だけどな、今回も偶々暇だったから暇つぶしのついでだ。」
そう言って僕の頭をなでてくる。
何だろう……なんだかお兄さんって感じがするなぁ……っていうよりもどっちかというとお父さん?
見た感じの年齢は少し上くらいな感じなのに不思議な感覚だなぁ。
僕はそう感じながら、今度は素直に「ありがとうございます、お願いします!」と頭を下げた。
軽く頷きながらマサキさんは愛用の剣を手に取ると、回復するための道具が入っているらしい袋を腰に下げて、村の外へ歩き出した。
レイスさんとセルビアさんが後ろから頑張ってと声援を送ってくれたのがとても心強い。
それから数十分後……最初僕がいた所より村に近いが、しっかりと村の外でモンスターがいる場所に僕はたっていた。
そして目の前にはネズミを大きくしたようなモンスターがいた。
名前はそのまんまで『大ネズミ。』っていうらしい。
……本当にそのまんま過ぎるだろうおい……。
とりあえずそいつと戦ってみる事イン……って、強っ!
強すぎ、ってかいた、痛いって!?
僕が反場混乱してる間にマサキさんが素早く大ネズミを倒してくれた。
たった一発……、立った一発食らっただけで既に瀕死だった。
うぁ……やばかったなぁ。
僕はマサキさんから回復薬を受け取り飲みながら、マサキさんに言われるがままステータスを確認してみた。
……驚いた。
最初の一撃しか与えていないのにステータスが上がっている……。
結構ステータスって上がりやすいんですね。
マサキさんにそういうと、少しひきつったような表情をしながら「良かったな。」と言ってくれた。
……???
とりあえずそんなこんなで、マサキさんに手伝ってもらいながらモンスターをひたすら倒しまくった。
といっても……実際画面越しにやってたゲームと違って一匹一匹倒すのに結構時間がかかるうえに、疲労感が半端ない。
だから実際十匹倒す前に力尽きて、マサキさんに肩を貸してもらいながら家に帰った。
……今日もまた、マサキさんの家にご厄介になる事に決まりました……すいません……。
今日のステータス最終値!
――――――――――
名 前:エン
職 業:冒険者
レベル:2
STR:30
VIT:32
AGI:40
DEX:36
INT:23
――――――――――
その結果を聞いたマサキさんが「解っていた事さ……。」そう言いながら少し哀しそうに笑っていた……。