今日は近所のスーパーの特売日。
戦果は1パック55円の卵12パック。
お一人様3パック限定の品なのに、何故12パックも買えたのかと聞かれれば、俺は日頃の弛まぬ善行のおかげと答えるだろう。
流石、幼い頃からの親友に
「初めてあった時から直感でお前の敵にだけはなりたくなかった。最善は関わりたくすらなかった」
と言われただけはあるな、俺。
…だが、まあぶっちゃけてしまえば。
「買いすぎた…だと…」
うふふ、調子にのって買いすぎちゃったザーマスのよ。
駅から徒歩35分、家賃は2万のボロアパートに帰宅して、思わず溜息。
勢いでこんなに大量に買ってしまったが、さりとて一人暮らしの我が身。
どうやって消費するべきか。
「食うしかない訳で」
捨てるとか売るとか誰かに振る舞ってやる?
論外論外。勿体ない。
流石、幼い頃から惚れてる幼馴染みに
「え、私にプレゼント?…何を企んでるのよ」
と、誕生日プレゼント渡しただけで罵られただけはあるな、俺。
べっ、別に目から流してる汗はあんたの為に流してるんじゃないんだからねっ!
勘違い、しないでよねっ!!!
「さー、程よく幼少時のトラウマを掘り返したところで、スーパー卵焼きタイム始まるよー!」
あれは確か小学一年生の出来事だったはず。
結局受け取って貰えなかった違法改造のミニ四駆モーターはその後きちんと爆破したが、一体何がいけなかったのか。
そんな思いを料理に込めようと、卵をボウルに割る。
もう一個割る。もう一個割る。もう一個…やばい、なんだか楽しくなってきたぞ。
「卵1パック完全消費のビッグ卵焼き。なんというコレステロールフラグ」
だが、俺が飽きるまで、卵を割るのをやめないっ!
卵が何をするだー許さんって言ったら考えてやってもいいけどな!
あれが誤植だったっと知ったのが割と最近な俺は、似非ジョジョラー。
「教えてやる…これが、卵を割るってことだ」
ラスト一個を眼鏡を外す動作をしてボウルに打ち付ける。
ゲームパソコン大好きなのに未だ視力は眼鏡をかけるレベルではない。
でも伊達眼鏡とかに興味が沸く年頃でもある。サングラス?黒歴史それ以上いけない。
「そぉい!」
ピカッ、ドン。ボンバー(笑)
「じゃねえよ…なんだなんだ…俺はまだこのアパートのガスコンロを改造なんてしちゃいねぇぞ…」
脳味噌より眼球、現在の状況を報告せよ。
眼球より脳味噌、卵をボウルに打ち付けたら卵が爆発しました。
脳味噌より眼球、卵爆弾とか探偵ナイトスクープかと。てか爆発ってレベルじゃねーぞ!
眼球より脳味噌、ぶっちゃけ燃えてたりしてないですけど、辺りに飛び散った生卵が悲惨ですね。
脳味噌より眼球、俺…意識が戻ったら、親友の家に駆け込むんだ…
眼球より脳味噌、現実逃避乙。てかなんか目の前に生卵まみれの幼女がいるんですが。
――卵白まみれの、幼女…だと…!?
「なんだと!?」
ちなみに爆発から現在までジャスト1秒。
良い脳内会議、見れたかよ?
「ひゃあ!?…あ、やっと気付いてくれましたね…申し遅れまして…えーと、葉山カリナと言います、初めましてです」
裸+卵塗れ+金髪美幼女=目の前にいる。
これが妄想じゃないとして、俺のするべき最善を実行しろ。
くーるになるんだ、高坂新一。
ちなみに俺がくーるって言う単語を使い出したのは、K1では無くネリーたんの影響である。
ネリーたん可愛いよ、ネリーたん。
知らない?ググれ。
「………よし、とりあえずお兄さんとシャワー浴びようか」
「え?あ、ありがとうございます」
「うんうん、今着替えとタオル用意するからね」
「あ、はーい」
………
なんというか、ここまでうまくいくと人間逆に引いちゃう物で。
まあ唐突に現れた幼女の見た目が小学生以下だったのもあり、なんか普通にシャワーを浴びさせました。
ぶっちゃけおっきしそうだったけど、常に自分の右腕をつねってたらなんとかなりますた。
俺紳士、流石俺、紳士。
べ、別にへたれな訳じゃないんだからね!…二回目のツンデレ台詞(漢)には飽き飽き?
貴様にはこの幼女の髪の毛をタオルでゴシゴシする権利をやらん。
「ふぇー、気持ちよかったです」
「あー待て待て。まだ髪半乾きだろうが」
「あ…ありがとうですー」
「いやいや、それにしてもいきなり卵の中からいきなり飛び出てきたけど、君って卵の神様とか妖精とかなの?」
「いえー?私の住んでる世界が寿命なので、こっちの世界に移住してきたんですー…卵の中に入っちゃったのは手違いですー」
「…そうなんだー、でもそれだけじゃないでしょー」
髪をタオルでもふもふゴシゴシ。
美容院も床屋のバイトも敵ではない髪拭きテクニックで警戒心をダウンさせる。
「ふぁー…そうです、私は先兵隊でしてー…とりあえずここの人類を制圧する任務があるんですよー…ふわふわー」
「ふむふむ。すごいなー、魔法とか使えるの?」
「ここの世界で言えば…それが一番近いかもですー…もふもふー…」
「でもでも、そんな強い力なんだから、弱点とかもあるんじゃない?」
「大丈夫ですー…私たちは名前を呼ばれると、自動で従者契約がされてその人に逆らえなくなりますけど…その前にきちんとすれば…大丈夫…もふー」
「あれ?でもそれだと従者になってる人でも他の人の従者にされちゃわない?」
「そうですー…だから、私たちは普通、誰かの従者に成る度に、マスターの命令によって名前を変えるんですー」
「じゃあ…『葉山カリナ』さん、人類制圧の任務を中止しなさい。君の新しい名前は『高坂カリナ』です」
「はーい…って、ああああ!?」
やっと気付いたかこのお馬鹿さんめ。
お馬鹿さぁ~んと銀様ボイスが出せたら言ってやりたい。
「あわ、あわわわ、わた、わた」
「綿菓子?悪いが今は作れないな…そういや結構前に段ボールの中でザラメ入れた空き缶火にかけて回して綿飴作る動画があったが…」
「ち、違います!私、その!」
「ご主人様にそんな口調はいけないなー」
「…あわ、わわわわぁ…はい、ご主人様」
なんか特売卵で幼女を手に入れる日が来るとは思ってなかった。
最近の特売卵はあれか、チョコエッグより豪華なのな。
とりあえず部屋の掃除は魔法で終わった。
魔法すごすぎだろ常識的に考えて…
幼女が「えーい!」って手を向けただけで、汚れだけが綺麗に空中に集まる様は感動ですた。
「よーし、その汚れ玉をこのビニールに入れるんだ」
「は…はいい…お、おおおも」
「おもひでぽろぽろ?名曲だな」
「重いですー!…あ」
「いい度胸だこの野郎…」
なんて一幕はあったりなかったり。
きっと不定期更新。
二週間に1回から1週間に3回ぐらいの間で。